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ドゥドゥ・マローテ – 文化的な「共食い」

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ドゥドゥ・マローテ – 文化的な「共食い」

ブラジルにフォーカスを当てたシリーズ記事が先週から始まりました。前回の記事 では、ここ数十年のブラジル音楽の歴史からAbletonが発掘した作品やアーティストをいくつかご紹介しました。ブラジルのプロデューサー集団についての次回記事 の前に、マーク・スミスによる、ブラジルのポピュラー音楽の現在と過去を結ぶある人物にインタビューをお届けします。 マローテとOberheim Matrix-12(1986年) 2億を超える人口にもかかわらず、ブラジルの音楽シーンはブラジル国内にとどまっています。80年代、90年代といったインターネット以前の時代に、エレクトロニック・ミュージックのプロデューサーたちは、強い地元志向で制作を行ってきました。彼らの音楽には、ハウス、ダンスホール、ジャングルといった世界的なジャンルの面影を聞くことができますが、こういったスタイルはもっぱら素材として使用されるのみであり、再構築され、それとは分からない作品へと昇華されています。ブラジル人による、ブラジル人のための音楽です。 これは偶然ではありません。シーンの根底には、国際的な影響と地域文化のニーズの間の点をつなぎ、ブラジルのエレクトロニック・ミュージック革命を形作ってきた人々の存在があります。ドゥドゥ・マローテはそのひとりです。マローテは、ブラジルのエレクトロニック・ミュージック・シーンの最先端を20年以上にわたって進んできました。ボサノヴァのドラムンベースとの融合、ダンスホールのポップ・ミュージックへの取り込みなど、マローテは、現在のブラジル音楽形成のカギとなる変革を支えるブレーンとして現在も活躍しています。Abletonは、彼のキャリアにおけるさまざまな出来事、インスピレーションを失わない制作テクニックについて彼に話を聞きました。 ブラジル初のヒップホップ・アルバムをプロデュースしたという功績をお持ちですが、音楽制作というコンテキストにおいて、キャリアをスタートさせた当初のブラジルはどのような状況でしたか? 私は生まれも育ちもサンパウロです。巨大で、複雑な都市です。都市部は人口2千万人を越え、スケールでいえば中国やインドネシアの都市と同じくらいです。とにかく巨大で、ごちゃごちゃしています。でも同時にすごくワクワクする街でもあります。サンパウロでは連夜パーティーが開催されていますし、いろんなことが起こり、あらゆる種類の音楽が流れています。サンパウロで生まれ、それからずっとここに住んでいます。80年代にミュージシャンとしての活動を始めました。現在は48歳です。1980年、15歳のときに初めてシンセを手に入れました。それがYamaha CS 5で、メモリが内蔵されていなかったんです。なので、オシレーター、フィルター、モジュレーターらすべてについて学ぶ必要がありました。15歳のときです。音楽プロデューサーとしての活動を開始したとき、初のブラジリアン・ヒップホップのアルバムをプロデュースしました。だから、そうですね。あれがブラジル初のヒップホップ・アルバムでした。非常に素朴なものでした。1989年当時の状況を反映させたものでした。当時、ブラジルではMTVも放送されていなかったんです。放送開始は1990年でした。もちろんインターネットもありません。なので、Run-DMC、パブリック・エネミーなどをわずかに知りながら、それらをブラジルの現実に反映させていったわけです。その頃は、Atari ST、Notator、あとはかなりの数のサンプラーを使用していました。 マローテのスタジオ・コレクション(1987年) そしてこれが、ブラジル初のダンス・ミュージック・アルバムと呼ばれる作品のプロデュースにつながりました。Que Fim Levou Robinというバンドです。テクノトロニックとブラジリアン・ファイヤーをミックスしたような感じですが、歌詞はポルトガル語で非常に押しが強く、このバンドは90年代にまだ根強かったゲイ・シーンへの偏見の払拭に貢献しました。 キャリアをスタートさせた当初から、あなたの活動は音楽制作以外に広がっていたとお聞きしましたが。 当時私はローランドと仕事をしていました。ですので、D50のような新作キーボードやサンプラーすべてに触れることができました。S-760とS-770のリリース時に、ローランドはブラジリアン・ライブラリをいくつか作成しました。このプロジェクトに私も参加し、バンクのコンパイルを担当しました。ローランド創業者梯郁太郎氏の息子さんと一緒でした。息子さんと一緒に、ブラジル国内のさまざまな都市を周り、ローランドのサンプラー用にブラジルの伝統的なサウンドを録音しました。そして、1990年までに、MTVロンドンで働いていたジョン・クラインという人物に出会いました。彼はアメリカ人で、MTVブラジル開局のためにブラジルにやって来ていました。それで、彼とMTVの立ち上げに従事しました。こういういきさつで、ブラジル初のMTVビデオ・クリップ用の音楽を私が作ることになったのです。 あなたは、ブラジルのポピュラー音楽にダンスホールのリズムを持ち込んだことでも有名です。この組み合わせは、私たちが現在イメージする「ブラジリアン・サウンド」にとって重要なものとなっています。 私にとっての初レイヴは、ジャマイカのキングストンでの「Dancehall Ragamuffin」と呼ばれるレイヴでした。1993年のことです。当時はある種のエレクトロニック・ミュージックが流行っていて、イギリス、インド、ジャマイカでも同時に流行していました。バングラと呼ばれるジャンルです。ジャングルが流行る前の話です。ダンスホールと呼ぶ人もいますが、インドにそのルーツを持っています。当時、私はこれらの音楽がとても気に入っていました。ダンスホールに深入りしていましたが、キングストンでのレイヴに行った後、このサウンドに夢中になりました。 そして、このサウンドを気に入っている他のブラジル人に出会いました…。それがスカンクというバンドです。彼らはキャリアをスタートさせたばかりでしたが、気が合いました。彼らはこのサウンドを使いたいと思っていましたが、うまく活用するためのテクニックが必要でした。そこで私がプロデューサーとして参加することになったのです。あるジャマイカ人の友人と共に、彼らのファーストアルバムから1曲をリミックスしました。ちょうどジャングルの最初の波が押し寄せたときで、プロディジーが「Out of Space」で人気を博していた頃です。私たちがリミックスしたのは「Baixada News」という曲で、ジャングル・リミックスでした。スカンクがそれを気に入って、2枚目のアルバム「Calango」でも私を起用しました。リオに行き、ブラジル最高峰のスタジオのひとつNas Nuvens(「雲の中」の意)で、2カ月にわたってこのアルバム制作に完全集中しました。ダンスホールとレゲエの影響が強く、結果として非常にブラジル色の強い作品になりました。ブラジリアン・ヴァイブとレゲエとダンスホールを組み合わせた、かつかなりエレクトロニックなものです。このアルバムは1994年7月にリリースされ、120万枚を売り上げました。当時のブラジル市場と米国市場を比較して、米国市場で換算すれば、これは1000万枚に相当するセールスです。ラジオ・ヒットも6曲に上り、大ヒットとなりました。 ミックスダウン中のスカンクとスタジオにて(1996年) この後、ハウス・ミュージックにたどり着く前にドラムンベース時代に突入するわけですが、外部の影響を受け入れ、ご自身のコンテキストにそれらを当てはめ、次のインスピレーションへと移行する、というのが順序立てて行われているように思えます。 ブラジルでは、私たちは共食いなのです。ブラジル人は文化における共食いを行っています―食べて、それを吐き出しているのです。何においてもそれは同じです。私たち独自の方法で、食べ、消化し、吐き出しているのです。ドラムンベースとボサノヴァ、ダンスホールとブラジリアン・ヴァイブ―こうして私たちは、ハウス・ミュージックをファンキーなサウンドでスタートさせ、ブラジル的ヴァイヴと融合させたのです。音楽的にではなく、歌詞を用いて。2014年の今やブラジル人の多くが英語を話すようになりましたが、90年代、2000年代初頭は状況は異なっていました。 私たちにとって、言語を用いてブラジルの現実を音楽に反映させることは常に重要なことなのです。私たちは、あらゆることに関わりたいと思っています―だからこそ、ブラジル的解釈での作品づくりを好み、国外での評判にはあまり関心がないのです。国外で人気が出れば、それはすばらしい。出なければ、それはそれで問題ない。ブラジル人は、「次はヨーロッパで、そしてアメリカで…」という風にはあまり考えません。イギリス、アメリカ、オーストラリア、カナダ…これらの国は何らかのつながりがあります。ブラジルにはそういったコネクションがありません。ブラジルは、ブラジル人のことがすべてです。ポルトガルとの何らかつながりがあってもおかしくないのですが、それがありません。ブラジルはブラジルだけなんです。 マローテとモジュラー(2011年) 今、プロダクションで注目していることは何ですか?20年にわたるキャリアを重ねても、サウンドについて学ぶことはあるとお考えですか? 今はディストーションにとても興味があります。フランスでMix With The Mastersのコースを受講してきたばかりです。ブラック・キーズやアークティック・モンキーズのプロデューサー、チャド・ブレイクと一緒に学びました。彼は天才ですよ。1週間にわたって、彼と、カニエ・ウェストのミックスダウンを行っているマニー・マロキンというすばらしいエンジニアと過ごしました。 彼らの持つテクニックは、あらゆる種類の音楽に応用できるものです。リバーブを少なく、ディストーションを多く使用するというアイデアは、ここで得たものです。リバーブの代わりにディストーションを使用するとは、アンビエンスとしてディストーションをとらえることです。コンプレッサーを、ただ圧縮目的で使用するのではなく、特性を加えるのに使用するのです。1176を使用して個性を与えるようなものです。バスケットボールに爪を立てるときのようなサウンド、ひび割れたような立体的な感覚―それが今私が夢中になっているものです。 Live set from VCO Rox, Marote’s latest project 興味深いコンセプトですね、リバーブ・プラグインをシェイピングするのではなく、倍音を使用して空間感覚を生み出すというのは。リバーブ・プラグインはどうしても人工的な感じのサウンドになりがちです。 私にとってそこはとても重要な部分です。もうひとつ、常に興味があるのは、グルーヴをとらえるということです。どのアーティストと仕事をするときも、楽器やテイクに関係なく、私はあらゆるものを動かしています。クリップをナッジしてみたり―いつもワーピングするわけではないですが、フレーズをずらしてみたり。25年にわたる世界のヒップホップ・カルチャーの歴史があり、たとえヒップホップを制作しているのではなくても、その影響、そのグルーヴからは逃れられないと思います。ロックがそうであるように、ヒップホップももはや私たちの一部なのです。 VCO Rox...

Anton Maskeliade:ジェスチャー・ウィザード

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Anton Maskeliade:ジェスチャー・ウィザード

音楽に夢中になり、音に合わせて体を動かす ― 誰にも覚えがあることでしょう。通常、「ダンス」と呼ばれるそれは、音楽のリズムとサウンドに合わせて体を動かすことを指します。しかし逆に、体の動きで音楽をコントロールするとしたら? モスクワを基盤に活動するミュージシャンAnton MaskeliadeことAnton Sergeevは、ジェスチャー・コントロールをベースにユニークなライブ・ショーを構築しています。Antonは、LEAP MotionコントローラーとAbleton Liveを使用して手の動きで音楽をコントロールします。LEAPを使用した操作について、Antonに話を聞きました。 LEAP Motionを使用したパフォーマンスを行うAnton LEAP使用のきっかけについてお教えください。他のコントローラーでは実現できなかったLEAP独自の機能にはどのようなものがありますか? 音楽関連のブログを読んでいて、ジェスチャー技術を使用したデバイスを見たとき、自分に必要なのはこれだと思いました。2013年11月にLEAP Motionを購入しましたが、音楽表現の可能性が一気に広がったようで、すばらしい気分でした。まず、サウンドのマニピュレートに使用してみてから、ビジュアルに使用しました。いまでは、音楽と映像のプロジェクションの両方を両手の動きでコントロールしています。ジェスチャーと体全体の動きによる表現力豊かな音楽の可能性を向上させることができます。音楽という体験は、他のすべての体験と同じように、ひとつの感覚のみに頼るものではなく、身体のすべての感覚が組み合わせられ、特異性の高い方法で見当識が保たれています。そのため、音楽とのダイレクトでフィジカルな関わりは、クリエイティブおよびアカデミックな研究においてますます重要なエリアとなっています。 LEAPを使用した操作について、またセットアップについて具体的に教えていただけますか。 ギグでは、LEAP MotionとGECOアプリ、Akai MPD32 MIDIコントローラー、Korg Kaoss Pad 3サンプラー、Ableton Live、そしてビジュアル用にResolumeを使用しています。このセットアップでは、ビデオとオーディオのストリームを同期させ、同時にコントロールすることができます。LEAPとResolumeの操作には、各ジェスチャーに専用のビデオ・エフェクトを設定しておき、Liveのオーディオ・エフェクトと同期させています。Liveではさまざまなエフェクトを使用していますが、主にLiveのリバーブ、ディレイ、ディストーション、さらに数点のVSTを使用しています。ひとつひとつのジェスチャーは、それぞれ独自のノイズやサウンド・エフェクトとプロジェクションを生じさせます。Kaoss Padは、声をループさせたり、ビートボクシング的なもののライブ演奏に使用しています。 車の後部座席で演奏するAnton ジェスチャー・コントロールがサウンドに与えるものとは何でしょうか? エレクトロニック・ミュージックのギグというと、覇気のないアーティストがオーディエンスに姿を見せないようにラップトップやフェーダーの背後に隠れているのが典型です。正直、退屈です。こういうのは好みません。私は、魅力的なショーを上演したいんです。創造の手段を広げたいと思っています。ギグの間、私はある人生を生きています。自分が魔術師のように感じられる瞬間です。音楽を形あるものとして扱うのは、信じられないほどすばらしい心地です。LEAP Motionが、これを現実のものにしてくれるのです。 Antonについてさらに詳しく: Bandcamp Facebook YouTube VK

Session Victimによるハウス・ミュージック・ライブ・パフォーマンス

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Session Victimによるハウス・ミュージック・ライブ・パフォーマンス

ライブ・パフォーマンス(または、スタジオやリビングでの一人セッション)を行ったことがある方なら、「これだ!」という演奏ができた瞬間や、我を忘れて演奏に夢中になる感覚に覚えがあることでしょう。Session VictimのHauke FreeとMatthias Reilingは、Resident Advisorの「RA Sessions」シリーズ用のスタジオ・セッションでの「Never Forget」のパフォーマンス中にまさにその状態にありました。スムーズなコード、過ぎ去ったクラシックなクラブ時代のサンプル・ボーカルの断片、ファンキーなベース・ラインで、Session Victimがリラックスしたハウスの旅へと誘います。 RA Sessionsシリーズから、インスピレーションあふれるビデオをもうひとつご紹介。KiNKがLiveと多数の小型ハードウェアを併用した演奏を披露しています。 Session Victimについてさらに詳しく: SoundCloud Facebook

未聞のブラジル

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未聞のブラジル

ワールドカップ2014開催でブラジルに注目が集まっていますが、Abletonでは、この機会にブラジルの過去と現在の音楽情勢に光を当ててみようと思います。バラエティに富む国民性、広大な国土を持つブラジルの音楽はもちろん多様。ブラジルの現在の音楽シーンにはさまざまなエッセンスが注ぎ込まれ、シーンを豊かなものにしています。3回にわたるこのシリーズでは、過去の革新的なブラジル音楽、ベテラン・プロデューサー、ドゥドゥ・マローテのインタビュー、ブラジルのアンダーグラウンドで注目を集めている新進アーティストについてご紹介します。 まずは少し記憶をリフレッシュしてみましょう。サンバとボサノヴァをご存じない方はいないでしょう(少なくともドラムマシンのプリセットとして)が、近年ではバイレファンキや60年代後半に盛り上がりを見せたトロピカリアがダンスフロアに進出するようになり、北半球の人気DJのプレイリストにも見られるようになりました。この記事をご覧になっているということは、1)エレクトロニック・ミュージックに興味がある、2)スタジオ・テクニックに興味がある、3)スタイルを革新したい、あるいは上記のすべてにあてはまるのではないでしょうか。これを念頭に置き、Abletonお気に入りのブラジル音楽を60年代、70年代、80年代からピックアップしてみました。ブラジル音楽への固定観念を覆すセレクションになっていると思いますので、どうぞご覧ください。 ブラジルのエレクトロニック・ミュージックの草分け、ジョルジ・アントゥネスから始めましょう。1961年、19歳のとき、彼はエレクトロニック・ミュージックの先駆者カールハインツ・シュトックハウゼンとゴットフリート・ミヒャエル・ケーニッヒのコンサートを体験します。多いにインスピレーションを受けた彼は、両親の自宅にスタジオを設置。数台のオープンリール・テープレコーダーと手製ののこぎり波発生器がスタジオ機材でした。それから数年の間に、アントゥネスはテープを結合したり、段ボール箱、プラスチック製の容器、ドラム、テルミン、テープエコー、リバーブ、ピアノやサウンド・エフェクトの録音素材を作品に使用するようになりました。 1969年の作品「Auto-Retrato Sobre Paisaje Porteño」は、ブラジルの歴史そのものをミュジーク・コンクレートの形式で表現した見事な楽曲となっています。ジャングルの喧騒のようなサウンドから始まり、アンティーク・ピアノの録音素材を細かくカットして作成されたループがそれに続きます。次第に、これらのパターンははつらつとしたエレクトロニックのリズムと融合し、どことなくテクノとポルカを思わせるサウンドになります。驚きなのは、これが開始からわずか3分での出来事であるという点です。 ジョルジ・アントゥネス - Auto-Retrato Sobre Paisaje Porteño(1969年) 1960年代終盤までに、(ビートルズが牽引してきた)音楽におけるポピュラーとアヴァンギャルドの組み合わせに対峙するものとして、ブラジルではトロピカリア運動が盛り上がりを見せるようになりました。このムーブメントの折衷主義的要素を最もよく現しているのが、サンパウロのバンド、ムタンチスでしょう。彼らのレコードは、ロックの楽器構成、ボーカルのハーモニー、スタジオ・エフェクトを独特のアレンジに融合させた作品となっています。 下のビデオでは、トロピカリアを代表するミュージシャン、カエターノ・ヴェローゾとジルベルト・ジルが書いた作品「Panis et Circenses」をムタンチスが演奏しています。ビデオで演奏されているバージョンはスタジオ録音バージョンに比べればサイケデリック感は控えめですが、このパフォーマンスは、60年代の特徴を余すところなくとらえたものとなっています(ギターやベストに注目です)。 ムタンチス - Panis et Circenses(1969年) ハードロックバンド、キッスのペルソナのアイデアがどこから来たのか気になったことはありませんか?実は、「ビルボード」誌に掲載されたブラジルのバンド、セコス・イ・モリャードスの全面広告からを盗作したのだという根強い噂があるのです。1973年、セコス・イ・モリャードスは母国ブラジルでデビュー・アルバムを100万枚売上げ、さらに大きな利益をもたらすであろう米国市場への参入を計画していました。残念ながらそれはならず、ブラジルでの大成功にもかかわらず(リード・ボーカルのネイ・マトグロッソは現在も活動中)、セコス・イ・モリャードスは南アメリカ諸国以外ではほとんど無名のままとなっています。 1973年にブラジルのテレビ番組でリップシンクするセコス・イ・モリャードスの「Sangue Latino」をご覧ください。このクリップでは、ネイ・マトグロッソの比類ない歌声と、ジーン・シモンズたちのインスピレーションとなった(かもしれない)メイクアップをご覧いただけます。 セコス・イ・モリャードス - Sangue Latino(1973年) マルコス・ヴァーリは、人気ソングライターおよびシンガーとして1960年代中盤にそのキャリアをスタートさせました。これぞボサノヴァというチューンの「Samba de Verão(邦題:サマー・サンバ)」を作曲後、ヴァーリは1970年代初頭により冒険心のある一連のアルバムをリリースします。1973年発表の「Previsão do Tempo」は、そのジャズフュージョンな雰囲気と、フェンダー・ローズ・ピアノとハモンド・オルガンの多用で特に目を引きます。このレコードでのヴァーリのバックバンドは アジムスで、キーボーディストのジョゼ・ホベルト・ベルトラミがアレンジにMinimoogとARP Soloistを惜しみなく使用しています。メロディに優しく流れるシンセが「Mais do Que Valsa」を単なるワルツ以上の何かに昇華させています。 マルコス・ヴァーリ - Mais do Que Valsa(1973年) 1960年代と70年代の音楽的イノヴェイションの豊作期後、ブラジル軍事政権の抑圧はますます強まり、1980年初頭までに、ブラジル文化の活気はそのほとんどが握りつぶされてしまいました。1980年代に実施された緩やかな文民政治への移行とともに、ブラジル音楽も目覚めのときを迎えましたが、そこから生まれたサウンドは切迫感と怒りを秘めたもので、「イパネマの娘」のメランコリーからはほど遠いものでした。 サッカー番組のアナウンサー実況や独特なリズム感覚。ブラジルのポスト・ファンクとニュー・ウェーブのいくつかの興味深い作品には、ある種の屈折した「ブラジルらしさ」が戦略的に採り入れられています。1980年代のサンパウロのアンダーグラウンド・シーンから2曲をご紹介しましょう。Vzyadoq Moeのダブアウト「Redenção」は、まるでバウハウスがサンバ・パレードを演奏したらこうなるんじゃないか…を想像させるサウンドです。 Akira S...

Throwing SnowがPushで「The Void」をプレイ

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Throwing SnowがPushで「The Void」をプレイ

先週、イギリスをベースに活動するアーティストThrowing SnowのデビューLP「Mosaic」がHoundstoothからリリースされました。彼のサウンドを端的な言葉で表現するのは困難ですが、新アルバムは、多数のコラボレーションによる、感情に訴えるトラックとベースの効いたシネマティックを包含したインパクトのある作品となっています。そのうちのひとつ、ボーカリストJassy Grezとのコラボレーションは、Throwing Snowが先週BBCのMaida Valeスタジオに招かれた際に披露されました。パワフルな作品「The Void」はムーディーなサウンド・デザインに富んでおり、Jessyがボーカル、Rossがコントロールを担当していますが、コントロール・ワークフローの中心をPushが担っています。Korg volca beatsに同期させたPushを使用し、ノート・モードでメロディを演奏したり、ドラム・モードでサウンド・エフェクトをトリガーする様子をビデオでご覧ください。 気に入ったら、ハードウェア・ドラム・マシンをPushでプレイする方法について学ぶのもよいでしょう。Mosaicのその他のトラックは下からお聞きいただけます。

インプット/アウトプット: Sculpture

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インプット/アウトプット: Sculpture

シリーズ「インプット/アウトプット」では、Abletonコミュニティに属するプロデューサーのスタジオを訪ね、彼らの制作プロセスに取り入れられるインスピレーション、テクニック、技術と、そこから生まれる最新の音楽作品に光を当てていきます。 Sculptureは、アニメーター/ビジュアル・アーティストのReuben Sutherlandと、ミュージシャン/プロデューサーのDan Hayhurstからなる、ロンドンを拠点に活動するデュオです。デジタルとアナログ両方のメディアを活用し、触知的なアプローチとバーチャルなアプローチを同等に採り入れたSculptureがこれまでの6年間に発表してきたサイケデリックでイマーシブなオーディオ・ビジュアル作品は、プロジェクトの誕生以来、その「とにかくやってみよう」という心意気、楽しむことをよしとする感覚を失っていません。下のビデオで、Sculptureの極めてユニークな手法をご覧ください。続いて、Oneohtrix Point Neverによるブルックリン・ベースのレーベルSoftwareからリリースされた「Membrane Pop」に合わせて行われたDan Hayhurstのインタビューをお読みください。 フランクフルトのザースフェー・パビリオンでライブ・ショーを行うSculpture Sculptureを「視覚音楽的凝集体」と言及されていますが、これについてご説明いただけますか? 「オーディオビジュアル・プロジェクト」と呼んでもいいのですが、もう少しロマンティックな表現にしたくて。知覚/感情の刺激というものを、あらゆる感覚を駆使して検証することです。ビジュアルもオーディオも同じく重要であり、互いを満たし合う間柄です。「凝集」という言葉は、私に実体を想起させます。単なる部分の集合ではない、生命体のようなものです。ポリマーやロボットのように加工により作られたものもあれば、有機体もあります。また、これは一時的な状態で、再び消散したり、再構成したりするものかもしれません。 デュオ結成のきっかけは? ロンドンの巨大なウェアハウスで隣人同士だったんです。そこは、人が住めるように最小限の手を加えて倉庫をアパートに改装したもので、壁が薄くて、冬は凍るように寒くて、夏はまるで温室みたいなところでした。Reubenはフェナキストスコープなどの円板とビデオカメラを使ったアニメーション技術を扱っていたのですが、私は自分の作るちょっと変わった音楽で、この歪んだ住環境をさらに変わった場所にすることに貢献していました…壁から漏れる音が、早い時期からReubenの脳のパターンに何らかの影響を与えていたのかもしれません。念のために言っておくと、彼はすでにこのワームホールにかなり夢中になっていました。一緒にプロジェクトを始める1年ほど前に知り合いになりました。共通点があることは確かだったので、パフォーマンスを計画することでコラボレーションの可能性があるかどうか検証しようと考えました。あらかじめ一緒に準備することはせず、互いが何をするつもりか知らない状態でステージに上がり、同時にパフォーマンスを行いました。なので、素材自体がつながりの形成につながっています。並置、連関と参照の枠組み―異なる感覚要素同士の相互作用です。 ReubenのデザインによるSculptureのピクチャー・ディスク それぞれのメディアへのアプローチに共通する点は? デジタルとフィジカルの対話です。フィジカルな世界における自己表現のアルゴリズム/プロセスです。Reubenの場合、カードに印刷された数百のアニメーションからなるライブラリがあるのですが、今ではほとんど制御不可能な数になっていて、まるで神経系のように常に成長を続けています。これらは、PhotoshopやAfter Effectsで生成してからこの触知メディアに転写されています。私は、アナログ・テープやハードウェア機器(サンプラー/CDJデッキ)を使用した物理的なカットアップを、オーディオの分解と再構成用のデジタル技術と組み合わせていて、デジタルにはほぼ100%Liveを使用しています。 「デジタルとフィジカルの対話」というお話がありましたが、これはどのように制作プロセスの一翼を担っていますか?たとえば、新アルバムの制作においてはいかがでしょうか? 私はどちらかというと、独立した「トラック」という形態ではなく、いろんな置換で再結合が可能な要素を使用する傾向があります。リズム、サウンド、ハーモニー要素、トーン、パーカッションなどのライブラリを構築しています。どこかで見つけた1955年録音の素材など、まったく異なる時代に作成されたものもあれば、自分で作成したものもあります。5年前、先週、今日の午後―作ったことすら忘れているものもあります。さらにこの「ライブラリ」は複数にわたるテープ・リール、テープ・ループ、サンプラーに保存されています。正直、かなり混沌としています!これらのソースをある時点でLiveに録音し、Liveの出力をさまざまなテープ・レコーダーに録音したり(テープ・ループを作成するため)、Korg ES1やTeenage Engineering OP1などのサンプラ―に録音します。 古いテープに保存されている60年代の録音物を無作為に選んでLiveに取り込み、それをMIDIデータに変換して Drum Rackでサンプルのトリガーに使用することもあります。短い「ヒット」の場合もあれば、数メートルにわたるテープ分のレコーディングである場合もあります。デバイス・チェーンは、だいたいPitch > Arpeggiator > Random > Scale > Simplerです。それに、ピッチのランダマイズ率、サンプルのスタート位置、アルペジオのレート、サンプルの長さなどのコントロールにマクロを使用します。コントロール・サーフェスにはAPC 40を使用しています。マクロにクリップ・オートメーションも使用しています。こうすることで、あらゆる素材をすばやく細分化し再配置することができます。 最後に、再結合可能な要素からなるコレクションをLive クリップ/セッション/アレンジメント、テープ・ループ、テープ・リール、カセット、CDR、ハードウェア・サンプラーといったさまざまなメディアに拡散させます。スタジオとライブの両方で継続的にさまざまな順列を試していくうちに、最終的に「トラックの完成形」へとまとまっていきます。ここまで来たらLiveに録音して、それを使用して編集したりアレンジします。 ややランダムにレイヤーすることもあります。たとえば新しいLPに収録された作品では、あるギグを録音したものを最終アレンジにランダムに落とし込んでいき、タイムラインに沿っていくつかの要素が互いにうまくマッチするようにしました。新しいつながり/相関を生み出す、予期せぬ同時性というアイデアが本当に気に入っているんです…。 Sculptureの「Plastic Infinite」用に作成されたビデオ。リリースされたピクチャー・ディスクがフィーチャーされている ライブでのセットアップについて教えてください。Reubenとダイレクトに意思疎通することは多いのでしょうか?それとも、同じゴールに向かって併走するような感じですか? どちらのセットアップも、ステージに上がったどのミュージシャンがやるように、互いの動きに対応できるようなフレキシブルなものになっています。繰り返されることで「固定」となったいくつかの音楽についても同じです。一方で、まだ予備段階という状態のものもあります。Reubenはアニメーション・カードのライブラリを用意していて、レコード・プレーヤーとその上に取り付けたビデオ・カメラを使ってこれをプレイします。ビジュアル・ターンテーブル主義ですね。 彼はいくつかのアニメーションを準備していて、特定の音が聞こえたらそれを使用しようという心づもりではいますが、ほとんどの場合予期しない同時性からアクションが起こることが多いです。私たちの脳は、知覚情報につながりや関連性を察知します。それに、ステージではたくさんの情報が非常に速く生成されています…非常にエネルギー度の高いイベントです。とはいえ、6年間一緒にやってきていますから、何をしたらうまくいくかということが分かっています。完全にランダムというわけではありません。 ライブではコンピューターを使用しません。いつも、コンピューターが生成した素材を別のメディアに転送します。これをするのは、コンピューターやスクリーンに注意を削がれるような気がするからです。なので、モジュラー・インストゥルメントのように動作するデバイスをいくつか使用します。まあまあのところまではうまく操作できるのですが、完璧ではないので、予期しないことや意図しなかった迂回がたくさん生じます。オープンリール・テープレコーダー(テープ・ループ用)、CDJデッキ、数台のハードウェア・サンプラー(Korg ES1/Teenage Engineering OP1)、ウォークマン、エフェクト(リング・モジュレーション、エコー、ディストーション)を使用していますが、 ライブでは多少制御不能な状態になります。2人とも、秩序とカオスの間のバランスがとれた状態を追い求めているような感じです。Liveに素材を取り込んで試行錯誤して予期しないような方法で新しい形を作り出すという手法には、テープを使って行っていた手法が反映されています。エモーショナルで美的な反応を引き起こし、普通ではたどり着けない場所に導いてくれる何かを探しているのです。純粋な「音楽制作」の観点から見れば、人々に喜びを与えるよう形でさまざまな音響特性を組み合わせていきます。またこれは、さまざまな時代と関連づけて考えられるサウンドと美的感覚を織り交ぜることでもあります。私たちは、インターネットそして我々の感覚器に押し寄せる膨大な情報によりこういった区切りが打ち砕かれつつある時代を生きています。私たちは常時情報を編集し、処理し、整理しています。我々の現実の認識というものはこういった情報から作り上げられたものです。これらを題材にするのはなかなか楽しいですよ。 Sculptureの「Membrane Pop」はSoftware Recording...

MUTEK 2014でのロバート・ヘンケ、リッチー・ホウティンのトークをビデオで

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MUTEK 2014でのロバート・ヘンケ、リッチー・ホウティンのトークをビデオで

毎年モントリオールで開催され、最新のエレクトロニック・ミュージック、ニュー・メディア、文化を紹介する一大イベントMUTEKが今年で15年目を迎え、Abletonも15周年記念となる今年のイベントに参加しました。Abletonは、アーティスト・トークやPushのハンズオン・ワークショップを行うAbleton Loungeを開設。MUTEKの厚意により、行われたトークのうち2つをここでご紹介します。 まずは、ミュージシャンであり、研究者でもあり、また最古参のAbletonデベロッパーでもあるロバート・ヘンケ(Monolake)とMUTEKの共同創始者アラン・モンゴーとの対談をご覧ください。トピックはロバートの最新プロジェクト「Lumière」から音楽技術の発展にわたっています。 Plastikman名義でのテクノのパイオニアとしての活躍から、伝説となった「デッキ、エフェクト、909」によるDJセット(今はそこにPushが加わっています)まで、リッチー・ホウティンは最先端の音楽テクノロジーの実情を正確に把握するミュージシャンとして20年にわたりその地位を確立してきました。MUTEKでリッチーはDJ Tech Toolsのケン・テイラーと対談し、現在進行中の意欲的なPlastikmanのライブ、Space IbizaでのENTERクラブ・ナイト・シリーズ、スタジオでの制作用セットアップについて語っています。

Quantic: ナチュラル・アトラクション

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Quantic: ナチュラル・アトラクション

「Quantic」としての活動で有名なWill Hollandは、その音楽の変遷に豊かなストーリーを持つアーティストです。ダウンテンポな作品の台頭と共に2000年代初めに登場したのち、ほどなく集団から距離を置き、ダスティなサンプル、ビート、ブレイクの枠を超えたより広範なサウンド・パレットへの旅を始めました。Quantic Soul Orchestraの万華鏡のような仰々しさ、イギリスのAlice Russellとの長年にわたる作品作りで、Willは、作曲家、アレンジャー、プロデューサーとしての確かな手腕を発揮しており、またラテンアメリカ、アフリカなどのサウンドを用いることでも知られています。 そんなWillが最新作をリリース。8年ぶりのソロ・アルバムとなる「Magnetica」は、よりエレクトロニックな制作手法への回帰であり、人気プロデューサーとしてキャリアを培ってきたみずみずしくエキゾチックなインストゥルメンテ―ションは失われていません。ツアー準備中のWillに、Oli Warwickがインタビューを敢行。制作の実際とプロセスについて、サウンドを見つける場所、ステージに向けた楽曲の準備について話を聞きました。 Quanticの新アルバム「Magnetica」に収録されている、Pongo Loveをフィーチャーした「Duvidó」 「Magnetica」が完成し、リリースされることとなりましたね。このアルバムは、制作に対するエレクトロニックなアプローチへの回帰ですか? はい、そう思います。エレクトロニック・ミュージックとの関わり、DJとしてのエレクトロニック・ミュージックのプレイは続けてきましたが、制作からは遠ざかっていました。「クラブ・サウンド」と言うとビッグルーム向けのダンス・サウンドの制作というイメージがあると思いますが、実際はそうとも言えません。ただ、ライブで学んだある種の音楽性やグルーヴを応用したエレクトロニックなアプローチへの回帰であるとは思います。 ライブ楽器による大型編成という点では非常にQuanticらしいサウンドだと思います。アルバムにおけるエレクトロニック的要素はかなり繊細なものという印象ですが、ご自身はいかがお考えですか? エレクトロニックな音楽を自然なサウンドにしたり、自然な音響要素をエレクトロニックなサウンドにすることができるんじゃないかと考えるようになりました。ある音を伝送し、ライブ楽器でプレイし、それをより人工的な何かへと簡単に変化させることができるのです。逆も同じです。とはいえビートの作成はなかなか厄介で、スムーズなサウンドになるまで少し揉んでやる必要があります。 アルバムのソングライティングにはどのようなアプローチを採ったのですか? たとえば「Spark It」のドラムは、レコードからサンプリングして、Drum Rackを使用してカットやスプライスを行いました。オールドスクールな70年代の原始的なサウンドを生み出すこのUnivoxドラムマシンや、KorgのPolySixプラグインのようなシンセもいくつか使用しています。また、ギターでスカンクを録音したり、アコースティック・ピアノでピアノ・スカンクを録音してから、ボーカルについてはAbleton Liveを使用してShineheadとロサンゼルスでレコーディングを行い、サックスについてはボゴタでレコーディングしました。そのあといくつかのミックスを行いました。Space EchoとFairchild、Moogやその他いろいろを積んだ小さなコンソールを使用し、一番気に入った2つのミックスをモノで左右ペアにして、レコード用にカットし、友達がやっているカッティング・ハウスThe CarveryのShure V-15スタイラスを使用して録音しました。たった1つの楽曲で、媒体、楽器、ソースとこれだけの遍歴があるのです。 制作は楽曲ごとに取り組んだのでしょうか? すべての楽曲に対してオープンな状態を保つようにして、1つの楽曲に完全にコミットすることはありませんでした。楽曲にはゆっくりこつこつと取り組んでいました。ある曲の作業が終わって別の曲に取りかかっても、次の曲で前の曲に足りないと思っていた何かを学べた気がしたときは、また前の曲に取り組んでみたり、といった感じです。これはいいことでも悪いことでもありました。なにしろ終わりがありませんから。 このアルバムには優れたパフォーマーが数多く参加しています。彼らとのレコーディング・セッションは、後に作品で特定の形で使用することを念頭に置いた上で、現地でなされたものですか? どちらとも言えません。Thalma De Freitasを起用した「Águas De Sorongo」というトラックでは、録音済みのギター・ループからアイデアを得て、そこにAbleton Liveでビートを加えました。リオでDuaneというクールなパーカッショニストに出会い、スタジオに入りパーカッションをレコーディングしました。Thalmaとはアイデアについて連絡していて、楽曲に歌を入れることで何度か連絡を取り合っていたのですが、結局彼女の家のリビングでレコーディングすることになりました。小型のAKGのマイクを持ってきていたので、それをモスリン・ガーゼで包んでポップガードにしました。その後ボゴタに戻り、もう少しビートの作業を進めてから、トラックをロサンゼルスのMiguel Atwood-Fergusonに送り、ストリングス・アレンジのレコーディングをしてもらいました。ボーカリストに「何か歌ってもらえますか?楽曲はこれから準備するので」というわけにはいきませんが、ある程度ハーモニーのような楽曲の起点となるものができている状態でボーカリストやホーンのレコーディングを行い、その後でベースとなった起点をまったく別の何かと置き換えるということはよくやります。 影響とインスピレーションを与えるものとしてラテンアメリカは今でもあなたにとって重要な存在ですか? ラテンアメリカは、独自のリズムの宝庫だと思います。リズムに興味のある人にとって、ありとあらゆる国とコミュニティに独自のリズムがあるラテンアメリカはすばらしい場所です。コロンビアだけでも、ものすごくたくさんのリズムとスタイルがあります。曲よりもリズムが先行するところが気に入っています。ルンバのリズム、クンビアのリズム、タンボラは、それも音楽スタイルですが、リズムがより重要です。 「Duvido」のようなトラックで使用されている伝統的パーカッション楽器の一部ではエレクトロニックのビートに対して拍のタイミングがずれているようですが、これは硬直さを感じさせるプログラミングされたドラムとよりルーズなオーガニックな素材を並列させるための意図的なものですか? この作品には8分の6拍子のリズムが多用されています。このリズムでは拍をまたぐ音の要素が多いのですが、それがうねりのような効果を与えています。きちんと拍におさまっているものがないというアイデアが大好きなんです。Ableton Liveを使うとすべてがきっちり拍に合ってしまう傾向がありますが、それはあまり好きではありません。 伝統的な楽器がエレクトロニックな要素に与える影響はどの程度でしょうか?あるドラムのチューニングがトラック全体のチューニングを決定するといったことはありますか? 楽器に合わせる必要はどうしても出てきます。「Duvido」では、バッキングについてあるアイデアがあって、マリンバ奏者にそれを持ち込んだのですが、彼のマリンバはCメジャーのチューニングだったので、それに合わせる必要がありました。ボーカリストとも同じことがよく起こります。たとえばアルバムに収録されている「La Plata」というトラックで、Nidiaは初めのうち四苦八苦していましたが、それはこの曲がわずかに彼女の音域外だったからです。それで少し楽曲の音域を下げる必要がありました。ボーカリストのスイート・スポットを見つける必要があるのです。ボーカリストの音域は非常に重要だと思います。 たとえばAlice Russellとはこれまで長年にわたって作品を発表していますが、制作する曲のボーカルの音域が直感的に分かるといった感覚はあるのでしょうすか? Aliceの音域は、これまで一緒に仕事をしたどのボーカリストよりも広域でした。彼女が曲のピッチを変えて欲しいと言ったことはありませんでした。かなりの高域が出せるし、かつ音程も完璧でした。声そのもののすばらしさに低域も広く出せる音域の広さが加わっていたので、彼女との仕事はすばらしかったですね。伝統楽器を扱う場合、微分音もかなりの数になることがあります。すべての音が完全に正しいチューニングになっているわけではないので、セッション中にキーボードか何か合わせて耳でチューニングします。チューナーを使用した厳密なチューニングは行いません。このわずかなずれが重要だと思うのです。 Quantic & Alice Russell with Combo Bárbaro -...

Robert Henke: Lumière

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Robert Henke: Lumière

Ableton Liveの最古参デベロッパーのひとり、国際的にも高い評価を得ているアーティスト、そして最近では音響学の講師として、Robert Henkeはアートとテクノロジーが交差する分野で継続的に活動しています。そんな彼の最新プロジェクトがLumière。ビートが疾駆する自身のエレクトロニック・スコアに完全シンクロしてHenkeがレーザーを操る、意欲的なオーディオビジュアル・スペクタクルです。 ヨーロッパと日本でパフォーマンスを重ねたLumièreは、カナダ・モントリオールで開催されるMUTEKフェスティバルのハイライトのひとつとして注目を集めています。また、フェスティバル開催中、Robert Henkeとフェスティバル創始者Alain MongeauによるディスカッションがAbleton Loungeで行われる予定となっています。Abletonは、ベルリンで開催されたCTMフェスティバルのフィナーレにLumièreを披露したばかりのRobertに話を聞きました。 Excerpt from Robert Henke's Lumière あなたの作品においてテクノロジーとアートの結びつきは普遍的なものとなっていますが、あなたは、芸術的表現のためのツールを独自に開発することでもよく知られていますね。Lumièreプロジェクトにレーザーを導入したとき、シンセサイザーの仕組みやソフトウェアのプログラミング方法について試行錯誤していた昔を思い出しましたか? Lumièreではそういうことはありませんでした。というのも、Lumièreはレーザーを採用した2つ目のプロジェクトなんです。レーザーを使用した初のプロジェクトはFragile Territoriesという名のインスタレーションでしたが、あのときは、レーザーの仕組みについて理論上の知識しかない状態でスタートしました。ですので、私にとってのレーザー・グラフィックスの世界への第一歩は、頭の中にある理論が、実際にどこまで実現可能なのかを知ることでした。うれしいことに、当初考えていたコンセプトはすべてそのとおりでした。 しかし、後になって浮上してきた相違はとても大きく、私がやりたいと思っていたアイデアを完全に変えてしまうほどでした。分かったのは―これは、楽器を学ぶ場合ある意味非常に典型的なことなのですが―、あるものが一番輝く部分というのは、ぎりぎりの部分、つまり、楽器/媒体/マシンがその本来の役割を果たし始める、ある種の境界部分にあるということです。たとえば、MIDIノートのように単にノートを再生するのであれば、そのインストゥルメントのサウンドは問題になりません。なぜなら、ここで扱っているのはインストゥルメントそのものではなく、コンセプチュアルなアイデアだからです。しかし、ピアノを大音量またはソフトに演奏しようとする場合、その楽器のディテールを実際に感じることができます。 私にとって、レーザーを扱うという体験はまさにこれと同じでした。レーザーが動作を停止するぎりぎりまでブライトネスを下げた状態で動作させるとどうなるのだろう?音楽でいうなら非常に「静かな」演奏をした場合の、カラーや光覚の変化は?逆に最高レベルで動作させるとどうなるのだろう?1秒間に96,000回でオン/オフを切り替えるとどうなるのだろう?シャープなエッジが得られるのだろうか?超高速なグラフィックスを描画させるとどうなるのだろう?あるべきグラフィックスが描画されるのか?描画されないなら、その場合のアーチファクトはどのようなものになるのか?本当の意味で自分の楽器に向き合うことが始まるのはここからです。操作対象を知ってこそ遊び心のある操作ができるようになり、それは私個人的に非常に大きな満足感となります。アイデアを実行し、結果を見て、それに対応していくのです。 From a rehearsal for Lumière Lumièreを「インストゥルメント」と表現されているところからも、Lumièreビジュアルとオーディオのコンポーネントの統合、1つの共感覚のインストゥルメントと捉えていらっしゃるようですね。つまり、音楽とレーザーを同時に演奏、コントロールしているということでしょうか? 当初のもくろみはもっと複雑なものでした。ビート主体のエレクトロニック・ミュージックと、レーザーで作成したビジュアル・コンポーネントをやりたい、またそのどちらも即興的にコントロールできるような形にしたいと思ったのです。即興という側面は、ビジュアル面でも音響面でも当初から外せない要素でしたが、ビジュアルと音響の相互作用という点については大きく変化しました。 Liveのセッションビューを使用してMIDIトラックでドラムをシーケンスしていますが、別のMIDIトラックでMax for Liveを制御し、レーザーにコントロール・データを送信しています。これらのコントロール信号は実際にはアナログ電圧で、レーザーのダイオードと鏡の動作を駆動します。この電圧はオーディオ用ではないのですが技術的には同じなので、オーディオ・パスにフィードバックさせて、面白い形でビジュアル・パターンに完全同期するグリッチーなデジタル・ノイズのレイヤーを加えています。 One of Robert's Max for Live devices for Lumière 解決が必要だったことのひとつに、レイテンシーとジッターの問題がありました。レーザーはレーザーの側に設置された2台のコンピューター上のMaxパッチでコントロールしていますが、サウンドは3台目のラップトップで出力しており、これら3台のマシン同士の通信はMax for Liveを介したEthernet接続なので、ある程度のレイテンシーとジッターが生じてしまいます。 これは、シンプルなレーザー・コントロール・ソフトウェアをLive内のMax for Liveデバイスとして作り直すことで解決しました。今は2種類のレーザー装置を使用していて、ひとつはリモート・マシンのレーザーを実際に駆動し、もうひとつのレーザー装置はサウンド生成にのみ使用されます。しかし、どちらにも同じコントロール信号が供給されています。たとえば、「circle」というコマンドを「size 5」や「speed 7」といった記述タグといくつかのアトリビュートと共に送信します。これを、レーザー・コンピューターは形状として、オーディオ・コンピューターのMax for Liveはサウンドとしてそれぞれ解釈します。うまく機能していますよ。 シンプルでエレガントな解決方法ですね。 コンセプト面から見れば、確かにシンプルな解決策です。しかし実際には、これは巨大なソフトウェアです。私が記述したレーザー・グラフィックス・ジェネレーターはかなりのコンピューティング・パワーを必要としますから。これはレーザー・メーカーからもかなりの評価を得ました。メーカー製のソフトウェアでは不可能だったことを可能にすることができたので。 それでは、万が一音楽に行き詰まってもレーザーの会社を立ち上げることができますね… 実際、楽しめると思います。これらの装置にかなり集中して取り組んでいますし、ハードウェアを含む技術面への理解はますます深まっていますからね。スキャニング・ユニット(レーザー・ビームを動かす部分はスキャナーと呼ばれる)に不具合があったのですが、私は、スキャナーを交換する方法を修得しました。それは、交換しなければならなかったということもありますが、「このメディアを使用していくなら、その仕組みを理解しておきたい」と考えたからです。...

トロンボーンで聴くPharrellの作品、KawehiによるRadioheadカバー - Liveでのルーピング

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トロンボーンで聴くPharrellの作品、KawehiによるRadioheadカバー - Liveでのルーピング

Kawehi、「Fake Plastic Trees」をカバー Abletonコミュニティからのビデオには、いつもAbletonスタッフもすばらしいインスピレーションをもらっています。先日も、数名のソロ・アーティストがライブルーピングにLiveを使用し、一回のセッションでトラックを構築しようとしているビデオに感銘を受けました。今回は、このエキサイティングな(そしてときに緊張感あふれる)プロセスを捉えたビデオをいくつかピックアップしてご紹介。まずは、Christopher Brillによる、耳から離れないキャッチーなPharrellの「Happy」をトロンボーンでカバーしたテイク。 ご自身で試してみたくなりましたか?Christopherは彼のサイトで楽譜を公開しています。 Abletonでも以前紹介したことのあるKawahiは、カバーやオリジナル作品でインスピレーションあふれるルーピング・パフォーマンスを見せる、才能あるマルチインストゥルメンタリストです。そんな彼女の最新作は、Radioheadのエモーショナルな作品「Fake Plastic Trees」。どうぞご覧ください。 Kawehiのその他のビデオは彼女のVimeoチャンネルでご覧いただけます。 最後を飾るのはKevin Yost。Kevinはすべての作品をその場で作曲、ループさせる「Live and Improvised」シリーズで注目(目だけでなく耳も)を浴びました。どのパフォーマンスもそれぞれ異なりますが、忘れられないディープなグルーヴはどのパフォーマンスにも広がっています。Kevinのスタジオでのインプロビゼーション風景をご覧ください。 他にもいろいろと聞いてみたくなりましたか?Kevinは、ベオグラードのClub Mladostで行われたライブのセットを無償ダウンロードとして公開しています。どうぞご利用ください。

Végétophone: 自然をモチーフに音楽を教える

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Végétophone: 自然をモチーフに音楽を教える

Végétophoneについて学生に説明するChapelier Fou 写真© Gwendal Le Flem エレクトロニック・ミュージックの世界を子供たちに説明する方法は?これが、Chapelier Fou名義で活動するアーティストLouis Warynskiに提示された質問でした。彼の答えは、「Végétophone」という名のインスタレーションとなりました。自然からインスピレーションを得て、シンセサイザーやエフェクトを木の一部として提示し、音を木の枝、パターンを果実としてとらえています。下から「Végétophone」についての短いビデオをご覧ください。その後、アートでもありインストゥルメントでもあるこの作品のメイキングと作品へのLiveとMax for Liveの使用についてWarynskiのインタビューを続けてお読みください。 「Végétophone」はどのようにして誕生したのですか? 私のバックグラウンドは音楽教育なのですが、アーティスト・イン・レジデンス事業である小学校に招聘された際、アーティストとしての自分のためだけではなく、子供たちのためになる何かを造りたいとまず考えました。徐々に、エレクトロニック・ミュージックと教育の交差点でのインスタレーションというアイデアが出来上がってきました。インスタレーション作品であり、音階、調、拍子といった楽典の基本的な知識を学ぶツールでもある機械のようなものを思いつきました。こういったことは、ただ概念を学ぶよりも、手を使って操作するとより理解しやすくなると思います。 いろいろと考えて、リズムのセクション、和音のセクション、メロディーのセクションという3本の枝を持つ木として音楽を表現することにしました。枝にはそれぞれライム、バナナ、リンゴの形をした「実」がなっていて、実はそれぞれ音楽のパターンになっています。木の幹にはグローバル・パラメーター(テンポ、拍子、根音、長調/短調)があり、各枝に影響を及ぼします。 完成形の「Végétophone」。木の幹、枝、実にはそれぞれコントロールが付属している 「Végétophone」を教育用ツールとしてお考えですか? レジデンス中はずっと学習ツールとして使用していました。主な目的は、子供たちが音楽の概念と用語を学び、触ったり感じたりできる何かとその知識を結び付けることができるようにすることでした。子供たちとは、一緒に音楽を聴き、分析し、音に合わせて踊ったりして、かなりの時間を過ごしました。 サウンド素材の90%は、子供たちと一緒に録音したサンプルです。校内のさまざまな部屋で、本、スポーツ、台所、姉妹のおもちゃ、お父さんの楽器など、さまざまなテーマで録音しました。私が担当したクラスの子供たち(9歳)が、彼らの知識を他のクラスや先生たちに伝えていくだろうという考えもありました。 「Végétophone」の仕組みについて教えてください。それぞれのボタン/スライダー/ノブはサウンドにどのように作用するのですか? 木の幹では、ネットワーク全体に影響するパラメーターを設定できます。拍子記号には、一般的な分数(常々分かりにくいと思っていました)を使用する代わりに、1小節ごとの拍を3拍または4拍のいずれかとし、これらの拍を2つに分けるか、3つに分けるかを決めるようにしました。事実上、これらは4分の3拍子、4分の4拍子、8分の9拍子、8分の12拍子になります。 テンポはひとつのノブで設定します。グローバル・トランスポーズは-7~+7半音です(根音の両側、4度および5度)。 実にはそれぞれ音楽パターンが含まれていて、ボタンを使ってトリガーしたり停止したりできます。同じ種類の実は一度に1つだけ演奏することができ、その実はLEDで示されます。同時に、ドラム・トラック、ベースとコードのトラック、メロディのトラックも再生することができるようになっていて、すべてのピッチ、テンポ、拍子が合うよう考えて操作しなくてはいけません。 各枝にはそれぞれ独自の設定があり、ボリューム(ピアニッシモからフォルティッシモ)、ディレイとリバーブのセンド(山びこと洞くつ)、サウンド/キット選択となっていて、ポットやフェーダーでアクセスできるようになっています。バナナにはもうひとつオプションがあります。和音のアルペジオです。 要は、巨大なMIDIコントローラーですね。 「Végétophone」の実際の動作の様子 Liveは「Végétophone」にどのように使用されていますか? すべてはMac mini上で動作するLive 9とMax for Liveで行われていて、MIDIbox 128I/OとArduinoボードを使用してMIDIでコントロールされています。 簡単なところから始めましょう。 - サウンドの選択はRackのチェーン・セレクターを動かすことで行います。 - メジャー/マイナーの選択は、バナナとリンゴにScaleエフェクトを適用します。 - グローバル・トランスポーズは、バナナとリンゴにPitchエフェクトを適用します。 - テンポでは…当たり前ですがテンポをコントロールします。 - エフェクトは2つのリターン・バスだけです。 - アルペジオはArpeggiatorエフェクトで作成されています。 サウンドはすべてSimplerのRackとDrum Rackで演奏したサンプルから作成されています。Operatorも数インスタンス使用しています。 The hardware guts...

Kyoka:超人的なパワー

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Kyoka:超人的なパワー

ますます盛況のエレクトロニックミュージック界において、アーティストが自身の作品を聴いてもらうには、芸術性と技能はもちろんのこと、ある種の超人的なパワーが必要であるようにも思えます。ミュージシャン/作曲家Kyokaは、そんなパワーを持つアーティストのひとりかもしれません。「is (Is Superpowered)」は、定評あるベルリンのレーベルRaster-Notonからリリースされた最新アルバムです。アルバムに収録されたパワフルで小気味よい12のトラックは、うねるビートとオーガニックなボーカルサンプルが大胆に融合され、既存のジャンルに分類できない奇抜な作品となっています。Abletonは、アルバム制作に採り入れられたコンセプトとテクニックについてKyokaに話を聞きました。 あなたの音楽は斬新で遊び心にあふれています。どのようなきっかけで、いつ音楽を始めたのですか? かなり前です。初めて父がピアノを教えてくれたのが3~4歳の頃で、それから13歳までは我慢して続けました。才能あるピアニストにはなれませんでしたが、楽典は学べたし、楽譜も読めるようになりました。 「我慢して」続けたとのことですが、ピアノの練習はそれほど辛いものだったと? ええ、辛かったです(笑)。アドリブで演奏したかったのですが、させてもらえなかったので。古典的なピアノレッスンは私には窮屈でした。制約が多すぎて。音楽を作りたいという気持ちは確かでしたが、もっと自由にやりたかったのです。 その自由はどうやって見つけたのですか? 初体験は両親のテープレコーダーでした。壊れたから好きにしていいと言われたんです。すぐに分解して修理しようとしましたが、できませんでした。でも、リールを手動で回すことができて、おかしな音を出すことができました。夢中になりましたね。 でもこのテープレコーダーでは録音はできませんよね… はい。最終的に、私のテープレコーダーは3台に増えました。そのうちの2台で同時録音した内容を再生し、3台目のテープレコーダーで録音するということをしていました。再生速度がだいたい一緒であれば、フェイザー効果が生まれます。でも、リズムに合わせて再生速度をずらせば、エコー効果になります。こうやって音楽を作り始めたのが7歳頃です。3台のテープレコーダーをがしゃがしゃやりながら、終わりのないレコーディングセッションをしていました。 その後本格的に音楽を勉強したことは? 私はその気でしたが、両親に反対されました。経済学を勉強するため、東京に引っ越しました。Roland MC-505 Grooveboxを購入して、ビートプログラミングとステップシーケンスについて勉強しました。いくつかデモを録音し、しばらくしてOnpaレーベルからメールが届いて、ここからEPをリリースしました。 音楽制作用のソフトウェアを使用し始めたのはいつですか? 4回生のとき、必修授業もなかったのでよく旅に出ていて、スペイン、パリ、ロンドン、アメリカに行きました。たくさんのミュージシャンと知り合ったのですが、PCでCakewalk Sonarを使い始めている人が多かったんです。それで私もやってみました。2006年に、あるプロジェクトでAbleton Liveに出会って、それからLiveを使うことが増えました。今ではLiveが私のクリエイティブツールになっています。トラックメイキングはLiveで始めます。インスピレーションがわくので。1年くらい前まではApple Logicでミックスすることが多かったのですが、今はファイナルミックスを含むすべての制作過程にLiveを使用しています。 テクスチャだけでなく、ビートに含まれる要素に至るまで、フィールドレコーディングのようなサウンドが多いですね。 そうですね。フィールドレコーディングは大好きです。自分で録音した音には必ず独特な個性があります。それに、フィールドレコーディングではその音の空間感も捉えることができます。サウンドライブラリのキックドラムは必ずステレオ音場のちょうど真ん中にあります。でも、最終的にキックドラムとして使用することになる音を自分がステレオで録音した場合、キックの音場での座りがよくなり、より三次元で輪郭がくっきりと感じられる音になるような気がします。 フィールドレコーディングはどこでどのように行っていますか? もうかなりのコレクションが出来上がっているのですが、いまだに旅に出ると本当にどこででも録音しています。数年前、2008年頃はかなり真剣にやっていました。高価なレコーダーを購入して、96kHzで録音していました。できるだけ高いオーディオ品質で録音したかったので。最近は、Roland/EdirolやZoomから出ているより小型のフィールドレコーダーを使用しています。持ち歩きに便利なので。気付いたんです、いい音というのは無理に手に入れられるものではないと。めぐり合いの問題なんです。高価な機材は必要なく、録音ボタンを押すしかるべき時にしかるべき場所にいることが大切です。 お気に入りのマイクやテクニックはありますか? テーブルや対象に取り付けて使用するタイプの、シンプルなピエゾマイクを使っています。録音対象を叩いたりピエゾを指で触ったりしてからエフェクトをかけます。ステージだけではなくスタジオ制作時にもやりますね。アルバムに収録されているトラック「Piezo Version Vision」はそうして出来上がった作品です。 「Piezo Version Vision」に使用されているドラム・サウンドの材料:ピエゾマイクとAkai head RushやOto Biscuitなどのハードウェア・エフェクト 録音したサウンドはどうやってAbleton Liveアレンジメントに取り込んでいますか? 以前はオーディオトラックに直接ドロップしてそこで編集していました。最近はLiveのSamplerに取り込むことが多いです。サウンドをループさせて少しEQをかけますが、それ以上のことはほとんどしません。フィールドレコーディング特有の個性を残したいので。 シンセサウンドはどのようなものをご使用ですか? いろいろですが、パルス波は大好きですね。友達がパルス波オシレーターを作ってくれたんです。なんと2台も。手付けの回路基板とバッテリーで、互いにモジュレートするよう接続できるようになっています。基本的にはモジュラーシンセですが、世界最小じゃないかと思います。 個性的なサウンドツールのファンとお見受けしますが。 そのとおりです。アドレナリン値がぐっと上がる気がします。正攻法すぎたり、ありきたりすぎるものにはすぐ飽きてしまって、集中力が切れてしまいます。「きちんとした」シンセは私には合いません。もっと無骨で、あまり手が加えられていないツールが必要なんです。ステージで使用しているあの小さなパルス波回路基板には呼び出し可能なプリセットはありませんが、その代わり、毎回新しい予測不可能なサウンドを生み出してくれます。ステージパフォーマンスでは、生み出されるサウンドに対応を強いられることになりますが、このチャレンジがとても好きです。 斬新なオーディオツール:相互接続可能な手付けのパルス波オシレーター ソフトシンセとエフェクトの話が出たところで、手作りオシレーターのアナロジーはカスタムメイドのMax for Liveデバイスに通ずるものがありますね。 そのとおりです。Liveの内部EQやダイナミクスエフェクトなどスタンダードなソフトエフェクトも使用していますが、たとえば「Lined Up」というトラックでは、友人のHisaki Itoが構築したシンプルなパルス波シンセのMaxパッチを使用しています。 Hisaki ItoがKyokaの複雑なパルス波オシレーターMaxパッチをMax...

Goth-Trad: A New Epoch

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Goth-Trad: A New Epoch

Goth-Tradは、近年エレクトロニック・ミュージックの世界で最も尊敬を集める日本人プロデューサーの一人。90年代後半に当時のアブストラクトなヒップホップに触発されてトラック・メイキングを開始し、その後日本を代表するダブ・レゲエ・バンドDry & Heavyのベーシスト、秋元”Heavy”武士と共にRebel Familiaを結成。ダブとロック、ドラムンベースなどを融合した新たなスタイルを確立し、日本国内で絶大な人気を獲得しました。その活動と並行し、Goth-Trad名義でソロの制作を続け、2000年代前半にエクスペリメンタルなノイズ・アルバムも発表しています。 そんな彼がさらに注目を集めるようになったのは、同年2005年に発表したアルバム『Mad Raver’s Dance Floor』。UKで台頭してきたダブステップのサウンドにインスピレーションを受けた本作の、収録曲のタイトルでもあった「Back To Chill」という名のダブステップ・パーティーを、2006年から東京で開始します。この年にDeep Mediを主宰するMalaと出会い、翌年同レーベルから「Cut End」が、Skudからは「Back To Chill」がリリースされ、一気にダブステップ・プロデューサーとしてその名を確立しました。2012年にはDeep Mediから7年ぶりとなるアルバム『New Epoch』を発表し、それ以降は新たなアプローチの曲作りを始めています。 東京のLiquid Roomで行われたワークショップにおいて、浅沼優子がGoth-Tradと彼のサウンド作りと新たな方向性について聞きました。 Goth Trad - "Sunbeam VIP" Goth-Tradさんはこれまで様々なスタイルの音楽を作ってきていますが、そこには一環した美意識があると思います。ややダークで、低音重視で、質感はザラついている。ご自身には何か目指している音のイメージがあるんですか?それとも、自然と元々持っている好みが滲み出ているということなんでしょうか? もともと、最初に音楽に入ったのはKraftwerkなんですよ。小学校6年生くらいのときにKraftwerkのリマスター盤アルバムみたいなのが出て、それを聴いたのがきっかけなんです。そのダークなジャケットのイメージと、音と、無機質な感じが原点ですね。でも、Kraftwerkって無機質だけどエモーショナルなんです。その次がLFOのファースト・アルバムなんです。 意外にもテクノなんですね!最初ヒップホップ・シーンから台頭してきた印象だったので、驚きです。 いや、もろテクノなんです。LFOとNightmares On Waxのファースト。それも、無機質なんだけどウワモノがエモーショナルなところがある。それが自分の音楽にとってもずっとテーマであるような気がします。 ダブがバックグラウンドにあるのかと思ってましたけど? 俺、ダブは全然聴いてないんです(笑)。むしろ、WarpとR&S、Rising Highをひたすら買ってました。そこからダブとか、On-U Soundを聴いたりとか。ブリストル系のMassive AttackとかPortisheadを聴きつつ、Wordsoundなんかも聴き始めて。その影響が一番残ってると思いますね。だから、Lee Perryとかはそこまでのめり込まなかったんですよ。手法としては面白いと思って取り入れたけど。どちらかというと、ダウンテンポとかアブストラクト・ヒップホップの質感を取り入れながら、テクノのエモーショナルな部分を、2000年くらいに曲をリリースし始めた頃から入れようと思っていましたね。 だから、俺はフレーズとかメロディ、もしくはそれに変わるベースラインは必ず入れているんです。そこが自分の曲の特徴だと思うし、自分が勝負出来るところだと思っていて。さらに上をいくには、ウワモノの使い方とか、エモーショナルなものを注入することで曲の個性を出さないといけないと思って。それを、今でもやっていきたいと思ってます。『New Epoch』の一曲目なんかも、ウワモノを重視して作ったし。感情的な色をつけるというか。それが自分の中では一番大事な部分ですね。 Goth Trad - "Man in the Maze" 現在はダブステップからは少し離れているとのことですが、その理由は?また他にはどのような音楽に興味をお持ちですか? ダブステップで面白い曲を作っている人はたくさんいるし、それはチェックしているつもりなんですけど、やはり2006~8年の頃に比べると、その量は減ったかなとは思いますね。自分も、ダブステップのテンポでありながら、どこか違う曲を作りたいと思っているので、その分時間もかかりますね。アルバム制作して、それに集中しすぎたところもあるので、今は違うものに触れたいんです。 俺の場合は何か明確なテーマがあった方がアルバムが作りやすくて、例えばノンビートのノイズだとか。『New Epoch』は、6~7年自分がやってきたダブステップにフォーカスして作ろうとしたわけです。じゃあ、今はどうしようか、というのをここ1年くらい考えてます。テクノもチェックしてます。BlawanとかEmpty Setとか、インダストリアルな感じのものが結構好きで。今後は自分がこれまでやってきたことを、もっとナチュラルに出していきたいですね。ダブステップを含めて、自分の色んな部分を融合させていきたいと思っています。自分の昔のノイズのサンプルを使いながら、テンポも変えてダビーにしてみたり、そういう曲作りをしてみています。 アルバム『New...

Pantha du Prince & The Bell Laboratory: 楽器とセットアップ

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Pantha du Prince & The Bell Laboratory: 楽器とセットアップ

Abletonは、ロンドン・バービカン・センターでのTerry Rileyの「In C」公演準備を進めるPantha du Prince & The Bell Laboratoryの様子をビデオに収めました。コラボレーションに使用されているエレクトロニックとアコースティックの両楽器について、Hendrik Weber(Pantha du Prince)とThe Bell LaboratoryのHeming Valebjørgに詳しく話を聞きました。まずHendrikが、The Bell Laboratoryの楽器のプロセッシングにAbleton Liveとハードウェア・エフェクトをどのように使用しているのか、シンセとドラムマシンをステージでどのようにシーケンスしているのかについて説明しています。 次に、Hemingが、チューブラーベルの輝きのある音からバラフォンの温かみのあるサウンドなど、The Bell Laboratoryが演奏するパーカッション楽器のセットを紹介しています。 Pantha du Prince & The Bell Laboratoryのロンドン・バービカン・センター公演準備の様子を見る Ableton Liveについてさらに詳しく この記事をFacebookでシェア

Tom DemacがPushで時間に挑戦

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Tom DemacがPushで時間に挑戦

時間の制約は、ときに優れた結果をもたらします。Four Tetまたは認定トレーナーMichael Greigにお任せを。「Against the Clock」と名付けられたこのシリーズでは、FACT Magazineが10分間でトラックをできるだけ完成に近づけるという課題をミュージシャンに提供しています。このシリーズは、クリエイティブな面々がいかにグルーヴをとらえるのかについてインスピレーションあふれる考察を提供しています。もちろん、各パートが組み合わされトラックが姿を現す様子を目の前にしたスリリングなカウントダウンも見物です。 シリーズ最新ビデオでは、ロンドンをベースに活動するプロデューサーTom Demacが登場。ビンテージ・ハードウェアが満載のスタジオですが、TomのワークフローはPushとLiveを中心としたもの。Tomが時間に挑戦する様子をこちらからどうぞご覧ください。 Pushとハードウェア・ドラムマシンについてさらに詳しく

Pantha du Prince & The Bell Laboratory: 新しいシーケンス

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Pantha du Prince & The Bell Laboratory: 新しいシーケンス

「自分の役割は、指示を送るということではないと思っている」Pantha du Prince名義で活動するHendrik Weberは、Abletonの新しいショート・ドキュメンタリーでそう語っています。「各ミュージシャンの音をフィルターするんだ」ソロ・アーティストとしてエレクトロニック・ミュージックで活躍する彼が他のアコースティック・ミュージシャンとのコラボレーションに興味を持ったきっかけは、教会の鐘の音でした。アルバム「Black Noise」用にさまざまな場所で古い鐘を録音した際、Hendrikは(エレクトロニクスとラップトップ担当の)自身とアコースティック・ミュージシャンのコラボレーションを構想しました。 その成果は、下のショート・フィルムでご覧いただけます。また、Hendrikが世界で活躍するうパーカッショニスト集団The Bell Laboratoryとコラボレートしたアルバム「Elements of Light」でも聞くことができます。このようなプロジェクトをまとめるには、クリエイティブな発想と技術的思考、The Bell Laboratoryのヒューマンな表現とのギャップを埋めること、そしてエフェクトを多用したHendrikの「フィルター」としての役割が必要でした。Abletonは、ソールドアウトが続出のパフォーマンスで世界を飛び回るHendrikとThe Bell Laboratoryにインタビューを実施。ミニマルで実験的な曲で衝撃を与えたTerry Rileyの「In C」を演奏しています。ロンドンのバービカン・センターで行われた公演では、サイケな60年代に始まったリキッド・ライト・ショーの古株The Joshua Light Showとも共演しています。 コラボレーションとパフォーマンスの様子を、下のビデオでご覧ください。 パフォーマンスで使用されたパーカッション楽器とAbleton Liveセットアップについて詳しく見る この記事をFacebookでシェア