Mayur Narvekar、タブラ、伝統、Liveについて語る

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Mayur Narvekar、タブラ、伝統、Liveについて語る

伝統的なインド音楽の起源は、数千年も歴史を遡ります。タブラやシタールといった楽器を習得することは、世代にわたって受け継がれてきた口頭伝承の知識を要するライフワークでした。一方、現代の音楽制作ソフトウェアの歴史はわずか数十年です。これら2つの世界を引き合わせることで、Mayur Narvekarの作品にみられるような興味深い様式の交配が導かれることもあります。 20年にもわたるタブラ研究を経て、Mayurは今、伝統的なインド音楽の可能性を21世紀のテクノロジーを用いて前進させています。Bandish Projektの一環としての彼の作品は過去と現在の対話をもたらし、タブラのドラミングの複雑なリズムが現代のエレクトロニカのパーフェクトに引き立てることを示しています。Abletonは、これらの異質な音世界同士の出会いについてMayurに話を聞きました。 タブラとLiveを操るMayur Narvekar 私の理解が正しければ、タブラのような伝統的なインドの楽器を習得することはかなり大変なことです。このような楽器をマスターするまでの過程についてお話しいただけますか?タブラを学ぶ学生は、あらゆるリズムを口で「演奏」できるようにならなければタブラを使った練習をスタートできないとどこかで読んだのですが。このプロセスは「パドハン」と呼ばれています。ドラムを使って演奏を始める前に、まずリズムを声に出すのです。これらのパターンを覚えておくと、実際にタブラを触る際に事がより容易に進みます。非常にゆっくりとした段階的なプロセスです。自分が思った以上に長い期間この形式を学ぶ忍耐と練習が必要です。タブラ・ボール(タブラ演奏での律動的音節および句)を100回演奏すれば、それをよく理解できるようになります。1000回演奏すれば、体がそれを覚えるようになり、学んだことを独自の作品に昇華することができるようになります。完璧さに上限はありません。伝統音楽の側面をどのようにして制作に取り込んでいますか?一例として、こちらのビデオをご覧ください。私のタブラのリズム・パターンをグライムのビートに組み込んだものです。 制作テクニックを解説するMayur 自分がいいと思うものから始めます。ビート、サウンド、ノイズなど、私の感情に訴えるものであれば何でもかまいません。タブラのような伝統楽器を習得することは非常に理に適ったプロセスで、他の分野において成長する助けになります。特定のテクニックについて言っているのではなく、さまざまなアプローチを必要とするさまざまなシチュエーションに身を投じるという意味でです。ソフトウェアはたくさんの選択肢を与えてくれます。そのため、もともとのアイデアとは関係のないことに多くの時間とエネルギーを注ぎ込んでしまいがちです。結果として満足のいかないサウンドが出来上がってしまいます。ですので、自分の求めるものに忠実であることが非常に大切です。だからといって、実験はいけないという意味ではありませんが。 Bandish Projekt『Sargam Breaks』 インド音楽の歴史は非常に古い一方で、エレクトロニック・ミュージック制作は比較的新しいものです。この2つのアプローチを自然な形で共存させることについて難しさを感じることはありますか?また、伝統的な要素を新しいテリトリーで素材として利用することについて違和感を感じることは? そうですね、トラックに何が必要かによります。パワフルな音と自然な美はどちらも同等に重要なゴールです。私のアルバム『Correkt』収録のトラック『Sargam Breaks』を取り上げてみましょう。冒頭から1分で登場する伝統的なボーカルは後にも登場しますが、今度は細かく切り刻まれています。新しいメロディラインに並び替えていますが、エレクトロニックのグルーヴのリズムに合うような形にシーケンスしています。 Mayur Narvekarについて詳しくは、彼のウェブサイトをご覧ください。

キース・フラートン・ホイットマン:モジュラーの迷路をナビゲート

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キース・フラートン・ホイットマン:モジュラーの迷路をナビゲート

近年、モジュラーの分野に注目が集まっています。これまでのモジュラー・システムがスペシャリストを対象としたものであったのに対し、最近のモジュラーは、プロ仕様の製品を買い求めるコンシューマーを対象としたものとなっています。これから導入しようとお考えの方は、いくつか注意しなければならない点があります。エキスパート直伝の知識は、何よりも参考になるでしょう。そこでAbletonは、キース・フラートン・ホイットマンに連絡を取り、モジュラー導入の是非について意見を聞きました。ホイットマンは、Max/MSPからオウドまで、ソフトウェアとハードウェアの両インストゥルメントに精通しています。彼は、ミュジーク・コンクレートの先駆者ピエール・シェフェールにより設立された音楽研究機関でヤニス・クセナキス、ベルナール・パルメジャーニといった人材を輩出してきたフランス音楽研究グループ(Groupe de Recherches Musicales、GRM)スタジオ収蔵の知る人ぞ知る機材の宝庫に立ち入ることを認められました。 ホイットマンの『Rythmes Naturels』抜粋(GRMスタジオにて作曲されたもの) 2000年初期以降、ホイットマンの名はモジュラーの代名詞となりました。現在、小規模モジュラー・メーカーはこぞって最新デザインのテストを彼に依頼するようになっています。彼はまた、配給会社Mimarogluを通じて、無名の新しい実験的な音楽のためのプラットフォームも提供しており、また自身もEditions Mego、PANから個性的なオーディオ作品を定期的に発信しています。モジュラー転向者でありながら、昨今のモジュラー・シーンには懐疑的なアプローチを取っており、過剰な評価をしがちな熱狂的ファンの意見に包まれたこの分野に有益な見解を提供してくれています。 モジュラーを導入したとたん、パッチとプロセッシングの迷路にはまり込み、音楽を完成させることができなくなってしまうということがお約束の展開としてよく言われますが、モジュラーの世界とのファースト・コンタクトはどのようなものだったのでしょうか?あなたにもウサギの穴に迷い込んだように感じられましたか?私にとって初めてのラック構築を始めたのは、ベルリンに行った1998年か1999年のことでした。ミッテのアパートに滞在していたのですが、1階にDoepfer(ドイプファー)のモジュールだけを販売していたシンセのお店があったんです。ドネルケバブを買って、ショーウィンドウの前に立って巨大なシンセを眺めながら、「ラップトップとMaxを操るより、この方が簡単なんじゃ?」と考えたんです。それで、小さなスーツケースに収まるオシレーターとフィルターを入手しました。その後、6カ月ごとにベルリンに戻り、いくつかのモジュールを購入していきました。モジュラー・シンセシスを学んでいた間は、確かに音楽を作ることはなかったですね。ジグソーパズルを組み立てているときのようなもので、最中は完成画についてあまり関心がないんですね。2001年だったか2002年だったかにそのラックを完成させてからは、コンピューターよりもこのラックを使用して音楽制作を行うようになりました。モジュラーがもたらすのはサウンドだけです。これってすばらしいことなんですよ。フェイスブックもないし、メールもないから、集中力が脇にそれることがないんです。音だけ。サウンドを作るためだけに存在しているんです。世間に向き合いたくなかったりインターネットを使いたくない今日みたいな朝は、モジュラーを立ち上げます。1日が終わる頃には、5分間のクールなサウンドが出来上がります。 キース・フラートン・ホイットマン、Doepferモジュラー・システムを限界まで使い倒す 理想的なシチュエーションのように思えますが、モジュラーを学ぶことのハードルの高さと、高価であるモジュラーを入手することの難しさは、なかなか乗り越えるのが大変です。正気とは思えないほど金のかかる趣味ですよね。ビンテージ・カーをレストアするようなものです。数千ドルもするモジュールはたくさんあります。もちろん、入手困難な高価なモジュールを最初に手に入れた者がこの心理戦に勝利するんです。それに、モジュラー・シンセのメッセージ・ボードを運営するというカルチャーも、私の手には負えません。きついですね。だからあまり見に行ったりしません。書き込みをしたこともあったんですが、投稿数が少なすぎて追い出されました。ロマンチックに聞こえるかもしれませんが、モジュラー・シンセの物理的な特性が、オーディオの流れを理解する新鮮な手段を提供してくれるような気がするんです。モジュレーションとプロセッシングが何であるかを実際に目で見て手で操作することができますから。ひとつひとつの端子、コード、ノブすべてに機能があります。すべてがそこにあるんです。大部分において、見たとおりのものが結果に反映されます。モジュラーにはプリセットがないのですが、これもまた重要な点です。そのモジュールのシグナルの送受信の仕組みなどを知っていなければなりません。モジュラーは貫禄のある外観をしています。巨大なシステムを扱っている人を見ると、壮大な可能性を思わせるたたずまいがあります。シグナルの入出力には無限の方法があります。どのような機材も同じ言葉を話す、同じ電圧範囲であるということはすばらしいことです。取り返しの付かないことになる、ということがないんです。出力を出力に接続したからといって壊れるということはありません。私はMax/MSPユーザーですが、あるパッチを作成していて、その過程で何か間違いを起こしてしまうと、すべてがクラッシュしてしまいます。モジュラーではそういうことはありません。もちろん、モジュールを上下逆にパッチングしたりすれば壊れてしまいますが、セットアップを完了してしまえば、上手くいかないということはありません。これまで自分が作った最高傑作に、午前2時にほろ酔い加減のときに生まれたものがあります。ある特定のサウンドを作成しようとしていたのですが、端子を間違えてキーキー音の奇妙なノイズになったことがありました。「いいね。だがいったい何事だ?」と思ったら、ある出力を別の出力に接続していたんです。出力同士がけんかしていたんです。こういった触知性、電圧の動きが、電気によってケーブル内で実際に起こっているんです。一連の整数値ではなく、電圧と電圧のぶつかり合いなのです。この物性が、一部の人を強烈に魅了しているのだと思います。 2013年のPAN ACT Festivalでのホイットマンのライブ・パフォーマンス モジュラーの世界では、インストゥルメントからどういった音楽が生まれるかよりも、むしろインストゥルメント自体に焦点が置かれているように思えます。まったくそのとおりです。機材に偏重した議論のほとんどは、機材に偏重した音楽による産物です。これは必ずしも良いこととはいえません。優れた音楽とは、テクニックや使用されるシステムを超越しています。ツアー中にデモがたくさん送られてくるのですが、その多くは「モジュラーを手に入れた」のでCDを出しました、といった感じなんです。悪いとはいいませんが、私はレコードを出す自信が付くのに15年もかかりました。インストゥルメントを手に入れてわずか1週間でその仕組みを理解し、かなりのレベルで使いこなせるようになるというのが当たり前と考えられている今の状況が、奇妙に思えてなりません。だからノイズばかりが氾濫するようになる。それが何であるかという基本的な概念を理解する前に手を付けてしまうんです。音楽に関することより、機材に関することについて話すことが増えたのも、とても変なことです。これらのインストゥルメントが比較的新しいこと、最近注目を浴び始めたこと、美しく興味を引く外観であること、各機材の個性が強いことのほかに、その理由は考えられません。 モジュラー・シンセシスに興味を持たれたなら、OSCiLLOT by Max for Catsをぜひチェック!100を超えるパッチング可能なモジュールと、パッチング済みシンセやエフェクトを多数収録した、Ableton Live用のコンプリートなモジュラー・システムです。キースと彼の作品について詳しくは、キースのウェブサイトをご覧ください。

OSCiLLOT:モジュラー・シンセシスがLiveに登場

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OSCiLLOT:モジュラー・シンセシスがLiveに登場

モジュラー・シンセシスには数十年の歴史がありますが、ここ数年、アナログでパッチング可能なデバイスへの人気が大規模な復活を遂げています。モジュール・メーカーの急増は、エレクトロニック・ミュージシャンがモジュラー・シンセシスのクリエイティブな可能性を再発見したことに密接な関係があります。そして今回、Max for CatsのOSCiLLOTの登場により、Ableton Liveでモジュラー・シンセシスを使用できるようになりました。OSCiLLOTはMax for Liveデバイスで、自由にパッチング可能な100を超えるモジュールを使用して、独自のインストゥルメントやエフェクトを構築できます。モジュラー・システムの利点は、独自のパッチの作成にプログラミングの知識を必要としないことです。パッチ・コードを使用してあるモジュールの出力を別のモジュールの入力に接続するだけの簡単さです。モジュラー・シンセシスの簡単な説明と、OSCiLLOTでAbleton Liveのポテンシャルを活用する方法を、こちらのビデオでご覧ください。OSCiLLOT by Max for Catsについてさらに詳しく

Laidback LukeのLiveセットをダウンロード

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Laidback LukeのLiveセットをダウンロード

完全無欠のトラックを耳にして、いったいどうやって制作されたのだろうと不思議に思ったことは少なくないでしょう。パーフェクトなミックスダウンは、得体の知れない手の届かない存在のように思われがち。一流のプロデューサーたちと同じツールを使って制作しているにもかかわらず、同じようなサウンドにならない場合はなおさらです。もしかすると、有名アーティストのLiveセットには、スタジアムを熱狂させるセットと物足りなさを感じさせるデモとの違いを明らかにする秘密が隠されているのかもしれません。幸いなことに、オランダEDM界のベテランLaidback Lukeが私たちのこの好奇心に応えてくれました。クリエイティブな共有プラットフォームSpliceから彼の作品『Stepping To The Beat』のLiveセットをダウンロードし、その内容を分析してみましょう。LukeのLiveセットを入手するには、Spliceアプリをダウンロードする必要があります。Liveセットをダウンロードして、彼のテクニックをご自身でも試してみてください。Abletonは、ステレオでミキシングすることの危険、レイヤーの重要性、クラブのシステム用のミックスダウンについてLukeに話を聞きました。Laidback LukeのLiveセットをSpliceからダウンロード Laidback Lukeの『Stepping To The Beat』 このトラックにはかなりのレイヤーが使用されていますね。これらの要素の座りをよくするためにEQとエンベロープの操作にかなりの時間をかけているのでしょうか?バランスの取れたレイヤーを実現するのに頼りになるメソッドは何かお持ちですか?適切なレイヤーへの鍵は、周波数間の差異を見つけ、それを、それぞれの周波数で突出しているサウンドで埋めていくことです。「リード・サウンドがちょっと薄いな」と思ったら、300Hz域に目立つサウンドを探す、といった感じの簡単なことです。2種類のサウンドだけなら、EQで300Hz的なサウンドから3kHzの一部を除きます。そしてリードには300Hzサウンドが含まれないようにします。こうすることで、2つがまるでパズルのピースのようにうまくかみ合うようになります。これらを1チャンネルにまとめ、糊の役目を果たすコンプレッションを少しかければ、1つのユニットとして機能するようになります。クラブ・システムでサブ・レベルをテストすることの重要性についてお話しされていましたが、定期的に大型モニターに触る機会のない人たちに何かアドバイスをいただけますか?低価格のバスレフ型モニターではローエンドの聞こえが分かりづらくなることがあるため、高品質のヘッドフォンがよりふさわしいかと思うのですが。私は、すべてSOL Republic Calvin Harris XCヘッドフォンを使用して制作しています。スタジオでもですよ!完全にヘッドフォン系プロデューサーです。実をいうと、約20年ほど音楽制作を続けるうちに、耳が敏感になってきて、スタジオ環境のいわゆる「スイート・スポット」というのに我慢できなくなってしまいました。室内にスイート・スポットがあるということは、頭の位置を変えるとサウンドが変わってしまうとことになります。つまり、突然ミックス全体の聞こえが一変してしまうということです!これにはもう耐えられません。ヘッドフォンを使用すれば、こういった状況を排除できます。その後で、使用可能なシステムを利用してチェックするのはいいアイデアでしょう。ラップトップのスピーカー、車内、電話などですね。過剰な周波数を見失わないためにヘッドフォンでの操作で最も重要なのは、制作中の自分のトラックと、どこでも優れた聞こえ方をするプロのトラックとのA/B比較をコンスタントに行うことです。プロのトラックは、優れたサウンドを導く原理であり、地図であり、ガイドラインです。自分のサウンドのヘッドフォンでの聞こえ方が、これらのサウンドのヘッドフォンでの聞こえ方と同じになるようにすればいいのです。ただし、ヘッドフォンでは、モノでのミキシングが重要です!私の口癖は、「モノこそ真実」です。トラックのステレオ・イメージは簡単に耳を欺きます。ですので、私はトラックの仕上げの最後の段階でステレオにします。スタジオで作業しながら、クラブで要求されるエネルギーのレベルを保つ方法についてはいかがですか?スタジオにいながらオーディエンスを意識したサウンドのイメージを作り上げるのは難しいというアーティストもいますが。その通りです。繰り返しますが、だからこそ自分の作品とクラブでいいサウンドをもたらす作品とを比べる必要があるのです。これがガイドラインになります。参考にしているトラックに比べて、自分のトラックのサブやミッドレンジが強いと思ったら、それは、クラブでプレイしたとき問題を生じさせる周波数が含まれていることのサインです。 Laidback Lukeについて詳しくは、ウェブサイトおよびSoundcloudをご覧ください。

Alter EchoとHolder登場:クリエイティブなサウンドデザインのためのパワフルな新デバイス

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Alter EchoとHolder登場:クリエイティブなサウンドデザインのためのパワフルな新デバイス

新しいサウンドを探し求める過程で、時としてエフェクト・チェーンや複雑なルーティングの迷路にはまってしまうことがあります。何かを探し求めるとき、1つ2つとプロセッシング・ツールを追加してしまうことはよくあります。それよりも効率の良い方法は、さまざまなエフェクトのベストな要素を組み合わせ、単体のパワフルなユニットへとまとめたプラグインを使用することです。これなら、膨大な数のエフェクトの微調整に延々と時間をつぎ込むことなく、サウンド自体に集中することができます。Alter EchoK-Devicesの新Max for Liveデバイスは、まさにこれを行ってくれるプラグインです。Alter Echoは、ステップ・シーケンサーのペアを介してエコーを展開するリズム・パターンへと変化させるディレイ・モジュールです。トランスポート同期のこのステップ・シーケンサーは、既成観念からあなたを解放してくれます。[What]と[When]と名付けられたコントロールは、ディレイ・ユニットに送られるオーディオの量と、ディレイが聞こえるタイミングの両方を制御します。また、柔軟な角やダイナミクスをディレイに加える傾斜角度と形状にもさまざまなオプションが用意されています。[Texturize]セクションは、オリジナルのエコー信号に対して前方または後方に動作するセカンド・ディレイを提供します。内蔵フィルターと便利なサイドチェーン・コンプレッサ―を搭載したAlterEchoは、ステレオ・フィールド内でのサウンドのダッキングやウィービングがすばやく直感的に行えます。HolderHolderは、オーディオ信号のスライスを取り込み、まったく別の何かに変化させるデバイスです。好奇心をかき立てるコントロール・セットは、自由な実験的操作を可能にします。ユーザーインターフェースを占めるスペクトログラフでは、入力信号の特定の断片を分離しフリーズできます。オーディオを手動でフリーズしたり、HolderをLiveのテンポに同期させて任意のレートでスライスを取り込んだりできます。特に面白いセクションが[void]、[swarm]、[blur]設定を含む[dronizer]パネルで、変わったオーディオ・ランドスケープへとユーザーをもたらします。ドラム・ヒットを無限のシュールなパッドへ変化させたり、グレインを耳に残るサウンドへと変化させたりします。Holderは、Alter Echoと一緒に使用しても優れた機能を発揮します。共にリターン・トラックに置き、奥行き感覚が変わるのを自分の耳で体験してみましょう。まるでステレオ・フィールドがルービックキューブのように変化するのが感じられるはずです。PackページでAlter Echo & Holderについてさらに詳しく

インプット/アウトプット:Afrikan Sciences

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インプット/アウトプット:Afrikan Sciences

シリーズ「インプット/アウトプット」では、Abletonコミュニティに属するプロデューサーのスタジオを訪ね、彼らの制作プロセスに取り入れられるインスピレーション、テクニック、技術と、そこから生まれる最新の音楽作品に光を当てていきます。冒険的なレーベルPANから到着した『Circuitous』は、Eric Porter DouglasことAfrikan Sciencesの最新アルバムです。表向きには現在そしてここ最近のクラブ・ミュージックやダンス・ミュージックに関連したものでありながら、Afrikan Sciencesは、『Circuitous』でテクノ、ジャズ、ヒップホップ、ファンクのメロディとリズムを目を見張るほどフレッシュな構造に織り込んでいます。心を引きつける親しみやすさと際だった異質さを併せ持つDouglasのトラックは、聴く者を独自の軌道へと引き寄せます。初めのうちは違和感を感じますが、方向感覚を失う瞬間は、純然たる先験的な幸福感と均衡の状態にあることも少なくありません。Douglasの音楽に魅了されたAbletonは、ニューヨークを基盤に活動するプロデューサーである彼にインタビューを敢行。彼の制作活動について話を聞きました。あなたのトラックで常に特徴的であり、今回の新作で特に強調されているのは、リズム要素が2つ以上の方向に同時にプッシュされている点です。ビートメイキングに対するあなたの一般的なアプローチ/姿勢についてお話しいただけますか?ポリリズム・ステムに対する私の考えとアプローチは、最も人間の感覚に近いドラム・プログラミングやライブでのパート演奏を実現するためのニーズから来ています。また、複数のドラマーが同時に会話のやりとりを行うとどんな風に聞こえるのか、また、会話に参加している各ドラマーのバックグラウンドがそれぞれ異なっている場合、言ってみれば異なる言語を話す場合どうなるのかという観点からでもあります。この会話はどんな風に聞こえるのでしょう?こういった分裂を加えると、新しい均衡がもたらされます。拍子記号を別の拍子記号に重ね、クオンタイズされたプレイに漠然としたプレイを重ねるのです。得られる結果がどのようなものであれ、リズムの並置を掘り下げることは楽しいものです。ここでいうドラマーとはすべて人間のドラマーのことを意味しているのでしょうか?というのも、あなたのリズム構造にはマシンのような要素がしばしばみられるからです。リスナーとして、またミュージシャンとして、「クオンタイゼーションの連続」のルーツはどこにあるとお考えですか?ドラマーについては、すべて人間というわけではありません。トニー・アレン、ミッチ・ミッチェル、クラフトワークのドラムマシンが一緒にプレイしているようなイメージです。若い頃、リスナーとして作品で聞くことのできるドラムの虜になり、ティーンエイジャーになって初めて作品作りのようなことを始め、初期のドラムマシンに触れてからはさらにその傾向が強くなりました。ひとつ気付いたのは、ドラムマシンがポピュラー音楽を席巻した1980年代に起こった転換でした。私は、これこそミュージシャンが後になって「ドラムマシンには魂がない」というシュプレヒコールを上げてドラムマシンに反発した理由だと思います。私はこの言い分に不満を感じており、思いやりの感情とエレクトロニクスを調和させたいと考えていました。私は80年代中頃から後半にDJとしてスタートしました。組み合わせに対する音感とリズムに対するダイナミックな感覚が培われたのはこの時期です。レコードのビートをうまく操作し、新しいリズムを生み出してチューンの拍子や時間のフィーリングを変更するのです。つまり、ターンテーブルこそ私が最初に扱った楽器で、その後、ベースの弾き方を学んでレパートリーに加えました。 Afrikan SciencesのBoiler Roomでのパフォーマンスの様子 『Circuitous』制作時のスタジオのセットアップはどのようなものでしたか?スタジオの内容は絶えず変化していますが、ここ数年は、モーグ・リトル・ファッティ、アッシュボリー・アップライト・エレキベース、Waldorf Streichfett、iOSアプリいろいろ、サードパーティ製Audio Unit/VST、Max for Live、それに核としてLiveを使用しています。Live内でのセンド&リターン・システムを気に入っていて、外部インストゥルメントとエフェクトにAudiobusといったすべてを上手く連結してくれるiOSアプリを使用しています。トラックごとにいくつのセンドとリターンを使用することが多いですか?どのような信号をどのようなデバイスに送っていますか?トラックあたりのセンドについては、平均して1~4つを使用しています。Live内の内部ルーティングと、Motu Travellerといったオーディオ・インターフェースやiConnectmidi 4+のオーディオ・パス・スルー・システムを介した外部機器へのルーティングを組み合わせています。Holdernesss MediaのEcho Padなどのエフェクト、モーグのFiltatron、Amazing NoisesのGlider Verbなど、iOSアプリが気に入っています。KAOSS PADとmonotron DELAYなどのコルグ製品にも信号を送って面白い効果を生み出しています。ミックス・ボードを触ることもたまにありますが、ミキサーを持ち出すことはないので、普通はセンドリターン・セットアップに加えることはありません。ライブ演奏へのアプローチについてお聞かせください。典型的なライブ・パフォーマンスで、どれくらいの割合で、どのような要素をインプロヴァイズされていますか?今でも、安全かつ自発的なライブ・パフォーマンス方法におけるバランスを模索中なのですが、私の考えでは、完璧に準備されたセットは退屈だし、かといって早い段階でオーディエンスの関心を引き寄せることも重要だと思います。ですので、ほとんどの場合、リズム・セットだけは用意しておき、あとはスタート後の流れにあわせられるようオープンな状態にしておきます。また、あらかじめ演奏しておいた楽器のクリップを、Pushからアクセス可能なインストゥルメントと一緒に用意しています。外部インストゥルメントとデバイスすべての同期とコラボレーターとの同期には、iConnectmidi 4+を使用しています。ソロの場合、テンポと拍子をいろいろと変化させることが多いです。今、ライブをできるだけダイナミックなものにする方法について検討していて、ダンスの動きをこっそり練習しているんです(笑)。今後はアップライトをギグでもっと使用していこうと決めています。ライブでPushをご使用になっていますね。入手のきっかけはパフォーマンス用だったのですか?Pushについては、スタジオ・セットアップとライブ・パフォーマンスの両方に使うつもりで手に入れました。全体的に、どちらの状況においてもかなり満足して使用しています。ライブ・セットでは、シーンのコントロール、エフェクト・オートメーション用のダミー・クリップのトリガー、Max 4 Liveパッチ経由またはシフト・ボタンと一緒によりニュアンスのある動きを得るためのテンポ・ノブから直接のテンポ変更の調整にPushを使用しています。また、Drum Rackのライブ・ドラミングと、奇数長をループさせて無音を加えることで休符用のクリップの長さとオフセットの調整も行っています。たとえば、4小節のリズムをドラム・ラックで再生し、そこにたとえば3小節の別のリズム・トラックを重ねて、7小節サイクルのパーカッション・トラックを加えます。同時に、Push上でループ長コントロールを使用してオリジナルの4小節リズムのループ・ポイントをずらします。最初の小節ではなく第2小節にずらし、無音の第5小節に繰り越すか、長さをすっかり変更してしまいます。こういったバリエーションを作成して、面白みを出すのが好きです。一緒にキーをプレイするのもいいですね。クリップのローンチは色分けのおかげでより直感的になりますが、確かに大型のセットだと、混乱しないよう悪戦苦闘することもあります。ギグのたびに、別の方法を見つけています。できるだけ少ない操作でより多くを行うのが目標です。 Afrikan Sciencesについて詳しくは、FacebookおよびSoundcloudをご覧ください。

Herrmutt Lobby:コントローラー・ハッキングとハンズオン・ミュージック

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Herrmutt Lobby:コントローラー・ハッキングとハンズオン・ミュージック

ラップトップとMIDIコントローラーの台頭以来、エレクトロニック・ミュージックの「ライヴ」・パフォーマンスの「ライヴ」さについて語ることは困難になりました。こういったセットアップの多くは、ギターやサックスなどとは異なり、応答性に優れたハンズオン・コントロールにはほど遠く、プロデューサーやミュージシャンからの楽器のように動作するインターフェースへの期待は高まる一方です。Herrmutt Lobbyというコレクティブは、この問題に正面から立ち向かっています。コントローラーを用いて、エレクトロニック・ミュージックで真のライヴ・パフォーマンスを可能にする直感的なツールへと変貌させています。コレクティブのメンバーはねじれたダウンテンポのビートを専門とするミュージシャンたちですが、このコレクティブのインストゥルメント・デザイナーとしてのミッションにジャンルは関係がなく、「リアルな」楽器のように、演奏技法に反応するデバイスを構築することです。Abletonは、コレクティブの信念とコントローラーのハッキング方法についてメンバーに話を聞きました。また、カスタム・パッチとLiveセットも公開されており、彼らの手法のを実際に体験することができます。 Max for Liveを使用してフェーダー・コントローラーを操作するHerrmutt Lobby エレクトロニック・ミュージックのライヴ・パフォーマンスに不満を感じ始めたのはいつ頃からですか? Herrmutt Lobbyは10年前にスタートしたのですが、目標はライヴ・バンドになることでした。何枚か制作しツアーに出ましたが、ライヴはつまらないものでした。オーディエンスやオーガナイザーからは熱狂的なフィードバックをもらったのですが。数個のノブをいじくって、あらかじめ録音されたトラックにかけるエフェクトをコントロールするのは楽しくありません。当時ロックが盛んな小さな町に住んでいたのですが、ロック・バンドをやっている友人たちが、ガレージなどでも楽しそうにライヴ演奏しているのを目の当たりにしました。エレクトロニック・ミュージックのライヴ・セットがいいとか悪いとかいうつもりはないのですが、もっと盛り上がることができるはずなのにどうも楽しくなく、「出来合い」感が強すぎるように思えます。それで、シーケンスから距離を置く方法を模索するようになりました。この業界はループだけを使用する傾向が強いので、こういった動きのない構造の向こうにある新しい形を探るよい機会だと思いました。ハンズオン・テクニックを開発してそれらをステージで試みることは楽しいし、やりがいがあります。即興で演奏できる点やより直感的に音楽が生まれる点で、ジャズに似ているかもしれません。 Herrmutt Lobbyの新トラックではKing Kashmere IVとBoodaをフィーチャーしている シーケンサーで曲作りをしていた頃は、友達がスタジオに遊びに来てくれても、制作中の内容をただ聴くしかありませんでした。シーケンサーでの作曲に興味を持つ人は少なかったからです。今では、スタジオにコントローラー、ジョイスティック、パッド、iPad、自作の機材などが所狭しと並んでおり、すべてリアルタイム・パフォーマンス・パッチで相互連結されています。今なら、スタジオに足を踏み入れれば誰でもジャミングに参加できます。演奏がもっと楽しいものになります。連結したインストゥルメントを使って演奏するこのプロセスを、私たちは「リアルタイム・システミック・ミュージック」と呼んでいます。こういったデバイスを複雑で微細な操作に反応させるようにする上で難しかったことはありますか?リアルタイムで演奏する際の一番の課題は遅延(レイテンシー)です。コントローラーをインストゥルメントとして使用するには、レイテンシーをできるだけ(できれば4ms以下に)下げる必要があります。レイテンシーは、コントローラー、コンピューター、サウンドカードとそれが何であれ、セットアップに使用されているすべての機材によって追加されるので、チェーン内の必要のない機材を徹底的に排除しました。既存のコントローラーに独自のプログラムを「侵入させる」方法についてお話しいただけますか?オペレーティング・システムをソフトウェアにオーバーライドさせているのでしょうか?市販のデバイスの「脳」の再プログラムができれば最高なのですが、普通は無理ですし、無理でなくてもあまりにも複雑すぎます。ただ、ほとんどのデバイスにはMIDIコントロールを送信できるので、私たちはLiveとコントローラーをリンクさせるソフトウェアを作成しています。私たちの目的がデバイスの能力の範疇を超える場合、たとえばファームウェアに任意の制限がある場合などは、既存の電子回路を取り除いてしまい、ArduinoやTeensyといったプログラム可能なマイクロコンピューターに直接センサーを接続してしまい、独自のファームウェアを記述してセンサー・データの処理とMIDIメッセージの送信を実行させます。 デバイスの操作とマッピングについて説明するHerrmutt Lobby 最近では、ロンドンで開催されたMusic Tech Fest Hackathonで、Playstation 3のコントローラーをウェアラブルでワイヤレスの音楽用インターフェースに作り替えました。今回は、加速度計、ジャイロスコープ、ジョイスティックといったパッドの電子回路をほとんど残し、ボタンを取り除いて、ジョイスティックのひとつを3Dプリンターを使用して補強したキャップの付いたinnofadderで置き換えました。同時に、ベーシックなプレッシャー・センシティブのiPadスタンドを製作し、ベロシティとアフタータッチをiPadに加えました。今は独自のコントローラーをデザインしている最中です。ステージ向けの製品で、2016年前半には市場に出回る予定です。より堅牢な造りになっており、アーキテクチャに手を加えることを可能にするMax for Liveパッチが付属しています。皆さんのアプリBeatSurfingは、ハンズオンでの作品作りに大きな跳躍を提供するアプリです。このアプリのビビッドなビジュアル・インターフェースは皆さんの音楽製作にどのように影響しているのでしょうか?生まれてくる作品にどのような変化を与えると思いますか?BeatSurfingで、作曲プロセスは一変しました。レイアウト・デザインが作曲と共に展開するだけでなく、結果として生まれるトラックはそれだけではプレイできず、フィジカルな操作なしには聞くことができません。もはや音楽コントローラーではなく、あらゆる要素が相関するシステムとなっています。あらゆる要素があらゆる部分に影響を与えるのです。 Herrmutt Lobbyによるアプリ、BeatSurfing スタンダード・ジャズやコンメディア・デッラルテにより近いかもしれません。カンバスはそこにあるけれど、結果として生まれるトラックは誰が演奏するかによって変化するのです。iPadとiPhoneでのエクスペリエンスを拡張させる新しいアプリを数ヵ月中にもリリースする予定です。皆さんが開発するソフトウェアについて、開発中に意図しなかった方法で使用されると思いますか?障害を持つ子供たちがカスタム楽器とiPadにBeatsurfingを使用して演奏するAccessible Youth Orchestrasのように、すばらしい使用方法をいくつか目にしています。また、ベルリンのDigiEnsembleの「iPadオーケストラ」も非常に印象的でした。 Herrmutt Lobbyの『The Counter』をダウンロードしてお試しいただけます。この優れたMax for Liveデバイスでは、デバイスのパッドのプレイ方法に応じてマッピングを効率良く設定する直感的なプロセスを使用して128のサウンドをわずか16のパッドでプレイできます。Herrmutt Lobbyについて詳しくは、Soundcloudおよびウェブサイトをご覧ください。

EarthMomentsの新Pack :Lé Slow

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EarthMomentsの新Pack :Lé Slow

Lé Slowは、ダーク・アトモスフィア、シネマティック・テクスチャ、ループ、サウンドのコレクションです。EarthMomentsのプロデューサーおよびエンジニア・チームは、アコースティック/エレクトリック音源に最先端のアナログ/デジタル処理を行うことで、平凡にはほど遠いけだるくうっとりとしたサウンドからなるユニークかつまとまりのあるライブラリを作成しています。Packには9つのコンストラクション・キットが含まれており、独自のプロジェクトのベースとして活用できるフレキシブルなスターティング・ポイントを幅広く提供。400のオーディオ・クリップに含まれる400~800%低速化したサンプルは、各サウンドのディテールを隅々まで露わにしています。既存のアレンジに加える単体のテクスチャやループが必要な場合は、Liveのブラウザーからそれぞれのクリップやサンプルに簡単にアクセスできます。Packページでは、Lé Slowのサウンドスケープを試聴し、詳細情報をご覧いただけます。ホリディ・シーズン特別提供中の今なら、Pack全品が20%オフ!どうぞご利用ください

Seekae:自信に満ちあふれた『The Worry』制作の裏側

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Seekae:自信に満ちあふれた『The Worry』制作の裏側

2000年代は、ビート中心のエレクトロニカが豊作の時代でした。たとえばシドニーのトリオSeekaeは、J・ディラ一派のヒップホップのシャッフル感とクラシックなEDMの広角なエモーションを組み合わせた新進アーティストです。特にSeekaeは発展性のあるポテンシャルを見せており、2008年のデビュー作『The Sound of Trees Falling on People』は、深奥なエレクトロアコースティック・テクスチャに抜け目ないトリッピング・ビートを融合させており、その手法はいまだに新鮮みを失っていません。それから6年後にSeekaeがリリースした新アルバム『The Worry』は絶賛を受けています。ひっそりとしたスタートからの決定的な進化は際立っており、見事なまでに成熟し自信に満ちた新たなスタイルへの動きを見せています。オリジナル・メンバーのひとりGeorge Nicholasは、Abletonコミュニティのメンバーでもあります。Seekaeとしてのツアーや(同じくシドニー出身のHamish Dixonとのプロジェクト)Cliquesでの活動の合間を縫って、彼はシドニーのLive Schoolでプロデューサー志望者にレッスンを行っています。Pushにも詳しい彼は、お気に入りのテクニックを紹介し、急成長するバンドのメンバーとしてのプレッシャーについての洞察を提供することに非常に意欲的です。 Seekae『Another』 Seekaeでの作曲プロセスについてお聞かせください。どのようにして3名のメンバーの要求のバランスを取っていますか?Seekaeでの作曲プロセスは、皆が同じ街に住んでいないので、かなりまとまりのないものです。Alex Cameronと私はシドニーに住んでいますが、どちらも街を出ていることが多いし、John Hassellはイギリスに住んでいます。なので、3名がグループとして作曲することはありません。1作目の『The Sound of Trees Falling on People』は3人で集まって作りました。今回と比べると、ですが。2作目の『+Dome』もだいたい同じで、当時は共同のスタジオがあって、そこで一緒に作業し、ドラムとギターを録音してミックスも皆で一緒にやりました。『The Worry』の制作中は、皆が世界中のいろんな場所に散らばっていました。なので、一緒には書いてませんね。Dropboxを活用しています。その制作方法は完成作に影響しましたか?より検討されたものになったと思います。個人的には、一人で作曲する方がどちらかというと好きです。誰かと作曲するときは、その場の雰囲気に飲み込まれる可能性が必ずあるように思えるからです。あるアイデアにはまって「ああ、それは最高だね」などと口走ってしまい、批判的な考えができなくなることがあります。また、他の人たちと一緒の室内のムードをある程度ポジティブに保ち、それまでに作り上げたクリエイティブなエネルギーを壊さないようにしなければならないというプレッシャーもあります。一人での作業にはずっと時間がかかりますが、批判、検討、うんざりするほどゆっくりと悪戦苦闘しながらもさまざまな可能性について試行錯誤する時間を与えてくれます。 Seekaeによる『Blood Bank』パフォーマンスの様子(2014年Hype Hotelにて) それでは、ツアーに出る際、どのようにしてそれぞれのセットアップを統合させるのですか?ツアー前にだいたい1週間ほど集まってスタジオにこもり、トラックの再構築を行います。半日ほどかけて、「このトラックはこんな風に、これはこういう感じで」と意見を出します。オーディエンスを引きつけるライブ・パフォーマンスとサウンド・クオリティの間での妥協点を見つけるよう努力しています。単なるWAVファイルのプレイバックにならないよう、かといってサウンドのクオリティがないがしろになりすぎることのないよう、転換点を探すんです。あなたのライブ・セットやチュートリアルにPushが登場しているのを拝見しました。出会いのいきさつについてお話しいただけますか? シドニーのLive Schoolでトレーナーをしているので、ラッキーなことに発売前にPushに触ることができました。かなり初期のベータ・バージョンだったのですが、結局は最終的にリリースされたものにかなり近いものでした。新インストゥルメントとして触った感想はいかがでしたか?はじめのうちは、かなりベーシックな方法で使用していました。マルチカラーのLaunchpadといった感じです。「わあ、カラーだ!いいじゃないか!」って感じでしたね。パワーアップしたLaunchpadやAPCという印象だったので、しばらくそういう風に使用していました。その後、ドラム・シーケンサーにはまり始めました。これがなかなか見事なワークフローなんです。次にメロディ・シーケンサーを使い始めて、度肝を抜かれました。後でファームウェアに追加された機能だったかと思うのですが、メロディの扱い方を一変させました。作品に与えた変化はありましたか?新しい機材を導入することは、必ず変化への新しい視点をもたらしてくれます。サウンドについて新しい方法で考えることができます。Pushは、十二平均律と私との結びつきを変えました。音階を選択するとその音階になり、自由に操作できます。使える音は少なくなったとしても、その音階内で新手法を試すことが非常に簡単になり、私のようにあまり器用でない人に特に便利です。私はこれをライブでシーケンシングに使用しています。私はドラマーではありませんし、フィンガードラミングにも自信はありませんが、臨機応変にシーケンシングできるというのはうれしいです。何をシーケンシングなさっていますか?その場の判断でサンプルを操作しているのでしょうか、それともVSTのコントロールですか?ほとんどの場合、メロディ・ステップ・シーケンサーを使用して非常に短いアルペジオを作成しています。1小節ほどの短いシーケンスをループさせてノートを追加したりVSTのパラメーターを一番上のマクロを使用して変更したりします。こうして、さまざまな要素に微妙な変化を同時に加えることができます。独自のマクロ・マッピングも行っています。それだと、VSTを開いて自動マッピングを確認する必要がありません。通常、手持ちのVSTをインストゥルメント・ラックに入れ、一定のパラメーターを見つけてそれらをマクロにします。ADSR、フィルター、いくつかの空間系エフェクトといったベーシックなものです。Max for Liveはどのようにご使用ですか?Push用に作成されたパッチなどはご使用ですか?Push用の新しいシーケンサー・パッチを送ってもらったばかりです。Maxデバイスはたくさん使用していますが、Pushに特化したものはあまりありません。安全策として、ライブで使用するプラグインとMaxデバイスの数は最小限に抑えるよう心がけています。先日優れもののMaxパッチを手に入れたんです。ひとつはDiffuseという名のSpace Echoのシミュレーター、もうひとつはMagneticというパッチです。どちらもSurreal Machinesのものです。RE-201エミュレーターにコンボリューション・リバーブとオリジナルのワウ、フラッター、グリットが組み合わされています。 『Chro』制作について語るGeorge Nicholas(Live SchoolのInputセッションにて) CliquesはSeekaeに比べてよりフロアを意識した作品となっており、さまざまなUKアンダーグラウンド・サブジャンルが新鮮な手法で掛け合わせられています。制作プロセスに違いはありますか?まったく異なります。実際のプロセスについて言えば、Cliquesのトラックはどれもドラム、ベース、パーカッションからスタートして、その後必要に応じてメロディを補足するという流れです。Seekaeでは、ほとんどの場合コード進行からスタートして、その後、その上にメロディを構築し、ベースラインをかぶせ、最後にドラムを作成します。ドラム・サウンドにはかなり厚みのあるサウンドもありますね。そのまま使用してしまうとドラム・サンプルがビッグすぎると思うことはありますか?ありますね。サンプル・パックには、サウンドが優秀すぎて手を加える隙がないものもあります。サウンドが確立されていて実験の余地がないのです。ただ、Cliquesの制作ではかなりの処理が行われています。Cliquesでは、できるだけAbleton色を出さないように心がけているんです。テープ・サチュレーションのエミュレーション、MaxパッチのDub Machinesのような多数のエフェクト、古い機材のようなサウンドを生むエフェクトをたくさん使用しています。これらはパラレルでミキシングしているのですか、それともチャンネルに直接ドロップしているのですか?場合によりけりです。リターン・チャンネルには必ずSound Toys Decapitaorを置いていて、すべてを少しずつそこに送り、後で圧縮もかけます。バックグラウンドで機能させておいて、少しノイズも送ります。空間系エフェクトのルーティングは複雑ですか?オーディオを複数のセンドに送ってチャンネルに戻しているのでしょうか?いいえ。複雑になるのはラックを使用してラック内でチェーンを多数作成して多数のパラレル・プロセッシングを行う場合です。大抵の場合、私はトラックにサウンドを置き、ラック内で複数のチェーンを作成し、それらのチェーンにEQで特定の周波数帯域を選択します。その後、コンプレッサ―で低域を、コーラスで中域を、オーバードライブで高域をそれぞれ処理します。 SeekaeとCliquesについて詳しくは、FacebookおよびSoundcloudをご覧ください。

Abletonから、1年の感謝を込めて:Sample Magicの無償Pack

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Abletonから、1年の感謝を込めて:Sample Magicの無償Pack

今年はAbleton HQにとって、世界中のAbletonコミュニティのイノベーションとクリエイティビティに大きな刺激を受けた幸せな1年となりました。テクノロジーを想像もしなかった領域へともたらすプロデューサー、アーティスト、デベロッパー、互いに学びやサポートを提供し合うミュージシャンや教育者など、皆様に感謝し、今後の展開に胸を躍らせています。今年1年のありがとうを込めて、ワクワクをもたらすプレゼントを用意しました。Sample Magicのビンテージ・ドラム・ブレイクを集めたコレクションを、どうぞ皆様に。ワープなどの加工に最適な素材であるドラム・ブレイクは、ヒップホップ、あらゆる種類のダンス・ミュージックに大きなインスピレーションを提供します。ブレイクは、現在の音楽において不朽の魅力を放つ重要な要素となっています。Sample MagicのBreak Selectionは、超一流のパフォーマーによる演奏を最高級のビンテージ・マイク、コンプレッサー、イコライザーを豊富に使用してレコーディングし、過去数十年の優れたドラムのヴァイブを再現するよう精緻にミックスされています。ブレイクではありふれた何かを全く新しい何かへと変えることが要ですから、どんどん加工しましょう。出来上がった作品はぜひ公開してください。その際は、ハッシュタグ #MadeWithLive をお忘れなく。Break Selectionは無償で提供され、すべてのLive 9ユーザーにご利用いただけます。Packのダウンロードはこちらから。Live 9より前のバージョンをご使用の場合、Free Stuff Fridayシリーズ記事をご覧ください。ダウンロードで入手可能な無償パック、デバイス、インストゥルメント、サンプルを幅広く紹介しています。どうぞ素敵なホリディ・シーズンをお過ごしください!

2014年の総まとめ:人気ビデオ5本をご紹介

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2014年の総まとめ:人気ビデオ5本をご紹介

2014年の最後は、今年紹介したビデオの中から特に印象的だった5本を改めてご紹介。イェール大学からスウェーデンの森までさまざまな内容を紹介した一連のビデオは、どれもインスピレーション豊かでひらめきを与えてくれます。ヒューマン・ボイスとテクノロジ―のパワーが美しい何かへと融合する様子、Minilogueの圧倒のスタジオ機材、Ira Glassのクリエイティビティについての含蓄ある言葉など、刺激たっぷりの内容です。それではお楽しみください! 1/ A.Squaredがジェイムス・ブレイクをアカペラでカバー合唱であれインストゥルメンタル・ダンス・ミュージックであれ、アカペラ・パフォーマンスには私たちの中にある原始的な何かを揺さぶる力があります。人間の声が編み出すデリケートな螺旋と繰り返される高まりは、人間が長い年月の中で作り上げてきたものです。我々の祖先がLiveを持っていなかったのは残念としかいいようがありません。イェール大学のボーカル・グループA.Squaredがライブ・ルーピング、エフェクト、自身の声だけを使用して、ジェイムス・ブレイクの『Retrograde』を21世紀の合唱曲へと変化させています。グループ・メンバーJacob Reskeのインタビュー全文を読む 2/ マルメの森にたたずむMinilogueのスタジオ次は、今年一番機材オタクをあっといわせたビデオをご紹介。度肝を抜かれるMinilogueのビンテージ・シンセ、エフェクト・ペダル、ラック・エフェクト、ミキシング・ボードの数々は、マニアを腰砕けにするに十分です。さらに驚きなのは、これらの機材がすべてスカンジナビアの森に建つキャビンに収められていること。知覚を研ぎ澄ますための秘密がここにあります。このビデオが伝えるメッセージは表層的なものだけではありません。このデュオは、豊富なツールの世俗的な意味を超越するホリスティックな見地をクリエイティビティに対して持っています。 3/ AbayomiがPushを完全コントロール次は、AbletonのJesse AbayomiがPushを限界まで追い込むビデオ2本をご紹介しましょう。AbayomiはPushのパワフルな機能をいくつか紹介し、リアルタイム・ドラミング、ステップ・シーケンシング、マクロエフェクト・コントロール、サンプル・スライシングを使用して彼の最新トラック『Chemistry』を演奏しています。2つ目のビデオではすべての種明かしがされているので、年末年始の休暇中にビデオのヒントをもとに独自のアイデアを実現してみるのはいかがでしょう。 JesseによるPush向けLiveセット構築の手順説明を含む記事全文を読む. 4/ Kawehiがニルヴァーナの『ハート・シェイプト・ボックス』をカバーこちらも、声と最新テクノロジーが古い観点に新たなアングルをもたらす好例です。『ハート・シェイプト・ボックス』は哀愁と苦しみに満ちたニルヴァーナの作品のひとつですが、Kawehiはこれをライブ・ルーピングとリピッチ・サンプルを使用して斬新なカバーを作り上げています。5/ Ira Glass、理想との隔たりを埋めるには最後は元気の出る記事で締めくくりを。クリエイティブな目標と自分の才能にあまりにも大きなギャップがあるように感じられるなら、このビデオをぜひご覧ください。このビデオは、悪戦苦闘しながらも懸命に取り組む期間がいかにクリエイターにとって重要なものであるかを語るラジオ司会者Ira Glassの独白に鮮明な感情をもたらします。苦しみに飲み込まれてはいけません。すべては、あなたが内に秘めるアーティストになるための過程の一部なのです。

2014年総まとめ:人気チュートリアル5本をご紹介

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2014年総まとめ:人気チュートリアル5本をご紹介

音楽制作において確実なこと、それは、学ぶべき新しい事柄に終わりはないということです。知識には上限がないことを自覚しておくことは、自己満足に対する最大の防御策となります。もちろん大変ではありますが、たくさんの有益な情報が入手可能であることも事実。この記事では、2014年に紹介したチュートリアルの中から新しい知識と新たな視点を与えてくれる5本を厳選。コンボリューション・リバーブからMax for Live自作パッチングまで、ビデオで紹介されているアイデアは、より満足のいく音楽制作への扉を開いてくれることでしょう。 1/ インパルス・レスポンスを収集する

アーティスト・インタビュー2014:人気記事5本をご紹介

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アーティスト・インタビュー2014:人気記事5本をご紹介

Abletonが2014年に学んだこと。それは、サウンドに境界はないということです。音楽とは、枠組みを打ち破り、期待を上回るものなのです。プロデューサー、ミュージシャン、DJたちは、絶えず未知の音を探求し、オーディオの扱いにおける大きな可能性に光を当てています。今年示された多様性と革新性を讃える意味で、Abletonは、音楽を超えた世界にハイライトを当てたアーティストのインタビューから5本を選出し、改めて紹介することにしました。ブラジルのアンダーグラウンド事情から黒海でのフィールド録音まで、世界各地のAbletonコミュニティに生まれたクリエイティビティの持つパワーと可能性についてのストーリーをどうぞお読みください。 David Rothenberg:虫の音楽虫については、やっかいなものとして考える人がほとんどです。David Rothenbergにとって、虫は、創造の根底にある原始的なリズムへと導いてくれるもの。制作で選択肢が足りない気がしているのであれば、Davidによるこのショート・エッセイが視点の変化をもたらすきっかけとなるかもしれません。美しい音は、ありそうもない場所に隠れているもの。実はあなたのすぐ近くにあるのかもしれないのです。虫を使った音楽制作に関するDavid Rothenburgの記事を読む Archie Pelago:クリエイティブ・コレクティブ Mary Anne Hobbsのためのセッション録音を行うArchie Pelago ニューヨークのグループArchie Pelagoは、伝統的な楽器演奏と現代的なエレクトロニクスの狭間で制作を行っています。即興的なその制作スタイルは、偶然性とグループ内の相互作用をエネルギーとしつつ、それぞれが使用する3台のコンピューター・セットアップがワークフローには組み込まれています。制作とパフォーマンスにLiveを使用する彼らの手法は極めて優雅なもので、表現を抑止するのではなく実現するテクノロジーの好例ともいえるでしょう。彼らのインタビューでは、彼らの生まれ持つ才能がLiveによって最大限に高められているその秘密を知ることができます。 次のブラジル:リオとサンパウロの新たな音楽 リオのCarrot Green ワールドカップは、ブラジルのアンダーグラウンド音楽シーンを掘り下げる最高の機会となりました。お祭りムードの下では、経済的および社会的構造の複雑さが、若いアーティストたちが音楽で生計を立てることを難しくしています。このような苦難にもかかわらず、この記事で取り上げた3名のアーティストたちが見せる情熱と熱心さは、メインストリームの水面下で盛り上がりつつある良質な音楽への気付きとインスピレーションあふれる洞察を与えてくれます。 ブラジルのアンダーグラウンド音楽について読む Soundwalk Collective:ソニック・ノマド パリのポンピドゥー・センターでライブを披露するSoundwalk Collective Soundwalk Collectiveは、自身の旅と体験を、つかみどころがなく大いに興味を誘う彼らのパフォーマンスの素材として使用しています。地域性の高い彼らの作品は、一般的な音楽形態の型を打ち破り、オーディオの百科事典と音の旅行記という形を採っています。Berghainの共鳴音からパティ・スミスとのコラボレーションまで、Soundwalk Collectiveのストーリーは、音楽を超えたオーディオの可能性に言及しています。インタビュー全文を読む. Quantic:ナチュラル・アトラクション最後は、QuanticことWill Hollandが国をまたぐレコーディング・プロセスについて語ったインタビューです。そのクリエイティブ・メソッドとは、ときにはただ1曲のレコーディングのために大陸や時間帯を超えて旅するというもの。可動性は、プロデューサーやミュージシャンが利用できる最も強力な新ツールのひとつ。Quanticのストーリーは、デジタル・ドメインにおける文化交流の可能性を紐解くものとなっています。記事をチェック.

ヘビーなアナログ:Flatpackから新Pack登場

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ヘビーなアナログ:Flatpackから新Pack登場

Flatpackの2つの新しいPackは、アナログのすばらしい温かみと特性をデジタルの世界に注入する機会を提供します。多用途性と奇異さの優れたバランスを備えたAnalogik WavesとAnalogik Drumsは、精緻にサンプリングされた有名シンセとモジュラー・ドラム・サウンドをLiveにもたらします。 Analogik WavesAnalogik Wavesは、MacBethやCwejmanといった一流メーカーのモノ/ポリ・シンセ・サウンドから構成されています。どのサウンドもマルチサンプリングされており、アーチファクトのない完璧なレコーディングのアナログ・シンセが楽しめます。ベースをリードとして、パッドをドラムとして使用することも可能。エンベロープを調整してリピッチしましょう。繊細で美しいものから未加工の粗いものまで、膨大なバラエティを提供します。また、ほとんどのパッチではアナログの特性でもある不安定さをコントロールすることも可能となっており、ピッチの揺れや一定性を操作できます。1,000を超えるサンプルを使用して、独自のユニークなパッチを構築したり、80のモノ・プリセットと40のポリ・プリセットを活用したりできます。Analogik DrumsAnalogik Drumsは、数々のモジュラー・シンセを活用しパンチの効いたハーモニック・ビートを提供します。典型的なエレクトロの打音から分類が難しいモダンなグリッチまでさまざまな音を収録しており、一般的なコンテキストにも、より斬新なコンテキストにも対応します。膨大な数の打音が40のキットにあらかじめアレンジされており、また各キットにはそれぞれを活用できるようさまざまなマクロが用意されています。さらに、10のキットにはあのCwejman FSH-1を含む多数のリング・モジュレーターが使用されており、より幅のあるドラム・サウンドを提供します。

F.X.Randomiz: シュトックハウゼン、Push、サイバネティック・コード

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F.X.Randomiz: シュトックハウゼン、Push、サイバネティック・コード

カールハインツ・シュトックハウゼンを取り巻くイメージは、称賛と誤解が均衡しています。時として論議を呼ぶ存在であったことは確かですが、シュトックハウゼンの革新的な電子音楽作品、オペラ大作、管弦楽曲、合唱曲、器楽曲、そして電子音楽の理論的解釈、音響空間、偶然性の音楽への貢献は、20世紀後半の「アヴァンギャルド」な音楽とポピュラー音楽の両方に直接または間接的に影響を与えています。 シュトックハウゼンの莫大かつ多様な作品には、比較的頻繁に上演されているものもあれば、ヘリコプターが利用可能かどうかで上演の可否が決まる作品や、技術的に極めて要求度が高く実質上上演不可能なものもあります。そういった作品のひとつ、『Expo für 3』は、完成後43年の月日を経て初めて上演されました。難解でグラフを用いて記譜されている『Expo für 3』の「サイバネティック」な楽譜を興味をそそる音楽作品へと変換するという挑戦に、Mouse on Marsとの作品で知られるサウンド・アーティストのF.X.Randomiz、ボーカリストNatascha Nikeprelevic、ボーカリストでシュトックハウゼンと同じドイツ出身のMichael Vetterが取り組みました。3名は、『Expo für 3』のリハーサルとアプローチへの微調整に2年をかけ、上演後、シュトックハウゼン出版社の公式レコード・レーベル用に作品をレコーディングしました。AbletonはF.X.Randomizにインタビューを敢行。『Expo für 3』上演実現のためのPushとLiveの使用方法、エレクトロニックな要素と人間的な要素の相互作用を調整し、極端な即興をシュトックハウゼンの楽譜への忠実性でバランスをとるために3名のミュージシャンが用いた手法について話を聞きました。 『Expo für 3』の上演が困難な理由は何ですか?1970年に書かれてから、『Expo für 3』は一度も上演されていません。その記譜法が非常に独特で、上演は不可能だと考えられていました。この記譜法はサイバネティック楽譜ともいえるもので、固定の音、デュレーション、メロディ、リズムではなく、進む方向の指示のみが記載されています。この作品は、絶えず変化する音楽の流れに対応できる演奏者を想定して作られています。周期的に作品に現れるランダムな短波ラジオ信号が演奏者を新しい方向へと押しやるからではありません。おそらく、一方で即興、またもう一方で楽譜の厳守というこの特殊な組み合わせのせいで、綱渡り的な危険をはらむこの作品の上演に試みる者がいなかったのでしょう。それでは、『Expo für 3』上演を試みるというアイデアはどこから?象形文字のようにしか見えない楽譜で書かれたこの作品の世界初演とそれに続くレコーディングに私が参加できたのは、Michael Vetterがこのトリオのメンバーだったからです。彼は、ミュージシャンそして演奏家として1960年代にシュトックハウゼンと仕事をし、いわゆるサイバネティック楽譜の絶対的権威として知られていました。シュトックハウゼンとMichael Vetter(のちにNatascha Nikeprelevicも)にしか、この楽譜の読み方は分からないという状態だったのです。Michaelは、『Spiral』という独奏曲を1970年の大阪万博での初演で演奏し、シュトックハウゼン本人の監督の下、1996年にCD用にレコーディングしました。その後、彼とNatascha Nikeprelevicが二重奏曲『Pole』を2008年に初演し、2012年にシュトックハウゼン出版社のためにCDをレコーディングしました。三重奏曲の『Expo』でサイバネティック作品の三部作を完結させようと考えたのは自然な流れでしょう。2名のボーカリストが、サウンド・パレットをエレクトロニクスで拡張したいと考えたのです。 『Expo für 3』世界初演ビデオ(一部) このプロジェクト参加にあたって何か音楽的なトレーニングは行いましたか?ここではクラシック・ピアノの練習よりも独学の電子楽器とサウンド処理の知識の方が役立ちましたね。楽譜の読み方を知っていたこと、しばしば聴衆として、そして時に演奏家としていわゆる「芸術音楽」の世界における経験があったことは無駄ではなかったと思います。『Expo für 3』では、新しい方法での演奏が要求され、これまでに得た技術や習慣に頼ることができないような楽器を使用したいと考えていました。『Expo für 3』のサイバネティック楽譜に使用されているシンボルについていくつかご説明いただけますか?まず目に付くのはプラス記号とマイナス記号で、タイムイベントごとに最大4つあります。このプラスとマイナスの記号は、強度(音量)、音域(ピッチ)、音価(デュレーション)、分割(リズム区分の数)のパラメーターに割り当てられています。これら4つのパラメーターのどれにプラスまたはマイナスが適用されるかが示されている箇所はほとんどありません。つまり、プラスかマイナスの記号が1つ記載されている場合、それをどのパラメーターに適用させるかは私の自由だということです。しかし、その決定が私そして他の演奏者にもたらす結果も認識しておく必要があります。さもなければ、抜け出せない危険な領域へとあっという間にはまり込んでしまうことになります。また、拡張と圧縮を示す特別な記号もあります。中心点から2方向へと向かう拡張、または、2つの極から中央値に戻る圧縮です。これを理解するための最も簡単な方法として、ピッチの例があります。圧縮すると高いピッチが下がり、同時に低いピッチが上がります。これと同じ原理が他のすべてのパラメーターにも適用されます。ピッチが中央に収束すると同時に、静かな音は大きく、長い音は短く、複数に分割された音は縮合されます。この演奏方法の習得には、ものすごい集中力と、何よりもたくさんの練習が必要です。即興演奏中、他の演奏家とラジオ信号に反応している間は、シンボルが何を意味しているのかを考える時間はありませんから。他にも、さらに抽象的な指示を示すシンボルがあります。たとえば、「疲れるまで繰り返しこの修辞を演奏する」などです。また、一定のところである演奏者が別の演奏者に対していかに反応するべきかを指示しているシンボルもいくつかあります。 『Expo für 3』の楽譜、Push、短波ラジオが置かれたスタジオ トリオで唯一の非ボーカリストとして、技術面でこの作品にどのようなアプローチを採りましたか?また、LiveとPushを使用することとなったいきさつについてもお聞かせください。楽譜には指示はあっても絶対的数値は書かれていないので、コンピューター、特に、楽譜の構成に沿うよう活用できるMax/MSPパッチに楽譜の解釈の一部を任せるのは道理にかなっていると思います。ただ、こういったシステムは、2名のボーカリストとの即興演奏に使用するには柔軟性にあまりにも欠けていて融通が利かないことがすぐ判明しました。もうひとつ私が試みたのは、強く変更を加えたボーカル・サンプルのみを使用することです。これは、こうすることで作品のボーカル要素とエレクトロニックな要素を何らかの形で結び付けることができると考えてのことでした。しかしすぐに、これは独善的過ぎるアプローチであることが判明しました。リハーサルの過程で明らかになったのは、この作品で指示されているありとあらゆるサウンド・イベントに対して、そのイベント特有の特徴や要件に合わせて調整できるパラメーターを含むサウンドを準備する必要があるということでした。また、単体のサウンドと一緒にループやシーケンスを試してみたいと思っていたのですが、この目的に最適なソリューションはLiveだというのは明らかでした。Instrument Rackと、複数のアサインおよび微調整可能なパラメーター範囲をK別に設定できるマクロ・コントロールを使用するのが、私にとってはこの作品に必要とされる複雑なサウンド変更をコントロールする理想的な方法であることが分かったのです。もちろん、リアルタイムで演奏可能でなければならなかったのと、一般的なキーボードを使用しないということを初期の段階で決めていたことも関係しています。これまで学んだ演奏パターンに陥るリスクが高すぎたからです。リハーサルを開始したとき、Pushはまだ発売されていなかったので、当時のセットアップはLaunchpad、APC40、QuNeoを使用していました。その後、Pushの話を聞いたとき、『Expo für 3』上演に必要なすべてを兼ね備えていると思い、すぐに試してみたいと思いました。Pushに触れてすぐ、楽器を演奏しているような実感がありました。それに、Pushでは、それまで3つのコントローラーを使用して行っていた操作すべてが可能でした。最高なのは、サウンドだけではなく、多様な割り当て可能なスケール同様にサウンドの演奏方法をボタンを押すだけで楽器の状態を一変させてしまうことができることでした。『Expo für 3』用のLiveセットでは、楽譜内の各イベントまたはイベント・グループに対してセッション・ビュー・トラックを割り当て、それそれに独自のサウンド・ソース。エフェクト、また必要に応じてMIDIデータを用意しています。すべて再生準備が整っているので、矢印キーを使用して次のトラックに移動するだけです。ディスプレイの視覚表示も、楽譜内の位置がはっきり分かってとても便利です。コンピューターはステージの隅あるいは袖に置いたまま、コンピューター画面だけを使用して操作できます。声を加工せずそのままの形に残すというのはもとから意図したものだったのでしょうか?『少年の歌(Gesang der Junglinge)』について考えてみても、シュトックハウゼンは声に電子的な加工を加えることを初めて行った作曲家の一人であることを鑑みても、そのようなマニピュレーションに反対しないだろうと思うのですが。 カールハインツ・シュトックハウゼン『少年の歌(Gesang der Junglinge)』1955年 確かに、楽譜に声に変更を施すことを禁じる指示はありませんし、そうすることは選択肢として明白なものに思えるかもしれません。しかし、Michael VetterとNatascha Nikeprelevicの気心の知れた共演の様子を目の当たりにし、また彼らの声がもたらし得る信じられない程のサウンドのスペクトルを耳にすれば、彼らの声に電子的処理を加えることは冒涜にも等しいことであることは明らかです。シュトックハウゼンが1950年に『少年の歌』を制作したとき、声と電子工学を組み合わせることは極めて革新的なことでした。しかし、今では声をマニピュレートするのはジャンルに限らずよくあることです。ある意味、声が電子的環境に適応したといえるかもしれません。だからこそ、逆のことを行い、電子的に生成されたサウンドとシーケンスに、声のようなオーガニックな特性を加える試みこそ興味深いと思えるのです。『Expo...