interviewsでタグ付けされているポスト

ディーター・ドイプファー:モジュール・シンセシスの展望

Artists

ディーター・ドイプファー:モジュール・シンセシスの展望

ここ10年におけるモジュール・シンセシスの復活の立役者の名をひとつ挙げるとすれば、それはディーター・ドイプファー(Dieter Doepfer)になるでしょう。1995年に自社のA-100モジュラー・システムにユーロラックを採用したことで、ドイプファーは、互いに整合性を持つ非常に多様なモジュール開発の道を他のメーカーに提供しました。あれから20年が経過しましたが、パッチャブルでモジュラーな機材への関心はいまだに高く、ニッチ層向けの家内工業が主であった業界は、今ではうなぎ登りの成長を見せています。確固たる名声を持つシンセ・メーカーの数々が次々とユーロラックに対応したことで、モジュラー・シンセシスのサウンドはメインストリームへと進出し始めています。OSCiLLOTリリースに付随するシリーズ特集の最新エントリとなる今回の記事では、ディーター・ドイプファーが急激に変化するモジュラー・シンセシス分野への彼の見解や、電子機器や回路図を自作していた初期の頃の思い出について語っています。 ユーロラック・システムで、あなたはモジュラー・シンセシスの再生そして現在の人気に重要な貢献を行いました。しかし、ご自身はミュージシャン出身ではありませんよね。音楽とテクノロジーへの関与はどのようにして始まったのですか?すべては物理学を学ぶ学生だった頃に始まりました。当時バンドで演奏もしており、機材を修理したり、ギター・エフェクト(ディストーション、ワウ、フェイザー、フランジャーなど)を自作したりしていました。あの頃はギターが私の主な楽器で、アメリカの有名シンセ、モーグのようなサウンドをギターで出したくて、当時入手可能だった一般的なエフェクトだけでなくいろんな種類のフィルター回路を試していました。思い出して欲しいのですが、当時はインターネットは存在しておらず、情報の入手方法は今とはまったく異なっていました。手に入ればラッキーといった具合で、紆余曲折を経て雑誌、カタログ、マニュアル、回路図のコピーを時折入手することができた程度でした。たとえば、大学図書館を通じた外国の雑誌や書籍の図書館相互貸借は重要な情報源でした。資料を指定してリクエストを出しておくと、運が良ければ、数週間の待ち時間を経て、数日間にわたってその資料を利用することができる制度です。フィルター、フェイザー、ディストーションを使用してギターでシンセのような音を出すという私の試みは成功とは言いがたいものだったので、徹底的に掘り下げて研究する必要があると気付いたのです。幸運にも、70年代半ばにElektorという雑誌がFORMANTというモジュラー・シンセの回路図を公開していました。毎号ごとに1つのモジュール(キーボード、VCO、VCF、VCA、ADSR、LFOなど)が特集されていて、1年を通じてすべてが揃う仕組みになっていました。もちろんこれを自分で構築しなければならず、これがきっかけでシンセの構築方法と基本的な回路の仕組みを詳しく理解したという人もたくさんいました。そういう意味で、FORMANTは私たちシンセ・フリークにとって画期的な出来事でした。FORMANTシンセが完成した瞬間から、その特性と機能の向上と拡張の要望が届き始めました。それで、FORMANT互換のモジュールをいくつか開発して販売を始めました。周波数分割/サブオクターブ・ジェネレーター、電圧制御フェイザー、ストリング・フェイザー、VUメーター、システム・タイマー、電圧制御スイッチとジョイスティックなどです。FORMANTにない機能のひとつに24dBフィルターがあったのですが、その頃には他の電子系ホビー雑誌もこのシンセの流行に気付き始め、FUNKSCHAUという雑誌が24dBモーグ(Moog)フィルターの回路図を公開しました。ただし、それが何であるのかの説明がありませんでした。なので、この回路図をもとに実際に製作するには若干の予備知識が必要でしたが、あれは紛れもなくモーグ・フィルターでした。それから少しして、同じ雑誌がモーグのADSRエンベロープの回路図を公開しました。同時期に、シンセサイザーに関する本も出版されるようになりました。何よりもラッキーだったのは、『ポップコーン(Popcorn)』のレコーディングに使用されたものと同じモーグのモジュラー・システムを友人と一緒に修復する機会を得たことでした。モーグ公式の保守マニュアルをなんとか手に入れることができ、システム修復の過程で非常にたくさんのことを学びました。20年前、あなたはモジュラー・ハードウェア用のユーロラック・フォーマットを確立し、ベーシックなモジュールを多数開発し、今でも新しいモジュールの製作と既存モジュールの機能向上を続けていらっしゃいます。ここ10年ほどにわたるモジュラー・ハードウェアの拡大に対するあなたの見解をお聞かせいただけますか?小規模メーカーのモジュール分野への大量参入は、この分野全体としての発展にとってよいことだとお考えですか?それとも、違いといえばマーケティング文句だけのディストーション・エフェクトであふれかえるギター・ペダル分野と同じ状況に到達しつつあるのでしょうか?難しい質問ですね。どこへ向かうのかは正直分かりません。NAMMショーから戻ったばかりなのですが、そこでも「ユーロラックの急増」についていろいろな話がありました。今では、ヴァルドルフ(Waldorf)、ヨモックス(Jomox)、オーバーハイム(Oberheim)、デイヴ・スミス(Dave Smith)、ラディカル・テクノロジーズ(Radikal Technologies)、スタジオ・エレクトロニクス(Studio Electronics)など、シンセに関わるメーカーのほとんどがユーロラック・モジュールを市場に投入しています。つい数年前まで、この分野は比較的小規模で、誰とも顔見知りでした。しかし今では、百を超えるメーカーに数千のモジュールが存在するようになっています。迷子になった気分なのは私だけではありません。モジュールの過剰供給に不満の声を上げているのはディーラーや小売店です。これまでのところ、この発展は私たちにとって好ましいものでした。それは主に、他のメーカーがよりエキゾチックで変わったモジュールを開発する傾向にあり、私たちの作るスタンダードなモジュールを必要とするユーザーがいたからです。私たちとしてはこの発展の行方を見守るしかありませんが、数年前の株式市場の高騰について考えずにはいられません。モジュラー・シンセシスの最近の人気の鍵はどこにあるとお考えですか? 私は、いくつかの要因が作用していると考えています。間違いなく、ラップトップやプラグインを使用するミュージシャンの多くが欲するフィジカルな部分(ダイヤル、ノブ、ケーブルなど)も大きな要因でしょう。もちろん、サウンドの豊かさも一因ですが、独自の何かを生み出すという感覚も重要な役割を果たしていると思います。モジュラー・システムを使用すると、他の方法では絶対に生み出せず再現するのも非常に難しい、極めて特徴的なサウンドを作れることに気付きます。これは、たとえばクラフトワークなどのアーティストの典型的なアナログ・サウンドがいつまでもサンプリングされ再利用されている理由だと思います。ドイプファーの今後の開発についてお聞かせいただけますか?また、モジュラー・シンセシスとユーロラック・フォーマットの今後の展開についてはどのように推測されていますか?しばらくの間は開発を続けていくでしょう。モジュールやモジュールの組み合わせが多数登場し、(8x16トリガー・シーケンサーA-157など)スタンドアロン・デバイスとしてリリースされる予定です。また進行中のアイデアやユーザーが待ち望んでいるモジュールもかなりあります。ただ、この熱狂的なブームが治まった後も生き残るのは、高品質の製品と優れたサービスを提供するメーカーだけだと思います。 Doepferモジュラー・シンセシス・ハードウェア一覧についてはDoepferウェブサイトをご覧ください。モジュラー・シンセシスに興味を持たれたなら、OSCiLLOT by Max for Catsをぜひチェック!100を超えるパッチング可能なモジュールと、パッチング済みシンセやエフェクトを多数収録した、Ableton Live用のコンプリートなモジュラー・システムです。

ファビアン・ルス:サーキュラー・サウンドでクラシック音楽に新たな感動を

Artists

ファビアン・ルス:サーキュラー・サウンドでクラシック音楽に新たな感動を

ある種の人たちにとって、バッハやハイドンの作品をコンピューター・ソフトウェアで再現することは異端かもしれません。ドイツの作曲家でありサウンド・デザイナーでもあるファビアン・ルスにとってそれは、現代のクラシック音楽界において最も尊敬されているソリストたちと仕事をする手段となりました。ルスは、Simplerを使用して教会古典音楽を分析・再現し、マルチチャンネル・サウンドシステム用の空間感に秀でた作品を定期的に発表しています。クラシック・サウンドとエレクトロニック・サウンドのデリケートなバランス、サーキュラー・サウンド・システム用の作曲について、ルスに話を聞きました。 ファビアン・ルス『Circle Spot』 あなたはしばしば、伝統的な西洋クラシック楽器のサウンドや作品を素材として使用し、マニピュレーションを加えていらっしゃいます。これらの音源の何が、あなたの創造力に火を付けるのかお聞かせいただけますか?特にこれらに集中する理由は、また教会音楽にどのような新たな観点をお望みなのでしょうか?正直、こういった音を重視しているわけではなく、ただ子供の頃から私の周りにある音だったというだけです。オーケストラを使ってみたいとずっと夢見ていたので、オーケストラのサンプルライブラリを手に入れました。新進の作曲家であれば誰でもサンプルライブラリを持っていますね。オーケストラ用の作品を作りたいけれど、ラップトップを買う以上の金銭的な余裕がないからです。ですので、新人の頃はエレクトロニックな要素とクラシックな要素を一体化させる機会は常にありましたが、自然な形でそれらを組み合わせる方法が分かりませんでした。あの頃は、私の作品を演奏してくれる人はひとりもいませんでした。いたとしても、どんな作品を作ったのだろうかが想像できません。幼少時代に経験した無人の音楽を作りたかったのです。知り合いの演奏家もいない、雇うお金もないという状況でなんとかやりくりするために、LiveのSimplerを使い始めました。昔作曲した音楽をリサンプリングし、新しい素材、テクスチャ、メロディを作りました。そして、さまざまなサイズの部屋とパンニング位置で実験をしたのです。Simplerでマニピュレートする素材を増やすため、友人たちと録音を始めました。サンプルを使用し、それらをバロック音楽バイオリニストのミドリ・ザイラ―、カウンターテナーのアンドレアス・ショル、オーボエ奏者のアルブレヒト・マイヤー、STÜBAフィルハーモニック・オーケストラなどのミュージシャンと組み合わせるという手法が私の持ち味となりました。 有名オーボエ奏者アルブレヒト・マイヤーと演奏するファビアン・ルス ほとんどのアーティストが単発プロジェクトとしてマルチチャンネル・システムを使用するのに対して、あなたはよりひんぱんにこのシステムを使用されているように思います。複数の出力による可能性とその難しさについて少しお話しいただけますか?また、こういった空間的サウンド・システムを使用する意図についてもお聞かせください。2012年にRadialsystemで同僚たちと一緒に働き始めたとき、エレクトロニック・ミュージックとダンスとミドリ・ザイラ―のバロック・バイオリンを組み合わるというアイデアはすでにありました。Radialsystem創立者のひとりであるフォルカート・ウーデはこのアイデアを私に伝え、私はクラシックの要素とエレクトロニックの要素を組み合わせる方法を見つけると彼に伝えました。自宅のスタジオに戻ってから、LiveのSimplerを開き、ミドリ・ザイラ―によるバッハのパルティータのソロ・バイオリン演奏をSimplerに取り込み、検証を始めました。ウーデの当初のアイデアは4チャンネルのサウンド・システムを使用するというもので、ステージの四方にスピーカーを配置するものでした。オーディエンスの居場所は、ダンサー、バイオリニスト、私と同じくステージ上になります。自宅のスタジオで4チャンネル・システムをシミュレートしてみたとき、自分の頭の周りをサウンドで円上に取り囲むというアイデアを思いつきました。それで、空間音響を専門とするドイツ中の大学に連絡を入れました。ライプチヒの若いプログラマー、エゴール・ポリアコフが、IRCAMで開発されているというマルチチャンネルの空間音響をコントロールするソフトウェアについて話してくれました。私たちはそのソフトウェアを購入し、彼に私たちの演劇作品『Inside Partita』用にソフトウェアを適応させてもらいました。オーディエンスは、複数のスピーカーにより描かれる円の内側に座ります。サウンドはオーディエンスの周りを旋回し、バイオリンの音と組み合わせられます。私が作成したバッハのマニピュレーションは、このサーキュラー・システム用に特別に組み立てられており、この種の環境でのみ機能するようになっています。すべてのファイルに対して特殊なモノ・マルチチャンネル・マスタリングを使用しており、円でのみ使用できるようになっています。 『Inside Partita』用にセットアップされたサーキュラー・サウンド・システムの様子 こんな事情で、これが私の「標準的な」仕事環境になりました。「円」が思考の基本になったという感じでしょうか。私たちは、技術的な部分をできるだけシンプルにしようと常に心がけています。ラップトップを使用しての作業で、クラシックで学んだ演奏者とのコラボレーションにおける障害にはどのようなものがありますか?伝統的なアコースティック楽器のようにコンピューターを直感的かつ「音楽的」に動作させるためにどのようなことを行っていますか?コンピューターを使用する上での根本的な問題のひとつは、生演奏とは異なり、自分が音を発しているのではないことです。音を生成するのはコンピューターであって、私はそれを制御しているに過ぎません。オーケストラとの演奏はかなり大変です。交響楽団は多数の人間から構成される非常に大きな集団で、オケが指揮者に反応するのにも時間がかかります。メトロノーム・クリックを指揮者のヘッドフォンに送信することもできますが、それではオーケストラがマシンの一部になってしまい、自然な動きが抑制されてしまいます。私たちの心の動きと同じで、オケは常に変化しています。ですので、共同作業のための興味と思慮に富む方法を見つけることには時間と労力を使います。ソリストでも同じような問題があります。演奏はパフォーマンスごとに異なります。ミドリ・ザイラ―やアンドレアス・ショル用に作った作品のように非常にデリケートなサウンド構造の場合、これが課題となることもあります。基本的に、私の作品に合わせてミュージシャンに演奏してもらうしか選択肢はありません。ライブ・パフォーマンス中に思い通りのサウンドを得るための別の解決策はまだ見つかっていないのです。 ファビアン・ルスについて詳しくは、彼のウェブサイトをご覧ください。

ジミー・エドガー:システムを機能させるには

Artists

ジミー・エドガー:システムを機能させるには

ジミー・エドガーの音楽を聴くとき、モジュラー・シンセサイザーが頭に浮かぶという方は多くないでしょう。洗練されたスタイルはファンクとR&Bのるつぼから生まれたもので、彼の故郷であるデトロイトに由来するエレクトロ、ハウス、テクノの変異株にも注意を払ったものとなっています。「白衣をまとった科学者」的な匂いを醸し出すモジュラーの世界との関わりを感じさせないセクシーなサウンドです。また、彼のトラックがダンスフロアを揺さぶるものである一方、モジュラー・ミュージックには比較的知性に訴える作品が多いのもその理由でしょう。このような矛盾は、エドガーの制作活動のプロフェッショナリズムを物語るものである一方、モジュラー・シンセにまつわるステレオタイプが、スタジオにおけるモジュラー・シンセの多用途性を伝えるものではないことを示しています。Abletonは、自分のスタイルを変えるのではなく引き立てるためにモジュラーを活用する方法、またモジュラーを使用してドローンやザップ音ではなく音楽的な結果を得るための方法についてエドガーに話を聞きました。 ジミー・エドガー『Who’s Watchin?』 最新のDJセットで、非常にストレートなリズムが強調されており、スイングがほぼ完全に排除されていたのが印象的でした。かなりの割合で独自の素材を使用されているように思えましたが、この堅固なエレクトロファンクのグルーヴを実現するためにモジュラーが果たしている役割とはどのようなものなのでしょうか? DJセットについて話すと長くなるので止めておきますが、手持ちのトラックはすべてスイングのパーセンテージで整理しています。これは単に技術的な理由からなのですが、私にはストレートからスイングへの推移が少し耳障りに感じられ、またハウス・ミュージックの多くにはスイングが感じられます。そんな理由で、私はシャッフル済と未シャッフルのトラックを分けています。ハウス・ミュージックは大好きですが、スイングのないハウス・ミュージックが好きです。モジュラー・ミュージックに関しては、場合によります。スイングをいろいろ試すのが好きなのですが、スイングをモジュラーに持ち込もうとすると、いろいろと難しいことがあります。スイングは16分音符おきに前後に動くので、それを考慮してパッチを設定しておく必要があります。完全にスイングするクロックを使用するか、MIDIを使用して連携させる必要があります。モジュールによってはこれに対応できますが、すべてではありません。基本的には、マシンのような音楽が好きなんです。モジュラーの世界に飛び込むとき、クロスモジュレーションでのビープ音の実演ビデオを観たりすることがよくありますが、モジュラーを操作している人の顔が見えないことがほとんどです。複雑なパッチで友人を感心させる以外に、これにどんな意味があるのだろうと考える人も少なくありません。この点について、こう考えるのは私だけではないと思います。というのも、私自身、モジュラー・シンセシスを取り入れるようになったのはかなり最近のことで、それより前にはモジュラー・シンセシスでかなり苦い体験をしています。音楽制作歴は15年ほどになりますが、モジュラー・シンセシスを知ったのはずっと前です。友人のスタジオか何かだったと思います。 デトロイト・エレクトロの重鎮Ectomorphの『Breakthrough』 まだデトロイトにいらっしゃった頃ですか?はい、デトロイトのスタジオです。EctomorphやPerspexといったエレクトロ界のミュージシャンはモジュラーに夢中でした。私も興味はありましたが、自分で検討してみたとき、すぐに魅力を感じたわけではありませんでした。モジュラーでうっとうしいノイズを作っている人が多すぎると思いました。時間のあるときにやるにはいいけれど、シンセを実演するには直感的でないし、興味をそそるものでないと思います。YouTubeで「モジュラー」と検索する人は、いろんなノイズを生み出せることに少し面食らうかもしれません。何の方向性もないままいじり回すのはとても楽しいですが、私は、モジュラーから音楽的な何かを生み出すことに興味がありました。なので、シンセシスにおいて次のステップに進もうと決めてシステムの構築を始めた5年くらい前まで、モジュラーで満足のいく音楽を作ることができると思っていなかったんです。習得スピードについてはいかがですか?私にとっては、それはまったく問題ではありませんでした。いろいろな理由がありますが、ひとつは私にプログラミングの知識があったことです。たいした知識ではありませんが、数年間Max/MSPにはまっていた時期があったので、シンセシスの専門用語や基本的な概念は頭に入っていました。Reaktorでのプログラミングでも、ハードウェアの扱いについての基本を学べました。ですので、新しいことは何もありませんでした。とにかく実際に触ってリサーチするのが楽しかったので、面倒なことをしているという感覚はまったくありませんでした。習得スピードの問題は、時間に余裕がなく、習得を楽しめない人に該当する問題だと思います。課題や困難に取り組むことを楽しめるようなら問題はありません。新進プロデューサーや駆け出しシンセサイザー奏者にとってのエントリー・ポイントという考えがモジュラーの売り文句としてより一般化してきましたが、ビギナーがベーシックなラックを手に入れることは、無理をしていることにはなりませんか?この点において、私は何もマイナスな点はないと思います。上級者向けのシンセシスに飛び込むつもりなら、それがどれほど骨のあることなのかを知っておいた方がいいと思います。はじめから選択肢がたくさんあると、圧倒されて手に負えない場合も出てきます。シンセシスの知識がまったくない場合、かなりのリサーチと実験的作業が必要になることを覚悟しておいた方がよいでしょう。ただ、ここで言っておきたいのは、これこそモジュラーのすばらしい点であるということです。実際に手で触れて試行錯誤することができます。それは、楽器を手に取り、演奏を学ぶのに似ています。モジュラーはその構築によっては楽器そのものです。こういった可能性に触れることがこれまでにないほど簡単になりました。モジュラーがより親しみのあるものになったこの状況について、すばらしいとしか言えません。FabricのミックスCDではあなたの作品が大きくフィーチャーされていますが、その大部分にはモジュラーの影響がはっきりと見て取れます。Fabricのミックスに収録されている作品では、モジュラーは基本的にドラムマシンとモジュラー・シーケンサーの役割を果たしています。4/4のビートにイレギュラーなシーケンシングを多用して、連続する感じを出しています。モジュラー・エフェクト、特にバケツリレー・ディレイをたくさん使用しています。EQとフィルター・シーケンシングも多用しています。Cwejmanのレゾネーターもすごく気に入っています。いくつか所有していますが、すばらしいです。モジュールにベーシックなメトロノーム・クリックを送ると、特定の特性でリングアウトします。一種のサージ・フィルターのようなものです。レゾネーターにはそれぞれモジュールごとに4つのターンテーブル・ピッチがあり、バンドパス・フィルターになっていてマリンバ・サウンドや一風変わった金属音を得ることができます。本当にいいモジュールです。 モジュラーを使用してスタジオでジャム演奏するジミー・エドガー 最近、モジュラーには触っていますか?多忙なツアー・スケジュールの合間に時間は捻出できていますか?私の場合、モジュラーを触っている時間よりも触っていなかった時間の方が長いので、音楽制作に必ずしもモジュラーが必要ということはありません。私にとっては、単にインストゥルメントのひとつでしかありません。ほぼ毎週DJしていますが、本当のところはやはりプロデューサーなので、私にとって自分が一番輝けると感じるのはスタジオにいるときです。ですからいうまでもなく、モジュラーとスタジオで過ごすのが好きです。スタジオでは、モジュラーを単に音を出す機械ではなく楽器として扱っています。だから録音もしますし、ツアーに持ち出してライブの合間に触ったりもします。リミックスの作業はDJの仕事で出ている間にも行いますが、スタジオでやる方が好きですね。すべてのバランスを取りながらやっています。 ジミー・エドガーについて詳しくは、ウェブサイトおよびSoundcloudをご覧ください。モジュラー・シンセシスに興味を持たれたなら、OSCiLLOT by Max for Catsをぜひチェック!100を超えるパッチング可能なモジュールと、パッチング済みシンセやエフェクトを多数収録した、Ableton Live用のコンプリートなモジュラー・システムです。

Mayur Narvekar、タブラ、伝統、Liveについて語る

Artists

Mayur Narvekar、タブラ、伝統、Liveについて語る

伝統的なインド音楽の起源は、数千年も歴史を遡ります。タブラやシタールといった楽器を習得することは、世代にわたって受け継がれてきた口頭伝承の知識を要するライフワークでした。一方、現代の音楽制作ソフトウェアの歴史はわずか数十年です。これら2つの世界を引き合わせることで、Mayur Narvekarの作品にみられるような興味深い様式の交配が導かれることもあります。 20年にもわたるタブラ研究を経て、Mayurは今、伝統的なインド音楽の可能性を21世紀のテクノロジーを用いて前進させています。Bandish Projektの一環としての彼の作品は過去と現在の対話をもたらし、タブラのドラミングの複雑なリズムが現代のエレクトロニカのパーフェクトに引き立てることを示しています。Abletonは、これらの異質な音世界同士の出会いについてMayurに話を聞きました。 タブラとLiveを操るMayur Narvekar 私の理解が正しければ、タブラのような伝統的なインドの楽器を習得することはかなり大変なことです。このような楽器をマスターするまでの過程についてお話しいただけますか?タブラを学ぶ学生は、あらゆるリズムを口で「演奏」できるようにならなければタブラを使った練習をスタートできないとどこかで読んだのですが。このプロセスは「パドハン」と呼ばれています。ドラムを使って演奏を始める前に、まずリズムを声に出すのです。これらのパターンを覚えておくと、実際にタブラを触る際に事がより容易に進みます。非常にゆっくりとした段階的なプロセスです。自分が思った以上に長い期間この形式を学ぶ忍耐と練習が必要です。タブラ・ボール(タブラ演奏での律動的音節および句)を100回演奏すれば、それをよく理解できるようになります。1000回演奏すれば、体がそれを覚えるようになり、学んだことを独自の作品に昇華することができるようになります。完璧さに上限はありません。伝統音楽の側面をどのようにして制作に取り込んでいますか?一例として、こちらのビデオをご覧ください。私のタブラのリズム・パターンをグライムのビートに組み込んだものです。 制作テクニックを解説するMayur 自分がいいと思うものから始めます。ビート、サウンド、ノイズなど、私の感情に訴えるものであれば何でもかまいません。タブラのような伝統楽器を習得することは非常に理に適ったプロセスで、他の分野において成長する助けになります。特定のテクニックについて言っているのではなく、さまざまなアプローチを必要とするさまざまなシチュエーションに身を投じるという意味でです。ソフトウェアはたくさんの選択肢を与えてくれます。そのため、もともとのアイデアとは関係のないことに多くの時間とエネルギーを注ぎ込んでしまいがちです。結果として満足のいかないサウンドが出来上がってしまいます。ですので、自分の求めるものに忠実であることが非常に大切です。だからといって、実験はいけないという意味ではありませんが。 Bandish Projekt『Sargam Breaks』 インド音楽の歴史は非常に古い一方で、エレクトロニック・ミュージック制作は比較的新しいものです。この2つのアプローチを自然な形で共存させることについて難しさを感じることはありますか?また、伝統的な要素を新しいテリトリーで素材として利用することについて違和感を感じることは? そうですね、トラックに何が必要かによります。パワフルな音と自然な美はどちらも同等に重要なゴールです。私のアルバム『Correkt』収録のトラック『Sargam Breaks』を取り上げてみましょう。冒頭から1分で登場する伝統的なボーカルは後にも登場しますが、今度は細かく切り刻まれています。新しいメロディラインに並び替えていますが、エレクトロニックのグルーヴのリズムに合うような形にシーケンスしています。 Mayur Narvekarについて詳しくは、彼のウェブサイトをご覧ください。

キース・フラートン・ホイットマン:モジュラーの迷路をナビゲート

Artists

キース・フラートン・ホイットマン:モジュラーの迷路をナビゲート

近年、モジュラーの分野に注目が集まっています。これまでのモジュラー・システムがスペシャリストを対象としたものであったのに対し、最近のモジュラーは、プロ仕様の製品を買い求めるコンシューマーを対象としたものとなっています。これから導入しようとお考えの方は、いくつか注意しなければならない点があります。エキスパート直伝の知識は、何よりも参考になるでしょう。そこでAbletonは、キース・フラートン・ホイットマンに連絡を取り、モジュラー導入の是非について意見を聞きました。ホイットマンは、Max/MSPからオウドまで、ソフトウェアとハードウェアの両インストゥルメントに精通しています。彼は、ミュジーク・コンクレートの先駆者ピエール・シェフェールにより設立された音楽研究機関でヤニス・クセナキス、ベルナール・パルメジャーニといった人材を輩出してきたフランス音楽研究グループ(Groupe de Recherches Musicales、GRM)スタジオ収蔵の知る人ぞ知る機材の宝庫に立ち入ることを認められました。 ホイットマンの『Rythmes Naturels』抜粋(GRMスタジオにて作曲されたもの) 2000年初期以降、ホイットマンの名はモジュラーの代名詞となりました。現在、小規模モジュラー・メーカーはこぞって最新デザインのテストを彼に依頼するようになっています。彼はまた、配給会社Mimarogluを通じて、無名の新しい実験的な音楽のためのプラットフォームも提供しており、また自身もEditions Mego、PANから個性的なオーディオ作品を定期的に発信しています。モジュラー転向者でありながら、昨今のモジュラー・シーンには懐疑的なアプローチを取っており、過剰な評価をしがちな熱狂的ファンの意見に包まれたこの分野に有益な見解を提供してくれています。 モジュラーを導入したとたん、パッチとプロセッシングの迷路にはまり込み、音楽を完成させることができなくなってしまうということがお約束の展開としてよく言われますが、モジュラーの世界とのファースト・コンタクトはどのようなものだったのでしょうか?あなたにもウサギの穴に迷い込んだように感じられましたか?私にとって初めてのラック構築を始めたのは、ベルリンに行った1998年か1999年のことでした。ミッテのアパートに滞在していたのですが、1階にDoepfer(ドイプファー)のモジュールだけを販売していたシンセのお店があったんです。ドネルケバブを買って、ショーウィンドウの前に立って巨大なシンセを眺めながら、「ラップトップとMaxを操るより、この方が簡単なんじゃ?」と考えたんです。それで、小さなスーツケースに収まるオシレーターとフィルターを入手しました。その後、6カ月ごとにベルリンに戻り、いくつかのモジュールを購入していきました。モジュラー・シンセシスを学んでいた間は、確かに音楽を作ることはなかったですね。ジグソーパズルを組み立てているときのようなもので、最中は完成画についてあまり関心がないんですね。2001年だったか2002年だったかにそのラックを完成させてからは、コンピューターよりもこのラックを使用して音楽制作を行うようになりました。モジュラーがもたらすのはサウンドだけです。これってすばらしいことなんですよ。フェイスブックもないし、メールもないから、集中力が脇にそれることがないんです。音だけ。サウンドを作るためだけに存在しているんです。世間に向き合いたくなかったりインターネットを使いたくない今日みたいな朝は、モジュラーを立ち上げます。1日が終わる頃には、5分間のクールなサウンドが出来上がります。 キース・フラートン・ホイットマン、Doepferモジュラー・システムを限界まで使い倒す 理想的なシチュエーションのように思えますが、モジュラーを学ぶことのハードルの高さと、高価であるモジュラーを入手することの難しさは、なかなか乗り越えるのが大変です。正気とは思えないほど金のかかる趣味ですよね。ビンテージ・カーをレストアするようなものです。数千ドルもするモジュールはたくさんあります。もちろん、入手困難な高価なモジュールを最初に手に入れた者がこの心理戦に勝利するんです。それに、モジュラー・シンセのメッセージ・ボードを運営するというカルチャーも、私の手には負えません。きついですね。だからあまり見に行ったりしません。書き込みをしたこともあったんですが、投稿数が少なすぎて追い出されました。ロマンチックに聞こえるかもしれませんが、モジュラー・シンセの物理的な特性が、オーディオの流れを理解する新鮮な手段を提供してくれるような気がするんです。モジュレーションとプロセッシングが何であるかを実際に目で見て手で操作することができますから。ひとつひとつの端子、コード、ノブすべてに機能があります。すべてがそこにあるんです。大部分において、見たとおりのものが結果に反映されます。モジュラーにはプリセットがないのですが、これもまた重要な点です。そのモジュールのシグナルの送受信の仕組みなどを知っていなければなりません。モジュラーは貫禄のある外観をしています。巨大なシステムを扱っている人を見ると、壮大な可能性を思わせるたたずまいがあります。シグナルの入出力には無限の方法があります。どのような機材も同じ言葉を話す、同じ電圧範囲であるということはすばらしいことです。取り返しの付かないことになる、ということがないんです。出力を出力に接続したからといって壊れるということはありません。私はMax/MSPユーザーですが、あるパッチを作成していて、その過程で何か間違いを起こしてしまうと、すべてがクラッシュしてしまいます。モジュラーではそういうことはありません。もちろん、モジュールを上下逆にパッチングしたりすれば壊れてしまいますが、セットアップを完了してしまえば、上手くいかないということはありません。これまで自分が作った最高傑作に、午前2時にほろ酔い加減のときに生まれたものがあります。ある特定のサウンドを作成しようとしていたのですが、端子を間違えてキーキー音の奇妙なノイズになったことがありました。「いいね。だがいったい何事だ?」と思ったら、ある出力を別の出力に接続していたんです。出力同士がけんかしていたんです。こういった触知性、電圧の動きが、電気によってケーブル内で実際に起こっているんです。一連の整数値ではなく、電圧と電圧のぶつかり合いなのです。この物性が、一部の人を強烈に魅了しているのだと思います。 2013年のPAN ACT Festivalでのホイットマンのライブ・パフォーマンス モジュラーの世界では、インストゥルメントからどういった音楽が生まれるかよりも、むしろインストゥルメント自体に焦点が置かれているように思えます。まったくそのとおりです。機材に偏重した議論のほとんどは、機材に偏重した音楽による産物です。これは必ずしも良いこととはいえません。優れた音楽とは、テクニックや使用されるシステムを超越しています。ツアー中にデモがたくさん送られてくるのですが、その多くは「モジュラーを手に入れた」のでCDを出しました、といった感じなんです。悪いとはいいませんが、私はレコードを出す自信が付くのに15年もかかりました。インストゥルメントを手に入れてわずか1週間でその仕組みを理解し、かなりのレベルで使いこなせるようになるというのが当たり前と考えられている今の状況が、奇妙に思えてなりません。だからノイズばかりが氾濫するようになる。それが何であるかという基本的な概念を理解する前に手を付けてしまうんです。音楽に関することより、機材に関することについて話すことが増えたのも、とても変なことです。これらのインストゥルメントが比較的新しいこと、最近注目を浴び始めたこと、美しく興味を引く外観であること、各機材の個性が強いことのほかに、その理由は考えられません。 モジュラー・シンセシスに興味を持たれたなら、OSCiLLOT by Max for Catsをぜひチェック!100を超えるパッチング可能なモジュールと、パッチング済みシンセやエフェクトを多数収録した、Ableton Live用のコンプリートなモジュラー・システムです。キースと彼の作品について詳しくは、キースのウェブサイトをご覧ください。

Herrmutt Lobby:コントローラー・ハッキングとハンズオン・ミュージック

Downloads

Herrmutt Lobby:コントローラー・ハッキングとハンズオン・ミュージック

ラップトップとMIDIコントローラーの台頭以来、エレクトロニック・ミュージックの「ライヴ」・パフォーマンスの「ライヴ」さについて語ることは困難になりました。こういったセットアップの多くは、ギターやサックスなどとは異なり、応答性に優れたハンズオン・コントロールにはほど遠く、プロデューサーやミュージシャンからの楽器のように動作するインターフェースへの期待は高まる一方です。Herrmutt Lobbyというコレクティブは、この問題に正面から立ち向かっています。コントローラーを用いて、エレクトロニック・ミュージックで真のライヴ・パフォーマンスを可能にする直感的なツールへと変貌させています。コレクティブのメンバーはねじれたダウンテンポのビートを専門とするミュージシャンたちですが、このコレクティブのインストゥルメント・デザイナーとしてのミッションにジャンルは関係がなく、「リアルな」楽器のように、演奏技法に反応するデバイスを構築することです。Abletonは、コレクティブの信念とコントローラーのハッキング方法についてメンバーに話を聞きました。また、カスタム・パッチとLiveセットも公開されており、彼らの手法のを実際に体験することができます。 Max for Liveを使用してフェーダー・コントローラーを操作するHerrmutt Lobby エレクトロニック・ミュージックのライヴ・パフォーマンスに不満を感じ始めたのはいつ頃からですか? Herrmutt Lobbyは10年前にスタートしたのですが、目標はライヴ・バンドになることでした。何枚か制作しツアーに出ましたが、ライヴはつまらないものでした。オーディエンスやオーガナイザーからは熱狂的なフィードバックをもらったのですが。数個のノブをいじくって、あらかじめ録音されたトラックにかけるエフェクトをコントロールするのは楽しくありません。当時ロックが盛んな小さな町に住んでいたのですが、ロック・バンドをやっている友人たちが、ガレージなどでも楽しそうにライヴ演奏しているのを目の当たりにしました。エレクトロニック・ミュージックのライヴ・セットがいいとか悪いとかいうつもりはないのですが、もっと盛り上がることができるはずなのにどうも楽しくなく、「出来合い」感が強すぎるように思えます。それで、シーケンスから距離を置く方法を模索するようになりました。この業界はループだけを使用する傾向が強いので、こういった動きのない構造の向こうにある新しい形を探るよい機会だと思いました。ハンズオン・テクニックを開発してそれらをステージで試みることは楽しいし、やりがいがあります。即興で演奏できる点やより直感的に音楽が生まれる点で、ジャズに似ているかもしれません。 Herrmutt Lobbyの新トラックではKing Kashmere IVとBoodaをフィーチャーしている シーケンサーで曲作りをしていた頃は、友達がスタジオに遊びに来てくれても、制作中の内容をただ聴くしかありませんでした。シーケンサーでの作曲に興味を持つ人は少なかったからです。今では、スタジオにコントローラー、ジョイスティック、パッド、iPad、自作の機材などが所狭しと並んでおり、すべてリアルタイム・パフォーマンス・パッチで相互連結されています。今なら、スタジオに足を踏み入れれば誰でもジャミングに参加できます。演奏がもっと楽しいものになります。連結したインストゥルメントを使って演奏するこのプロセスを、私たちは「リアルタイム・システミック・ミュージック」と呼んでいます。こういったデバイスを複雑で微細な操作に反応させるようにする上で難しかったことはありますか?リアルタイムで演奏する際の一番の課題は遅延(レイテンシー)です。コントローラーをインストゥルメントとして使用するには、レイテンシーをできるだけ(できれば4ms以下に)下げる必要があります。レイテンシーは、コントローラー、コンピューター、サウンドカードとそれが何であれ、セットアップに使用されているすべての機材によって追加されるので、チェーン内の必要のない機材を徹底的に排除しました。既存のコントローラーに独自のプログラムを「侵入させる」方法についてお話しいただけますか?オペレーティング・システムをソフトウェアにオーバーライドさせているのでしょうか?市販のデバイスの「脳」の再プログラムができれば最高なのですが、普通は無理ですし、無理でなくてもあまりにも複雑すぎます。ただ、ほとんどのデバイスにはMIDIコントロールを送信できるので、私たちはLiveとコントローラーをリンクさせるソフトウェアを作成しています。私たちの目的がデバイスの能力の範疇を超える場合、たとえばファームウェアに任意の制限がある場合などは、既存の電子回路を取り除いてしまい、ArduinoやTeensyといったプログラム可能なマイクロコンピューターに直接センサーを接続してしまい、独自のファームウェアを記述してセンサー・データの処理とMIDIメッセージの送信を実行させます。 デバイスの操作とマッピングについて説明するHerrmutt Lobby 最近では、ロンドンで開催されたMusic Tech Fest Hackathonで、Playstation 3のコントローラーをウェアラブルでワイヤレスの音楽用インターフェースに作り替えました。今回は、加速度計、ジャイロスコープ、ジョイスティックといったパッドの電子回路をほとんど残し、ボタンを取り除いて、ジョイスティックのひとつを3Dプリンターを使用して補強したキャップの付いたinnofadderで置き換えました。同時に、ベーシックなプレッシャー・センシティブのiPadスタンドを製作し、ベロシティとアフタータッチをiPadに加えました。今は独自のコントローラーをデザインしている最中です。ステージ向けの製品で、2016年前半には市場に出回る予定です。より堅牢な造りになっており、アーキテクチャに手を加えることを可能にするMax for Liveパッチが付属しています。皆さんのアプリBeatSurfingは、ハンズオンでの作品作りに大きな跳躍を提供するアプリです。このアプリのビビッドなビジュアル・インターフェースは皆さんの音楽製作にどのように影響しているのでしょうか?生まれてくる作品にどのような変化を与えると思いますか?BeatSurfingで、作曲プロセスは一変しました。レイアウト・デザインが作曲と共に展開するだけでなく、結果として生まれるトラックはそれだけではプレイできず、フィジカルな操作なしには聞くことができません。もはや音楽コントローラーではなく、あらゆる要素が相関するシステムとなっています。あらゆる要素があらゆる部分に影響を与えるのです。 Herrmutt Lobbyによるアプリ、BeatSurfing スタンダード・ジャズやコンメディア・デッラルテにより近いかもしれません。カンバスはそこにあるけれど、結果として生まれるトラックは誰が演奏するかによって変化するのです。iPadとiPhoneでのエクスペリエンスを拡張させる新しいアプリを数ヵ月中にもリリースする予定です。皆さんが開発するソフトウェアについて、開発中に意図しなかった方法で使用されると思いますか?障害を持つ子供たちがカスタム楽器とiPadにBeatsurfingを使用して演奏するAccessible Youth Orchestrasのように、すばらしい使用方法をいくつか目にしています。また、ベルリンのDigiEnsembleの「iPadオーケストラ」も非常に印象的でした。 Herrmutt Lobbyの『The Counter』をダウンロードしてお試しいただけます。この優れたMax for Liveデバイスでは、デバイスのパッドのプレイ方法に応じてマッピングを効率良く設定する直感的なプロセスを使用して128のサウンドをわずか16のパッドでプレイできます。Herrmutt Lobbyについて詳しくは、Soundcloudおよびウェブサイトをご覧ください。

Seekae:自信に満ちあふれた『The Worry』制作の裏側

Artists

Seekae:自信に満ちあふれた『The Worry』制作の裏側

2000年代は、ビート中心のエレクトロニカが豊作の時代でした。たとえばシドニーのトリオSeekaeは、J・ディラ一派のヒップホップのシャッフル感とクラシックなEDMの広角なエモーションを組み合わせた新進アーティストです。特にSeekaeは発展性のあるポテンシャルを見せており、2008年のデビュー作『The Sound of Trees Falling on People』は、深奥なエレクトロアコースティック・テクスチャに抜け目ないトリッピング・ビートを融合させており、その手法はいまだに新鮮みを失っていません。それから6年後にSeekaeがリリースした新アルバム『The Worry』は絶賛を受けています。ひっそりとしたスタートからの決定的な進化は際立っており、見事なまでに成熟し自信に満ちた新たなスタイルへの動きを見せています。オリジナル・メンバーのひとりGeorge Nicholasは、Abletonコミュニティのメンバーでもあります。Seekaeとしてのツアーや(同じくシドニー出身のHamish Dixonとのプロジェクト)Cliquesでの活動の合間を縫って、彼はシドニーのLive Schoolでプロデューサー志望者にレッスンを行っています。Pushにも詳しい彼は、お気に入りのテクニックを紹介し、急成長するバンドのメンバーとしてのプレッシャーについての洞察を提供することに非常に意欲的です。 Seekae『Another』 Seekaeでの作曲プロセスについてお聞かせください。どのようにして3名のメンバーの要求のバランスを取っていますか?Seekaeでの作曲プロセスは、皆が同じ街に住んでいないので、かなりまとまりのないものです。Alex Cameronと私はシドニーに住んでいますが、どちらも街を出ていることが多いし、John Hassellはイギリスに住んでいます。なので、3名がグループとして作曲することはありません。1作目の『The Sound of Trees Falling on People』は3人で集まって作りました。今回と比べると、ですが。2作目の『+Dome』もだいたい同じで、当時は共同のスタジオがあって、そこで一緒に作業し、ドラムとギターを録音してミックスも皆で一緒にやりました。『The Worry』の制作中は、皆が世界中のいろんな場所に散らばっていました。なので、一緒には書いてませんね。Dropboxを活用しています。その制作方法は完成作に影響しましたか?より検討されたものになったと思います。個人的には、一人で作曲する方がどちらかというと好きです。誰かと作曲するときは、その場の雰囲気に飲み込まれる可能性が必ずあるように思えるからです。あるアイデアにはまって「ああ、それは最高だね」などと口走ってしまい、批判的な考えができなくなることがあります。また、他の人たちと一緒の室内のムードをある程度ポジティブに保ち、それまでに作り上げたクリエイティブなエネルギーを壊さないようにしなければならないというプレッシャーもあります。一人での作業にはずっと時間がかかりますが、批判、検討、うんざりするほどゆっくりと悪戦苦闘しながらもさまざまな可能性について試行錯誤する時間を与えてくれます。 Seekaeによる『Blood Bank』パフォーマンスの様子(2014年Hype Hotelにて) それでは、ツアーに出る際、どのようにしてそれぞれのセットアップを統合させるのですか?ツアー前にだいたい1週間ほど集まってスタジオにこもり、トラックの再構築を行います。半日ほどかけて、「このトラックはこんな風に、これはこういう感じで」と意見を出します。オーディエンスを引きつけるライブ・パフォーマンスとサウンド・クオリティの間での妥協点を見つけるよう努力しています。単なるWAVファイルのプレイバックにならないよう、かといってサウンドのクオリティがないがしろになりすぎることのないよう、転換点を探すんです。あなたのライブ・セットやチュートリアルにPushが登場しているのを拝見しました。出会いのいきさつについてお話しいただけますか? シドニーのLive Schoolでトレーナーをしているので、ラッキーなことに発売前にPushに触ることができました。かなり初期のベータ・バージョンだったのですが、結局は最終的にリリースされたものにかなり近いものでした。新インストゥルメントとして触った感想はいかがでしたか?はじめのうちは、かなりベーシックな方法で使用していました。マルチカラーのLaunchpadといった感じです。「わあ、カラーだ!いいじゃないか!」って感じでしたね。パワーアップしたLaunchpadやAPCという印象だったので、しばらくそういう風に使用していました。その後、ドラム・シーケンサーにはまり始めました。これがなかなか見事なワークフローなんです。次にメロディ・シーケンサーを使い始めて、度肝を抜かれました。後でファームウェアに追加された機能だったかと思うのですが、メロディの扱い方を一変させました。作品に与えた変化はありましたか?新しい機材を導入することは、必ず変化への新しい視点をもたらしてくれます。サウンドについて新しい方法で考えることができます。Pushは、十二平均律と私との結びつきを変えました。音階を選択するとその音階になり、自由に操作できます。使える音は少なくなったとしても、その音階内で新手法を試すことが非常に簡単になり、私のようにあまり器用でない人に特に便利です。私はこれをライブでシーケンシングに使用しています。私はドラマーではありませんし、フィンガードラミングにも自信はありませんが、臨機応変にシーケンシングできるというのはうれしいです。何をシーケンシングなさっていますか?その場の判断でサンプルを操作しているのでしょうか、それともVSTのコントロールですか?ほとんどの場合、メロディ・ステップ・シーケンサーを使用して非常に短いアルペジオを作成しています。1小節ほどの短いシーケンスをループさせてノートを追加したりVSTのパラメーターを一番上のマクロを使用して変更したりします。こうして、さまざまな要素に微妙な変化を同時に加えることができます。独自のマクロ・マッピングも行っています。それだと、VSTを開いて自動マッピングを確認する必要がありません。通常、手持ちのVSTをインストゥルメント・ラックに入れ、一定のパラメーターを見つけてそれらをマクロにします。ADSR、フィルター、いくつかの空間系エフェクトといったベーシックなものです。Max for Liveはどのようにご使用ですか?Push用に作成されたパッチなどはご使用ですか?Push用の新しいシーケンサー・パッチを送ってもらったばかりです。Maxデバイスはたくさん使用していますが、Pushに特化したものはあまりありません。安全策として、ライブで使用するプラグインとMaxデバイスの数は最小限に抑えるよう心がけています。先日優れもののMaxパッチを手に入れたんです。ひとつはDiffuseという名のSpace Echoのシミュレーター、もうひとつはMagneticというパッチです。どちらもSurreal Machinesのものです。RE-201エミュレーターにコンボリューション・リバーブとオリジナルのワウ、フラッター、グリットが組み合わされています。 『Chro』制作について語るGeorge Nicholas(Live SchoolのInputセッションにて) CliquesはSeekaeに比べてよりフロアを意識した作品となっており、さまざまなUKアンダーグラウンド・サブジャンルが新鮮な手法で掛け合わせられています。制作プロセスに違いはありますか?まったく異なります。実際のプロセスについて言えば、Cliquesのトラックはどれもドラム、ベース、パーカッションからスタートして、その後必要に応じてメロディを補足するという流れです。Seekaeでは、ほとんどの場合コード進行からスタートして、その後、その上にメロディを構築し、ベースラインをかぶせ、最後にドラムを作成します。ドラム・サウンドにはかなり厚みのあるサウンドもありますね。そのまま使用してしまうとドラム・サンプルがビッグすぎると思うことはありますか?ありますね。サンプル・パックには、サウンドが優秀すぎて手を加える隙がないものもあります。サウンドが確立されていて実験の余地がないのです。ただ、Cliquesの制作ではかなりの処理が行われています。Cliquesでは、できるだけAbleton色を出さないように心がけているんです。テープ・サチュレーションのエミュレーション、MaxパッチのDub Machinesのような多数のエフェクト、古い機材のようなサウンドを生むエフェクトをたくさん使用しています。これらはパラレルでミキシングしているのですか、それともチャンネルに直接ドロップしているのですか?場合によりけりです。リターン・チャンネルには必ずSound Toys Decapitaorを置いていて、すべてを少しずつそこに送り、後で圧縮もかけます。バックグラウンドで機能させておいて、少しノイズも送ります。空間系エフェクトのルーティングは複雑ですか?オーディオを複数のセンドに送ってチャンネルに戻しているのでしょうか?いいえ。複雑になるのはラックを使用してラック内でチェーンを多数作成して多数のパラレル・プロセッシングを行う場合です。大抵の場合、私はトラックにサウンドを置き、ラック内で複数のチェーンを作成し、それらのチェーンにEQで特定の周波数帯域を選択します。その後、コンプレッサ―で低域を、コーラスで中域を、オーバードライブで高域をそれぞれ処理します。 SeekaeとCliquesについて詳しくは、FacebookおよびSoundcloudをご覧ください。

Baauerのドキュメンタリー『Searching for Sound』ビデオ、サンプルPackの無償ダウンロード

Artists

Baauerのドキュメンタリー『Searching for Sound』ビデオ、サンプルPackの無償ダウンロード

音楽には数千年の歴史があります。世界各国のサウンド、楽器、文化はますますその多様性を高めていますが、とはいえ既知の事柄に忠実になる傾向があります。習慣から抜け出し先を見据えたいなら、こう考えてみるのはいかがでしょう。この世界は、あなたの視点を変え、クリエイティブな視野を広げるであろうサウンドであふれているのです。バウアー(Baauer)が新アルバム制作のインスピレーションとなるフレッシュなサウンドを探して世界を巡る冒険を始めたのは、このような考えによるものです。『ハーレム・シェイク』現象をきっかけに新たな方向性を模索しはじめたハリー・ロドリゲスことバウアーは、制作パートナーのニック・フックと共に、ドバイの砂漠から日本の火山へと各国を旅し、ひねりの効いたサウンドと古代から続く伝統音楽を録音し、これらの素材を加工してスタジオで使用しました。うれしいことに、彼らはサンプルのフル・セットを提供してくれました。サウンドのビジョンを広げてくれるこれらのサウンドは、あなたのパレットに新たな印象を加えることでしょう。このサンプル・パックの魅力は、その制作をめぐる物語の魅力そのものでもあります。下では、26分にわたるバウアーのサウンド・トラベルに関するドキュメンタリーをご覧いただけます。Abletonのインタビューでは、レコーディング、サウンド加工の手法、サウンド・パック公開を決めた理由についてバウアーが語っています。また、パックのダウンロード・リンクも記載しています。このアイデアはどのようにスタートしたのですか?なかなか大規模なプロジェクトのように思えますが。新しいアイデアだな、といった感じで、単なる思いつきでした。正確にいつだったかは思い出せないのですが、ただはっきりしていたのは、自分でレコ―ディングして、最高に珍しくてクレイジーなサウンドを取り込んで、究極のサンプル・パックを構築することができるプロジェクトがしたいということでした。アイデアはここから始まりました。その後Red Bullとタイアップし、そこからはすべて自然に形になっていきました。 撮影: Balazs Gardi / Red Bull Content Pool. プロジェクトに取りかかる前から西洋文化圏以外の音楽をよくお聴きになっていたのですか?その通りです。インスピレーションを得たり、少し変わったサウンドを聞いて別の視点を得るためにかなりの音楽を聴いていました。たとえば少し前から日本の雅楽を聴いていますが、それはこれが非常にクールで異なった音楽で、まったく新しい音楽的視点を与えてくれるからです。地球の裏側まで飛んでいき、他国の音楽事情に飛び込むという体験はどのようなものでしたか?会ったことのないミュージシャンに面と向かうのに気後れはありませんでしたか?実際のところ、とてもすばらしい体験でした。私たちが求めていたのは、それぞれの物語を語ってもらい、音楽を演奏してもらうことだけでした。皆、喜んで行ってくれましたよ。彼らは、自分たちの音楽を分かち合えることをとても喜んでいました。だから、常にとてもいいヴァイヴが生まれていました。私たちは知らない国からやって来たよそ者でしたが、それでも彼らは喜んで彼らの伝統を披露してくれました。 ドキュメンタリー『Baauer: Searching for Sound』を観る こうして集めたサウンドをどのように使用しましたか?ラクダのうなり声やハヤブサの羽ばたきの音はかなり抽象的なサウンドですが、どのようにしてこれらをクリエイティブなプロセスへと組み込んでいったのですか?これらのサウンドは完全に変形させてトランスポーズしています。全く違ったものへと変化させています。新しいサウンドを使用して、あるものを全く別の何かに変化させることができるというのはすばらしいです。フルートの演奏をパーカッション要素に変化させたりしています。2回の旅で生まれたかなりの数のサンプルを使用していますが、そのほとんどは全く新しい別の何かになっています。Ableton Liveに搭載のツールで、これらのサウンド加工に使用されているものはありますか?トランスポーズ、Complex Pro、それにあらゆる種類のワープ機能を使用するのが好きです。ワープのアルゴリズムはそれぞれオーディオに異なるサウンドをもたらしてくれるので、多用しています。また、クリップ内でトランスポーズにオートメーションを設定して変化を加えるのも気に入っています。新しい音楽環境にさらされる体験は、ご自身の音楽に対する見方に変化を与えましたか?ええ、もちろん。何よりも、自分のプロセスについて考え直すきっかけになりました。インターネットから何かを取り出すのではなく、外に出て実際の生活空間にある音を録音することは、私の音楽制作の方法を大きく変えました。さまざまなコンテキストから生まれたサウンドを使用することについての先入観が消えました。素材を活用して全く新しい何かにしてしまうことができるようになりました。 AlunaGeorge & Rae Sremmurdをフィーチャーしたバウアーの最新作品 このプロジェクトは、人々をサウンド自体に夢中にさせているようにも思えます。オーディオについてのあなたの考え方が再び活性化されたという側面はありますか?ある種の縛りを設定したり、使用するものを一定に制限した状態で作業をするのはよいことだと思いますが、どんなときでも、新しい素材を手に入れることができるのはいいものです。画家が新しい色の絵の具を手に入れるようなものです。世界にはまだまだ使用できる素材がたくさんあります。外へ出て、ふれあえばいいのです。 撮影: Balazs Gardi / Red Bull Content Pool. このような旅を経験した後、再びスタジオに閉じ込められた状態にうまく慣れることはできましたか?アルバムの制作状況についても聞かせてください。こまごましたものがたくさんあります。これをひとつに組み合わせて、まとまりのある形にすることが当面の大きな課題です。今はその作業中です。サンプルを無償ダウンロードとして提供することについてはどうお考えですか?自分の作品を公開するといった気分でしょうか、それとも、これが素材として活用されてどのような作品が生まれてくるのかが楽しみという感じでしょうか?皆がどんなことをするのか楽しみです!私が録音したこれらのサウンドが世に放たれ、それに皆が反応する。考えただけでワクワクします。これらのサウンドを使って生まれた作品に出会う日が待ち遠しいですね。私にとっても大きな刺激になることでしょう。 サンプル・パックをダウンロードしたら、ぜひ出来上がった作品を公開してください。その際は、ハッシュタグ #MadeWithLive をお忘れなく。このプロジェクトについて詳しくは、『Searching for Sound』ウェブサイトをご覧ください。

Jason Spanu: 経験が放つ輝き

Artists

Jason Spanu: 経験が放つ輝き

Jason Spanuと彼のスタジオ(写真:Christopher Drost) ミュージシャンとして20年を超えるキャリアを持つ認定トレーナーJason Spanuは、ソロ・ミュージシャン、DJ、バンドのメンバー、ネリー・ファータドやドレイクなどのテクニカル・ディレクターなど、数多くの役割を果たしてきました。バンドとの映画用サウンドトラック制作やPushを使用した新しい基盤の構築など、現在進行中のプロジェクトで忙しいJasonを訪ね、旅先でのエピソード、Live使用のヒント、Liveを使用したDJイングに対する彼独自のアプローチについて話を聞きました。 『Getting Serious』 ― DJ Shine aka Jason Spanu より大規模なバンド形態の場合、Ableton Liveを使用するあなたの役割は何ですか?一般的に、バンドの規模が大きくなるほど、ライブにプロダクションが関わる度合いが増えるので、私の役割も拡大することが多いです。多数のオーディオ・トラックとMIDIトラックを含む巨大なショー・ファイルのプログラミングと編集を担当していますが、これは別個のスタジオ・トラックを混ぜ合わせたものと追加素材の再生を容易にし、ライブに付加制作価値を与えます。シンプルに答えるとすれば、バンドと一緒にオーディオ・ファイルをプレイするのにAbleton Liveを使用しています。私の役割は、「データ・ライブラリアン」や「リミキサー・コンサルタント」といったところでしょうか。アーティスト/バンドと彼らのニーズ次第です。スペースバーを押してソングをスタートする以外何もすることがない場合もあれば、超巨大なマッシュアップの作成やビデオ・コンテンツの同期などを任される場合もあります。アーミーナイフのデジタル版のような役割です。ご自身のバンドAutomated GardensでのAbleton Liveを使用するあなたの役割は?Automated Gardensは、Keram Maliki Sanchez、Joshua Joudrie、そして私から構成されるトリオです。90年代にはもっとアクティブに活動していましたが、クリエイティブなつながりは維持してきました。最近では、映画『Ecstasy』用の素材を作曲しました。今は新アルバムを制作中で、開始から1年半ほどになります。メンバーは皆Liveユーザーです。それぞれいろんな場所に住んでいるので1カ月間一緒に作曲するということは無理なので、ひんぱんにファイルをやりとりしています。だいたい、私が曲を作り始めて、それをロサンゼルスのKeramに送って意見を聞きます。Joshがミキシングする前に、何度もファイルのやりとりを行います。 アーヴィン・ウェルシュの『Ecstasy』劇場予告版。Automated Gardensの音楽が使用されている ソロ・アーティストとして、またドレイク、フランク・オーシャン、ネリー・ファータドなどとの大型ツアーにも参加していますが、Ableton Liveのそれぞれのシチュエーションへの適応度についてはどのようにお考えですか?大規模なツアーでLiveを使用する一番の理由は安定性でしょう。安定性と柔軟性、特に、音楽的な変化にスムーズに順応するという点です。コンピューターをステージに上げて再生ボタンを押し、それに合わせてバンドに演奏させるというやり方もありますが、マイクの故障、メンバーがパートを忘れてしまった、バンドがあるセクションをループしないといけなくなったなど、ステージに大惨事をもたらしかねない予期しない状況が起こることもあります。Ableton Liveは従来のタイムライン・アプローチから離れた自由な操作が可能です。ですから、ほとんどの場合、私がある種のオーディオのセーフティ・ネットの役割を果たしています。 ネリー・ファータドのツアーでは、バンド・メンバーとしてステージでより積極的な役割を担っています。彼女のプレイバック・ファイルをループ、微調整、加工したり、ショーにシンセやサンプル要素を追加したりもします。MIDI配信システムが用意されていて、ステージ上の他のすべてのシンセにプログラムチェンジを送信し、同期が役立つギター・ペダルや他のエフェクトにMIDIタイムコードを供給します。また、ショーの照明とビジュアルの統合用に、各ソングではSMTPEタイムコードをビデオ・サーバーに送信しています。 フランク・オーシャンのライブでのJason Spanuのセットアップ(写真:Christopher Drost) 自分のパフォーマンスでは、Abletonの使用にまったく異なるアプローチをとっていて、コンピューターの処理能力の限界に挑戦するほどの非常に精巧なセッションを構築します。単に安全でシンプルなセットアップを用意するより、クリエイティブな柔軟性をできるだけ手元に残しておきたいのです。2台のラップトップ、2台のPush、2台のiPadを各ステーションに置いた全く同一のシステム2基を使用して演奏することもよくあります。こうすることで、ライブを「DJ」することができます。ワンマシンでも全ての操作を行うことは多分可能だと分かってはいるのですが、こうすることで、1台のコンピューターを巨大なライブ・セットのすべての曲を置くといった1つのタスクに専念させ、もう1台のコンピューターをより自発的なジャミング・ステーションとして使用し、空のセットを置いて状況に応じてヴァイブを構築できます。DJイングを行う際、セットの組立てに傾向はありますか?どちらかというとしっかり計画するタイプですか、それとも自然に任せるタイプですか?プランを練りすぎないようにしていますが、デジタルDJイングには主力の流れがあります。昔はジャケットのデザインや色でレコードが識別可能で、そのサウンドやヴァイブ、どれとミックスするべきかがすぐに分かりました。しかし、SeratoやTraktor、Liveを使用する場合は、ソングのタイトルだけが頼りです。これがなかなか難しい。アルファベットが無数に並んだファンキーで珍しいヨーロッパ風のタイトルは頭に入りにくいからです。これを克服するために、私は独自の色分けでソングを(クリップで)分類しています。テック・ハウスは紫、トライバル・ハウスは茶、ボーカル・ハウスはオレンジ、ありがちなチューンは黄…というふうに。また、ソングの強度やエネルギーを示すためにグラデーションも使用するようにしています。たとえば、濃い紫はヘヴィーなサウンドのテック・ハウス、薄い茶はボーカルのあるトライバルっぽいハウス、といった感じです。この記事の読者にLive/Pushに関するアドバイスをひとつ贈るなら、どのようなものになりますか?私は、Pushを他のユーザーとは少し変わった方法で使用しています。ClyphXというフリーのコントロール・スクリプトを利用してスケール・モードの動作に動きを付けるのが好きです。簡単に説明すると、ClyphXは、クリップ名に特定の単語を使用することで、Liveのパラメーターの一部の側面をコントロールできるようにしてくれます。私が最もよく使用するのが「pushscl」です。これは、Pushのキーとスケール情報のスナップショットをとって、トリガー時にそれをPushに再生することができます。このプロセスを繰り返してから、さまざまなクリップを順に選択するフォロー・アクションを使用すると、今度はPush内で変更がトリガーされ、同じ場所に留まったままスケールとキーのモジュレーションに従うすばらしい結果をジャミングできます。 DJ ShineのSoundCloudページ

Nicolas Bernier: オーディオビジュアルの連続したつながり

Artists

Nicolas Bernier: オーディオビジュアルの連続したつながり

Nicolas Bernierは、光とサウンドの連続するつながりに光を当てた、説得力のあるインスタレーション・シリーズ『frequencies』で注目を集めました。複雑な原理からインスピレーションを得、エレガントなシンプルさで示されるBernierの作品は、パワフルなコンセプトをダイレクトかつ触覚に訴える方法で表現します。 シリーズ最新作では、量子物理学の素粒子と確率を用いて、その理論をオーディオビジュアルの領域へと拡大させています。急に現れるホワイトノイズとサイン波は、暗く親密な空間内に、波打つように躍動する光のパターンを引き起こします。理論とプロセスを組み合わせること、また美と示唆に富むコンセプトと間のバランスの取り方について、Bernierに詳しい話を聞きました。 Nicolas Bernier『frequencies (light quanta)』 科学的理論はあなたのクリエイティブなプロセスにどのように影響していますか?量子物理学がオーディオと光による構造を作り上げる例を挙げていただけますか? 最も分かりやすい例は、アクリルのパネルにレーザーカットされたグラフィックでしょう。これらのグラフィックは、量子物理学の本で見つけた図表を再現したものです。グラフィック要素はすべて複数のパネルに個別に分類されているので、どのパネルが点灯しているかに応じて見えるグラフィックも異なります。グラフィック・デザインは、さまざまな要素を配置するための計測ツールとして使用されているグリッドに基づいています。小さな点から構成されるこのグリッド自体、私のアイデアを非常によく表現していると思います。これらの点が光ると、星座のようにも見え、とても魅力的です。 サウンドについては、量子物理学の応用はかなりシンプルです。この作品は粒子という概念に基づいていて、小さなバースト音やクリックといった細かな要素を扱っています。この原理は、マイクロモンタージュをベースとする形態の構成、さらにサウンド処理にも応用されています。すべてのサウンドの生成には、グラニュラー合成エフェクトを主に使用しています。サウンド・アーティストEnnio MazzonがレーベルFarmacia901用に開発したカスタムのMax/Mspベースのアプリケーションを使用しました。 『frequencies (light quanta)』の説明で、「有機的な発展」との言及がありました。どのようにサウンドと光の「有機的」なシーケンスを生成したのかお話しください。 サウンドの粒子を扱うというアイデアは、作品の大まかな形態(100のオーディオビジュアル・シーケンスから形成されるもの)を作り上げるのにも使用されました。シーケンスのほとんどはかなり短く、数ミリ秒から50秒程度で、一部はそれよりも長く(3~5分)、より作曲された作品という印象を与えるものです。有機的な形態、というのは、こういった断片のすべてが偶然組み立てられ再生されているという意味においてです。これもまた量子物理学の原則に沿ったものです。理論とは確率計算に基づいている場合がよくあるのです。複雑だったり分かりにくいものではありません。始まりも終わりもないというインスタレーションや作品はよくあります。この作品の偶然性は、この概念的なアイデアにまさにうってつけなものです。 この作品のようにマルチメディアな作品での作曲プロセスはどのようなものですか?プロジェクト初期において、オーディオ、光、オブジェクトへの取り組みをどのように分けて(あるいはまとめて)行っているのでしょうか? プロセスにおいて、体系立てた何かがあるわけではないんです。どのプロジェクトも独自のスピード、要素、制約で発展していきます。たとえば、『frequencies (a)』は装置からスタートしました。音をベースにしたものだったので、まず「楽器」を構築する必要があったのです。その後、「シンクロニティ」という概念のもと、これをひとつのオーディオ発光性媒体と考えて光とサウンドを構成していきました。 Nicolas Bernier『frequencies (a)』 『frequencies (light quanta)』では、サウンドからすべてが始まりました。そのほとんどは独立した音楽として作成され、その後さらなるアイデアが加わり、プロジェクトが現在の状態へと発展しました。ただ、サウンドとビジュアルを作成する上で、すべてがうまく組み合わさるための重要なポイントが必ずあります。たとえば、一部のオーディオ断片は使用しませんでしたが、それは、それらがインスタレーションで上手く機能しなかったためで、いくつかの断片の構成を変更しました。 Nicolasについてこれまでに紹介した記事を読む Nicolasの他の作品は、彼のウェブサイトからご覧いただけます。

インプット/アウトプット: Massimiliano Pagliara

Artists

インプット/アウトプット: Massimiliano Pagliara

Massimiliano Pagliaraは、そのイタロ・ハウス・ミュージックへの際だってオーセンティックな解釈が特徴的なプロデューサーです。厚みのあるテクスチャのアナログ・サウンドを好むファンたちは、彼の豊富なディスコグラフィ、特に今年9月Live At Robert Johnsonでリリース予定のLP「With One Another」に熱い視線を送っています。レトロなその美的感覚の背後にあるプロセス、古風な機材をモダンなソフトウェアに統合させる手法、TR-808をKorg MS-20にルーティングする楽しみについて話を聞きました。

Jonathan Zorn: 不気味なボコーダー

Artists

Jonathan Zorn: 不気味なボコーダー

Jonathan Zorn、自身のスタジオにて - 撮影: Ross McDermott 不完全や欠陥とされるものをテーマに取りあげ発展させていくアーティストがいます。真空管回路、ビニール、テープなどのディストーション特性を再現するプラグイン・エフェクトの数、また昨今のプロダクションに使用されているクラックルやテープ・ヒスのサンプルの数をみても、その存在は明らかです。 エレクトロアコースティック・ミュージシャンであり研究者でもあるJonathan Zornは、Google翻訳の翻訳機能を使用して幾度も翻訳を重ねるうちシステムの不完全性により文章の方向性が別方向へと進んでいったジークムント・フロイトの文章をベースとするシリーズ作品「And Perforation」で、この歴史に新しい1ページを加えています。 And Perforation by Jonathan Zorn 「And Perforation」とその関連作品「Language as Dust」のリリースに際して、AbletonはJonathanにインタビューを敢行、ボコーダーとモジュラー・シンセの使用について、言語を細分化することについて、Liveを使用した反応性に優れたパフォーマンス・セットアップの作成について話を聞きました。 「Language is Dust」と「And Perforation」での文章の構成プロセスについてお話しいただけますか。 「And Perforation」は、友人がDoepferモジュラー・ボコーダーを貸してくれたのですが、ジークムント・フロイトの評論「不気味なもの」に合うシリーズ作品を作成する最高の機会に思えました。親しみと違和感を同時に感じる何かというアイデアは、合成ボイスに対する私の強い興味を要約するのに非常にふさわしいと思いました。この関連性は、もともとムラデン・ドラーの本「A Voice and Nothing More」から得たものです。 テキストを作成するために、まずGoogleを使用してオリジナルのテキストを英語に翻訳しました。「Obvious Difference Scary」では、短いパッセージを繰り返しさまざまな言語に翻訳してから、英語に翻訳し直しました。「das Unheimliche」というドイツ語が次第に歪んでいくのが分かります。「The Bizarre」では、長いパッセージにMicrosoft Wordの自動要約機能を適用してからさらにGoogle翻訳にかけました。「And Perforation」では、自動翻訳で作成された言語的にまぜこぜとなったものにさらに編集を加えています。 Google翻訳でフロイトの文章を処理する 「Language as Dust」のテキストには、アリストテレスの「霊魂論」、ジュリア・クリステヴァの記号論に関する論文、トーマス・エジソンの今後の録音技術の使用に関する覚書、ボコーダーの歴史に関するデイヴ・トンプキンスの本から集めたボコーダーの聞き間違え、電子音声現象(コンスタンティン・ラウティヴによる、ホワイトノイズを使用した死者との交信内容の書写)が含まれています。 テキストの加工には、MS Wordの自動要約機能、複数のテキストの接合(バロウズの「カット・アップ」的手法)、消去、翻訳などのテクニックを使用しました。このプロセスを経ることで、言語を音楽素材として使用することに興味を持ちました。たとえば、「Meditation on Pattern and Noise」では、フレーズや単語を繰り返してサウンドのパターンを作成し、語義とは関係のない音楽的な論理を作成しました。 Jonathan Zorn - Language...

Surgeon: その瞬間につながるということ

Artists

Surgeon: その瞬間につながるということ

「Surgeon」という名は、テクノ界においてかなりの重要性を持っています。Anthony Childがこのジャンルに残した決して消えることのない功績を考えれば、それも納得です。90年代初頭にバーミンガムのテクノの巣窟House Of Godのレジデントとして登場して以来、UK出身のこのプロデューサーは、Tresor、Blueprint、Downwardsといったレーベルからのリリースで、エレクトロニック・ミュージックの1ジャンルであったテクノが人気ジャンルへと成長するのに一役買いました。Childのスタイルは目を見張るほどの正確さとまごつくような難解さがぶつかり合い、内部に秘めたロジックに応じて、めくるめくリズムの狂乱や鳥肌もののテクスチャを導き出します。 Surgeonの最新アルバム「Breaking The Frame」からの抜粋をお聞きください。 発表作品によりエレクトロニック・ミュージック界の常連となったChildですが、感情露わで極めてディテールに凝ったクラブ・パフォーマンスでも有名です。Childはサウンド・ソース間の継ぎ目を曖昧にするという手法でまったく新しい何かを生み出し、押し寄せる情報に後れを取らないよう努める聞き手を夢中にさせます。 「人々をより内省的かつより対外的な状態にさせる手段は、僕にとって非常に重要だ」Childはこう説明します。「どのような手段であれ、使用するツールに慣れれば、パフォーマーは目立たない存在となり、ツールを用いて自分を表現することになると思うんだ」 単に便利性を向上させる手段(ステージでラップトップを操るパフォーマーにしばしば向けられる批判)としてではなく、クリエイティブな発展の可能性として理解し、DJイングとライブ・パフォーマンスにデジタル技術を早くから採り入れたChildにとって、ツールは核心的なトピックです。これらを念頭に置き、Abletonはパフォーマンスの観念についてChildと意見を交わし、自身が理想とするパフォーマーとしてステージに立つのに重要な役割を果たしているAbleton Liveと彼の関係について詳しく考察しました。 Paul Damage、Sir Realと共にHouse Of Godを立ち上げた初期、Childは、2デッキ・1ミキサーという従来のセットアップに自身の厳格なスタイルを可能なかぎり適合させ、同一レコードを2コピー使用してイントロを延長し、ダンスに突入するまでの緊張感をぎりぎりまで高めるといったテクニックを使用していました。その後、いつでも自由に操作可能なトラックの数が増えるという点に興味を引かれ、Final ScratchでデジタルDJイングの世界に試験的に足を踏み入れました。それは、バイナル伝統主義者たちの反発―テクノが「テクノロジー」にその起源を持つ音楽シーンであることを考えればいささか滑稽でもありますが―を無視する、強い意思を必要とする決断でした。 制作でAbleton Liveに慣れ親しんでいたChildは、当時まだ新しかったこのソフトウェアをパフォーマンスに使用し始めます。2003年、ChildはKarl ‘Regis’ O’ConnorとのコラボレーティブなプロジェクトBritish Murder Boysをスタートさせました。ステージでは、ChildがDJイングを、O’Connorがライブ・パフォーマンスを担当していました。あるとき、Extrema(オランダで開催されている新進の音楽フェスティバル)のプロモーターが大幅に時間が短縮されたスロットを彼らに割り当てたため、用意していたパフォーマンスができなくなり、困ったChildは、Ableton Liveで素材をセットにまとめ、叫び声を上げるオーディエンスの前でAbleton Liveを使用したステージングの公開練習を行うはめになったのです。 British Murder Boys – 「Learn Your Lesson」 「あのギグはふさわしいタイミングで起こったんだ」Childはこう話します。「あのときはDJイングに関するテクノロジーの可能性をいろいろと探っていた頃で、ちょうどクオリティとテクノロジーが実用に叶うものになってきた興味深い時期だった。とてもパーソナルな決断だったし、万人向けのDJソリューションでは決してなかったけれど、僕にはぴんとくるものがあったし、大きな可能性を感じた。音を扱う方法、そしてパフォーマンスでそれを組み立てる方法にね」 経験と勘が導いたステージでのLive使用の開始から、Childのセットの強烈さと個性は高まり、彼はDJイングにおける新たな展望の真の主導者として名声を博するようになりました。彼が進んでいた道の先行きはかなり不透明なものでしたが、それも魅力のひとつだったと言います。 「自分の(Liveの)使用方法は年を追って変化している。このソフトウェアは、フレキシブルで、DJイングに特化した造りになっていないところが好きなんだ。トラックの準備にはかなりの労力が要る。選択可能な他のオプションに比べるとかなり大変だ」 選択可能なオプションが多数存在するなか、Ableton Liveを選んだSurgeonのライブを体験した者に明らかになったのは、たとえ聞き慣れた名曲であっても、切り刻んで再編成することでまったく新しい作品となることでした。最も印象的だったのは、Childがプレイ中にカスタムで調整を加えていくことでした。 Surgeonの60分間にわたるBoiler Roomミックス 「ここはという瞬間になると、エディットだけをツールとして使用してその場に対応するんだ。ブレイクダウンをスキップしたり、トラックの別のパートにジャンプしたり、別の何かをレイヤーしたりね。その場で起こっていることに瞬時に反応するのが重要なんだ。(Abletonの)システムとツールは、そういった方法でインプロヴァイズする手段を与えてくれるような気がするよ」 Childがオンラインで公開している数々のセットを比較してみれば、彼が同じトリックを決して繰り返すことがないことに気付くでしょう。40ものトラックを1時間のうちにプレイするスタイル。数千に上ることもあるオーディエンスの前で自信を持って構築するにはかなりのトラック数です。「プレイする曲についてしっかり知っておく必要があるね。そうでないと、ぼろが出て、自分が予想していたのと違ったパワーの流れになってしまう。ワープ・マーカーをトラックに置いて、波形からは分からない変化が起こった時のためのキューにしておくことも多いよ」 Surgeon by Anne Claire de Breij 手持ちのトラックをツールとして使用することに加えて、Childは、Liveを使用する利点として、必要に応じて独自のリズムや拍子をミックスに追加できる点を挙げています。「別チャンネルでAbletonのDrum Machinesにパーカッション・サウンド用のMIDIシーケンスを走らせることができる柔軟性が気に入っているよ。トラックをプレイしていて少しパワーを上げたいなと思ったとき、別のトラックをミックスしなくてもパワーを上げることができてとても便利なんだ」 Childの型破りなアプローチには、独自の技術要件が要求されます。DJイングに特化したコントロール・サーフェスの意義についての質問で、この点について彼は次のように説明しています。「DJ用コントローラーとして販売されているコントローラーに気に入るものを見つけたためしがないんだ。販売目的は理解できるけど、僕には魅力的に感じられない。僕は、レコードDJの『2デッキ1ミキサー』セットアップを真似しようとしているわけじゃないからね」...