11. MPEを編集する
MIDI Polyphonic Expression(MPE)は新たに追加されたMIDI規格の一種で、各MIDIチャンネルに対してグローバルにではなくノート毎にパラメーターコントロール情報を添付することができます。このようなMIDIの使用により、MPE互換デバイスで個々のノートの複数のパラメーターをリアルタイムでコントロールでき、より表現力豊かなオアフォーマンスを実現します。
MPE互換のMIDIコントローラーからのノート単位のエクスプレッションをLiveで受信できるようにするには、まず[Link/Tempo/MIDI]環境設定でこのコントローラーのMPEモードを有効にします。

MPE互換のMIDIコントローラーをトラック上の入力デバイスに選択すると、チャンネル入力ルーティングは[すべてのチャンネル]に固定され、個々のチャンネルは選択できなくなります。
MIDIコントローラーの使用について詳しくは、「MIDIとキーのリモートコントロール」(29) をご参照ください。コントローラーの設定が完了したら、これを使用してMPEデータを含む新しいMIDIクリップ(17) を録音できます。
クリップビューのノートエクスプレッションタブでは、クリップ内の各ノートのMPEの5特性を表示および編集できます:ピッチ(ノート単位のピッチベンド)、スライド(ノート単位のY軸)、プレッシャー(ポリアフタータッチ/MPEプレッシャー)、ベロシティとリリースベロシティ(ノートオフベロシティ)。こうして、録音した素材のエクスプレッションを微調整したり、MPE互換インストゥルメントのポリフォニックサウンドバリエーションを自動化したりできます。
クリップがMPE互換デバイスまたはその他の方法(10.1) を使用して作成されたかどうかに関係なく、すべてのMIDIクリップに含まれるノートのMPEデータを表示および編集できます。次のセクションではMPEデータの表示と編集について説明します。
11.1 MPEデータを表示する

MIDIクリップのMPEデータを表示するには、まずクリップをダブルクリックしてクリップビューを開き、ノートエクスプレッションタブをクリックするか、キーコマンドALT+3(PC)/ALT+3(Mac)を使用してクリップビュー最下部のエクスプレッションエディターを開きます。5つのMPEパラメーターのうち、次の4つは独自のエクスプレッションレーンに含まれます:スライド、プレッシャー、ベロシティ、リリースベロシティです。デフォルトでは、スライドとプレッシャーのみ表示されます。5つ目のパラメーターの枠であるピッチは、MIDIノートエディター内の該当するノートの一番上に表示されます。
各エクスプレッションレーンは左のレーンセレクタートグルボタンで表示と非表示を切り替えることができます。レーンセレクタートグルボタンの下には三角形のトグルボタンがあり、有効なレーンすべてを同時に表示または非表示にできます。

すべてのエクスプレッションレーンセレクターが非表示/無効の場合、三角形のトグルボタンを押すとすべてのエクスプレッションレーンが一度に表示されます。各エクスプレッションレーンは分割線で個別にサイズを変更できます。すべてのエクスプレッションレーンは、レーンとMIDIノートエディターの間の分割線をドラッグして同時にサイズを変更できます。
ALT(PC)/ALT(Mac)を押して三角形のトグルボタンをクリックすると、すべてのエクスプレッションレーンが表示されます。三角形のトグルボタンを使用するかエクスプレッションエディタービューの分割線をドラッグしてエクスプレッションレーンを非表示にすると、レーンの表示トグルも非表示になります。
11.2 MPEデータを編集する
ノートエクスプレッションタブが開いている状態でMIDIノートエディター内でノート(またはそのエクスプレッション特性のいずれか)をクリックすると、ノートが透過オーバーレイに表示されます。エンベロープが既存のブレークポイントと共に表示され、ノートのピッチ、スライド、プレッシャーの各エンベロープを編集できるようになります。マーカーはノートのベロシティ値とリリースベロシティ値を編集するのに使用できます。未選択のノートは灰色表示になり、そのエクスプレッションエンベロープは選択不可になります。

編集したいノートまたはエンベロープをクリックすると、選択されているエンベロープのすべてのエクスプレッションブレークポイントとブレークポイントを結ぶ線分がドラッグ可能なオブジェクトになります。エンベロープは、バックグラウンドをクリックするか、ドラッグして選択します。以下の機能を実行できます。
- ライン上の任意のポジションをクリックすると、そこに新規ブレークポイントが作成されます。
- ブレークポイントを消去するには、ブレークポイントをクリックします。
- ブレークポイントをより素早く編集できるよう、ブレークポイントを作成、マウスオーバー、ドラッグする際にはエクスプレッション値が表示されます。選択されているラインにマウスオーバーしたりラインをドラッグしたりする際、表示されるエクスプレッション値は、現在のカーソル位置のブレークポイント値に対応します。
ブレークポイントのエクスプレッション値
- ブレークポイントの移動は、ドラッグで行います。ドラッグするブレークポイントが現在選択選択されている範囲内にある場合、選択されている範囲内の他のブレークポイントも一緒に移動します。
- ブレークポイントを右クリック(PC)/Ctrl-クリック(Mac)をクリックして、コンテキストメニューで[値を編集]を選択します。これで、コンピューターキーボードを使用して編集フィールドで正確な値を設定できます。複数のブレークポイントが選択されている場合、すべてが相対的に移動します。同様に、プレビューのブレークポイントを右クリック(PC)/Ctrl-クリック(Mac)して[値を追加]コマンドを選択し、新しいブレークポイントを正確な値で作成することもできます。
- ラインの近く(ライン上ではない)をクリックするか、Shiftを押したままライン上をクリックすると、ラインが選択されます。ラインを任意の位置まで移動するには、マウスボタンを押したままドラッグします。ドラッグ中のラインが現在の時間選択範囲内にある場合、選択範囲の端にブレークポイントが挿入され、ライン全体が一緒に移動します。
選択されている範囲内のブレークポイントをまとめて動かすには、どれか一つのブレークポイントをドラッグします。
- ノートエクスプレッションタブでは、グリッドはデフォルトでは無効になり、より高解像度で簡単に編集できるようになります。グリッドの設定は、他のタブのグリッドとは別に、クリップと共に保存されます。
- 必要に応じて、[オプション]メニューの[グリッドにスナップ]オプションを使うか、Ctrl+4(PC)/Cmd+4(Mac)ショートカットでグリッドを有効にすることができます。グリッドが有効な場合、ブレークポイントとラインは、周囲のブレークポイントが存在する時間位置にスナップします。グリッド線近くにブレークポイントを作成すると、ポイントが線に自動でスナップします。
- ラインまたはブレークポイントを移動する際、Shiftを押したままドラッグすると、横軸または縦軸に動きを制限することができます。
- Shiftを押したまま縦にドラッグすると、より微細にブレークポイントまたはライン値を調整できます。
- ブレークポイントまたはラインを水平に隣のブレークポイントに「かぶさる」ようドラッグすることで、隣のブレークポイントを動かすことができます。
- Alt(PC)/Alt(Mac)を押したまま線の一部分をドラッグし、その部分を曲線にします。Alt(PC)/Alt(Mac)を押したままダブルクリックすると、その部分が直線に戻ります。
カーブするエンベロープ部分
- ピッチのエクスプレッションエンベロープを除いて、スライド、プレッシャー、ベロシティ、リリースベロシティの各エンベロープは、選択されている複数のノートのベロシティの場合と同じように、ノートの長さ全体にわたって相対的に縮小拡大できます。これを行うには、まずノートのエリア外をクリックしてから、希望のエンベロープの上にマウスオーバーします。エンベロープが青に変わったら、クリックして上下にドラッグすると、エンベロープがそれに応じて拡大縮小されます。この動作は、選択されている複数のノートのエクスプレッションエンベロープを同時に編集する場合も同じです。
- 選択されているすべてのブレークポイントを拡大縮小するのではなく、均一に調整することもできます。これを行うには、まず編集したいエンベロープをクリックしてからCTRL+A(PC)/CMD+A(Mac)を使用してすべてのブレークポイントを選択し、マウスで上下にドラッグして値を増減します。左右にドラッグすると、すべてのブレークポイントをグループとして水平方向に移動できます。
- ノートが移動すると、そのエクスプレッションエンベロープも合わせて移動します。
- ピッチブレークポイントは、グリッドがオフの状態でALT(Win)/CMD(Mac)を押すと直近の半音にスナップします。これは、ドローモードのピッチ値にも機能します。この動作は、グリッドがオンの状態で同じショートカットを使用することでバイパスできます。
- ピッチエンベロープは、ノートエクスプレッションタブでフォールドモードが有効な場合には非表示となります。
11.3 エンベロープを描画する
With Draw Mode enabled, you can click and drag to free-handedly “draw“ an envelope in the Pitch, Slide and Pressure expression lanes.
MPEデータに対してドローモードを有効にするには、[オプション]メニューから[ドローモード]を選択するか、コントロールバーのドローモードスイッチをクリックするか、Bを押してから、編集したいエンベロープをクリックます。Bキーを押したままマウスを使用して編集すると、ドローモードに一時的に切り替わります。

Shiftを押したまま縦にドラッグすると、より微細にエクスプレッション値を調整できます。
メニュー項目の[グリッドに吸着]オプションまたはCTRL+4(PC)/CMD+4(Mac)ショートカットを使用してグリッドを有効にした場合、描画を行うと表示グリッドの幅でステップが作成されます。グリッド幅は、便利なショートカット(6.9) を使用することで変更できます。グリッドが無効な際にグリッド描画を一時的にオンにするには、Alt(PC)/Cmd(Mac)キーを押したまま描画します。
11.4 LiveデバイスおよびPush上のMPE
Arpeggiatorエフェクト(25.1) 、Samplerインストゥルメント(26.7) 、Wavetableインストゥルメント(26.10) はMPEに対応しており、各デバイスにはサウンドに新次元のインタラクションと演奏性をもたらすMPEプリセットが用意されています。これらのデバイスでの表現の可能性は、Pushのポリフォニックアフタータッチの活用も可能にします。