24. インストゥルメント、ドラム、エフェクトのラック

ラックは、トラックのデバイスチェーン内部でエフェクト、プラグイン、インストゥルメントを使用するためのフレキシブルなツールです。 ラックは、複雑な信号処理や、ダイナミックなパフォーマンス用インストゥルメント、パワフルなシンセサイザーなどの構築に使用できます。 主要なコントロールをまとめることで、デバイスチェーンを効率化することもできます。 ラックは複数のデバイスの操作に優れている一方で、単一のデバイスでもパラメーター同士に新たなコントロールの相関関係を定義して、その機能をさらに伸ばすことができます。
24.1 ラックの概要
24.1.1 シグナルフローと並列デバイスチェーン

Liveのトラックでは、デバイスはデバイスチェーンの内部で直列に繋がっていて、信号が左のデバイスから右のデバイスへと送られていきます。 デフォルトでは、デバイスビューにひとつのチェーンのみが表示されますが、トラック内に含まれるチェーン数に制限はありません。
ラックを使用すると、任意のトラックへさらなるデバイスチェーンを追加できます。 トラックに複数のチェーンがある場合、そのチェーンは 並列に 処理します。インストゥルメントとエフェクトのラックでは、それぞれのチェーンが信号を同時に受信しますが、チェーン内のデバイスはその信号を 直列に 処理します。 各並列チェーンからの出力は、ミックスされてラックの出力となります。
Drum Rackでも複数の並列チェーンを同時に使用することができますが、チェーンの入力段での処理が多少異なります。 同じ入力信号を受信するのではなく、各Drum Rackのチェーンは、ひとつのMIDIノートのみが割り当てられている信号を受信します。
ラックの中身はすべて、ひとつのデバイスと考えることができます。 つまり、デバイスチェーン内に新規ラックを追加することは、デバイスの追加と同じことで、ラックの内部には好きな数だけラックを追加できます。 トラックのデバイスチェーン内で、あるラックの後段に複数のデバイスを配置しても、ラックの出力は通常どおり後続のデバイスへと引き継がれます。
24.1.2 マクロコントロール

ラック独自の機能として、マクロコントロールが挙げられます。
マクロコントロールは複数のノブが1セットとなっていて、ラック内にあるデバイスのパラメーターをいくつでも処理することができます。 ラックは工夫次第でさまざまな使い方ができます。重要なデバイスパラメーターへ簡単にアクセスできるような利便性を高める使い方や、複数のパラメーターでリズムと音色を変化させる斬新な使い方、巨大なシンセサイザーを構築してそれをシンプルなインターフェースで隠す使い方などもできます。 この操作方法についての詳細は、「マクロコントロールを使用する」 をご参照ください。
外部コントロールサーフェスでマクロコントロールを MIDIマッピング すると、表現力を最大限に高めることができるでしょう。
24.2 ラックを作成する
ラックには、Instrument Rack、Drum Rack、Audio Effect Rack、MIDI Effect Rack の4種類があり、Liveデバイスのすべてをカバーしています。 トラックタイプと同様に、各ラックタイプは、ラックに含まれるデバイスによってそれぞれルールが異なります。
- MIDI Effect Rack には、MIDIエフェクトだけが含まれ、MIDIトラックにのみ配置できます。
- Audio Effect Rack には、オーディオエフェクトだけが含まれ、オーディオトラックにのみ配置できます。 オーディオエフェクトがインストゥルメントの「後段」にある場合、MIDIトラックにも置くことができます。
- Instrument Rack にはインストゥルメントが含まれますが、MIDIとオーディオ両方のエフェクトを追加できます。 この場合、Instrument Rackのデバイスチェーンの先頭にはMIDIエフェクトが置かれ、次にインストゥルメントが続き、その後段にオーディオエフェクトが置かれます。
- Drum Rack は、Instrument Rackと同様にインストゥルメント、MIDIエフェクト、オーディオエフェクトを置くことができ、Instrument Rackと同じ順番でデバイスに信号が流れます。 Drum Rackには、オーディオエフェクトのリターンチェーンを6つまで配置できます。 メインラック内の各チェーンは、個別のセンドレベルを備えています。
ラックはさまざまな方法で作成することができます。 空のラックを新規作成するには、ブラウザーからラックのプリセット(例:Audio Effect Rack)をトラックへドラッグします。 デバイスは、ラックのチェーンリストやデバイスビュー(次のセクションで紹介)へ直接ドロップできます。
トラック上にある既存のデバイスをグループ化してラックにする場合、デバイスビューでこれらのデバイスのタイトルバーを選択したら、右クリックするとコンテキストメニューに [グループ化] や [Drum Rackへグループ化] コマンドが表示されます。 なお、同じデバイスにこのコマンドを繰り返し使用すると、ラックの中にラックが作成されます。 また、同じ手順でラック内にある複数のチェーンをグループ化することもできます。 この操作もラックの中にラックを作成します。 デバイスビューでは、括弧に挟まれた形でラックの内容が表示されます。ラックの中にラックがある場合、句読点や数式と同じように、対になった括弧の中にもう一対の括弧が表示されます。
デバイスのグループ化を解除するには、 ラックの タイトルバーを選択して、[編集]メニューまたはコンテキストメニューから [グループ解除] を選択します。
24.3 ラックの外観


- ラックは個別のビューを備えていて、必要に応じて表示/非表示を切り替えられます。 どのラックも左端に ビューの列 があり、ここにビューセレクターが備えられてます。 実際に選択できるビューセレクターは、どのインストゥルメント、ドラム、エフェクトのラックを使用しているかにより変化します。
- マクロコントロール
- チェーンリスト: Drum Rackでは、このビューにドラムチェーンとリターンチェーンの両方が含まれます。
- デバイス
- ラックの角はその内容を囲むように丸くなっていて、境界が分かりやすくなっています。 デバイスビューを表示している時は、ラックの階層がわかりやすくなるよう、この 閉じ括弧 が境界を明示しています。
- パッドビュー: Drum Rack 独自の機能です。
ラック全体を一度に移動、コピー、削除するには、ラックのタイトルバーを選択(ラックに含まれるデバイスのタイトルバーではありません)します。 選択すると、[編集]メニューの[名称変更]でラックの名前を変更することもできます。 また、ラックに対して独自のインフォテキストを入力することもできます。これを行うには、[編集]メニューやラックのコンテキストメニューから[インフォテキストを編集]を選択します。
ラックのビューすべてが非表示の場合、タイトルバーをビューの列に格納して、ラック全体をコンパクトにできます。 これは、ラックのタイトルバーをダブルクリックするか右クリックして[格納]を選択するのと同じ働きです。
ラック内で特定のデバイスを選択する場合、ショートカットを使用すると、ラック全体の内容から探す必要がなくなり便利です。デバイスビューのセレクターを右クリックすると、そのトラックのデバイスチェーンのリストを階層表示します。 リストから選択するだけで、Liveがそのデバイスを選択して画面に表示します。

24.4 チェーンリスト

信号がラックに入力されると、まず最初に通るのがチェーンリストです。 そのため、ここでチェーンリストについて説明します。
チェーンリストは、入力信号が分岐するポイントを示しています。それぞれの並列デバイスチェーンはここから始まり、リストの入口となります。 リストの下はドロップエリアになっています。ここにプリセット、デバイス、既存のチェーンをドラッグ&ドロップすると、新規チェーンを追加します。
なお、ラック、チェーン、デバイスは、ドラッグして他のラックに出し入れしたり、トラック間で自由に動かすことができます。 チェーンを選択したら、セッションビューまたはアレンジメントビューのトラックへドラッグすると、そのトラックにフォーカスが切り替わります。 デバイスビューが開くと、チェーンを所定の位置にドロップできます。
デバイスビューでは、デバイスチェーンが同時に1つしか表示しないため、チェーンリストをナビゲーションとして使用することもできます。 リストで選択したものが隣のデバイスビュー(有効な場合)に表示されます。 チェーンリスト内でコンピューターの上下矢印キーを使うと、表示するラックの内部をすばやく切り替えられます。
チェーンリストはチェーンの複数選択にも対応していて、チェーンの複製や整理、再グループ化に便利です。 この時、デバイスビューには現在選択しているチェーンの数が表示されます。
各チェーンには、それぞれのチェーン・アクティベーターと、ソロやホットスワップのボタンを備えています。 Instrument Rack、Drum Rack、Audio Effect Rack内のチェーンには、それぞれボリューム・スライダーとパン・スライダーを備えています。さらに、Drum RackのチェーンはセンドレベルとMIDIアサインのコントロールもあります。 Liveクリップと同様に、チェーン全体を保存したり、プリセット化してブラウザー上で呼び出すことができます。 チェーンにわかりやすく名前を付けるには、チェーンを選択して[編集]メニューの[名称変更]コマンドを選択します。 また、チェーンに対して独自のインフォテキストを入力することもできます。これを行うには、[編集]メニューまたはチェーンのコンテキストメニューから[インフォテキストを編集]を選択します。 コンテキストメニューにはカラーパレットがあり、チェーンの配色を任意に選択することができます。
24.4.1 自動選択

[自動選択]スイッチをオンにすると、現在信号を処理しているチェーンがチェーンリスト内で選択されるようになります。 この機能を使用すると、Drum Rackでは割り当てられたMIDIノートを受信した時にチェーンが選択されます。 インストゥルメントやエフェクトのラックでは、[自動選択]は、後述のゾーンと連動して動作し、 複雑な構成のラックをトラブルシューティングする時に役立ちます。
24.5 ゾーン
ゾーンとは、インストゥルメントやエフェクトのラック内で、各チェーンの入力段に備えられている一連のデータフィルターです。 これらを組み合わせることで、デバイスチェーンへ流すことのできる値の範囲を設定します。 デフォルトでは、ゾーンは目に見えないように動作しているため、ユーザーが注意する必要はありません。 しかし、これらを再構成することで、高度なコントロールの設定が行えます。 ゾーンには キー 、 ベロシティ 、 チェーンセレクト の3種類があり、チェーンリスト上部のボタンでそれぞれのエディターに切り替えることができます。 [Hide]ボタンは、すべてのエディターを非表示に切り替えます。
注:Audio Effect Rackは、キーゾーンとベロシティゾーンを備えていません。この2つはMIDIデータのみをフィルタリングするためです。 同様に、Drum Rackにはゾーンがありません。 Drum Rackはチェーンリスト内のセレクターに基づいて、MIDIノートをフィルタリングしています。
ゾーンは2つのセクションに分かれており、下側のメインセクションはゾーン自体のサイズ変更や移動に使用して、上側の細いセクションはフェード範囲の設定に使用します。 各セクションのサイズ変更は、セクションの左右の端をドラッグして行います。セクションの移動は、セクションの端以外の部分をドラッグして行います。
24.5.1 ゾーン内のシグナルフロー
ゾーンの働きを理解するために、MIDI Effect Rackでのシグナルフローを例に見ていきましょう。 MIDI Effect RackはMIDIトラックのデバイスチェーンにあり、MIDI信号を処理します。 仮に、このラックには並列デバイスチェーンが 4つ含まれ、各デバイスチェーンにはMIDIエフェクトが1つ置かれているとしましょう。
- トラック内のMIDIデータは、すべてデバイスチェーンを通過し、MIDI Effect Rackに入力されます。
- MIDI Effect Rackにはデバイスチェーンが 4つあり、すべてのチェーンが同じMIDIデータを同時に受信します。
- MIDIデータがデバイスチェーンへと入る前に、このチェーン内のすべてのゾーンを通過できる必要があります。 MIDI Effect Rackの各チェーンには、キー、ベロシティ、チェーンセレクトの3つのゾーンがあります。
- 入力されたMIDIノートは、チェーンのキーゾーンと比較されます。 このMIDIノートがキーゾーン内にあれば、次のゾーンへと移動して再び比較されます。 キーゾーン内になければ、このノートはチェーン内のデバイスへと移動しません。
- チェーンのベロシティゾーンとチェーンセレクトゾーンについても、同様に比較されます。 ノートが両方のゾーンの範囲内にあると、チェーン内で先頭にあるデバイスの入力へと送られます。
- すべての並列チェーンの出力がミックスされて、MIDI Effect Rackの最終的な出力となります。 トラックのデバイスチェーン内で、ラックの後段に別のデバイスが置かれている場合、このデバイスはラックの出力を受信して処理します。
24.5.2 キーゾーン

[Key]ボタンを選択すると、チェーンリストの右側にはキーゾーン・エディターが表示され、各チェーンがMIDIノートの全音域(ほぼ 11 オクターブ)にわたってどのようにマッピングされているかを示しています。 チェーンは、キーゾーン内にあるMIDIノートにのみ応答します。 個々のチェーンのゾーンはキーをいくつでも扱えるので、柔軟な「キーボードスプリット」の設定が可能です。
キーゾーンの[フェード範囲]は、チェーンに入力されるノートの ベロシティ を減衰します。
24.5.3 ベロシティゾーン

Instrument RackやMIDI Effect Rackの各チェーンにもベロシティゾーンが備えられ、MIDIノートオンのベロシティに反応する値の範囲を設定できます。
ベロシティゾーン・エディターを表示すると、チェーンリストの右側に表示されているキーゾーン・エディターはベロシティゾーン・エディターに切り替わります。 MIDIノートオンのベロシティは 1 から127 のスケールで示され、エディター上部に値の範囲が表示されます。 その他の機能についてはキーゾーン・エディターと同様です。
ベロシティゾーンの[フェード範囲]は、チェーンに入力されるノートのベロシティを減衰します。
24.5.4 チェーンセレクト・ゾーン

インストゥルメントやエフェクトのラックで[Chain]ボタンをオンにすると、チェーンセレクト・エディターが表示されます。 これらのラックにはチェーンセレクターゾーンがあり、パラメーターひとつでチェーンをフィルタリングできるようになります。 エディターには、ベロシティゾーン・エディターと似た 0-127 のスケールが備えられています。 値スケールの上には、「チェーンセレクター」と呼ばれる、ドラッグ可能なインジケーターが付いています。
他のゾーンと同様、チェーンセレクトゾーンもデータをフィルタリングします。ラック内にあるすべてのチェーンが入力信号を受信しますが、[チェーンセレクター]の現在値と重なったチェーンセレクトゾーンのチェーンだけが、信号を処理して出力します。
デフォルトでは、インストゥルメントやMIDIエフェクトのラックのチェーンセレクトゾーンは、ノートのみをフィルタリングして、入力されたその他のMIDIイベント(MIDI CCなど)はすべて無視します。 すべてのMIDIイベントをフィルタリングするには、ラックの[チェーンセレクト・ルーラー]のコンテキストメニューから[チェーンセレクタはMIDI Ctrlをフィルタ]を選択します。
MIDI Effect Rackでは、フェード範囲により、チェーンに入力されるノートのベロシティが減衰されます。 オーディオ信号を出力するInstrument RackとAudio Effect Rackでは、フェード範囲により、各チェーンが出力する音量が減衰されます。 それでは、現在サウンドを再生しているチェーンセレクトゾーンの外側に、チェーンセレクターが移動した場合はどうなるのでしょうか? ゾーンがフェード範囲内で終わる場合、このチェーンが出力する音量はゼロに減衰され、チェーンセレクターはゾーンの外側になります。 ゾーンにフェード範囲がない場合、出力する音量は減衰 されない ので、チェーンのエフェクト(長いリバーブテイルやディレイなど)はそれぞれの設定に沿ってフェードアウトします。
それではここで、ライブパフォーマンスの場でチェーンセレクトゾーンを活用する方法を見ていきましょう。
24.5.4.1 チェーンセレクトを使用してプリセットバンクを作成する

他のゾーンタイプと異なり、チェーンセレクトゾーンのデフォルトの長さは 1 で、デフォルト値は 0 になっています。 この場合、チェーンセレクト・エディターを使って「プリセットバンク」を簡単に作成することができます。
ここでも、例として 4 つのチェーンを持つラックを使用します。 各チェーンにはさまざまなエフェクトが含まれており、エフェクトからエフェクトへ切り替えて使用したいとします。 「ハンズオン」で操作できるよう、チェーンセレクターを外部コントロールサーフェスのエンコーダーにMIDIマッピングしておきます。
それでは、2番目と3番目のチェーンで、チェーンセレクトゾーンを移動して、各ゾーンの範囲が隣接するようにします。 最初のチェーンのゾーン値は 0 で、2番目のチェーンのゾーン値は 1、3番目のチェーンのゾーン値は 2、4番目のチェーンのゾーン値は 3 です。
それぞれのチェーンセレクトゾーンは固有の値を持つため、2つのゾーンが重なることはなく、チェーンセレクターの値(エディターの一番上に表示)と等しくなるの一度に1つのチェーンのみになります。 したがって、チェーンセレクターを動かすことで、どのチェーンが信号を処理するか決まります。 手でMIDIエンコーダーを動かすと、インストゥルメントまたはエフェクトの設定を簡単に切り替えることができます。
24.5.4.2 フェード範囲を使ったプリセットバンクのクロスフェード

前の例をさらに一歩進め、「プリセット」間を滑らかに移行させるためにチェーンセレクトゾーンを調整してみましょう。この操作には、ゾーンの [フェード範囲] を使用します。
フェードする余地を作るため、ゾーンの長さを少し伸ばしておきましょう。 上図のゾーン設定では、プリセットに対して独自の値が4つ設定されていて、それぞれに 1ヶ所ずつ、他のプリセットが聞こえなくなる部分があります。 プリセット間のクロスフェードは 8段階で行われるようにします。 使用する素材に対して 8段階のトランジションでは粗すぎる場合、ゾーンの位置を変更して、フェード範囲を最大に広げます。
24.6 Drum Rack
Drum Rackについてはすでに触れましたが、機能の多くはインストゥルメントやエフェクトのラックで見られるものと同じです。 しかし、Drum Rackのレイアウトは多少異なっていて、ドラムキットの作成に最適化した独自のコントロールを備え、動作も特化しています。

- ラック標準のセレクターに加え、Drum Rackにはビューの列に4つの追加コントロールを備えています。 これらは上から順に、入力/出力、センドとリターンのセクション、自動選択のスイッチです。
- 入力/出力セクション : [Recieve]セレクターで、入力されたMIDIノートにどのドラムチェーンが反応するか設定します。 このリストには、ノート名、MIDIノートナンバー、GM音源のドラム配列に相当するものが表示されます。 [Play]スライダーでは、チェーン内のデバイスへ出力するMIDIノートを設定します。 [Choke]セレクターでは、チェーンを 16のチョークグループのいずれかに設定できます。 同じチョークグループ内にあるチェーンは、トリガーされた時に他のチェーンをミュートします。 この機能は、クローズ・ハイハットをトリガーしてオープン・ハイハットをチョークさせる時などに役立ちます。 [Receive]セレクターで「All Notes」(すべてのノート)を選択した場合、[Play]と[Choke]セレクターは使用できなくなります。 この場合、チェーンは受信したノートをデバイスへと通過させるだけになります。 このセレクターの左側にある小さな[プレビューボタン]では、ノートをチェーン内へ送ることで、MIDIコントローラーからのマッピングを簡単に確認できます。
- ミキサーセクション : 他のタイプのラックに見られるミキサーやホットスワップのコントロールに加えて、Drum Rackはセンドのスライダーも備えています。 このスライダーでは、各ドラムチェーンからポストフェーダーでリターンチェーンへ送る信号の量を設定できます。 なお、リターンチェーンを作成しないと[Send]コントロールは使用できません。
- リターンチェーン :チェーンリストの下部に別のセクションとしてDrum Rackのリターンチェーンが表示されます。 オーディオエフェクトのチェーンは最大6つまで追加することができます。 上部にあるドラムチェーンのセンドスライダーで、これらのチェーンへ信号を送ります。
リターンチェーンにあるミキサーの[Audio To]セレクターでは、リターンチェーンの出力をラックのメイン出力やセットのリターントラックへ直接ルーティングできます。
24.6.1 パッドビュー

パッドビューはDrum Rack固有のビューで、サンプルやデバイスのマッピングと操作が簡単に行えます。 各パッドは、128 のMIDIノートのいずれかを示しています。 左側にあるパッドオーバービューでは、表示するパッドを 16 個のグループごとに上下します。ビューセレクターを目的の場所までドラッグするか、コンピューターの上下矢印キーを使用します。 また、 Alt (Win) / Cmd (Mac) を押しながらビューを1行ずつ移動させることもできます。
Liveのブラウザーに表示されている項目(サンプル、エフェクト、インストゥルメント、プリセット)のほとんどは、パッド上にドラッグすることが可能で、自動的にパッドのノートへマッピングされます。 必要に応じて、内部にチェーンやデバイスを作成したり再構成することができます。 たとえば、サンプルを空のパッドへドロップすると、Simplerを含んだ新しいチェーンを作成して、ドロップしたサンプルをパッドのノートで再生できます。 その後、オーディオエフェクトを同じパッドへドラッグすると、同じチェーン内でSimplerの後段に置かれます。 Simplerを置き換えるには、同じパッドに他のサンプルをドロップします。 後段にあるオーディオエフェクトや前段のMIDIエフェクトは変更されず、Simplerとサンプルのみ置き換えられます。
ブラウザーからアイテムをドラッグするだけでなく、ホットスワップを使ってパッドを埋めていくこともできます。 ホットスワップモードに入ったら D を押すと、ホットスワップの対象がDrum Rackそのものか直近に選択したパッド間で切り替わります。
サンプルを複数選択してパッドにドロップすると、新規Simplerとチェーンがこのパッドから半音階ずつ上がるようにマッピングされます。すでにこれらのパッドにアサインされているサンプルは置き換えられます(ただし、前述のようにエフェクトデバイスはそのまま残ります)。 Alt (Win) / Cmd (Mac) を押しながら複数選択してドラッグすると、入れ子になったInstrument Rackが作成され、ひとつのパッドにこのサンプルすべてがレイヤーされます。
あるパッドを別のパッドへドラッグすると、ノートのマッピングが入れ替わります。 つまり、MIDIクリップが入れ替わったノートをトリガーして、「間違った」サウンドを再生するようになります。しかし、これが望み通りのサウンドになる場合もあります。 Alt (Win) / Cmd (Mac) を押しながら、あるパッドを別のパッドへドラッグすると、Instrument Rackが入れ子になり、両方のパッドのチェーンがレイヤーされます。
チェーンリスト内部でのマッピングは、[Receive]セレクターを調整することでいつでも変更できます。 パッドビューの表示は、変更内容を反映して自動的に更新されます。 複数のチェーンに対して同じ[Receive]ノートを設定した場合、そのノートのパッドがすべてのチェーンをトリガーします。
入れ子になったラックを多数使用すると、内部構造が複雑になります。 パッドビューでは、表面に出ているノートとサウンドのみにフォーカスできるため、操作が簡単になります。 パッドは、チェーンではなくノートを表していると認識することが重要です。 さらに言えば、パッドはノートを受信できるチェーンすべてを示していて、ラックの階層の深さは関係ありません。 それぞれのパッドでコントロールできるものは、そのバッドにいくつのチェーンがあるによって異なります。
- 空のパッドには、そのパッドがトリガーするノートのみ表示されます。 マウスオーバーすると、ステータスバーにこのノートと推奨されるGM音源が表示されます。
- 1 つのチェーンのみをトリガーするパッドには、チェーンの名前が表示されます。 この場合、パッドは、通常チェーンリストで操作するさまざまなコントロール(ミュート、ソロ、プレビュー、ホットスワップなど)のフロントエンドとしても機能します。 また、パッドからチェーンの名称変更や削除が行えます。
- 複数のチェーンをトリガーするパッドは「Multi」の名前で表示され、ミュート、ソロ、プレビューボタンはパッドのチェーンすべてに影響します。 チェーンリスト内でチェーンを個別にミュートやソロにすると、パッドのアイコンにその状態が反映されます。 [Multi]パッドではホットスワップと名称変更を使用できませんが、パッドのチェーンすべてを一度に削除することはできます。
パッドビューは、編集とサウンドデザインが簡単に行えるよう設計されていますが、特にパッドを備えたコントロールサーフェスでトリガーする演奏のインターフェースとしても優れています。 お使いのパッドコントローラーが、Liveの ネイティブ対応しているコントロールサーフェス である場合、環境設定[Link, Tempo & MIDI]内でコントロールサーフェースを選択するだけで使用できます。 この設定を行うと、MIDIを受信するトラックにDrum Rackがあれば、お使いのパッドコントローラーで画面に表示されたパッドをトリガーできます。 パッドオーバービューをスクロールして、別の組み合わせのパッドを表示させると、コントローラーが自動的に更新されます。
24.7 マクロコントロールを使用する
ラックでは最大 16 個のマクロコントロールを使用できます。 新規ラックを作成すると、デフォルトでは 8 個のマクロコントロールノブが表示されます。 ビューセレクターの
と
ボタンを使用すると、表示するマクロコントロールの数を増減できます。 マクロコントロールの表示/非表示の状態は、Liveセット内に保存されます。

24.7.1 マップモード

マクロコントロールがラックの最も重要なパラメーター(もちろん、自分自身で設定できます)を受け継ぐことで、複雑なデバイスチェーンを構築する場合でも物事を管理しやすくなります。 マッピング設定を行うと、その他のラックは非表示に切り替わります。
マクロコントロールビューの[Map]ボタンをオンにすると、マップモードに切り替わります。 [マクロマップモード]をオンにすると、以下の 3 つのことが起こります。
- ラックのデバイスでマッピング可能なパラメーターすべてに、色付きのオーバーレイが表示されます。
- マクロコントロールの各ダイアルの下に[Map]ボタンが表示されます。
- マッピングブラウザー が開きます。
マッピングを開始するには、以下の手順で行います。
- [Map]モードのボタンをクリックし、マクロマップモードをオンにします。
- マッピングしたいデバイスパラメーターを1回クリックして選択します。
- マクロコントロールの[Map]ボタンをクリックすると、パラメーターがマッピングされます。 マッピングブラウザーにはその詳細設定が追加されます。 デフォルトでは、マクロコントロールの名前と単位が、コントロールするデバイスパラメーターから引き継がれます。
- 必要に応じて、マッピングブラウザーの[Min/Max]スライダーを使って値の範囲を調整します。 [Min]スライダーの値を[Max]スライダーの値よりも大きく設定すると、反転したマッピングを作成できます。 値の反転は、マッピングブラウザー内のエントリを右クリックして[範囲を反転]を選択しても行えます。
- さらにマッピングしたい場合は、別のデバイスパラメーターを選択します。 マクロマップモードを終了する場合は、[Map]ボタンをもう一度クリックします。
なお、マクロコントロールを割り当てると、そのデバイスパラメーターの制御をすべてマクロコントロールに明け渡すため(ただし、 クリップエンベロープ を使って外部からモジュレーションすることは可能)、デバイスパラメーターは無効として表示されます。
割り当てた項目の編集や削除は、マッピングブラウザー(マクロマップモードがオンの時のみ表示)を使って行えます。
ひとつのマクロコントロールに複数のパラメーターを割り当てている場合、コントロールの名前は一般的なマクロ名(例: Macro 3)に戻ります。 マクロコントロールの単位は、すべてのパラメーターが同じ単位でその範囲も同じ場合を除き、0 - 127 の段階に変わります。
マクロコントロールは、[編集]メニューやコンテキストメニューのコマンドを使用して、独自の名前や色を付けたりインフォテキストを編集できます。
24.7.2 マクロコントロールをランダマイズする
セットにサプライズ要素を加えたり、インスピレーションを得たい場合、マクロコントロールのランダマイズが便利なツールとなります。 ラックのタイトルバーにある[Rand]ボタンを押すと、ラック内にマッピングされたすべてのマクロコントロールの値をランダマイズできます。

素材によっては、一部のパラメーターのみをランダマイズし、その他のコントロールには変更を加えたくない場合があります。 ランダマイズの対象からマッピングしたマクロコントロールを除外するには、コンテキストメニューの[マクロをランダマイズから除外]を有効にします。 デフォルトでは、Instrument Rackプリセットの[Volume]パラメーターにアサインされているマクロコントロールは、ランダマイズの対象から除外されます。
24.7.3 マクロコントロール・バリエーション

さまざまな状態のマクロコントロールを、プリセット(バリエーション)として個別に保存できます。 たとえば、サウンドデザインのセッション中にラックの状態を「スナップショット」としてキャプチャしたい場合や、Audio Effect Rack内でミキシング向けにマッピングしたマクロコントロールをさまざまな設定にして試聴する場合などに便利です。 また、このバリエーションを使用すると、ビルドやドロップを作成したり、録音や演奏の間に別のマクロコントロール設定へ即座に切り替えることができます。
ビューセレクターで[マクロコントロールバリエーションを表示/非表示]ボタンをクリックすると、マクロコントロールのバリエーションを保存、管理、起動できるビューが開きます。

[New]ボタンを押すと、ラックのマクロコントロールの現在の状態が新規バリエーションとして保存されます。 デフォルトでは、保存するバリエーションには「バリエーション 1」「バリエーション 2」と順番に名前が付けられます。 選択したマクロコントロール・バリエーションは、[編集]メニューやコンテキストメニューのコマンドから、名称変更、複製、削除が行えます。
マクロコントロール・バリエーションは、右側の[マクロコントロール・バリエーションを起動]ボタンで保存した状態を呼び出したり、左側の[マクロコントロール・バリエーションを上書き]ボタンで上書き保存できます。 なお、コンテキストメニューで[マクロをバリエーションから除外]を選択すると、別のマクロコントロール・バリエーションを起動したときに、マクロコントロールが変化しないようにもできます。 このコンテキストメニューの項目をオフにすると、再びそのコントロールが変化するようになります。
24.8 ラックを使用してミキシングする
インストゥルメントや 1つ以上のチェーンを含むDrum Rackは、セッションビューのミキサーのトラックと並べて表示してミキシングできます。 これらのラックを含むトラックには、タイトルバーに
ボタンが表示され、ラックのミキサーを折りたたみ/展開できます。 同様に、ラック内部で入れ子になっているチェーンもこのボタンを備えています。 これにより、ラック階層の全体像をつかむことが簡単になります。ミキシングだけを行う際は、非表示にすることもできます。

セッションビューのミキサー内にあるチェーンは、トラックと似た外観ですが、クリップスロットはありません。 ミキシングやルーティングのコントロールは、ラックのチェーンリスト内にあるコントロールをミラーリングしています。 そのため、チェーンリスト内のコントロールを変更すると、即座にミキサー上のコントロールにも反映されます。 同様に、並び替え、名称変更、再グループ化といったチェーン操作は、ミキサーやチェーンリストのどちらからも行えます。 チェーンのミキサーのタイトルバーをクリックすると、デバイスビューにはこのチェーンのデバイスのみが表示されます。
トラックと同様に、セッションビューのミキサーでチェーンを複数選択している時、いずれかのチェーンでミキサーのパラメーターを調整すると、他に選択しているチェーンの同じパラメーターも調整されます。 なお、この動作はセッションのミキサーからパラメーターを調整する場合にのみ有効です。 ラックのチェーンリスト内で同じパラメーターを調整しても、他のパラメーターには適用されません。
24.8.1 チェーンを抜き出す
すべてのチェーンは、その親ラックからドラッグすると、チェーンリストやセッションビューのミキサーから別のトラックやラックへ置くことができます。 Drum Rackのリターンチェーンは抜き出すことも可能で、ミキサーへドラッグした場合は新規リターントラックが作成されます。 ドラムチェーンには追加機能があり、ミキサーから新規トラックへドラッグすると、MIDIノートも一緒にドラッグされます。 たとえば、1つのトラック内でMIDIのドラムループを使用していて、このループのスネアだけを独立したトラックへ移動したい場合、ミキサー内でスネアのチェーンのタイトルバーを選択し、ミキサーのドロップエリアへドラッグします。 これで、スネアのチェーンのデバイスとMIDIデータの両方を含んだ新規トラックが作成されます。 デバイスのみを抜き出したい場合、ミキサーからではなくチェーンリストからドラッグします。
