16. クリップをローンチする
Liveのセッションビューは、ミュージシャンがおのずと演奏や即興できる環境に設計されている点で、他とは一線を画しています。 セッションビューを最大限に活用するには、セッションビューのクリップをどのように設定するかが重要です。 この章では、セッションビュークリップのトリガー(または[ローンチ])動作の設定方法について説明します。
16.1 ローンチコントロール
セッションビュー内のクリップをローンチするには、 クリップ再生ボタン や リモートコントロール を使用します。 クリップのローンチ設定は、対応する クリップのパネル 内に表示されます。 クリップのローンチ設定は、セッションビューのクリップのみに適用されます。 アレンジメントビューのクリップはローンチされませんが、アレンジメント位置に沿って再生されます。
クリップのローンチ設定を表示するには、セッションビュークリップをダブルクリックしてクリップビューを開いてから、クリップローンチボタンのアイコンがあるクリップタブ/パネルをクリックします。

複数のクリップを選択してからクリップビューを開くと、それらのクリップに対する編集とローンチ設定を同時に行うことが可能です。
16.2 Launchモード

[ローンチモード]セレクターでは、クリップがマウスのクリック、コンピューターのキーボード操作、MIDIノートに反応して、どのように動作するかを選択できます。
- [Trigger]:マウスのボタンを 押す とクリップが再生を開始して、ボタンから 指を離す 動作は無視されます。
- [Gate]:マウスのボタンを 押す とクリップが再生を開始して、ボタンから 指を離す と停止します。
- [Toggle]:マウスのボタンを 押す とクリップを再生して、 指を離す 動作は無視されます。 もう一度ボタンを押すと、クリップの再生が停止します。
- [Repeat]:マウスのボタンやキーを押している間だけ、クリップのクオンタイズ値に従ってクリップを繰り返しトリガーします。
16.3 Legatoモード

1つのトラックにループ再生するクリップをいくつか集め、それらのタイミングを合わせたままクリップを切り替えたいとします。 クオンタイズ設定に大きな値(1小節以上)を設定することもできますが、そうすると、音楽表現が制限されてしまいます。
このような場合、各クリップを[レガートモード]にすることで対処できます。この方法だと、クオンタイズをオフにして操作することができます。 レガートモードのクリップがローンチされると、同じトラック内で再生されたクリップの再生位置が引き継がれます。 こうすることで、どのような場面でも、タイミングがずれることなくクリップを切り替えられます。
レガートモードはブレイクを作る時に役立ちます。別のループを一時的に再生し、トラック内で前に再生されていたものにジャンプして戻ることができます。
すべてのクリップが同じサンプルを再生(クリップ設定のみ異なる)という状況を除き、レガートモードでクリップをローンチすると音が欠落することがあります。 これが起こる原因は、Liveが事前にディスクからロードできないような、サンプル内の予期しない場所にジャンプするためです。 この問題が生じた場合は、原因となるクリップを クリップRAMモード に切り換えてみてください。
16.4 クリップローンチのクオンタイズ

[クリップクオンタイゼーション]セレクターでは、クリップをトリガーするタイミングを補正できます。 クリップクオンタイゼーションを無効にするには、[None]を選択します。
コントロールバー内にあるグローバルクオンタイズ設定値でクオンタイズするには、[Global]を選択します。グローバルクオンタイズ設定値は、ショートカット Ctrl + 6, 7, 8, 9, 0 (Win) / Cmd + 6, 7, 8, 9, 0 (Mac) で簡単に変更できます。
なお、[None]以外に設定すると、クリップを フォローアクション でトリガーした時に、クリップのローンチがクオンタイズされます。
16.5 ベロシティ

[Velocity]コントロールを使用すると、MIDIノートのベロシティが、クリップの再生音量にどれだけ影響するかを設定できます。ゼロに設定した場合、ベロシティはボリュームに全く影響を与えません。 100 パーセントに設定すると、低いベロシティのノートではクリップも小さい音量で再生されます。 MIDIでクリップを再生する方法の詳細については、 MIDI およびキー リモート コントロールの章 を参照してください。
16.6 クリップのオフセットとナッジ
再生中のクリップ内を、グローバルクオンタイズで設定した単位でジャンプするには、[後にナッジ][前にナッジ]ボタンを使用します。

これらのボタンは キーまたはMIDIコントローラー にマッピングできます。 MIDIマップモードでは、[後にナッジ][前にナッジ]ボタンの間に[クリップスクラブコントロール]が表示され、このコントロールをロータリーエンコーダーに割り当てると、連続したスクラブが可能です。

クオンタイズ値を1小節未満に設定している場合、[後にナッジ][前にナッジ]ボタンや クリップ内部のスクラブ を使用すると、クリップのローンチをLiveのマスタークロックからオフセットして再生させることが簡単に行えます。
16.7 フォローアクション
フォローアクションは、順番に、またはランダムに(あるいはその両方で)クリップをトリガーします。 クリップの フォローアクション では、あるクリップの再生後、同じグループ内のクリップに何が起こるかを設定します。 この場合の「グループ」とは、同じトラック上で連続するスロットに配置されたクリップのことを指します。 トラック内には好きな数だけグループを作成できます。 グループとグループの間は空のスロットを使って区切ります。
また、シーンビュー 内のコントロールを使用すると、フォローアクションを シーン に適用できます。

- [Follow Action]ボタンは、選択したクリップやシーンのフォローアクションを有効/無効にします。 デフォルトではこのボタンが無効になっていますが、ショートカット Shift + Enter で切り替えることができます。
- フォローアクションのセレクターでは、AとBの2種類のフォローアクションを選択できます。 選択可能なフォローアクションについては下で詳しく説明します。
- チャンスAとチャンスBのコントロールでは、それぞれのフォローアクションが発動する確率(パーセント単位)を設定します。 クリップまたはシーンのチャンス設定値を、チャンスAは 100%でチャンスBは 0%に設定すると、クリップやシーンをローンチするたびにフォローアクションAが発動します。 この例からも分かるように、チャンスが0%に設定されていると、そのアクションは発生しません。 この例でチャンスBを 90% に設定すると、フォローアクションAが発生する確率は、Bに比べてずっと少なくなります。クリップまたはシーンのローンチ10回ごとに約1回の割合です。 チャンス値の調整は、チャンスAとチャンスBのコントロールだけでなく、その中間にあるスライダーでも行えます。
- [Linked][Unlinked]のスイッチはクリップにのみ使用可能で、2種類のモードを備えています。 このスイッチはデフォルトでは[Linked]に設定されています。 [Linked]モードのフォローアクションは、クリップの終了位置またはクリップが[フォローアクション乗数]フィールドで設定した回数をループ再生した後に発動します。 [Unlinked]モードのフォローアクションは、クリップが[フォローアクションタイム]で指定した小節数を経過した後に発動します。 [フォローアクションタイム]コントロールは、クリップとシーンの両方で使用可能で、再生を開始したクリップやシーン内の位置から見て、フォローアクションが起こるタイミングを小節:拍:16分音符で設定します。 この設定のデフォルト値は1小節です。 サンプル/MIDIノートエディターでは、マーカーがクリップのフォローアクションタイムを視覚的に表示します。 このマーカーをドラッグして、クリップのフォローアクションタイムを調整できます。
フォローアクションは10種類から選択できます。
は、フォローアクションが発動しないことを示します。 [No Action]のクリップをトリガーすると、クリップ内で選択している他のフォローアクションの発生確率は、たとえ[フォローアクション チャンス]を 100%に設定している場合でもゼロになります。
は、フォローアクションタイムで設定した時間を経過するとクリップの再生が停止します。 この設定は、クリップのループ/リージョン設定より優先されます。
は、クリップをもう一度再生します。
は、前のクリップ(現在のクリップのひとつ上)をトリガーします。
は、グループ内で下のクリップを再生します。 グループ内で一番下のクリップをこの設定をにしている場合は、一番上のクリップがトリガーされます。
は、グループ内の最初(一番上)のクリップをローンチします。
は、グループ内の最後(一番下)のクリップをローンチします。
は、グループ内のいずれかのクリップを再生します。
は[Any]と似ていますが、同じクリップを連続して再生しません。ただし、このクリップがグループに含まれていない場合を除きます。
は、フォローアクションがジャンプする先のクリップスロットやシーンを指定できます。 [Jump]を選択すると、[Follow Action]セレクターの隣にジャンプ先のスライダーが表示されます。 対象のクリップスロットまたはシーンの値を調整するには、ジャンプ先スライダーを上下にドラッグするか、クリックして数値を入力します。
フォローアクションが割り当てられたクリップとシーンは、判別しやすいようにクリップやシーンのローンチボタンに縞模様が入ります。

クリップのフォローアクションは、クリップクオンタイズが[None]または[Global]以外に設定されていなければ、[フォローアクションタイム]で指定した時間どおりに実行されます。フォローアクションはグローバルクオンタイズの設定を回避しますが、クリップのクオンタイズ設定は回避しません。
[アレンジメントに戻る]ボタンの隣にある[フォローアクションをグローバルに有効化]ボタンは、Liveセット内のすべてのクリップとシーンのフォローアクションを有効/無効にします。 [フォローアクションをグローバルに有効化]ボタンを無効にすると、再生が他のクリップにジャンプしなくなるので、再生中のクリップを編集できます。 Liveセットにクリップやシーンのフォローアクションが含まれない場合、[フォローアクションをグローバルに有効化]ボタンは灰色表示になります。

クリップのフォローアクションは、シーンのフォローアクションが作成されたりスケジュールされてもそのまま動作を続けます。それに対して、シーンのフォローアクションをトリガーするとシーンの方が必ず優先されます。
それでは、なぜフォローアクションが必要なのでしょうか? 音楽は、繰り返しと変化によって構成されます。 ループや短いメロディーラインを基本にした音楽では、動きに欠けたものになってしまうことがあります。 フォローアクションを使えば、繰り返しの中にも予想外の変化が生まれる楽曲の構成が可能になります。 この実験結果はいつでも 録音 できるので、新しく作る素材の元にすることができます。
以下の項では、フォローアクションを使った具体例やアイデアを紹介します。
16.7.1 クリップの一部分をループさせる
たとえば、長めのクリップを再生する場合に、クリップの最後の8小節だけをループさせたいとします。 フォローアクション機能を使えば、以下のような手順でループを設定することができます。
- クリップをアレンジメントビューにドラッグし、クリップビューの[Loop]スイッチがオフになっていることを確認します。 [編集]メニューの 分割コマンド で、クリップのループさせない部分とループさせる部分の間を分割します。
- 分割した2つのクリップを選択したら、[セッションビューセレクター]の上にマウスのカーソルを置いて、セッションビューへドラッグします。 2つのクリップをトラックにドロップします。 これでフォローアクションのグループが設定されました。

- 最初のクリップ(ループしないクリップ)に、フォローアクションを設定します。 [フォローアクションタイム]は、クリップの長さと同じタイムを設定します。 フォローアクションAセレクターで[Next]を選択してチャンスAを 100%に設定したら、フォローアクションBを[No Action]に設定します。 これで、最初のクリップを再生した後にループするクリップへ進むよう設定されました。
- 2番目のクリップでは[Loop]スイッチをオンにします。
最初のクリップを最後まで再生すると、2番目のクリップが再生されます。 2つ目のクリップは、停止するまでループ再生します。
16.7.2 サイクルを作成する
フォローアクションによって実現できる最も顕著なものの1つは、サンプルのグループを組んで曲のサイクルを形作れることです。 複数のクリップまたはシーンをグループとしてまとめ、各クリップまたはシーンに[Next]のフォローアクションを適用すれば、クリップを停止するまで永遠に再生が続きます。
チャンスを低めに設定した[Any]など他のフォローアクションを加えることで、時たまサイクルを並び替えることができます。
また、クリップのコンテキストメニューで[フォローアクションチェーンを作成]を選択すると、選択したすべてのクリップがループ再生しているようにフォローアクションを設定することもできます。 選択するクリップは隣り合っていなくてもかまいません。
16.7.3 一時的にループするクリップ
曲のループを一時的に作成する時に、フォローアクションの興味深い応用例があります。
1つだけのクリップで構成されたグループを例にします。 フォローアクションAは[Play Again]を選択してチャンスを 80%に設定します。 フォローアクションBは[No Action]を選択してチャンスを 20%に設定します。 このクリップは長めのサンプルを使用していて、フォローアクションタイムは1小節に設定されています。 ここでクリップをクリックすると最初の1小節が再生され、そのあと高い確率でもう一度最初の1小節が再生されます。 何度かこのような再生を繰り返したのち、アクションB、つまり[No Action]になり、それ以降はサンプルの残りの部分を続けて再生します。
また、クリップを開始地点からフォローアクションが[Next]になる位置まで再生させることもできます。 グループ内の次のクリップに同じファイルを使用することもできますが、この場合はループするように設定されています。 この2番目のクリップにもフォローアクションを設定できるので、クリップを無限に再生させたり、指定した時間やランダムな確率でグループ内の次のクリップへ移動させたりと、さまざまな設定ができます。
16.7.4 同期するバリエーションを追加する
クリップエンベロープ と ワープ をフォローアクションと組み合わせることで、似たようなクリップのグループの中から面白いバリエーションを作ることができます。 例えば、フォローアクションで、様々なクリップエンベロープを持つクリップをトリガーすると、グループ内のクリップが相互作用しているかのように、インストゥルメントやシンセのピッチベンドやモジュレーションの細かな変化が生まれます。 オーディオクリップは、別々のエフェクトやクリップのトランスポーズ設定の間をモーフィングさせることができます。
フォローアクションとレガートモードを一緒に使用することは、メロディやビートを徐々に変化させる時に役立つ手法です。 例えば、同じメロディのクリップをいくつか並べたグループがあり、このクリップはレガートモードで再生するように設定されているとします。 どのタイミングでフォローアクションがグループ内の別のクリップに移るよう指示したとしても、レガートモードによって新しい再生位置と古い再生位置が拍単位で同期しているので、メロディーは同じままです。 各クリップの設定やクリップエンベロープを(あるいはMIDIクリップ内にある実際のノートも)徐々に調整していくと、メロディもゆっくりと変化していきます。
16.7.5 メロディとビートを混ぜ合わせる
フォローアクションを使って、予測不可能なリミックスやソロが行われる設定もできます。 ビートまたはメロディを含むクリップをいくつかコピーしてグループを作ります。 または、ミックスしたいビートやメロディを数種類使ってもいいでしょう。 各クリップの 開始位置と終了位置 は、 クリップエンベロープ とその他のクリップ設定と同じように、それぞれ別々の設定にできます。 各クリップのフォローアクションタイムを再生するクリップの長さと一致させ、各クリップで2つのフォローアクションのチャンス値をそれぞれバラバラに設定したら、クリップを再生すると思いもよらない結果が生まれます。
16.7.6 反復しない構造を構築する
フォローアクションは、数週間から数ヶ月でも同じ繰り返しをせず再生できる環境を作れるので、サウンドインスタレーションにとても役立ちます。 グループ内の各クリップのフォローアクションタイムを奇数で設定すると、クリップが互いに影響しあって、再生するたびに順番や位置が変化していきます。 各クリップはフォローアクションを2つまで設定できて、さまざまなチャンス値を設定できます… 楽しみましょう!