Robert Henke: Lumière

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Robert Henke: Lumière

Ableton Liveの最古参デベロッパーのひとり、国際的にも高い評価を得ているアーティスト、そして最近では音響学の講師として、Robert Henkeはアートとテクノロジーが交差する分野で継続的に活動しています。そんな彼の最新プロジェクトがLumière。ビートが疾駆する自身のエレクトロニック・スコアに完全シンクロしてHenkeがレーザーを操る、意欲的なオーディオビジュアル・スペクタクルです。 ヨーロッパと日本でパフォーマンスを重ねたLumièreは、カナダ・モントリオールで開催されるMUTEKフェスティバルのハイライトのひとつとして注目を集めています。また、フェスティバル開催中、Robert Henkeとフェスティバル創始者Alain MongeauによるディスカッションがAbleton Loungeで行われる予定となっています。Abletonは、ベルリンで開催されたCTMフェスティバルのフィナーレにLumièreを披露したばかりのRobertに話を聞きました。 Excerpt from Robert Henke's Lumière あなたの作品においてテクノロジーとアートの結びつきは普遍的なものとなっていますが、あなたは、芸術的表現のためのツールを独自に開発することでもよく知られていますね。Lumièreプロジェクトにレーザーを導入したとき、シンセサイザーの仕組みやソフトウェアのプログラミング方法について試行錯誤していた昔を思い出しましたか? Lumièreではそういうことはありませんでした。というのも、Lumièreはレーザーを採用した2つ目のプロジェクトなんです。レーザーを使用した初のプロジェクトはFragile Territoriesという名のインスタレーションでしたが、あのときは、レーザーの仕組みについて理論上の知識しかない状態でスタートしました。ですので、私にとってのレーザー・グラフィックスの世界への第一歩は、頭の中にある理論が、実際にどこまで実現可能なのかを知ることでした。うれしいことに、当初考えていたコンセプトはすべてそのとおりでした。 しかし、後になって浮上してきた相違はとても大きく、私がやりたいと思っていたアイデアを完全に変えてしまうほどでした。分かったのは―これは、楽器を学ぶ場合ある意味非常に典型的なことなのですが―、あるものが一番輝く部分というのは、ぎりぎりの部分、つまり、楽器/媒体/マシンがその本来の役割を果たし始める、ある種の境界部分にあるということです。たとえば、MIDIノートのように単にノートを再生するのであれば、そのインストゥルメントのサウンドは問題になりません。なぜなら、ここで扱っているのはインストゥルメントそのものではなく、コンセプチュアルなアイデアだからです。しかし、ピアノを大音量またはソフトに演奏しようとする場合、その楽器のディテールを実際に感じることができます。 私にとって、レーザーを扱うという体験はまさにこれと同じでした。レーザーが動作を停止するぎりぎりまでブライトネスを下げた状態で動作させるとどうなるのだろう?音楽でいうなら非常に「静かな」演奏をした場合の、カラーや光覚の変化は?逆に最高レベルで動作させるとどうなるのだろう?1秒間に96,000回でオン/オフを切り替えるとどうなるのだろう?シャープなエッジが得られるのだろうか?超高速なグラフィックスを描画させるとどうなるのだろう?あるべきグラフィックスが描画されるのか?描画されないなら、その場合のアーチファクトはどのようなものになるのか?本当の意味で自分の楽器に向き合うことが始まるのはここからです。操作対象を知ってこそ遊び心のある操作ができるようになり、それは私個人的に非常に大きな満足感となります。アイデアを実行し、結果を見て、それに対応していくのです。 From a rehearsal for Lumière Lumièreを「インストゥルメント」と表現されているところからも、Lumièreビジュアルとオーディオのコンポーネントの統合、1つの共感覚のインストゥルメントと捉えていらっしゃるようですね。つまり、音楽とレーザーを同時に演奏、コントロールしているということでしょうか? 当初のもくろみはもっと複雑なものでした。ビート主体のエレクトロニック・ミュージックと、レーザーで作成したビジュアル・コンポーネントをやりたい、またそのどちらも即興的にコントロールできるような形にしたいと思ったのです。即興という側面は、ビジュアル面でも音響面でも当初から外せない要素でしたが、ビジュアルと音響の相互作用という点については大きく変化しました。 Liveのセッションビューを使用してMIDIトラックでドラムをシーケンスしていますが、別のMIDIトラックでMax for Liveを制御し、レーザーにコントロール・データを送信しています。これらのコントロール信号は実際にはアナログ電圧で、レーザーのダイオードと鏡の動作を駆動します。この電圧はオーディオ用ではないのですが技術的には同じなので、オーディオ・パスにフィードバックさせて、面白い形でビジュアル・パターンに完全同期するグリッチーなデジタル・ノイズのレイヤーを加えています。 One of Robert's Max for Live devices for Lumière 解決が必要だったことのひとつに、レイテンシーとジッターの問題がありました。レーザーはレーザーの側に設置された2台のコンピューター上のMaxパッチでコントロールしていますが、サウンドは3台目のラップトップで出力しており、これら3台のマシン同士の通信はMax for Liveを介したEthernet接続なので、ある程度のレイテンシーとジッターが生じてしまいます。 これは、シンプルなレーザー・コントロール・ソフトウェアをLive内のMax for Liveデバイスとして作り直すことで解決しました。今は2種類のレーザー装置を使用していて、ひとつはリモート・マシンのレーザーを実際に駆動し、もうひとつのレーザー装置はサウンド生成にのみ使用されます。しかし、どちらにも同じコントロール信号が供給されています。たとえば、「circle」というコマンドを「size 5」や「speed 7」といった記述タグといくつかのアトリビュートと共に送信します。これを、レーザー・コンピューターは形状として、オーディオ・コンピューターのMax for Liveはサウンドとしてそれぞれ解釈します。うまく機能していますよ。 シンプルでエレガントな解決方法ですね。 コンセプト面から見れば、確かにシンプルな解決策です。しかし実際には、これは巨大なソフトウェアです。私が記述したレーザー・グラフィックス・ジェネレーターはかなりのコンピューティング・パワーを必要としますから。これはレーザー・メーカーからもかなりの評価を得ました。メーカー製のソフトウェアでは不可能だったことを可能にすることができたので。 それでは、万が一音楽に行き詰まってもレーザーの会社を立ち上げることができますね… 実際、楽しめると思います。これらの装置にかなり集中して取り組んでいますし、ハードウェアを含む技術面への理解はますます深まっていますからね。スキャニング・ユニット(レーザー・ビームを動かす部分はスキャナーと呼ばれる)に不具合があったのですが、私は、スキャナーを交換する方法を修得しました。それは、交換しなければならなかったということもありますが、「このメディアを使用していくなら、その仕組みを理解しておきたい」と考えたからです。...

トロンボーンで聴くPharrellの作品、KawehiによるRadioheadカバー - Liveでのルーピング

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トロンボーンで聴くPharrellの作品、KawehiによるRadioheadカバー - Liveでのルーピング

Kawehi、「Fake Plastic Trees」をカバー Abletonコミュニティからのビデオには、いつもAbletonスタッフもすばらしいインスピレーションをもらっています。先日も、数名のソロ・アーティストがライブルーピングにLiveを使用し、一回のセッションでトラックを構築しようとしているビデオに感銘を受けました。今回は、このエキサイティングな(そしてときに緊張感あふれる)プロセスを捉えたビデオをいくつかピックアップしてご紹介。まずは、Christopher Brillによる、耳から離れないキャッチーなPharrellの「Happy」をトロンボーンでカバーしたテイク。 ご自身で試してみたくなりましたか?Christopherは彼のサイトで楽譜を公開しています。 Abletonでも以前紹介したことのあるKawahiは、カバーやオリジナル作品でインスピレーションあふれるルーピング・パフォーマンスを見せる、才能あるマルチインストゥルメンタリストです。そんな彼女の最新作は、Radioheadのエモーショナルな作品「Fake Plastic Trees」。どうぞご覧ください。 Kawehiのその他のビデオは彼女のVimeoチャンネルでご覧いただけます。 最後を飾るのはKevin Yost。Kevinはすべての作品をその場で作曲、ループさせる「Live and Improvised」シリーズで注目(目だけでなく耳も)を浴びました。どのパフォーマンスもそれぞれ異なりますが、忘れられないディープなグルーヴはどのパフォーマンスにも広がっています。Kevinのスタジオでのインプロビゼーション風景をご覧ください。 他にもいろいろと聞いてみたくなりましたか?Kevinは、ベオグラードのClub Mladostで行われたライブのセットを無償ダウンロードとして公開しています。どうぞご利用ください。

Events

MUTEK 2014のAbleton Lounge

EM15 - ElektraおよびMUTEKの15周年を祝って 今年のMUTEKフェスティバルで、Abletonは、テクノロジー分野の先駆者による対話とLiveおよびPushによるセッションの場を提供する、Ableton Loungeを開設します。 イベントはすべて参加無料で一般参加可能となっており、スケジュールは次のとおりとなっています。 PHI Centre 407 St-Pierre Street Montréal, Canada イベント・スケジュール一覧については下記をご覧ください: 5月29日(木) | 午後2:00~午後3:00 リッチー・ホウティンとのQ&Aセッション スタジオとライブ・パフォーマンスにおけるテクノロジーの使用について、リッチー・ホウティンが詳しく論じます。 Watch this space for live-streaming link 5月29日(木) | 午後3:00~午後4:30 Ableton Live & Pushドロップイン・セッション AbletonのインストゥルメントPushでのハンズオン・プレイ、Abletonスペシャリストによる制作アドバイスなど。 5月29日(木) | 午後4:30~午後6:00 ロバート・ヘンケ&アラン・モンゴー対談 アヴァンギャルドなミュージシャンでありテクノロジストでもあるロバート・ヘンケは、エレクトロニック・ミュージック技術の発展を長年にわたり追求してきました。MUTEK創立者のアラン・モンゴーは、これまで15年間にわたりMUTEKを支えてきました。この対談で、アランとロバートは彼らに共通する歴史を振り返り、先進的な音楽、芸術、テクノロジーに対する情熱をたどります。 Watch this space for live-streaming link 5月30日(金) | 正午~午後1:30 Ableton Live &...

Dauwdが時間に挑戦、FACT誌の新コンテスト

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Dauwdが時間に挑戦、FACT誌の新コンテスト

FACT誌のシリーズ記事「Against the Clock」は、Abletonも大のお気に入り。これまでにも、Tom DemacやKiNKがそれぞれのスタジオでわずか10分の間にトラックを作成する様子を紹介してきました。最新エントリでは、Abletonになじみの深いDauwdが挑戦。ロンドンにある彼のスタジオでには新旧ハードウェアが並んでいますが、その中心となるのはPushとLiveです。下からビデオでご覧ください。 「Against the Clock」に挑戦するチャンスです!FACT誌とQuantize Coursesが主催するコンテストに、Abletonもスポンサー協力しています。作品をエントリーしませんか。受賞者はFACTに掲載され、AbletonおよびQuantize提供による賞品を獲得できます。

Dark TouristがPushを語る

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Dark TouristがPushを語る

新作ビデオでは、ベルリンを拠点に活動するプロデューサーDark TouristがPushを実演します。 気に入りましたか?「ブレードランナー」を彷彿とさせるメロディは、AnalogとMax for LiveデバイスをベースとするカスタムメイドのRackで作成されています。このRackを無償ダウンロードし、Pushでの独自の作品作りに使用できます。出来上がった作品はぜひ公開ください!FacebookまたはTwitterでトラックをシェアする場合はタグ #MadeWithPush を付けるのをお忘れなく。 さまざまなPushテクニックをカバーしたその他のビデオを観る Dark Touristについてさらに詳しく

Végétophone: 自然をモチーフに音楽を教える

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Végétophone: 自然をモチーフに音楽を教える

Végétophoneについて学生に説明するChapelier Fou 写真© Gwendal Le Flem エレクトロニック・ミュージックの世界を子供たちに説明する方法は?これが、Chapelier Fou名義で活動するアーティストLouis Warynskiに提示された質問でした。彼の答えは、「Végétophone」という名のインスタレーションとなりました。自然からインスピレーションを得て、シンセサイザーやエフェクトを木の一部として提示し、音を木の枝、パターンを果実としてとらえています。下から「Végétophone」についての短いビデオをご覧ください。その後、アートでもありインストゥルメントでもあるこの作品のメイキングと作品へのLiveとMax for Liveの使用についてWarynskiのインタビューを続けてお読みください。 「Végétophone」はどのようにして誕生したのですか? 私のバックグラウンドは音楽教育なのですが、アーティスト・イン・レジデンス事業である小学校に招聘された際、アーティストとしての自分のためだけではなく、子供たちのためになる何かを造りたいとまず考えました。徐々に、エレクトロニック・ミュージックと教育の交差点でのインスタレーションというアイデアが出来上がってきました。インスタレーション作品であり、音階、調、拍子といった楽典の基本的な知識を学ぶツールでもある機械のようなものを思いつきました。こういったことは、ただ概念を学ぶよりも、手を使って操作するとより理解しやすくなると思います。 いろいろと考えて、リズムのセクション、和音のセクション、メロディーのセクションという3本の枝を持つ木として音楽を表現することにしました。枝にはそれぞれライム、バナナ、リンゴの形をした「実」がなっていて、実はそれぞれ音楽のパターンになっています。木の幹にはグローバル・パラメーター(テンポ、拍子、根音、長調/短調)があり、各枝に影響を及ぼします。 完成形の「Végétophone」。木の幹、枝、実にはそれぞれコントロールが付属している 「Végétophone」を教育用ツールとしてお考えですか? レジデンス中はずっと学習ツールとして使用していました。主な目的は、子供たちが音楽の概念と用語を学び、触ったり感じたりできる何かとその知識を結び付けることができるようにすることでした。子供たちとは、一緒に音楽を聴き、分析し、音に合わせて踊ったりして、かなりの時間を過ごしました。 サウンド素材の90%は、子供たちと一緒に録音したサンプルです。校内のさまざまな部屋で、本、スポーツ、台所、姉妹のおもちゃ、お父さんの楽器など、さまざまなテーマで録音しました。私が担当したクラスの子供たち(9歳)が、彼らの知識を他のクラスや先生たちに伝えていくだろうという考えもありました。 「Végétophone」の仕組みについて教えてください。それぞれのボタン/スライダー/ノブはサウンドにどのように作用するのですか? 木の幹では、ネットワーク全体に影響するパラメーターを設定できます。拍子記号には、一般的な分数(常々分かりにくいと思っていました)を使用する代わりに、1小節ごとの拍を3拍または4拍のいずれかとし、これらの拍を2つに分けるか、3つに分けるかを決めるようにしました。事実上、これらは4分の3拍子、4分の4拍子、8分の9拍子、8分の12拍子になります。 テンポはひとつのノブで設定します。グローバル・トランスポーズは-7~+7半音です(根音の両側、4度および5度)。 実にはそれぞれ音楽パターンが含まれていて、ボタンを使ってトリガーしたり停止したりできます。同じ種類の実は一度に1つだけ演奏することができ、その実はLEDで示されます。同時に、ドラム・トラック、ベースとコードのトラック、メロディのトラックも再生することができるようになっていて、すべてのピッチ、テンポ、拍子が合うよう考えて操作しなくてはいけません。 各枝にはそれぞれ独自の設定があり、ボリューム(ピアニッシモからフォルティッシモ)、ディレイとリバーブのセンド(山びこと洞くつ)、サウンド/キット選択となっていて、ポットやフェーダーでアクセスできるようになっています。バナナにはもうひとつオプションがあります。和音のアルペジオです。 要は、巨大なMIDIコントローラーですね。 「Végétophone」の実際の動作の様子 Liveは「Végétophone」にどのように使用されていますか? すべてはMac mini上で動作するLive 9とMax for Liveで行われていて、MIDIbox 128I/OとArduinoボードを使用してMIDIでコントロールされています。 簡単なところから始めましょう。 - サウンドの選択はRackのチェーン・セレクターを動かすことで行います。 - メジャー/マイナーの選択は、バナナとリンゴにScaleエフェクトを適用します。 - グローバル・トランスポーズは、バナナとリンゴにPitchエフェクトを適用します。 - テンポでは…当たり前ですがテンポをコントロールします。 - エフェクトは2つのリターン・バスだけです。 - アルペジオはArpeggiatorエフェクトで作成されています。 サウンドはすべてSimplerのRackとDrum Rackで演奏したサンプルから作成されています。Operatorも数インスタンス使用しています。 The hardware guts...

Dub Machines:Live用アナログエコー

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Dub Machines:Live用アナログエコー

便利ではありますが、ビンテージ・テープ/アナログ・ディレイの気骨ある個性、ワイルドなドップラー効果、温かみには及びません。Dub Machinesで、Surreal Machinesはクラシックなハードウェア・ディレイ・ユニットからインスピレーションを得てアナログの魂とデジタルの柔軟性を兼ね備えたデバイスを生み出しました。 Magnetic いくつかの有名テープ・ディレイ・ユニットをモデルとするMagneticは、テープディレイの特性をLiveにもたらします。シマーやピンク・フロイド・スタイルのエコーからリー・スクラッチ・ペリーを彷彿とさせるフィードバック・テイルまで、Magneticは多才に活躍します。テープ・モデルのオプションと内部コンボリューション・リバーブ用のスプリング・リバーブ・サンプルを豊富に備えたMagneticは、名器の真のサウンドを届けます。 Diffuse これはディレイ?あるいはリバーブ?いいえ。生き生きとした超個性的なサウンドが特徴のDiffuseです。洗練されたフィードバック・ネットワークを搭載したDiffuseは、簡素なバーチャルスペースから異世界風の独特な雰囲気を持つスウェルまでさまざまな効果を生成できます。 Dub Machinesについてさらに詳しく

Kyoka:超人的なパワー

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Kyoka:超人的なパワー

ますます盛況のエレクトロニックミュージック界において、アーティストが自身の作品を聴いてもらうには、芸術性と技能はもちろんのこと、ある種の超人的なパワーが必要であるようにも思えます。ミュージシャン/作曲家Kyokaは、そんなパワーを持つアーティストのひとりかもしれません。「is (Is Superpowered)」は、定評あるベルリンのレーベルRaster-Notonからリリースされた最新アルバムです。アルバムに収録されたパワフルで小気味よい12のトラックは、うねるビートとオーガニックなボーカルサンプルが大胆に融合され、既存のジャンルに分類できない奇抜な作品となっています。Abletonは、アルバム制作に採り入れられたコンセプトとテクニックについてKyokaに話を聞きました。 あなたの音楽は斬新で遊び心にあふれています。どのようなきっかけで、いつ音楽を始めたのですか? かなり前です。初めて父がピアノを教えてくれたのが3~4歳の頃で、それから13歳までは我慢して続けました。才能あるピアニストにはなれませんでしたが、楽典は学べたし、楽譜も読めるようになりました。 「我慢して」続けたとのことですが、ピアノの練習はそれほど辛いものだったと? ええ、辛かったです(笑)。アドリブで演奏したかったのですが、させてもらえなかったので。古典的なピアノレッスンは私には窮屈でした。制約が多すぎて。音楽を作りたいという気持ちは確かでしたが、もっと自由にやりたかったのです。 その自由はどうやって見つけたのですか? 初体験は両親のテープレコーダーでした。壊れたから好きにしていいと言われたんです。すぐに分解して修理しようとしましたが、できませんでした。でも、リールを手動で回すことができて、おかしな音を出すことができました。夢中になりましたね。 でもこのテープレコーダーでは録音はできませんよね… はい。最終的に、私のテープレコーダーは3台に増えました。そのうちの2台で同時録音した内容を再生し、3台目のテープレコーダーで録音するということをしていました。再生速度がだいたい一緒であれば、フェイザー効果が生まれます。でも、リズムに合わせて再生速度をずらせば、エコー効果になります。こうやって音楽を作り始めたのが7歳頃です。3台のテープレコーダーをがしゃがしゃやりながら、終わりのないレコーディングセッションをしていました。 その後本格的に音楽を勉強したことは? 私はその気でしたが、両親に反対されました。経済学を勉強するため、東京に引っ越しました。Roland MC-505 Grooveboxを購入して、ビートプログラミングとステップシーケンスについて勉強しました。いくつかデモを録音し、しばらくしてOnpaレーベルからメールが届いて、ここからEPをリリースしました。 音楽制作用のソフトウェアを使用し始めたのはいつですか? 4回生のとき、必修授業もなかったのでよく旅に出ていて、スペイン、パリ、ロンドン、アメリカに行きました。たくさんのミュージシャンと知り合ったのですが、PCでCakewalk Sonarを使い始めている人が多かったんです。それで私もやってみました。2006年に、あるプロジェクトでAbleton Liveに出会って、それからLiveを使うことが増えました。今ではLiveが私のクリエイティブツールになっています。トラックメイキングはLiveで始めます。インスピレーションがわくので。1年くらい前まではApple Logicでミックスすることが多かったのですが、今はファイナルミックスを含むすべての制作過程にLiveを使用しています。 テクスチャだけでなく、ビートに含まれる要素に至るまで、フィールドレコーディングのようなサウンドが多いですね。 そうですね。フィールドレコーディングは大好きです。自分で録音した音には必ず独特な個性があります。それに、フィールドレコーディングではその音の空間感も捉えることができます。サウンドライブラリのキックドラムは必ずステレオ音場のちょうど真ん中にあります。でも、最終的にキックドラムとして使用することになる音を自分がステレオで録音した場合、キックの音場での座りがよくなり、より三次元で輪郭がくっきりと感じられる音になるような気がします。 フィールドレコーディングはどこでどのように行っていますか? もうかなりのコレクションが出来上がっているのですが、いまだに旅に出ると本当にどこででも録音しています。数年前、2008年頃はかなり真剣にやっていました。高価なレコーダーを購入して、96kHzで録音していました。できるだけ高いオーディオ品質で録音したかったので。最近は、Roland/EdirolやZoomから出ているより小型のフィールドレコーダーを使用しています。持ち歩きに便利なので。気付いたんです、いい音というのは無理に手に入れられるものではないと。めぐり合いの問題なんです。高価な機材は必要なく、録音ボタンを押すしかるべき時にしかるべき場所にいることが大切です。 お気に入りのマイクやテクニックはありますか? テーブルや対象に取り付けて使用するタイプの、シンプルなピエゾマイクを使っています。録音対象を叩いたりピエゾを指で触ったりしてからエフェクトをかけます。ステージだけではなくスタジオ制作時にもやりますね。アルバムに収録されているトラック「Piezo Version Vision」はそうして出来上がった作品です。 「Piezo Version Vision」に使用されているドラム・サウンドの材料:ピエゾマイクとAkai head RushやOto Biscuitなどのハードウェア・エフェクト 録音したサウンドはどうやってAbleton Liveアレンジメントに取り込んでいますか? 以前はオーディオトラックに直接ドロップしてそこで編集していました。最近はLiveのSamplerに取り込むことが多いです。サウンドをループさせて少しEQをかけますが、それ以上のことはほとんどしません。フィールドレコーディング特有の個性を残したいので。 シンセサウンドはどのようなものをご使用ですか? いろいろですが、パルス波は大好きですね。友達がパルス波オシレーターを作ってくれたんです。なんと2台も。手付けの回路基板とバッテリーで、互いにモジュレートするよう接続できるようになっています。基本的にはモジュラーシンセですが、世界最小じゃないかと思います。 個性的なサウンドツールのファンとお見受けしますが。 そのとおりです。アドレナリン値がぐっと上がる気がします。正攻法すぎたり、ありきたりすぎるものにはすぐ飽きてしまって、集中力が切れてしまいます。「きちんとした」シンセは私には合いません。もっと無骨で、あまり手が加えられていないツールが必要なんです。ステージで使用しているあの小さなパルス波回路基板には呼び出し可能なプリセットはありませんが、その代わり、毎回新しい予測不可能なサウンドを生み出してくれます。ステージパフォーマンスでは、生み出されるサウンドに対応を強いられることになりますが、このチャレンジがとても好きです。 斬新なオーディオツール:相互接続可能な手付けのパルス波オシレーター ソフトシンセとエフェクトの話が出たところで、手作りオシレーターのアナロジーはカスタムメイドのMax for Liveデバイスに通ずるものがありますね。 そのとおりです。Liveの内部EQやダイナミクスエフェクトなどスタンダードなソフトエフェクトも使用していますが、たとえば「Lined Up」というトラックでは、友人のHisaki Itoが構築したシンプルなパルス波シンセのMaxパッチを使用しています。 Hisaki ItoがKyokaの複雑なパルス波オシレーターMaxパッチをMax...

Goth-Trad: A New Epoch

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Goth-Trad: A New Epoch

Goth-Tradは、近年エレクトロニック・ミュージックの世界で最も尊敬を集める日本人プロデューサーの一人。90年代後半に当時のアブストラクトなヒップホップに触発されてトラック・メイキングを開始し、その後日本を代表するダブ・レゲエ・バンドDry & Heavyのベーシスト、秋元”Heavy”武士と共にRebel Familiaを結成。ダブとロック、ドラムンベースなどを融合した新たなスタイルを確立し、日本国内で絶大な人気を獲得しました。その活動と並行し、Goth-Trad名義でソロの制作を続け、2000年代前半にエクスペリメンタルなノイズ・アルバムも発表しています。 そんな彼がさらに注目を集めるようになったのは、同年2005年に発表したアルバム『Mad Raver’s Dance Floor』。UKで台頭してきたダブステップのサウンドにインスピレーションを受けた本作の、収録曲のタイトルでもあった「Back To Chill」という名のダブステップ・パーティーを、2006年から東京で開始します。この年にDeep Mediを主宰するMalaと出会い、翌年同レーベルから「Cut End」が、Skudからは「Back To Chill」がリリースされ、一気にダブステップ・プロデューサーとしてその名を確立しました。2012年にはDeep Mediから7年ぶりとなるアルバム『New Epoch』を発表し、それ以降は新たなアプローチの曲作りを始めています。 東京のLiquid Roomで行われたワークショップにおいて、浅沼優子がGoth-Tradと彼のサウンド作りと新たな方向性について聞きました。 Goth Trad - "Sunbeam VIP" Goth-Tradさんはこれまで様々なスタイルの音楽を作ってきていますが、そこには一環した美意識があると思います。ややダークで、低音重視で、質感はザラついている。ご自身には何か目指している音のイメージがあるんですか?それとも、自然と元々持っている好みが滲み出ているということなんでしょうか? もともと、最初に音楽に入ったのはKraftwerkなんですよ。小学校6年生くらいのときにKraftwerkのリマスター盤アルバムみたいなのが出て、それを聴いたのがきっかけなんです。そのダークなジャケットのイメージと、音と、無機質な感じが原点ですね。でも、Kraftwerkって無機質だけどエモーショナルなんです。その次がLFOのファースト・アルバムなんです。 意外にもテクノなんですね!最初ヒップホップ・シーンから台頭してきた印象だったので、驚きです。 いや、もろテクノなんです。LFOとNightmares On Waxのファースト。それも、無機質なんだけどウワモノがエモーショナルなところがある。それが自分の音楽にとってもずっとテーマであるような気がします。 ダブがバックグラウンドにあるのかと思ってましたけど? 俺、ダブは全然聴いてないんです(笑)。むしろ、WarpとR&S、Rising Highをひたすら買ってました。そこからダブとか、On-U Soundを聴いたりとか。ブリストル系のMassive AttackとかPortisheadを聴きつつ、Wordsoundなんかも聴き始めて。その影響が一番残ってると思いますね。だから、Lee Perryとかはそこまでのめり込まなかったんですよ。手法としては面白いと思って取り入れたけど。どちらかというと、ダウンテンポとかアブストラクト・ヒップホップの質感を取り入れながら、テクノのエモーショナルな部分を、2000年くらいに曲をリリースし始めた頃から入れようと思っていましたね。 だから、俺はフレーズとかメロディ、もしくはそれに変わるベースラインは必ず入れているんです。そこが自分の曲の特徴だと思うし、自分が勝負出来るところだと思っていて。さらに上をいくには、ウワモノの使い方とか、エモーショナルなものを注入することで曲の個性を出さないといけないと思って。それを、今でもやっていきたいと思ってます。『New Epoch』の一曲目なんかも、ウワモノを重視して作ったし。感情的な色をつけるというか。それが自分の中では一番大事な部分ですね。 Goth Trad - "Man in the Maze" 現在はダブステップからは少し離れているとのことですが、その理由は?また他にはどのような音楽に興味をお持ちですか? ダブステップで面白い曲を作っている人はたくさんいるし、それはチェックしているつもりなんですけど、やはり2006~8年の頃に比べると、その量は減ったかなとは思いますね。自分も、ダブステップのテンポでありながら、どこか違う曲を作りたいと思っているので、その分時間もかかりますね。アルバム制作して、それに集中しすぎたところもあるので、今は違うものに触れたいんです。 俺の場合は何か明確なテーマがあった方がアルバムが作りやすくて、例えばノンビートのノイズだとか。『New Epoch』は、6~7年自分がやってきたダブステップにフォーカスして作ろうとしたわけです。じゃあ、今はどうしようか、というのをここ1年くらい考えてます。テクノもチェックしてます。BlawanとかEmpty Setとか、インダストリアルな感じのものが結構好きで。今後は自分がこれまでやってきたことを、もっとナチュラルに出していきたいですね。ダブステップを含めて、自分の色んな部分を融合させていきたいと思っています。自分の昔のノイズのサンプルを使いながら、テンポも変えてダビーにしてみたり、そういう曲作りをしてみています。 アルバム『New...

Ableton University Tour

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Ableton University Tour

あなたが講義の中でLiveの使い方を教えている教授であったとしても、フリータイムにPushを使って音楽作りを楽しんでいたとしても、課題にMax for Liveを使用していたとしても、Ableton LiveとPushが様々な教育の場で生かせます。Abletonと教育について、もっと私たちと共に学びましょう。そしてPushとLive9に触れてみましょう。 4月から5月にかけて、このツアーは世界各地のたくさんの教育機関を回ります。各会場でAbleton公認トレーナーとアーティストが、楽しくてためになるAbleton LiveとPushのデモンストレーションを、特に生徒たちの音楽クリエーションの可能性にフォーカスして行います。これらのプレゼンテーションは学生、学部教員およびスタッフ、そして一般の方、どなたでも参加して頂けます。 Ableton University Tourがあなたの学校(もしくは近くの学校)にやって来るかとうか、以下のリンクから見てみましょう: United States Mexico Netherlands Luxembourg United Kingdom Australia Germany Austria United States Cincinnati, OH Date: April 10 School: University of Cincinnati Time: 11am Presenter(s): Orville Kleine (ACT) Venue: TBC RSVP: No RSVP needed Ann Arbor, MI Date: April 11 School: University...

Playpad Circus: ドラムとサンプルをPushでプレイする

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Playpad Circus: ドラムとサンプルをPushでプレイする

Abletonの最新Pushビデオでは、ベルリンのビートメイカーPlaypad CircusがAbletonインストゥルメントを徹底分析し、ドラム・モードについて詳細に解説しています。見ているだけでは物足りないという方のために、Playpad Circusは無償Rackも提供してくれました。 まずは、Pushのリアルタイム・ステップシーケンスとオートメーション機能を使用してわずかなサウンドだけで1分半のトラックをあっという間に作成する様子をご覧ください。スイングを適用してベロシティに変化を付けることで個々のサウンドのタイミングをナッジするテクは必見必聴です。すべてPushから直接微調整できますが、Playpadはこれらの機能を非常に効果的に使用しています。 Playpad CircusのSoundcloudからフルトラックをダウンロードすることも可能です。また、個別のサウンドすべてを含むRackをダウンロードし、独自のPush作品を作成することもできます。出来上がった作品はぜひご公開ください!FacebookまたはTwitterでトラックをシェアする場合はタグ #MadeWithPush を付けるのをお忘れなく。 ドラム・モードでのプレイと他のPushテクニックに関するビデオをもっと見る

Pantha du Prince & The Bell Laboratory: 楽器とセットアップ

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Pantha du Prince & The Bell Laboratory: 楽器とセットアップ

Abletonは、ロンドン・バービカン・センターでのTerry Rileyの「In C」公演準備を進めるPantha du Prince & The Bell Laboratoryの様子をビデオに収めました。コラボレーションに使用されているエレクトロニックとアコースティックの両楽器について、Hendrik Weber(Pantha du Prince)とThe Bell LaboratoryのHeming Valebjørgに詳しく話を聞きました。まずHendrikが、The Bell Laboratoryの楽器のプロセッシングにAbleton Liveとハードウェア・エフェクトをどのように使用しているのか、シンセとドラムマシンをステージでどのようにシーケンスしているのかについて説明しています。 次に、Hemingが、チューブラーベルの輝きのある音からバラフォンの温かみのあるサウンドなど、The Bell Laboratoryが演奏するパーカッション楽器のセットを紹介しています。 Pantha du Prince & The Bell Laboratoryのロンドン・バービカン・センター公演準備の様子を見る Ableton Liveについてさらに詳しく この記事をFacebookでシェア