Learn about different artists and how they're using Live.

David Rothenberg:虫の音楽

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David Rothenberg:虫の音楽

Abletonコミュニティには、個性的なミュージシャンがたくさんいます。しかし、ジャズ・ミュージシャン、環境哲学者、教員、作家として活躍するDavid Rothenbergほどバラエティ豊かな肩書きを持つアーティストは珍しいかもしれません。Davidの著書「Bug Music(虫の音楽)」は、虫が発する音とリズムが人間に与えてきた影響を年代順に追ったものです。この特集記事では、Davidの視点と経験を彼自身に語ってもらいました。 これまでに、サヨナキドリ、マネシツグミ、シロイルカ、ザトウクジラとデュエットしてきましたが、虫との演奏はなかなか大変でした。セミの大群に対して人間はただひとり、数万匹の虫がドローンやシンセのようなうねりを生み出しているなかで人間の出す音はひとつだけです。うまく溶け込む方法を見つけようと試みています。 こちらは、イリノイ州スプリングフィールド湖でジュウサンネンゼミの大群とジャミングしようとしているところです。ジュウサンネンゼミは13年に1回大発生するのですが、逃すことのできない機会だと思いました。シャツの中にも多数の虫が入ってきて、シャツを着てても着てなくても関係ないような感じでした。その日の夜のアーバナでのコンサートに数匹を連れて行ってバンドに参加してもらいました。 Ableton Liveは、自然界の音のサンプリングやミックス作業にだけでなく、動物の発する音のスピードを上げ下げしたり、リズムに対する動物の自然なアプローチに手を加えることでどのように人間の耳に聞き取りやすい音になるかを研究したい科学者にとっても非常に便利です。たとえばこのジュウサンネンゼミは、一匹一匹はシンプルな「ジー」という音を出しますが、数万匹が同時に音を発すると、森中に響き渡るドローンとなります。私は、根気よく一匹ずつ鳴き声をマイクに収め、不均等にカスケードさせたグレインディレイをかけることでこれを再現しました。 鳥やクジラよりずっと前から、虫の鳴き声は、人間を楽しませ、人間の作る音楽にインスピレーションを与えてきました。現在まで続く人間のリズムやパターンといった概念やノイズへの興味はここから始まっているのかもしれません。バグ(虫)ステップがなかったら、ダブステップは存在しなかったかもしれません! 小さなカンタンたちが鳴き声を合わせるのは、彼らの脳のニューロンが「近くにいる別のカンタンの鳴き声を聞いたら、それに合わせて自分の声を少しだけずらす」という、たったひとつの音楽的ルールしか知らないからです。泣き声が揃ってしばらくすると、森中のカンタンが一緒に鳴き声を上げます。VJ Manzoの力を借りて、このシンプルな同期のアイデアを音楽ツールに変えてしまうMax for Liveパッチを開発しました。どうぞお試しください。 Cricket Sync for Max for Liveをダウンロード パッチを開いた状態で虫のトラックをひとつずつリセットすることで、カンタンの鳴き声を合わせたりばらばらにしたりでき、実際の虫たちのリズムを再現することができます。 自然界で生まれるこのようなリズムには、人の心を捉える何かがあると思います。それらは、協和音と不協和音、明瞭と不明瞭、音楽と雑音(ノイズ)の間を行き来するものです。しかしノイズとはいったい何でしょう?ときには耳にしたくない音を指し、またときには人々の心をつかんで離さない音響効果のことを指します。人間のノイズへの興味は、虫の鳴き声が生み出す音風景(サウンドスケープ)に対して私たちの祖先が抱いてきた思慕から来るのではないかと考えています。虫の鳴き声にインスピレーションを得て作られた音楽は、世界各地にたくさんあります。 「モンキーチャント」とも呼ばれる有名なバリの伝統合唱ケチャは、鳴き声を合わせるカンタンや、Max for LiveパッチInsect Syncと同じ仕組みです。 アフリカの熱帯雨林に住むピグミーは、ある種完全な音響の自然環境で、虫、カエル、鳥の鳴き声に合わせて歌うことで知られています。これこそ、ベルリンで制作作業を進めていた最新映画「Song From the Forest」のテーマです。 虫と演奏するのは、ジョークでも、人目を引くための手でもありません。音楽として感じることのできる範囲を広げるために行っているのです。イリノイでの初挑戦の後、あれほどのセミの大群のなかで演奏するのは賢明でないことは学びました。とはいえ、数百万匹がいたというわけではなく、周辺の木に止まっている数十万匹だったのですが。少なく見えるかもしれませんが、音はよく聞こえます。こちらは去年の夏、ニューヨーク州ニューパルツのハドソンバレーでのジュウシチネンゼミ大発生時のものです。 考えてみてください。このセミは、17年に1回だけ(種類によっては13年に1回のものもあります)、このような大群として私たちの目の前に現れるのです。この現象も、非常に長期にわたって同期されたビートのようなものです。人間が合わせて踊るには遅すぎますが、セミには可能なのでしょう。17年の間地下で生き続け、地上にはい上がる力を蓄え、わずか数週間の間に、歌い、飛び、つがい、死ぬのです。 フィールドでのライブパフォーマンスとスタジオ制作の内容をアルバムにまとめようという段階になって、虫の鳴き声にインスパイアされたまったく新しい領域の調性に興味を持ちました。私のアルバム「Bug Music」のラストの曲が示すような、エレクトロニック・ミュージックにおける現在のトレンドに関わることになったのは驚きでした。 今年はヨーロッパや全米ですばらしいミュージシャンである虫たちについて講演しています。このテーマに関する本も執筆しました。エレクトロニック・ミュージックと、数百万年にわたって人々の耳に届いている虫の鳴き声との関係についての章もあります。 こちらは、友人であるノルウェーのMungolian Jetsetが、グリッチと虫について歌った歌詞の付いたチューンを披露しています。 そしてこちらは、聖書に記された災害にインスピレーションを得たコンピレーションCDにImogen Heapが提供した作品で、虫の鳴き声のサンプルが多数使用されています。 虫の鳴き声にインスパイアされた作品や虫の鳴き声を使用した作品の一覧は、Spotifyでお聞きいただけます。 私たちは、ジョン・ケージが予言した時代を生きています。ミュージシャンはサウンド自体から直接音楽を作るようになり、音楽を聴くことは私たちが想像もしなかったような美しいサウンドを聞くことへと変化しました。小さな生き物がジャミングするサウンドに着目し、増幅することで、あらゆる種類の魔法が可能になるのです。次に私たちにインスピレーションを与えてくれるのはどんな生き物でしょうか?私は今、4台の4枚羽のドローンと演奏する準備を進めています。なんと話ができるドローンなのです… www.davidrothenberg.net www.bugmusicbook.com David本人が登場するイベント: 2月22日 Wie-Kultur, Berlin 3月7日 Emerge, Phoenix, アリゾナ州フェニックス 3月22日...

Neil Rolnick: A Sampler For The Ages

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Neil Rolnick: A Sampler For The Ages

Darius MilhaudとJohn Adamsの元で作曲を、(FMシンセシスを発明した)John Chowingの元でコンピューター音楽を学び、パリの(MaxMSPを生んだ)IRCAMでPierre Bouezと共に研究者として勤務したNeil Rolnickは、20世紀の近代音楽の多様な潮流に精通した人物だ。しかしながら、学問の世界に30年以上携わってきたRolnickの作曲とテクノロジーに対する見方は、学問的とはほど遠い。実験精神に溢れ生き生きとした彼の音楽は、時に極めて複雑ながらも決して威圧的ではなく、むしろとっつきやすくメロディックで(あえて言ってしまうと!?)口ずさめるほどだ。 音楽パフォーマンスにコンピューターを用いた最初の(70年代後半)一人であるRolnickは、デジタル・サンプリング、インタラクティブ・マルチメディア、ヴォーカル、室内・オーケストラ作品といった分野を網羅し、常に技術的に洗練された手法と、人間的要素のバランスを保ち続けてきた。多くの場合、彼の作品には生楽器、即興演奏、不変のリズム、そしてミュージシャンとマシンのリアルタイムな相互作用が含まれている。 多忙なNeil Rolnickと話す機会を得た私たちは、彼の作曲家、教師、技術者としての進化について聞いた。 あなたのキャリアを考えると、その間に音楽テクノロジーは劇的な変化を遂げました。ハードウエアからソフトウエアへの移行がもたらした、あなたの考える良い点と悪い点とは何ですか? まず最初の問題として、私は技術進歩の賛否を理論化することは非生産的だと思います。実践的な観点では、色んなことが変わった、それに合わせて自分も変わるか、置いていかれるか、のどちらかしかありません。 とはいえ、そこには双方のバランスを取る方法もあります。ソフトウエア・ツールは操作性という面で、BuchlaやMoogといったアナログ・シンセサイザーで8あるいは16ステップのシーケンスを組んでいた、あるいはテープ・ループを使って作曲していた1970年代前半には想像もつかなかったような、ある種の音楽的能力と柔軟性をもたらしてくれました。70年代後半にStanfordやIRCAMでリアルタイムではないコンピューター・シンセシスを使っていた頃と比較してもです。1980年代に「A Robert Johnson Sampler」を作曲した頃でさえ、各5~15秒しかサンプルを保存出来ませんでしたから… 個別のフレーズをサンプルし、ループするのが精一杯だったのです。それと比較すると、現在出来ることの可能性は規模が違います。作り手は、テクノロジーの可能性を越えて、それをさらに押し広げるような想像力を持たなければならなくなりました。 しかしその一方で、全てがソフトウエアに移行したことで、音楽制作は物理的な触れ合いをほとんど必要としなくなりました。再生ボタンを押すことは実に簡単です。でも、少なくとも私にとっては、音楽作りに身体的な関わりを持たなくなったことで何かが失われてしまった。ですから、私は全ての作品において、私自身が音楽に集中しそれを感じてプレイしなければいけない状態を作るようにしています。現在、ピアノとコンピューターのための新しい作品を作っているところで、二週間ほどで公開される予定になっていますが、毎日何時間も自分のパートを練習しています。まるで生楽器を演奏するかのように。アナログ時代は、同じようにケーブルやノブを使ってモジュラー・シンセを生演奏するために練習しなければなりませんでしたから。でも現在は、あえて自分にそれを課しているのです。 あなたの作品、「A Robert Johnson Sampler」がプラットフォームからプラットフォームへと’ポーティング’しても、本質的には同じままを保っているのはどうしてですか? 「A Robert Johnson Sampler」が、音楽的に、1987年と同じままを保っているという見方は興味深いですね。それは、私の音楽の作り方と関係しています。原則的に、私は作品のサウンドとアイディアを先に考えます。それをエレクトロニクスを使って実現するか、あるいは生楽器の演奏家のために書き出すかを考えることは、また別の作業です。確かに実演方法を考案している間に曲自体に対する考え方が変化することはあり得ますが… 曲自体はそのままです。ですから、実演方法が進化しても曲の聞こえ方が大きく変わっていないということは、新たなテクノロジーを起用しても、自分がやりたいことを達成できる段階まで使いこなせているということになります。新しい可能性を開拓するためにテクノロジーを試すことは、新しい作品を作る際にやることが多いですね… そして私はそれをやり続けている。 もともと「A Robert Johnson Sampler」を制作したMac Plus上のOpCodeシーケンサーとハードウエア・シンセとサンプラーという構成から、現在のLiveへのポーティングは、自分に自分が求めるサウンドを実現するにはどうしたらいいか、パフォーマンスに必要な相互作用を作り出すにはどうしたらいいか、を問う作業でした。最近になって、コントローラーとしてiPad上でLemurを使用し始めました。これによって、あらかじめデザインされたインターフェースに限定されることなく、パフォーマンスに必要不可欠な身体的な要素を持たせながら、それぞれの曲に最適なインターフェースをその場でイメージし直し、様々な音の可能性を模索することが出来ます。 あなたは先日、常勤の教師の仕事を退職されました。持てる時間を全て作曲に費やせるようになった今の心境はいかがですか? はい、確かに私は32年間務めたRensselaer Polytechnic Instituteの学部の仕事を終えました。でも実のところ、これまでもほぼフルタイムで作曲も行っていたのです… だからこそ、その間CD17枚分に及ぶ音楽を発表することが出来ました。それに、私の教育に対する姿勢は、生徒に生計を立てたり、家族や人間関係を築いたり、世の中に自分の居場所を見つけたりといった無数の層から成る日常生活の中で、いかに音楽制作に集中すればよいかを伝授することでした。自分自身がそれを実践していないと、人に教えることは出来ません。私が教えた音楽的・技術的なスキルは、アーティストとして生きること、アートまたは音楽を通していかに自分の言いたいことを伝えるかというより大きな課題への道筋でしかないのです。 とはいえ、大学の官僚主義からやっと解放された気分はとても爽快ですね。今でも朝6時に起きて作曲を開始し、複数のプロジェクトに関わっています。 それ以外では、自分の好きな音楽をマッシュアップするパフォーマンスを、現在のテクノロジーを使って実現する方法を模索し始めました。夏の間に、私が10歳か11歳の頃に初めて所有したLPの1枚だった、Everly Brothersの曲を二つ使ったマッシュアップ曲を作りました。これを8月からコンサートで演奏していますが、観客からの反響はとても良いです。この形態、あるいはアプローチは、私が1980年代後半から1990年代前半に特に集中的に従事していた、コンピューターの音楽制作方法でした。20年近く経ってから、またこの手法に戻って来ることは、とても興味深くエキサイティングでしたね… それに、自分が20年前よりもずっとしっかりと説得力を持ってコンピューターによるパフォーマンスが出来るようになったことを実感しました。それに、私の音楽、サンプリング、マッシュアップに対する考え方も確実に進歩しました。 それ以外では、現在はどんなことに携わっているんですか? 昨年の10月に、バイオリニストのTodd ReynoldsとAlan Piersonが指揮するAlarm Will Soundのメンバーたち、Nicole Paiementが指揮するサンフランシスコ音楽大学のNew Music Ensembleを迎えて作った新しいCD、『Gardening...

クリエイティビティに関する長編ドキュメンタリーをストリーミングで - ブライアン・イーノ、エリカ・バドゥ、リー・スクラッチ・ペリーなど

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クリエイティビティに関する長編ドキュメンタリーをストリーミングで - ブライアン・イーノ、エリカ・バドゥ、リー・スクラッチ・ペリーなど

音楽とは?音楽を生み出すインスピレーションとは?これらは結論の出ない問いであり、しばしば構造を持たない反応を引き出します。これほどまでに広範で魂を伴うものには、正しい答えも間違った答えも存在しません。 ニューヨークのRed Bull Music Academyの最新エディションで、クリエイティビティ豊かなベルリンのMindpirates所属の映像作家たちが有名アーティストへのインタビューを企画しました。こうして生まれたのが、長編ドキュメンタリー「What Difference Does It Make: A Film About Making Music(何が違うのか:音楽についての映画)」です。この映画には、Academyのイベント映像がちりばめられたブライアン・イーノ、エリカ・バドゥ、リー・スクラッチ・ペリー、ジョルジオ・モルダーなどのアーティストの核心に迫ったインタビューが収録されています。 RBMAはこの映像をストリーミング公開しています。下のリンクからご覧ください。 CDMのインタビューではメイキングの様子について知ることができます。

Deferlow、ベースギターとLiveでオウテカとチャネリング

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Deferlow、ベースギターとLiveでオウテカとチャネリング

オウテカのマシンミュージックの名作「Cichli」にインスピレーションを受けたDeferlow(Abletonオースティン・ユーザー・グループのメンバーNate Crepeault)は、ベースギターのサウンドを使用した作品をリアルタイムで演奏しています。エレクトロアコースティックの解釈が展開される様子をその耳と目でご確認ください。

Borderland: Time Changes

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Borderland: Time Changes

Juan AtkinsとMoritz von Oswaldは共に、私たちがその後テクノとして認識することになった音楽を定義づけ、その可能性を広げる上で決定的な役割を果たしました。デトロイトとベルリンという、それぞれのホームタウンである二つの点を線で繋ぎ、彼らは3MBという名義で1993年に初めて共同制作をしています。それ以降、彼らは不朽の名作の数々を生み出してきました ― von OswaldはBaric Chennel、Maurizio、Ryhthm & Soundとして、Atkinsは個人名義及びModel 500として。彼らの新たなコラボレーション・プロジェクト、Borderland(エンジニアとしてMoritzの甥っ子であるLaurensも参加)は、まるで繊細な形状、空間、緊張感、テクスチャーが描き出す風景の中を、地中から響くベースとキックドラムの鼓動に押されて進んでいく、ひとつのトリップのようです。 私たちが昨年開催されたAtonal Festivalで映像に収めた彼らのパフォーマンスを、下のリンクからお楽しみ頂けます。さらに、彼ら3名のメンバー全員と、過去、現在、未来の音楽の作り方について話をしました。 Laurens von Oswald Borderlandのステージでは、あなたはミキシング・ボードとエフェクトを担当していました。スタジオ内でも同じ役割を担っていたのですか? 基本的にはそうです。私たちは、ステージ上でもスタジオ内でも、過去の手法をモダンなアプローチで採用しています ―― 要するに、ミキシング・ボードを重要な楽器のひとつとして捉えるということです。JuanとMoritzが演奏するシークエンスや楽器の音を処理し、最終的なミックスとして送り出すことが私の主な役割です。通常であれば会場のミキシング・エンジニアが担うことなので、少し変わったやり方ではありますが、私たちのやり方には通常とは異なる相互作用があるのです。 楽器としてのミキシング・ボード ―― この考え方には独自の伝統があります。ダブもテクノも、この考えから生まれたもの。Borderlandの他の二人のメンバーは、この両方の分野でよく知られた存在ですが、あなた自身の役割は、その伝統を受け継ぐことか、それとも脱却することだとお考えですか? 基本的には、私たちはライブをなるべくスタジオでのセッションに近づけることを重要視していました。それと同時に、それらは全く別物であるということも意識しなければいけませんでした。一定のテーマが流れるのに沿って、その場でそれに適したアイディアをプロデュースしていくこと。Borderlandの曲は、シークエンス、リズム、モチーフを丁寧に作り上げていく長いプロダクション・セッションによって出来ています。MoritzとJuanにとっては慣れたやり方で、おそらくModel 500の「Sonic Sunset」や「Starlight」も同じように作られたことでしょう。でもこのプロジェクトに関しては、お互いの最大公約数を見つけることが必要でした。ですから、伝統は確かにありますが ―― 脱却している部分もありますね。 L-R: Juan Atkins, Laurens von Oswald, Moritz von Oswald. Photo...

Hiawatha Blue:James Patrickと生徒たちによるコラボレーティブ・アルバム

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Hiawatha Blue:James Patrickと生徒たちによるコラボレーティブ・アルバム

長年にわたって、認定トレーナーJames Patrickは「ブルー・ライン」として知られるミネアポリスのハイアワサ・ライトレール・ラインを利用してきました。Institute of Production and Recording(IPR)の生徒とともに、Jamesは、ブルー・ラインのさまざまな駅で録られたフィールド録音をベースとするコラボレーティブ・アルバム「Hiawatha Blue」を構想しました。このアルバムは、現在無償でダウンロード可能です。Abletonは、この意欲的なプロジェクトについてJamesに話を聞きました。 「Hiawatha Blue」は、初めから生徒たちとのコラボレーティブなプロジェクトとして生まれたものだったのでしょうか? はい。中間試験の期間中、変化をもたらすにはどうしたらよいか考えていて、思いつきました。近々IPRを去ることが決まっていたので、在任の記念となる足跡を残したいと思いました。また、生徒たちからはとてつもないポジティブなエネルギーをいつも感じていました。このエネルギーこそが私の推進力と動力です。彼らのサウンドへの愛、それがエネルギーです。 フィールド録音で特に印象に残ったものはありますか? もちろんあります。ダウンタウンのファーマーズ・マーケットでは、口の悪い生粋の市民の議論する声や、彼らの腕の中で大声で泣いている子供たちの声を録音しました。バスや電車にいるドラッグ中毒者たちの目には、ブームマイクを担いで歩き回る19歳が奇妙に映ったことでしょう。ほとんど凍り付いた滝をよじ登って、端からほとばしる滴のサウンドを捉えたことや、テンポ変更やハーモニー間の遷移用に、アンビエントなメヌエットを構築したのも印象的でした。風や自然は、無調でありながら美しいソノリティにぴったりです。 アルバムの作曲プロセスにおけるあなたの役割はどのようなものでしたか? プロジェクトの全体的なコンセプトを生徒の手を借りながら構築しました。その後、実際の「アルバム」に含める重要なファクターを検討していきました。まず、私たちが着目したい、サウンドと音楽の世界における変化について考えることから始めました。私にとって、大きな不満は「アルバムの死」です。皆も賛成してくれたので、まとまりとしてアルバムという形態を採ろうということになりました。(ピンク・フロイドの)「狂気」といったアルバムに、私たちは皆、心を動かされたものでした。個々のトラックだけでは、あのような音楽体験を得ることはできなかったでしょう。そこで、この問題を解決しようと考えたのです。まず、各人の音楽スタイルとアーティストとしての方向性を挙げました。その後、それらを並び替え、このコンセプト・アルバムの全体的なイメージについて考えました。心をつかむアーク(物語の横糸)を構築し、ライト・レール・システムのマップに沿って並べていきました。そして、各生徒に駅を割り当て、カメラ、フィールド・レコーダーなど必要な機材を提供しました。 次に、プロジェクトの残り6週間の計画を立てました。ある生徒がこんなことを言ったのを覚えています。「1曲に6週間も?退屈!」私は笑ってしまいました。この彼の名誉のために話しておくと、最終的に彼は2作品とウェブサイトを作成し、プロジェクトのアシスタント・プロデューサーにもなりました。 それから、私はSSL 4000G+と最高のミックス/マスタリング・エンジニアBrian Jacobyをブッキングしました。結局、2週間を作曲と制作に、1週間を最終的な調整とグループ内のフィードバックに、1週間をミキシングに、1週間をマスタリングに、そして最後の週をA/Vパフォーマンスの組立に割り当てました。 公共の交通機関で移動中に聴いているお気に入りの音楽があれば教えていただけますか?「Hiawatha Blue」以外で何かありますか? そうですね。 アコースティックなら、 エリック・サティの「ジムノペディ」、ヤン・ティルセンの「アメリ」サウンドトラック。 エレクトロニックなら、 Rain Dogの「Two Words」、ISHOMEのすべての作品です。 Hiawatha Blueについての詳細とダウンロード

Input/Output: Holly Herndon

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Input/Output: Holly Herndon

これからお届けする新シリーズInput/Outputの第一弾として、私たちが大好きなアーティストの一人に、彼女の最新プロダクションに寄与したインスピレーション、テクニック、テクノロジーについて話を聞きました。 私たちは、2012年のデビュー・アルバム発表時から、Holly Herndonの様々な活動に注目してきました。『Movement』は、挑戦的なヴォーカルのテクスチャーと力強く官能的なリズムを、丁寧に紡ぎ合わせ、緻密でいながらフレッシュなサウンドに仕上げた作品です。過去2年間に渡り、Hollyは数えきれないライブをこなし、管弦楽団、ロボット・バレエ、電気自動車のための作曲をしながら、スタンフォード大学にてコンピューター音楽の博士号を取得すべく研究を続けてきました。これらの活動については、今後追って詳しく紹介していきますが、ここでは私たちをわくわくさせてくれた、彼女の最新作「Chorus」をご紹介します。下のリンクからビデオをご覧の上、この作品についての彼女との簡単なインタビューをお楽しみ下さい。 デビュー・アルバム『Movement』で、あなたは既にヴォーカルをとても巧みに使用していましたが、この新作においてもヴォーカルが中心的な役割を果たしています。まず、「Chorus」で使用されている声は全てあなた自身のものですか?そうだとしたら、それらは全て同じような状況で録音されたのでしょうか? 「Chorus」に使用されている声は、いくつかの異なるソースから取得したものです。オンライン・ブラウジング、合成、自分の声を加工したもの、サンプルなどで、全て私のラップトップを通して録音されています。私が使用したシステムは、サンフランシスコのアーティストMat Dryhurstがデザインしたもので、彼とはよくコラボレーションもしています。私のオンライン・ブラウジングをスパイするように設計されていて、その音源をサンプルし、混ぜ合わせるんです。要するに、私のブラウザーを通して取得される音源の最高振幅を分析し、それによって様々な音源間の意外な相互作用をトリガーするのです。これをヴォーカルだけでなく、ほとんどのサウンド・デザインに使用しました。 「Chorus」はかなりのエディットとアレンジを要したかと思いますが、その制作手法を説明してもらえますか? この曲は、恐らく私が今まで作ったものの中でも最も凝ったエディットを施した作品でしょう。私は何時間にも及ぶブラウジングを録音し、加工を施し、それを録音し直し、作曲するようにエディットしていきました。結局使わなかった音源が、まだ山のようにあります。 トラックの骨格部分 ― 合唱部分のコード進行、ベースライン、そしてコーラス自体 ― は2012年の夏に作ったものです。これを、『Movement』のツアーを回っていた際のライブセットでダンス・ジャム・トラックとして、ヴォーカル・シンセのパートを、私のラップトップ・プロセッサーより発生された電気フィードバックにマッピングしたジェスチャーコントロールによって生演奏しました。たくさんの人に、この曲はいつリリースされるのかと聞かれたので、曲として仕上げることにしました。 私はMax for Liveを使用して、ハードドライブ上にマイクの振幅エンベロープをマッピングしています。これは、楽器、エフェクトなど、あらゆるものマッピングに使用することが出来ます。私はスタジオでもときどき使用しています。Conrad Shawcrossとのコラボレーション、Ada Projectでのサウンド・デザインのレコーディングにも使用しました。 それとは対照的に、12インチのB面収録の「Solo Voice」は、所定のパラメータの範囲で突発的かつ即興的に作られた印象を受けます。この曲はどのように制作されたのですか? この曲は、Daniel Pearlの追悼式のために作曲しました。この式では、Verdiの『四季』の楽章のひとつの間に”微気候”を演奏して欲しいと言われたんですが、このような行事で何をすればいいのか、全く分かりませんでした。故人の家族も参列していて、会場は美しい大聖堂でした。私はひとつの声から派生するプロセスによって構成される曲、「Breathe」と似たアプローチの曲を作りたいと思い、それを声ではなくひとつの音色でやってみたものです。 これが、私のライブ・パフォーマンスの導入としてぴったりだということに気づき、ライブセットに組み込むことにしました。最初にこの曲を演奏することによって、私がどんなことをやるのか、それをもっとも削ぎ落とした形で表現しているので、お客さんに理解してもらい易いと思います。 この曲は、Mark Pistellと共にスタジオに入り、ワンテイクで録音されました。ですから、そうですね、この二曲の制作方法は大きく異なります。実はこの曲のパフォーマンスに使用するシステムを開発するのにはとても長い時間がかかったのですが、パフォーマンスそのものはかなりシンプルです。 「Chorus」のビデオは、ラップトップを中心に置いた、あなたのデスクトップが焦点となっています。デジタル音楽やデザイン、執筆といった仕事に携わっているたくさんの人たちには馴染み深い光景です。こうした日常的な光景が抽象化されていく映像のイメージと、人の声が加工され極めて人工的な音響空間に配置されている楽曲との間には、重なる部分があるのでしょうか? はい、重なります。私はラップトップとの親密性をひとつの問題意識として扱ってきており、それは間違いなく『Movement』のテーマのひとつでした。『Movement』では、私はデジタル音楽の中に肉体的なものを見出すべく、人の声を使用したわけですが、「Chorus」では自分のツール/環境としての、デジタルとの親密性にフォーカスしました。特に、最近のNSA(米国国家安全保障局)の活動と個人のプライバシーの問題を考えると、さらに示唆的であるといえるでしょう。私はときどき、「私のラップトップは私以上に私のことを知っている」と言っているんですが、それを誰かが監視していると考えるとちょっと恐ろしいですよね。 Hollyについてさらに詳しく 「Chorus」についてさらに詳しく

Minilogue:スタジオ・ジャム

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Minilogue:スタジオ・ジャム

スタジオでのMinilogue Abletonはスウェーデン人デュオMinilogueのクリエイティブ・ プロセスとスタジオ・ セットアップを紹介する特集記事を掲載しました。マルメ郊外の手つかずの自然に囲まれたスタジオにMinilogueを訪ねた際、彼らは「The Island of If」と、「swansong」 EP ( Cocoon)のスタジオ制作中でした。下のビデオでは、スタジオ・セッションから生まれた未収録の23分にわたるジャミング風景をご覧いただけます。 このビデオを取りあげていただいたFACT Magazineのスタッフの皆様ありがとうございました。 次のドキュメンタリー特集で、Minilogueについてさらに詳しく: Minilogue: 限りなくヒューマン Minilogue: セットアップ

Minilogue:セットアップ

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Minilogue:セットアップ

Minilogueにとって、エモーショナルかつ精神的な秩序は、作曲プロセスにおいて欠かせない役割を果たしています。スウェーデン・マルメ郊外の穏やかな自然に囲まれたスタジオで、Sebastian MullaertとMarkus Henrikssonからなるデュオは、みずみずしく進化するテクノをさまざまなハードウェアとソフトウェアを駆使して作曲していますが、そのセットアップの中心をなすのがLiveです。下のビデオでは、SebastianがMinilogueのテクノロジーについて簡単に説明しています。 Minilogueについてさらに詳しく知りたいなら、Minilogueのクリエイティブ・プロセスや影響について詳しく説明したビデオをご覧ください。 スタジオ・テクノロジーの拡張をお考えですか?Pushについて詳しくはこちらから。 この記事をFacebookでシェア

Minilogue:限りなくヒューマン

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Minilogue:限りなくヒューマン

Minilogueの音楽は、エモーションと目的に突き動かされている ― 最新アルバム「Blomma」のリスナーは、美しくダイナミックなディレクションの贅沢な時間(なかには45分を越えるトラックも!)に遭遇することになるでしょう。スウェーデン・マルメの郊外にあるSebastian MullaertとMarkus Henrikssonのスタジオに招かれたAbletonは、彼らのコラボレーションとスタジオでの制作の様子をうかがい知ることができました。リリース作品が生まれるスタジオでのジャミングの状態に入る前に、2名のアーティストがそれぞれの思考と感情に対峙する方法を下のビデオからご覧いただけます。 Minilogueのスタジオセットアップについてさらに詳しく知りたいなら、SebastianによるMinilogueのハードウェアとソフトウェアに関する詳細な説明をご覧ください。 Liveを初めてご使用ですか?簡単な説明を読んだら、さっそく始めましょう。 この記事をFacebookでシェア

オマー・ハキム – ヒューマン・リズム

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オマー・ハキム – ヒューマン・リズム

オマー・ハキムは、間違いなく40年のキャリアを持つ最も成功しているドラマーのひとりです。マイルス・デイヴィス、デイヴィッド・ボウイ、スティング、スティーヴィー・ワンダー、最近ではダフト・パンクなどのアーティストとコラボレートし、無数の伝説的レコーディングにグルーヴをもたらしています。Ableton Live用の初Packリリースの機会に、Abletonはロボットまでもが頼りにするヒューマン・ドラマーとなったその存在についてオマーにいくつか話を聞きました。 ダフト・パンクのトーマ・バンガルテルが『Giorgio by Moroder』とあなたに関するエピソードを披露しています。「彼に近づいて行ったとき、とっても複雑なドラムンベースのプログラミングをハミングしてたら、彼が「こんな感じかい?」って(ドラムを叩く)。ハミングどおりなだけじゃなく、イメージより10倍もいいドラミングになってた。「すげぇ!自分のプログラミング・スキルに囚われて、こんないいドラミングを逃すとこだったなんて」って思ったね。そのパートはわずか2テイクほどだったんだよ」 マシンやアルゴリズムでは再現できない、ドラマーにしか実現不可能なものとはどのようなものだとお考えですか? あのときのことはよく覚えています。自分たちの欲しい音についてはっきりとしたイメージを持っていながら、そのアイデアを元に実験したりアイデアをふくらませる自由をくれるアーティストとスタジオにいると楽しいですね。 これこそ、マシンやアルゴリズムでは実現不可能なことだと思います。ミュージシャンとして、人間としての経験です。ギブアンドテイク、感情のやりとり、のびのびと自然にふるまい、瞬間を楽しんでいるときに起こる思いがけないうれしい驚き…。 (ダフト・パンクのように)エレクトロニック・ダンス・ミュージックをバックグラウンドに持つミュージシャンのリズムに対するアプローチが、ジャズやロック・ミュージシャンのアプローチと異なると感じたことはありますか? ドラムやパーカッションを演奏するミュージシャンとはリズムに対する考え方が異なっていることは確かですが、それは必ずしも悪いことではありません。実際の楽器を演奏しないので、その楽器のルールに縛られることがないのです。そのため、彼らは非常に興味深いクリエイティブな方法でパーカッション・サウンドを使用することにオープンです。 2014グラミー賞でダフト・パンクと共演するオマー・ハキムをチェック: 「ポケット」という言葉がよく聞かれますが、についてご説明いただけますか。 この質問をされるといつも困ってしまうんです!人間の感じるフィーリングと音楽を作るというプロセスを説明することはとても難しいので…。いろんな音楽文化を分析すると、とても興味深いことがわかります。どの文化にも、どの国にも、その人々が共感できるフィールやグルーヴがあります。それはもうDNAの一部のようなものです。世界のあるところには、人々の心を躍らせ身体を動かすダンス/EDMビートがある。また別のところには、8分の9拍子の不思議なグルーヴの音楽があり、人々を熱狂させ、踊らせている。 アーティストと仕事をするときは、(それがステージであってもスタジオであっても)グルーヴへの自分のアプローチについて考えすぎないようにしています。音楽に最も合う演奏をしようとだけ心がけています。 Live Packでご提供いただいたグルーヴやサウンドの使用方法として、どのようなイメージをお持ちですか? 本当に役に立つおもしろいアイデアの数々を提供できていればいいなと思っています。これらのグルーヴのいくつかが、クールなベースライン、興味深いリフ、メロディのコンセプトなど、曲の構築のインスピレーションにつながればうれしいです。 The Loop Loft Omar Hakim Drumsをチェック

Four Tetが10分間でトラックを作成

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Four Tetが10分間でトラックを作成

1枚のレコードからサンプリングし、これらのサンプルだけを使用してトラックを作成しなければならないとしたら…?それもたったの10分で。 Dontwatchthis.tvでは、さまざまなミュージシャンにこの難問に挑戦してもらい、結果を映像化しています。シリーズ最新回にはFour Tetが登場し、マイケル・ジャクソンの超有名作品「スリラー」をピックアップしてLiveでスピーディに作曲しています。クリエイティブなこのエクササイズから生まれたすばらしい結果を、下のビデオからご覧ください。 本シリーズの他のビデオを見る

Dan Freeman:指揮官の素顔

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Dan Freeman:指揮官の素顔

かさばるハードウェア・サンプラーを使用したバックグラウンド作業やニューヨークをベースに活躍する多数のミュージシャンとのコラボレーションを行ってきたDan Freemanは、豊富な経験を持つミュージシャンです。Ableton認定トレーナーでありDubspotインストラクターでもあるDanは、ソロ・アーティストC0m1xとして、バンドCommandante Zeroとして、さらに他バンドとのコラボレーションで世界各地でパフォーマンスを披露しています。 教育者としての活動、ツアー、TV on the RadioのTunde Adebimpeとの活動などのプロジェクトを進行させている多忙なスケジュールについて、またPushを使用したアシッド・ハウスの再発見について、Danに話を聞きました。

Ryo "HumanElectro" Fujimoto - ビートボクシング、シンセ、インタラクティブ・コントロール

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Ryo "HumanElectro" Fujimoto - ビートボクシング、シンセ、インタラクティブ・コントロール

HumanElectroの異名を持つビートボクサーRyo Fujimoto(リョウ・フジモト)はスリリングなパフォーマンスでオーディエンスを魅了しています。印象的なボーカル・パーカッションをシンセやループと組み合わせ、ハードウェア・コントローラーとジェスチャー・ベースのLEAP Motionを使用してエフェクトを調整しています。東京のクラブDommuneが40分に及ぶRyoのライブ・セットをレコーディングしストリーミング公開しています。強烈なビート・トリップをご体感ください。

Noah Pred: Third Culture

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Noah Pred: Third Culture

Noah PredのAbleton Liveセットの非の打ち所のない構成具合から考えれば、彼が「Thoughtless Music」という名のレーベルを共同設立したのは少し皮肉です。しかしまた、新アルバム「Third Culture」にも表れているとおり、Noahは、耳を傾ける者をリズムとサウンドに没頭させる言外の深みと音楽を操る力を持っています。「Third Culture」は、Thoughtlessの立ち上げ、Noahの故郷であるトロントからベルリンへの移住といった、数年間にわたる変動から生まれました。 ミュージシャンやDJとしてのキャリアに加え、NoahはAbleton認定トレーナーとして、AskAudio/macProVideoやベルリンのNoisy Academyでインストラクターとしても活躍しています。AbletonはNoahにインタビューを行い、ミュージシャンとしてのこれまでの活動について、移住過程でのアルバムの作品づくり、音楽制作についてや現在の音楽業界で前進していくための関する生徒へのアドバイスについて話を聞きました。 数年前にベルリンに引っ越されたと伺っています。「Third Culture」はベルリンでお書きになったのですか、それとも一部はトロントで? トロント時代に書き始めたトラックもいくつかありますが、90%はここベルリンで書きました。 ベルリンへの移住は音楽に影響を与えましたか? ベルリンへの移住が何の影響も与えなかったというと嘘になります。音楽は自己表現の一形式ですから、アーティストの人生に起こるすべてのことに影響を受けると思います。ただ、このアルバムを書いているときには、ここに移住してきたこと以外にも、数々の心を動かされる出来事がありました。それらすべてが重なって作品が生まれてきたのです。クリエイティブ・プロセスという冒険には、物事を行う新たな手法と、検証すべきサウンドを見出すという側面が必ず存在するものです。 アルバム制作時にPushはご所有でしたか? Pushを入手したのは3分の1ほど書き上げた後だったので、残りの3分の2はPushで生成した素材といっていいでしょう。ですから、今回のアルバムにはPushを使用した痕跡がしっかり残っていますよ。少なくとも全トラックの半分で、核となるメロディとリズムをPushを使用して生成しています。このインストゥルメントがなければ、まったく別のアルバムになっていたと思います。 Noah Pred - photo by Jacob Hopkins Pushを使用したスタジオ・プロセスについて少しご説明いただけますか? Pushのあるなしに関係なく、最も重要なのはトラックをセッションビューからスタートさせることです。ここでできるだけジャミングや即興アドリブ演奏をするようにしています。リズムのアイデア、サンプル、メロディのアイデアのうちどれからスタートするかはトラックによって異なります。Pushでは、まず最初にドラムラックにStep Sequencerを使用します。カスタムのドラムラックをたくさん作成しているのですが、Pushを使えば、メロディのバックボーンとなる面白いリズムを簡単に作成できます。その後、MIDIエフェクトラックを使用します。MIDIエフェクトラックはさまざまなコードボイシングやその他同じようなものにかなりの頻度で使用します。Pushでの次のステップは、使用したいスケールを見出すことで、さまざまなインストゥルメントを使用してそこから作曲をスタートさせます。 「Third Culture」 Liveパックをダウンロード タイトル曲「Third Culture」のセットは、非の打ち所がないほど整然と構成されていますね。 ここまで整然としているのには僕の性格も影響していると思いますが、トラックをセッションでの即興アレンジモードからアレンジメントでの完成されたプロジェクトに確実に持って行けるよう、僕が考え出したシステムから生まれた結果でもあるんです。 ループからフルトラックを作成する際のプロセスについてもう少しお聞かせください。どのようなプロセスなのでしょうか? まず最初に、セッションビューでクリップのシーケンスのようなものを作成します。たとえば、すべてのドラムクリップを下準備してマスターとなるドラムクリップを作成できるようにしておき、その後どのようにスタートするかを考えます。次に、トラックの冒頭で使用したくないドラムパートをすべて無効にしてから、そのクリップを複製し、次に来るパートを有効にします。無効なノートはマスタークリップ内にすでにあるので、こうした操作が可能なわけです。 こうして、クリップを複製しつつ、クリップごとに新しいパートを有効にしていきます。その後、ベースラインやコードなどをどこに入れるか考えて、それらを含めた演奏をセッションビューからアレンジメントビューに録音します。 この演奏には間違いも含まれていますし、この後も演奏やエディットを繰り返すことになりますが、ここで重要なのは、生まれたばかりの新鮮なエネルギーと直感的な印象を捉えることです。アレンジメントビューできっちりコピー&ペーストすることからは生まれないエネルギーを捉えることができると思います。もちろん、これらの作業中にもパラメーターの調整を行っています。アレンジメントビューに移ったら、オートメーション処理を行います。トランジションやエディットをチェックして望みどおりのインパクトやフローになるよう確認したら、その後ミキシング処理を行います。 Noah Pred - photo by Jacob Hopkins ジャム演奏から楽曲を完成させるというのは、プロデューサーの卵にはなかなか難しいことのようです。教えていらっしゃるクラスでもその傾向が見られますか? はい、クラスでも生徒たちに言い聞かせるようにしています。生徒たちには、即興的なスケッチから完成された作品を仕上げる段階的なプロセスを伝授しています。ただ、制作プロセスは人それぞれ異なるので、どれが正しいとか間違っているとかいったことは言わないようにしています。自分にとってうまく機能するシステムが僕にはあるので、それが生徒たちの参考になればと思っています。 アーティストとしてもご活躍ですが、業界の現状を考慮して、作品を耳にしてもらいたいと願っている生徒に対してはどのようなアドバイスをしていますか?活動するアーティスト層が厚くなり、新人アーティストの活躍が非常に難しくなって来ているように思えます。 生徒には焦らないようアドバイスしています。自分の音を見つけるのに時間がかかることもあります。作品をリリースするようになって5年経っても自分の音が見つかっていないということになれば、その5年間にリリースした作品のことを後で後悔することになるでしょう。だから、私はまず自分の音を見つけることを勧めます。そうすれば、業界でも独自性を発揮できます。独自性が強いほど、どのような分野であっても頭角を現すことができると思います。 Liveでアルバムのミックスも行っているとお聞きしました。カスタムのチャンネルストリップ(「Third Culture」Liveセットダウンロードに付属)についてお聞かせいただけますか? サウンドの種類をもとに、すべてのトラックをグループにまとめてバス送りしています。ドラムはすべてまとめてバス送りしています。低域もいつもまとめてバス送りし、その後ミッドをまとめてバス送りします。アルバムはすべてLiveでミックスしました。Live 9に付属のAbletonプラグインを使用しましたが、とても気に入っています。温かみを加えるDynamic...