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Herrmutt Lobby:コントローラー・ハッキングとハンズオン・ミュージック

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Herrmutt Lobby:コントローラー・ハッキングとハンズオン・ミュージック

ラップトップとMIDIコントローラーの台頭以来、エレクトロニック・ミュージックの「ライヴ」・パフォーマンスの「ライヴ」さについて語ることは困難になりました。こういったセットアップの多くは、ギターやサックスなどとは異なり、応答性に優れたハンズオン・コントロールにはほど遠く、プロデューサーやミュージシャンからの楽器のように動作するインターフェースへの期待は高まる一方です。Herrmutt Lobbyというコレクティブは、この問題に正面から立ち向かっています。コントローラーを用いて、エレクトロニック・ミュージックで真のライヴ・パフォーマンスを可能にする直感的なツールへと変貌させています。コレクティブのメンバーはねじれたダウンテンポのビートを専門とするミュージシャンたちですが、このコレクティブのインストゥルメント・デザイナーとしてのミッションにジャンルは関係がなく、「リアルな」楽器のように、演奏技法に反応するデバイスを構築することです。Abletonは、コレクティブの信念とコントローラーのハッキング方法についてメンバーに話を聞きました。また、カスタム・パッチとLiveセットも公開されており、彼らの手法のを実際に体験することができます。 Max for Liveを使用してフェーダー・コントローラーを操作するHerrmutt Lobby エレクトロニック・ミュージックのライヴ・パフォーマンスに不満を感じ始めたのはいつ頃からですか? Herrmutt Lobbyは10年前にスタートしたのですが、目標はライヴ・バンドになることでした。何枚か制作しツアーに出ましたが、ライヴはつまらないものでした。オーディエンスやオーガナイザーからは熱狂的なフィードバックをもらったのですが。数個のノブをいじくって、あらかじめ録音されたトラックにかけるエフェクトをコントロールするのは楽しくありません。当時ロックが盛んな小さな町に住んでいたのですが、ロック・バンドをやっている友人たちが、ガレージなどでも楽しそうにライヴ演奏しているのを目の当たりにしました。エレクトロニック・ミュージックのライヴ・セットがいいとか悪いとかいうつもりはないのですが、もっと盛り上がることができるはずなのにどうも楽しくなく、「出来合い」感が強すぎるように思えます。それで、シーケンスから距離を置く方法を模索するようになりました。この業界はループだけを使用する傾向が強いので、こういった動きのない構造の向こうにある新しい形を探るよい機会だと思いました。ハンズオン・テクニックを開発してそれらをステージで試みることは楽しいし、やりがいがあります。即興で演奏できる点やより直感的に音楽が生まれる点で、ジャズに似ているかもしれません。 Herrmutt Lobbyの新トラックではKing Kashmere IVとBoodaをフィーチャーしている シーケンサーで曲作りをしていた頃は、友達がスタジオに遊びに来てくれても、制作中の内容をただ聴くしかありませんでした。シーケンサーでの作曲に興味を持つ人は少なかったからです。今では、スタジオにコントローラー、ジョイスティック、パッド、iPad、自作の機材などが所狭しと並んでおり、すべてリアルタイム・パフォーマンス・パッチで相互連結されています。今なら、スタジオに足を踏み入れれば誰でもジャミングに参加できます。演奏がもっと楽しいものになります。連結したインストゥルメントを使って演奏するこのプロセスを、私たちは「リアルタイム・システミック・ミュージック」と呼んでいます。こういったデバイスを複雑で微細な操作に反応させるようにする上で難しかったことはありますか?リアルタイムで演奏する際の一番の課題は遅延(レイテンシー)です。コントローラーをインストゥルメントとして使用するには、レイテンシーをできるだけ(できれば4ms以下に)下げる必要があります。レイテンシーは、コントローラー、コンピューター、サウンドカードとそれが何であれ、セットアップに使用されているすべての機材によって追加されるので、チェーン内の必要のない機材を徹底的に排除しました。既存のコントローラーに独自のプログラムを「侵入させる」方法についてお話しいただけますか?オペレーティング・システムをソフトウェアにオーバーライドさせているのでしょうか?市販のデバイスの「脳」の再プログラムができれば最高なのですが、普通は無理ですし、無理でなくてもあまりにも複雑すぎます。ただ、ほとんどのデバイスにはMIDIコントロールを送信できるので、私たちはLiveとコントローラーをリンクさせるソフトウェアを作成しています。私たちの目的がデバイスの能力の範疇を超える場合、たとえばファームウェアに任意の制限がある場合などは、既存の電子回路を取り除いてしまい、ArduinoやTeensyといったプログラム可能なマイクロコンピューターに直接センサーを接続してしまい、独自のファームウェアを記述してセンサー・データの処理とMIDIメッセージの送信を実行させます。 デバイスの操作とマッピングについて説明するHerrmutt Lobby 最近では、ロンドンで開催されたMusic Tech Fest Hackathonで、Playstation 3のコントローラーをウェアラブルでワイヤレスの音楽用インターフェースに作り替えました。今回は、加速度計、ジャイロスコープ、ジョイスティックといったパッドの電子回路をほとんど残し、ボタンを取り除いて、ジョイスティックのひとつを3Dプリンターを使用して補強したキャップの付いたinnofadderで置き換えました。同時に、ベーシックなプレッシャー・センシティブのiPadスタンドを製作し、ベロシティとアフタータッチをiPadに加えました。今は独自のコントローラーをデザインしている最中です。ステージ向けの製品で、2016年前半には市場に出回る予定です。より堅牢な造りになっており、アーキテクチャに手を加えることを可能にするMax for Liveパッチが付属しています。皆さんのアプリBeatSurfingは、ハンズオンでの作品作りに大きな跳躍を提供するアプリです。このアプリのビビッドなビジュアル・インターフェースは皆さんの音楽製作にどのように影響しているのでしょうか?生まれてくる作品にどのような変化を与えると思いますか?BeatSurfingで、作曲プロセスは一変しました。レイアウト・デザインが作曲と共に展開するだけでなく、結果として生まれるトラックはそれだけではプレイできず、フィジカルな操作なしには聞くことができません。もはや音楽コントローラーではなく、あらゆる要素が相関するシステムとなっています。あらゆる要素があらゆる部分に影響を与えるのです。 Herrmutt Lobbyによるアプリ、BeatSurfing スタンダード・ジャズやコンメディア・デッラルテにより近いかもしれません。カンバスはそこにあるけれど、結果として生まれるトラックは誰が演奏するかによって変化するのです。iPadとiPhoneでのエクスペリエンスを拡張させる新しいアプリを数ヵ月中にもリリースする予定です。皆さんが開発するソフトウェアについて、開発中に意図しなかった方法で使用されると思いますか?障害を持つ子供たちがカスタム楽器とiPadにBeatsurfingを使用して演奏するAccessible Youth Orchestrasのように、すばらしい使用方法をいくつか目にしています。また、ベルリンのDigiEnsembleの「iPadオーケストラ」も非常に印象的でした。 Herrmutt Lobbyの『The Counter』をダウンロードしてお試しいただけます。この優れたMax for Liveデバイスでは、デバイスのパッドのプレイ方法に応じてマッピングを効率良く設定する直感的なプロセスを使用して128のサウンドをわずか16のパッドでプレイできます。Herrmutt Lobbyについて詳しくは、Soundcloudおよびウェブサイトをご覧ください。

Seekae:自信に満ちあふれた『The Worry』制作の裏側

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Seekae:自信に満ちあふれた『The Worry』制作の裏側

2000年代は、ビート中心のエレクトロニカが豊作の時代でした。たとえばシドニーのトリオSeekaeは、J・ディラ一派のヒップホップのシャッフル感とクラシックなEDMの広角なエモーションを組み合わせた新進アーティストです。特にSeekaeは発展性のあるポテンシャルを見せており、2008年のデビュー作『The Sound of Trees Falling on People』は、深奥なエレクトロアコースティック・テクスチャに抜け目ないトリッピング・ビートを融合させており、その手法はいまだに新鮮みを失っていません。それから6年後にSeekaeがリリースした新アルバム『The Worry』は絶賛を受けています。ひっそりとしたスタートからの決定的な進化は際立っており、見事なまでに成熟し自信に満ちた新たなスタイルへの動きを見せています。オリジナル・メンバーのひとりGeorge Nicholasは、Abletonコミュニティのメンバーでもあります。Seekaeとしてのツアーや(同じくシドニー出身のHamish Dixonとのプロジェクト)Cliquesでの活動の合間を縫って、彼はシドニーのLive Schoolでプロデューサー志望者にレッスンを行っています。Pushにも詳しい彼は、お気に入りのテクニックを紹介し、急成長するバンドのメンバーとしてのプレッシャーについての洞察を提供することに非常に意欲的です。 Seekae『Another』 Seekaeでの作曲プロセスについてお聞かせください。どのようにして3名のメンバーの要求のバランスを取っていますか?Seekaeでの作曲プロセスは、皆が同じ街に住んでいないので、かなりまとまりのないものです。Alex Cameronと私はシドニーに住んでいますが、どちらも街を出ていることが多いし、John Hassellはイギリスに住んでいます。なので、3名がグループとして作曲することはありません。1作目の『The Sound of Trees Falling on People』は3人で集まって作りました。今回と比べると、ですが。2作目の『+Dome』もだいたい同じで、当時は共同のスタジオがあって、そこで一緒に作業し、ドラムとギターを録音してミックスも皆で一緒にやりました。『The Worry』の制作中は、皆が世界中のいろんな場所に散らばっていました。なので、一緒には書いてませんね。Dropboxを活用しています。その制作方法は完成作に影響しましたか?より検討されたものになったと思います。個人的には、一人で作曲する方がどちらかというと好きです。誰かと作曲するときは、その場の雰囲気に飲み込まれる可能性が必ずあるように思えるからです。あるアイデアにはまって「ああ、それは最高だね」などと口走ってしまい、批判的な考えができなくなることがあります。また、他の人たちと一緒の室内のムードをある程度ポジティブに保ち、それまでに作り上げたクリエイティブなエネルギーを壊さないようにしなければならないというプレッシャーもあります。一人での作業にはずっと時間がかかりますが、批判、検討、うんざりするほどゆっくりと悪戦苦闘しながらもさまざまな可能性について試行錯誤する時間を与えてくれます。 Seekaeによる『Blood Bank』パフォーマンスの様子(2014年Hype Hotelにて) それでは、ツアーに出る際、どのようにしてそれぞれのセットアップを統合させるのですか?ツアー前にだいたい1週間ほど集まってスタジオにこもり、トラックの再構築を行います。半日ほどかけて、「このトラックはこんな風に、これはこういう感じで」と意見を出します。オーディエンスを引きつけるライブ・パフォーマンスとサウンド・クオリティの間での妥協点を見つけるよう努力しています。単なるWAVファイルのプレイバックにならないよう、かといってサウンドのクオリティがないがしろになりすぎることのないよう、転換点を探すんです。あなたのライブ・セットやチュートリアルにPushが登場しているのを拝見しました。出会いのいきさつについてお話しいただけますか? シドニーのLive Schoolでトレーナーをしているので、ラッキーなことに発売前にPushに触ることができました。かなり初期のベータ・バージョンだったのですが、結局は最終的にリリースされたものにかなり近いものでした。新インストゥルメントとして触った感想はいかがでしたか?はじめのうちは、かなりベーシックな方法で使用していました。マルチカラーのLaunchpadといった感じです。「わあ、カラーだ!いいじゃないか!」って感じでしたね。パワーアップしたLaunchpadやAPCという印象だったので、しばらくそういう風に使用していました。その後、ドラム・シーケンサーにはまり始めました。これがなかなか見事なワークフローなんです。次にメロディ・シーケンサーを使い始めて、度肝を抜かれました。後でファームウェアに追加された機能だったかと思うのですが、メロディの扱い方を一変させました。作品に与えた変化はありましたか?新しい機材を導入することは、必ず変化への新しい視点をもたらしてくれます。サウンドについて新しい方法で考えることができます。Pushは、十二平均律と私との結びつきを変えました。音階を選択するとその音階になり、自由に操作できます。使える音は少なくなったとしても、その音階内で新手法を試すことが非常に簡単になり、私のようにあまり器用でない人に特に便利です。私はこれをライブでシーケンシングに使用しています。私はドラマーではありませんし、フィンガードラミングにも自信はありませんが、臨機応変にシーケンシングできるというのはうれしいです。何をシーケンシングなさっていますか?その場の判断でサンプルを操作しているのでしょうか、それともVSTのコントロールですか?ほとんどの場合、メロディ・ステップ・シーケンサーを使用して非常に短いアルペジオを作成しています。1小節ほどの短いシーケンスをループさせてノートを追加したりVSTのパラメーターを一番上のマクロを使用して変更したりします。こうして、さまざまな要素に微妙な変化を同時に加えることができます。独自のマクロ・マッピングも行っています。それだと、VSTを開いて自動マッピングを確認する必要がありません。通常、手持ちのVSTをインストゥルメント・ラックに入れ、一定のパラメーターを見つけてそれらをマクロにします。ADSR、フィルター、いくつかの空間系エフェクトといったベーシックなものです。Max for Liveはどのようにご使用ですか?Push用に作成されたパッチなどはご使用ですか?Push用の新しいシーケンサー・パッチを送ってもらったばかりです。Maxデバイスはたくさん使用していますが、Pushに特化したものはあまりありません。安全策として、ライブで使用するプラグインとMaxデバイスの数は最小限に抑えるよう心がけています。先日優れもののMaxパッチを手に入れたんです。ひとつはDiffuseという名のSpace Echoのシミュレーター、もうひとつはMagneticというパッチです。どちらもSurreal Machinesのものです。RE-201エミュレーターにコンボリューション・リバーブとオリジナルのワウ、フラッター、グリットが組み合わされています。 『Chro』制作について語るGeorge Nicholas(Live SchoolのInputセッションにて) CliquesはSeekaeに比べてよりフロアを意識した作品となっており、さまざまなUKアンダーグラウンド・サブジャンルが新鮮な手法で掛け合わせられています。制作プロセスに違いはありますか?まったく異なります。実際のプロセスについて言えば、Cliquesのトラックはどれもドラム、ベース、パーカッションからスタートして、その後必要に応じてメロディを補足するという流れです。Seekaeでは、ほとんどの場合コード進行からスタートして、その後、その上にメロディを構築し、ベースラインをかぶせ、最後にドラムを作成します。ドラム・サウンドにはかなり厚みのあるサウンドもありますね。そのまま使用してしまうとドラム・サンプルがビッグすぎると思うことはありますか?ありますね。サンプル・パックには、サウンドが優秀すぎて手を加える隙がないものもあります。サウンドが確立されていて実験の余地がないのです。ただ、Cliquesの制作ではかなりの処理が行われています。Cliquesでは、できるだけAbleton色を出さないように心がけているんです。テープ・サチュレーションのエミュレーション、MaxパッチのDub Machinesのような多数のエフェクト、古い機材のようなサウンドを生むエフェクトをたくさん使用しています。これらはパラレルでミキシングしているのですか、それともチャンネルに直接ドロップしているのですか?場合によりけりです。リターン・チャンネルには必ずSound Toys Decapitaorを置いていて、すべてを少しずつそこに送り、後で圧縮もかけます。バックグラウンドで機能させておいて、少しノイズも送ります。空間系エフェクトのルーティングは複雑ですか?オーディオを複数のセンドに送ってチャンネルに戻しているのでしょうか?いいえ。複雑になるのはラックを使用してラック内でチェーンを多数作成して多数のパラレル・プロセッシングを行う場合です。大抵の場合、私はトラックにサウンドを置き、ラック内で複数のチェーンを作成し、それらのチェーンにEQで特定の周波数帯域を選択します。その後、コンプレッサ―で低域を、コーラスで中域を、オーバードライブで高域をそれぞれ処理します。 SeekaeとCliquesについて詳しくは、FacebookおよびSoundcloudをご覧ください。

アーティスト・インタビュー2014:人気記事5本をご紹介

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アーティスト・インタビュー2014:人気記事5本をご紹介

Abletonが2014年に学んだこと。それは、サウンドに境界はないということです。音楽とは、枠組みを打ち破り、期待を上回るものなのです。プロデューサー、ミュージシャン、DJたちは、絶えず未知の音を探求し、オーディオの扱いにおける大きな可能性に光を当てています。今年示された多様性と革新性を讃える意味で、Abletonは、音楽を超えた世界にハイライトを当てたアーティストのインタビューから5本を選出し、改めて紹介することにしました。ブラジルのアンダーグラウンド事情から黒海でのフィールド録音まで、世界各地のAbletonコミュニティに生まれたクリエイティビティの持つパワーと可能性についてのストーリーをどうぞお読みください。 David Rothenberg:虫の音楽虫については、やっかいなものとして考える人がほとんどです。David Rothenbergにとって、虫は、創造の根底にある原始的なリズムへと導いてくれるもの。制作で選択肢が足りない気がしているのであれば、Davidによるこのショート・エッセイが視点の変化をもたらすきっかけとなるかもしれません。美しい音は、ありそうもない場所に隠れているもの。実はあなたのすぐ近くにあるのかもしれないのです。虫を使った音楽制作に関するDavid Rothenburgの記事を読む Archie Pelago:クリエイティブ・コレクティブ Mary Anne Hobbsのためのセッション録音を行うArchie Pelago ニューヨークのグループArchie Pelagoは、伝統的な楽器演奏と現代的なエレクトロニクスの狭間で制作を行っています。即興的なその制作スタイルは、偶然性とグループ内の相互作用をエネルギーとしつつ、それぞれが使用する3台のコンピューター・セットアップがワークフローには組み込まれています。制作とパフォーマンスにLiveを使用する彼らの手法は極めて優雅なもので、表現を抑止するのではなく実現するテクノロジーの好例ともいえるでしょう。彼らのインタビューでは、彼らの生まれ持つ才能がLiveによって最大限に高められているその秘密を知ることができます。 次のブラジル:リオとサンパウロの新たな音楽 リオのCarrot Green ワールドカップは、ブラジルのアンダーグラウンド音楽シーンを掘り下げる最高の機会となりました。お祭りムードの下では、経済的および社会的構造の複雑さが、若いアーティストたちが音楽で生計を立てることを難しくしています。このような苦難にもかかわらず、この記事で取り上げた3名のアーティストたちが見せる情熱と熱心さは、メインストリームの水面下で盛り上がりつつある良質な音楽への気付きとインスピレーションあふれる洞察を与えてくれます。 ブラジルのアンダーグラウンド音楽について読む Soundwalk Collective:ソニック・ノマド パリのポンピドゥー・センターでライブを披露するSoundwalk Collective Soundwalk Collectiveは、自身の旅と体験を、つかみどころがなく大いに興味を誘う彼らのパフォーマンスの素材として使用しています。地域性の高い彼らの作品は、一般的な音楽形態の型を打ち破り、オーディオの百科事典と音の旅行記という形を採っています。Berghainの共鳴音からパティ・スミスとのコラボレーションまで、Soundwalk Collectiveのストーリーは、音楽を超えたオーディオの可能性に言及しています。インタビュー全文を読む. Quantic:ナチュラル・アトラクション最後は、QuanticことWill Hollandが国をまたぐレコーディング・プロセスについて語ったインタビューです。そのクリエイティブ・メソッドとは、ときにはただ1曲のレコーディングのために大陸や時間帯を超えて旅するというもの。可動性は、プロデューサーやミュージシャンが利用できる最も強力な新ツールのひとつ。Quanticのストーリーは、デジタル・ドメインにおける文化交流の可能性を紐解くものとなっています。記事をチェック.

F.X.Randomiz: シュトックハウゼン、Push、サイバネティック・コード

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F.X.Randomiz: シュトックハウゼン、Push、サイバネティック・コード

カールハインツ・シュトックハウゼンを取り巻くイメージは、称賛と誤解が均衡しています。時として論議を呼ぶ存在であったことは確かですが、シュトックハウゼンの革新的な電子音楽作品、オペラ大作、管弦楽曲、合唱曲、器楽曲、そして電子音楽の理論的解釈、音響空間、偶然性の音楽への貢献は、20世紀後半の「アヴァンギャルド」な音楽とポピュラー音楽の両方に直接または間接的に影響を与えています。 シュトックハウゼンの莫大かつ多様な作品には、比較的頻繁に上演されているものもあれば、ヘリコプターが利用可能かどうかで上演の可否が決まる作品や、技術的に極めて要求度が高く実質上上演不可能なものもあります。そういった作品のひとつ、『Expo für 3』は、完成後43年の月日を経て初めて上演されました。難解でグラフを用いて記譜されている『Expo für 3』の「サイバネティック」な楽譜を興味をそそる音楽作品へと変換するという挑戦に、Mouse on Marsとの作品で知られるサウンド・アーティストのF.X.Randomiz、ボーカリストNatascha Nikeprelevic、ボーカリストでシュトックハウゼンと同じドイツ出身のMichael Vetterが取り組みました。3名は、『Expo für 3』のリハーサルとアプローチへの微調整に2年をかけ、上演後、シュトックハウゼン出版社の公式レコード・レーベル用に作品をレコーディングしました。AbletonはF.X.Randomizにインタビューを敢行。『Expo für 3』上演実現のためのPushとLiveの使用方法、エレクトロニックな要素と人間的な要素の相互作用を調整し、極端な即興をシュトックハウゼンの楽譜への忠実性でバランスをとるために3名のミュージシャンが用いた手法について話を聞きました。 『Expo für 3』の上演が困難な理由は何ですか?1970年に書かれてから、『Expo für 3』は一度も上演されていません。その記譜法が非常に独特で、上演は不可能だと考えられていました。この記譜法はサイバネティック楽譜ともいえるもので、固定の音、デュレーション、メロディ、リズムではなく、進む方向の指示のみが記載されています。この作品は、絶えず変化する音楽の流れに対応できる演奏者を想定して作られています。周期的に作品に現れるランダムな短波ラジオ信号が演奏者を新しい方向へと押しやるからではありません。おそらく、一方で即興、またもう一方で楽譜の厳守というこの特殊な組み合わせのせいで、綱渡り的な危険をはらむこの作品の上演に試みる者がいなかったのでしょう。それでは、『Expo für 3』上演を試みるというアイデアはどこから?象形文字のようにしか見えない楽譜で書かれたこの作品の世界初演とそれに続くレコーディングに私が参加できたのは、Michael Vetterがこのトリオのメンバーだったからです。彼は、ミュージシャンそして演奏家として1960年代にシュトックハウゼンと仕事をし、いわゆるサイバネティック楽譜の絶対的権威として知られていました。シュトックハウゼンとMichael Vetter(のちにNatascha Nikeprelevicも)にしか、この楽譜の読み方は分からないという状態だったのです。Michaelは、『Spiral』という独奏曲を1970年の大阪万博での初演で演奏し、シュトックハウゼン本人の監督の下、1996年にCD用にレコーディングしました。その後、彼とNatascha Nikeprelevicが二重奏曲『Pole』を2008年に初演し、2012年にシュトックハウゼン出版社のためにCDをレコーディングしました。三重奏曲の『Expo』でサイバネティック作品の三部作を完結させようと考えたのは自然な流れでしょう。2名のボーカリストが、サウンド・パレットをエレクトロニクスで拡張したいと考えたのです。 『Expo für 3』世界初演ビデオ(一部) このプロジェクト参加にあたって何か音楽的なトレーニングは行いましたか?ここではクラシック・ピアノの練習よりも独学の電子楽器とサウンド処理の知識の方が役立ちましたね。楽譜の読み方を知っていたこと、しばしば聴衆として、そして時に演奏家としていわゆる「芸術音楽」の世界における経験があったことは無駄ではなかったと思います。『Expo für 3』では、新しい方法での演奏が要求され、これまでに得た技術や習慣に頼ることができないような楽器を使用したいと考えていました。『Expo für 3』のサイバネティック楽譜に使用されているシンボルについていくつかご説明いただけますか?まず目に付くのはプラス記号とマイナス記号で、タイムイベントごとに最大4つあります。このプラスとマイナスの記号は、強度(音量)、音域(ピッチ)、音価(デュレーション)、分割(リズム区分の数)のパラメーターに割り当てられています。これら4つのパラメーターのどれにプラスまたはマイナスが適用されるかが示されている箇所はほとんどありません。つまり、プラスかマイナスの記号が1つ記載されている場合、それをどのパラメーターに適用させるかは私の自由だということです。しかし、その決定が私そして他の演奏者にもたらす結果も認識しておく必要があります。さもなければ、抜け出せない危険な領域へとあっという間にはまり込んでしまうことになります。また、拡張と圧縮を示す特別な記号もあります。中心点から2方向へと向かう拡張、または、2つの極から中央値に戻る圧縮です。これを理解するための最も簡単な方法として、ピッチの例があります。圧縮すると高いピッチが下がり、同時に低いピッチが上がります。これと同じ原理が他のすべてのパラメーターにも適用されます。ピッチが中央に収束すると同時に、静かな音は大きく、長い音は短く、複数に分割された音は縮合されます。この演奏方法の習得には、ものすごい集中力と、何よりもたくさんの練習が必要です。即興演奏中、他の演奏家とラジオ信号に反応している間は、シンボルが何を意味しているのかを考える時間はありませんから。他にも、さらに抽象的な指示を示すシンボルがあります。たとえば、「疲れるまで繰り返しこの修辞を演奏する」などです。また、一定のところである演奏者が別の演奏者に対していかに反応するべきかを指示しているシンボルもいくつかあります。 『Expo für 3』の楽譜、Push、短波ラジオが置かれたスタジオ トリオで唯一の非ボーカリストとして、技術面でこの作品にどのようなアプローチを採りましたか?また、LiveとPushを使用することとなったいきさつについてもお聞かせください。楽譜には指示はあっても絶対的数値は書かれていないので、コンピューター、特に、楽譜の構成に沿うよう活用できるMax/MSPパッチに楽譜の解釈の一部を任せるのは道理にかなっていると思います。ただ、こういったシステムは、2名のボーカリストとの即興演奏に使用するには柔軟性にあまりにも欠けていて融通が利かないことがすぐ判明しました。もうひとつ私が試みたのは、強く変更を加えたボーカル・サンプルのみを使用することです。これは、こうすることで作品のボーカル要素とエレクトロニックな要素を何らかの形で結び付けることができると考えてのことでした。しかしすぐに、これは独善的過ぎるアプローチであることが判明しました。リハーサルの過程で明らかになったのは、この作品で指示されているありとあらゆるサウンド・イベントに対して、そのイベント特有の特徴や要件に合わせて調整できるパラメーターを含むサウンドを準備する必要があるということでした。また、単体のサウンドと一緒にループやシーケンスを試してみたいと思っていたのですが、この目的に最適なソリューションはLiveだというのは明らかでした。Instrument Rackと、複数のアサインおよび微調整可能なパラメーター範囲をK別に設定できるマクロ・コントロールを使用するのが、私にとってはこの作品に必要とされる複雑なサウンド変更をコントロールする理想的な方法であることが分かったのです。もちろん、リアルタイムで演奏可能でなければならなかったのと、一般的なキーボードを使用しないということを初期の段階で決めていたことも関係しています。これまで学んだ演奏パターンに陥るリスクが高すぎたからです。リハーサルを開始したとき、Pushはまだ発売されていなかったので、当時のセットアップはLaunchpad、APC40、QuNeoを使用していました。その後、Pushの話を聞いたとき、『Expo für 3』上演に必要なすべてを兼ね備えていると思い、すぐに試してみたいと思いました。Pushに触れてすぐ、楽器を演奏しているような実感がありました。それに、Pushでは、それまで3つのコントローラーを使用して行っていた操作すべてが可能でした。最高なのは、サウンドだけではなく、多様な割り当て可能なスケール同様にサウンドの演奏方法をボタンを押すだけで楽器の状態を一変させてしまうことができることでした。『Expo für 3』用のLiveセットでは、楽譜内の各イベントまたはイベント・グループに対してセッション・ビュー・トラックを割り当て、それそれに独自のサウンド・ソース。エフェクト、また必要に応じてMIDIデータを用意しています。すべて再生準備が整っているので、矢印キーを使用して次のトラックに移動するだけです。ディスプレイの視覚表示も、楽譜内の位置がはっきり分かってとても便利です。コンピューターはステージの隅あるいは袖に置いたまま、コンピューター画面だけを使用して操作できます。声を加工せずそのままの形に残すというのはもとから意図したものだったのでしょうか?『少年の歌(Gesang der Junglinge)』について考えてみても、シュトックハウゼンは声に電子的な加工を加えることを初めて行った作曲家の一人であることを鑑みても、そのようなマニピュレーションに反対しないだろうと思うのですが。 カールハインツ・シュトックハウゼン『少年の歌(Gesang der Junglinge)』1955年 確かに、楽譜に声に変更を施すことを禁じる指示はありませんし、そうすることは選択肢として明白なものに思えるかもしれません。しかし、Michael VetterとNatascha Nikeprelevicの気心の知れた共演の様子を目の当たりにし、また彼らの声がもたらし得る信じられない程のサウンドのスペクトルを耳にすれば、彼らの声に電子的処理を加えることは冒涜にも等しいことであることは明らかです。シュトックハウゼンが1950年に『少年の歌』を制作したとき、声と電子工学を組み合わせることは極めて革新的なことでした。しかし、今では声をマニピュレートするのはジャンルに限らずよくあることです。ある意味、声が電子的環境に適応したといえるかもしれません。だからこそ、逆のことを行い、電子的に生成されたサウンドとシーケンスに、声のようなオーガニックな特性を加える試みこそ興味深いと思えるのです。『Expo...

Little PeopleのLive Packをダウンロード

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Little PeopleのLive Packをダウンロード

Laurent Clerc aka Little Peopleが私的なヒップトロニック・オデッセイ『We Are But Hunks Of Wood』をリリースしてから2年が経ちました。アコースティック弦楽器、ベル、タイトなビートをステレオ・フィールドにまるでオーナメントのように精緻に配置した作品です。このプロセッシングの多くは、Clercがこのアルバムのために構築したLiveインストゥルメントとエフェクトによりもたらされたもの。今回、このパックをダウンロードして独自の制作に使用できるようになりました。Abletonは、Clercにアメリカ合衆国での生活や『…Hunks Of Wood』以降の変化について話を聞きました。 アメリカ合衆国への移住はどのような影響を与えていますか?個人的な生活とミュージシャンとしてのキャリアのバランスを取るのは難しいと思いますが。アメリカへの移住は、かなり大きな出来事でした。妻と3歳の双子を連れての引っ越しでしたので。アメリカへの移住を決めた大きな理由のひとつは、自分のミュージシャンとしてのキャリアでしたが、同時に、妻や子供たちとより長い時間を過ごすためでもありました。かつては、いったんツアーに出るとアメリカに6週間滞在し、そのあいだ、妻は一人で小さな双子の世話をしなければなりませんでした。誰にとっても良い状況とは言えませんでした。今のところ、移住の結果に非常に満足しています。アメリカにいるということは、いつでも音楽制作に没頭できるということです。ご自身の音楽がアメリカで好まれていることについてはいかがですか?ツアーについてもお聞かせください。私の音楽がアメリカ文化から生まれたヒップホップの影響を受けているということが、アメリカでの人気に関係しているかもしれません。よくは分かりませんが。アメリカでの成功は、ユーザーの嗜好に合わせて音楽を選択してくれるアルゴリズムを使用しているPandoraと呼ばれるオンライン・ラジオ・サービスのおかげだと思います。Pandoraはローンチ当時は世界中で使用可能でしたが、アメリカ以外の国ではストリーム単位のロイヤリティが高額であるため、ビジネス・モデルとして機能しないことが判明しました。そのため、アメリカ国内限定のサービスとなったのですが、どういうわけか私の音楽が好評を得ています。ツアーも成功を収め、今週2014年最後のライブを行う予定です。たくさんの人々、特に小さな街に住む人々が自分の音楽を知ってくれていて、好んで聴いてくれているということに今でもとても驚いています。来年からはライブの内容を変えていこうと思っています。 『Offal Waffle』(Little People『We Are But Hunks Of Wood』より) 『We Are But Hunks Of Wood』から2年が経ちました。この間に制作方法に変化はありましたか?制作方法はひっきりなしに変わっています。新しいプロセスと制作手法を探すことは、クリエイティブなプロセスへの意欲になっています。シンセシスの知識は間違いなく向上しましたね。モジュラー・シンセを使用し始めたので。それに、サウンド生成とシーケンシングにかなりのiOSアプリを使用しています。タブレットは触知性に優れているので、シンセの操作性がずっと向上します。古いパッチを見直してみたのも面白かったですね。モジュレーション・オプションを追加することで、サウンドをさらに強化することができました。SamplerインストゥルメントにFMを追加するのは、私にとって気付きでした。サウンド・デザインの側面に取り組むことは楽しくて、今後のプロジェクト用の新しいサウンド・パレット作成へのアプローチの方法に間違いなく影響を与えているはずです。Laurentによるインストゥルメントとエフェクトの実演の様子を聴き、パックをダウンロードしてお試しください。Little Peopleは2~3月にかけて北米ツアーを行います。詳しくは、FacebookおよびSoundcloudをご参照ください。

ジェームス・ホールデン:モジュラー・マインド

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ジェームス・ホールデン:モジュラー・マインド

モジュラーについて語るのに、ジェームス・ホールデン(James Holden)より最適な人物はいないでしょう。Max for Liveとモジュラー・システムは彼の音楽に欠かすことのできない部分ですが、その一方で、彼はマシンに潜むオーガニックさや人間味を強調することも欠かしません。ジェームスは、モジュラーを持ち出し、慌ただしいツアー・スケジュールの中、扱いの難しいモジュール群を使用することを厭わない数少ないアーティストのひとりです。さらには、微妙に揺れるミュージシャンのテンポにモジュラーが反応するようにする独自のソフトウェアを開発しています。モジュラーを選択しプラグインを捨てること、Max for Liveでモジュラーをコントロールすること、彼の新作パッチGroup Humanizerについての計画について、ジェームスに話を聞きました。モジュラーをツアーに持ち出すのはどのような感じですか?飛行機に乗るときは、手荷物として預けるのが恐ろしくて。というと、手荷物として持ち運びを?毎回、保安検査機にかけるんですよ…。ある意味、爆弾を持ち運んでいるようなものですよね。精密機器ですから。それに、少しだけサイズがオーバーなんです。他にも、付属品、サウンドカード、コントローラーも持ち運ばなければいけない。ペリカン製のケースに入れて、手荷物として持ち歩いています。一番の問題は持ち運びですね。でも、ステージではモジュラーはすばらしい。だんだん、どのモジュールが特に安定性に優れているのか分かるようになってきました。あるステージでMIDIインターフェースが何度か不具合を起こしたことがあって、より信頼性に優れ、湿度や熱や寒さに強い別の機材と取り替えました。そもそも、モジュラー・シンセシスにご興味をもたれたきっかけは?もう何年も前、大学性の頃、音楽制作の方法を模索し始めたときに、インターネットに初めて触れ、音楽制作に関するサイトを片っ端から読み始めました。1990年代終わりのあの頃はモジュラー・シーンが一部存在していて、「面白そうだな」とは思っていましたが、自分にはまだまだ手が出せないものでした。学生には高嶺の花で、今よりもずっと高価でした。ただ、その頃初めて使用し始めたBuzzというソフトウェアは、モジュラー・デザインを採用していました。フラットなページにモジュールをドロップしてつないでいく方式です。機能には限界がありましたが、ハッカーたちがクロス・モジュレーションなどを使ったモジュラー・アイデアを試す方法を見つけていました。なので、モジュールは当時から私の音楽制作プロセスの一部でした。Buzzですべてを覚えたといってもいいでしょう。その後、Max MSPなどを使用するようになって、キーボードを何台か購入しました。プラグインは退屈だと思いました。当時、コンピューターで作成した音楽にリアリティを加えるため手を尽くしていました。1枚目のアルバムのことを振り返ってみても、あれは地獄でした。タイム・ウォブルやピッチ・ウォブルを再録して追加し、リアルで生き生きとしたサウンドへと変えていく作業なのですが、コンピューターを多用しなければこれをしなくて済むと身をもって学びました。アナログ・マシンには自然と生まれる要素ですから。最初のモジュラー購入を決めたきっかけは何だったのか、思い出せません。それを決めたのかどうかも覚えていないんです。初期に購入したマシンはあまり良いものではありませんでした。DoepferとMake Noiseを購入してからというものの、それらは使用したことがありません。やっとマイ・マシンが見つかったと思いましたね。これまでやって来たことの点と点がつながったような気がしました。 音楽制作の方法はどのように変化しましたか?ラック使用前と使用後で違いを見分けることはできましたか?使い始めて、自分なりの使用方法を見つけるまでには、しばらく時間がかかりました。もちろん大きな違いがありました。今は、前よりもすべてのサウンドにずっと満足しています。それに、ラックを使用して書いた初めての作品は『Triangle Folds』というトラックだったのですが、このトラック用に、ポリフォニック・ボイス・ルーティングを扱ってモジュラー内にポリシンセを構築するMaxパッチを作成しました。ポリシンセの仕組みについていろいろといじり回すのは最高に楽しいことでした。かなり早い段階で、自分にとってモノシンセはそれほど興味深いものではないと分かりました。キーボードを演奏すると、必ず片手が完全に鍵盤にとられます。そのトラックは、ポリシンセを作成していろいろと触らなければ生まれなかったでしょう。マシンを構築してルールを設定するとき、そのルールの枠内でどのようにプレイするのか、どの音を加えるのか、どのようにフィルターを調整するのかが面白いのですが、それがプラグインにはないのです。それに、コントロールを握っているのは自分だと感じます。気の利いたことのできるプラグインがあれば、「これをやるわけにはいかないな。他にたくさんの人がやってるなら、意味がない」と思うのです。誰かの作品でデモ・パッチのプリセットやプラグインを耳にすることがよくあるけれど、あれを聞くと、そのアーティストは私にとって死んだも同然です。二度とそのアーティストの作品を聞くことはないでしょう。退屈すぎます。技術の習得はいかがでしたか?モジュラーに関する専門知識を学んで自由自在に駆使できるようになるまでどのくらいかかりましたか?私の場合はけっこうスムーズでした。Max MSPとBuzzの知識があったので、理解しやすかったのもあります。2年かそこらでパッチをだいたい理解して、モジュールも尽きてきました。自分には手に負えないような複雑なものを構築することもできたのですが、そんなことも起こりませんでした。それに、Max MSPの腕が上がったこともあって、Max for Liveとモジュラーのハイブリッドを作るべきだと感じたのです。コンピューターにもコンピューターなりの利点があって、モジュラーにもモジュラーの良さがありますから。私の線引きはそこです。ルーク・アボットはモジュラーのシーケンシングをよくやっていて、モジュラーでリズム・パターンを生成しています。彼は4MSシャッフル・クロック乗算器が気に入っていて、これを構築するよう言われたのですが、このパッチを使うと必ずすべてのケーブルをシステムから抜いてギブアップする羽目になります。私にはどうしてもダメですね。コンピューター内かMaxでタイミング情報を作成して、シーケンシングのタスクすべてをコンピューターで行うのが、自分には一番上手くいくようです。今はパラメトリック・シーケンシングに凝っています。コンピューターでうまく機能しますが、すばやくことを終わらせて満足のいく結果を出すための仕組みを学ぶ必要がありました。Max for Liveで構築したツールキットを持っていますが、それがだいたいすべてのことをやってくれます。すべてをひとつのシステムとしてとらえているんです。システムについて理解することは、迅速な操作と結果を出すことにつながり、さらには『The Inheritors』の変わったシーケンスやクロス・モジュレーションへとつながりました。すべてはあっという間でした。1時間ほどシステムを触っていれば、それがうまくいくかどうかが分かります。 The Inheritorsをライブ演奏するジェームス・ホールデン(2013年) ここ数年、モジュラー市場が再び復活の兆しを見せていますが、好奇心をそそられた人々にとって、モジュラーに取りかかることは経済的にも知識的にもまだまだ容易ではありません。こういった人々にとってのエントリー・ポイントについてどうお考えですか?Buzzがまた盛り上がっているのは知っていますが、人にすすめるかといわれると分かりません。ルークはReaktorを使用しています。私はあまり詳しくありませんが、モジュラーの世界へと第一歩を踏み出すにはよさそうなツールです。断言はできませんが。人によって取りかかり方は異なります。たとえエフェクト・ペダル数台とコルグのVolca1台だけでもモジュラーのようなことができないわけではないですし、周波数変調やフィルターなどのようにいろいろとつなげてみてどうなるか試行錯誤し欲しいサウンドを引き出す方法を徐々に学んでいくという考えが大切だと思います。そこに至るまでの間は、いろいろと試してみるしかありません。モジュラー・シンセを扱うことで得られる価値というのは、この世界に踏み入るのに要求される熱心さから生まれるものなのかもしれませんね。そうです。今、スタジオにはキーボードが数台ありますが、今のスタジオに引っ越してからこれまで接続したことがありません。モジュラーとMax for Liveしか必要ないからなんです。使用しているのはこれだけなんです。極めて自由な制約のないインストゥルメントではありますが、コンピューターに比べれば自由度はぐっと下がります。のめりこんでいるはこのインストゥルメントひとつだけです。モジュラーのワークフローが気に入っている理由について、意見をお聞かせいただけますか?システム自体についてだけでなく、作曲や音楽の構成とアレンジの方法一般についての考え方についてお話しいただければと思うのですが。そうですね。どうしてもライブでの作業が多くなります。モジュラーを自動化するのは不可能ですから。できないわけではありませんが、やろうとすれば時間を無駄にするだけです。Expert Sleepersを使用したり、これのMax版を独自に作成したりもしています。それでもやはり自動化はよくないので、ライブ・テイクで行って録音するしかありません。私にとって、これがモジュラー導入による一番の大きな変化だったと思います。それまでは、MIDIコントローラーでオートメーションを記録し、細かな修正を加えたいという気持ちを抱えてうずうずするのが落ちでした。音楽とはライブ・パフォーマンスであると、私は強く信じています。いかにデザインされているか、処理がなされているか、思索がなされているかにはほとんど興味がありません。私が好きなミュージシャンは、アドリブ演奏が得意なアーティストばかりです。そしてモジュラーは、まさに私をその方向へと突き動かす原動力です。これは同時にとりとめもない即興演奏的な音楽や非常に平坦な構成のループベースの音楽に向かわせることにもなるので、ちょっとしたトレードオフではありますが。必ずしもギターのようなアレンジになるわけではありません。うまくバランスを取ることを学ぶのが大切です。スタジオに戻るにあたって、モジュラーを使用して単に音量が上下するトラックではなくしっかりとした構成のある楽曲を作る方法を模索したいと思っています。あなたにとってのモジュラーの魅力は、自分の癖やパターンに陥るのを防ぎ、ワークフローを発展させ続けてくれる能力にあると思いますか?はい、といいたいところですが、私は傾向やパターンに従う方だと思います。でも、そのパターンに満足しているのでは?パターンにそれなりの意味があると思うからです。かなり自由に変更可能だし、他の要素を取り込むこともできます。モジュラー・サウンドはライブ楽器ともうまく調和するんです。デジタルではそう簡単にはいかない。一緒にするとしっくりこないんです。モジュラーにハイハットを重ねると上手くいく。基本的に、何かを作るときは、ポリシンセを構築してから適当に配線していきます。これが私のパターンなのですが、毎回まったく違った方向に進んでいくんです。今のところはまだたくさんの引き出しがありそうです。ライブ・ミュージシャンとの演奏はいかがですか?テンポは一定ですか?それとも、より自由なスタイルで、変化するバンドのテンポにモジュラーを合わせるといった感じでしょうか?今は、AbletonとたくさんのMax for Liveデバイスでモジュラーを動かしています。最終的には、今おっしゃったようなことをやりたいなと思っています。コンピューターとシンセはドラマーに追従が可能なので、「Group Humanizer」と名付けたMax for Liveパッチ・セットを開発しています。技術的な話になりますが、あるミュージシャンの間違いが、これまでにこのミュージシャンが行った間違いだけでなく、他のミュージシャンが行った間違いとも相関するようになります。つまり、すべてのチャンネルがヒューマナイズされ、チャンネル同士に相関関係が生まれます。たとえば、ドラムマシンがシンセに相関し、シンセ内のエラーがドラムマシンに反映されるようになるのです。これをステージで使用したことはまだありません。エキサイティングな機能ですが、ステージで披露するにはもう少し信頼性を高めなければなりません。大規模なライブでベータ・テストを行う訳にはいきませんから。 Abletonは今後Group Humanizerについてジェームスに話を聞く予定です。ジェームス・ホールデンについて詳しくは、ウェブサイト、Facebookページ、Soundcloudをご覧ください。

Baauerのドキュメンタリー『Searching for Sound』ビデオ、サンプルPackの無償ダウンロード

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Baauerのドキュメンタリー『Searching for Sound』ビデオ、サンプルPackの無償ダウンロード

音楽には数千年の歴史があります。世界各国のサウンド、楽器、文化はますますその多様性を高めていますが、とはいえ既知の事柄に忠実になる傾向があります。習慣から抜け出し先を見据えたいなら、こう考えてみるのはいかがでしょう。この世界は、あなたの視点を変え、クリエイティブな視野を広げるであろうサウンドであふれているのです。バウアー(Baauer)が新アルバム制作のインスピレーションとなるフレッシュなサウンドを探して世界を巡る冒険を始めたのは、このような考えによるものです。『ハーレム・シェイク』現象をきっかけに新たな方向性を模索しはじめたハリー・ロドリゲスことバウアーは、制作パートナーのニック・フックと共に、ドバイの砂漠から日本の火山へと各国を旅し、ひねりの効いたサウンドと古代から続く伝統音楽を録音し、これらの素材を加工してスタジオで使用しました。うれしいことに、彼らはサンプルのフル・セットを提供してくれました。サウンドのビジョンを広げてくれるこれらのサウンドは、あなたのパレットに新たな印象を加えることでしょう。このサンプル・パックの魅力は、その制作をめぐる物語の魅力そのものでもあります。下では、26分にわたるバウアーのサウンド・トラベルに関するドキュメンタリーをご覧いただけます。Abletonのインタビューでは、レコーディング、サウンド加工の手法、サウンド・パック公開を決めた理由についてバウアーが語っています。また、パックのダウンロード・リンクも記載しています。このアイデアはどのようにスタートしたのですか?なかなか大規模なプロジェクトのように思えますが。新しいアイデアだな、といった感じで、単なる思いつきでした。正確にいつだったかは思い出せないのですが、ただはっきりしていたのは、自分でレコ―ディングして、最高に珍しくてクレイジーなサウンドを取り込んで、究極のサンプル・パックを構築することができるプロジェクトがしたいということでした。アイデアはここから始まりました。その後Red Bullとタイアップし、そこからはすべて自然に形になっていきました。 撮影: Balazs Gardi / Red Bull Content Pool. プロジェクトに取りかかる前から西洋文化圏以外の音楽をよくお聴きになっていたのですか?その通りです。インスピレーションを得たり、少し変わったサウンドを聞いて別の視点を得るためにかなりの音楽を聴いていました。たとえば少し前から日本の雅楽を聴いていますが、それはこれが非常にクールで異なった音楽で、まったく新しい音楽的視点を与えてくれるからです。地球の裏側まで飛んでいき、他国の音楽事情に飛び込むという体験はどのようなものでしたか?会ったことのないミュージシャンに面と向かうのに気後れはありませんでしたか?実際のところ、とてもすばらしい体験でした。私たちが求めていたのは、それぞれの物語を語ってもらい、音楽を演奏してもらうことだけでした。皆、喜んで行ってくれましたよ。彼らは、自分たちの音楽を分かち合えることをとても喜んでいました。だから、常にとてもいいヴァイヴが生まれていました。私たちは知らない国からやって来たよそ者でしたが、それでも彼らは喜んで彼らの伝統を披露してくれました。 ドキュメンタリー『Baauer: Searching for Sound』を観る こうして集めたサウンドをどのように使用しましたか?ラクダのうなり声やハヤブサの羽ばたきの音はかなり抽象的なサウンドですが、どのようにしてこれらをクリエイティブなプロセスへと組み込んでいったのですか?これらのサウンドは完全に変形させてトランスポーズしています。全く違ったものへと変化させています。新しいサウンドを使用して、あるものを全く別の何かに変化させることができるというのはすばらしいです。フルートの演奏をパーカッション要素に変化させたりしています。2回の旅で生まれたかなりの数のサンプルを使用していますが、そのほとんどは全く新しい別の何かになっています。Ableton Liveに搭載のツールで、これらのサウンド加工に使用されているものはありますか?トランスポーズ、Complex Pro、それにあらゆる種類のワープ機能を使用するのが好きです。ワープのアルゴリズムはそれぞれオーディオに異なるサウンドをもたらしてくれるので、多用しています。また、クリップ内でトランスポーズにオートメーションを設定して変化を加えるのも気に入っています。新しい音楽環境にさらされる体験は、ご自身の音楽に対する見方に変化を与えましたか?ええ、もちろん。何よりも、自分のプロセスについて考え直すきっかけになりました。インターネットから何かを取り出すのではなく、外に出て実際の生活空間にある音を録音することは、私の音楽制作の方法を大きく変えました。さまざまなコンテキストから生まれたサウンドを使用することについての先入観が消えました。素材を活用して全く新しい何かにしてしまうことができるようになりました。 AlunaGeorge & Rae Sremmurdをフィーチャーしたバウアーの最新作品 このプロジェクトは、人々をサウンド自体に夢中にさせているようにも思えます。オーディオについてのあなたの考え方が再び活性化されたという側面はありますか?ある種の縛りを設定したり、使用するものを一定に制限した状態で作業をするのはよいことだと思いますが、どんなときでも、新しい素材を手に入れることができるのはいいものです。画家が新しい色の絵の具を手に入れるようなものです。世界にはまだまだ使用できる素材がたくさんあります。外へ出て、ふれあえばいいのです。 撮影: Balazs Gardi / Red Bull Content Pool. このような旅を経験した後、再びスタジオに閉じ込められた状態にうまく慣れることはできましたか?アルバムの制作状況についても聞かせてください。こまごましたものがたくさんあります。これをひとつに組み合わせて、まとまりのある形にすることが当面の大きな課題です。今はその作業中です。サンプルを無償ダウンロードとして提供することについてはどうお考えですか?自分の作品を公開するといった気分でしょうか、それとも、これが素材として活用されてどのような作品が生まれてくるのかが楽しみという感じでしょうか?皆がどんなことをするのか楽しみです!私が録音したこれらのサウンドが世に放たれ、それに皆が反応する。考えただけでワクワクします。これらのサウンドを使って生まれた作品に出会う日が待ち遠しいですね。私にとっても大きな刺激になることでしょう。 サンプル・パックをダウンロードしたら、ぜひ出来上がった作品を公開してください。その際は、ハッシュタグ #MadeWithLive をお忘れなく。このプロジェクトについて詳しくは、『Searching for Sound』ウェブサイトをご覧ください。

インプット/アウトプット:グレン・コッチ&クロノス・クァルテット

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インプット/アウトプット:グレン・コッチ&クロノス・クァルテット

シカゴを拠点とするパーカッショニストであり作曲家のグレン・コッチは、現代の音楽シーンにおいて最もエキサイティングで創造力豊かな期待のコンポーザーおよびパフォーマーのひとりとの呼び名も高く、シカゴ・トリビューン紙は「間違いのないテイスト、テクニック、自制」と注目すべきアーティストとして選出していますウィルコのドラマーとして多忙なスケジュールの中、自身の2枚目のソロ・アルバム『Adventureland』をCanteloupe Recordsからリリースしました。これは、数々の賞に輝く弦楽合奏団クロノス・クァルテットとのコラボレーション作品です。クロノス・クァルテットは、ザ・ナショナルからアレン・ギンスバーグまで、これまでに多数のアーティストとのコラボレーションを行ってきており、ヘンリク・グレツキやスティーヴ・ライヒなどの有名作曲家により何百という作品の提供を受けてきました。コッチは、クロノス・クァルテットとのコラボレーション作品『Anomaly』の7チャンネルすべてをAbleton Liveセットとして音楽プロジェクト共有およびコラボレーション用のオンライン・プラットフォームblend.io上で公開しています。『Anomaly』のステムは、Ableton認定トレーナーJosh Hoganにより、ワープし同期する再生可能なセッションへと編曲されています。先日、コッチはHoganと会い、『Anomaly』プロジェクトについて意見を交わしました。共に、弦楽器を扱うという課題を紐解き、複雑なポリリズムを構築するためのヒントを提供し、「世界をリードする弦楽合奏団による完全無欠の録音ファイルを無償提供する意義」という問題提起を行っています。『Anomaly』の弦楽の作曲に非常に「パーカッショニスト」的なアプローチをとったという記事を読みましたが、パーカッションがリズムとテクスチャにつながっていることは明らかです。ハーモニーと調性にどのようなアプローチをとったのかお話しいただけますか?ドラムセットを使って作曲することが多いので、型、リズム、作品の全体的な構造はそこで形作られます。その後、この骨組みを、ピッチやハーモニー、より伝統的な音楽的要素で埋めていきます。これはいつも偶然始まるのですが、キットにつないだカリンバのチューニングから始めたり、ビブラフォン、チェレスタ、ピアノでいくつかリズムを弾いてみたりして、試行錯誤して一番しっくりくる調性をあぶり出す感じです。このキーとこのハーモニーで行こう、と作曲を開始する時点で決めていることはほとんどありません。たとえば、『Anomaly Mvt. 2』では、当初のピッチは作曲に使用していたドラムのチューニングをベースにしていたのだったと思います。 グレン・コッチ『Anomaly Mvt. 2』 パーカッションと弦楽器の関係が逆に作用したということはありましたか?弦楽器の音楽性がパーカッションの演奏に影響を与えたということは?ありましたね。ドラムのチューニング、使用した機材、サウンドの選択はすべて弦楽器の音色に影響を受けています。ドラムにダンピングを多用して、オープンになりすぎないようにして上音を抑えて弦楽器パートの邪魔をしないよう、またピチカートパートとうまくブレンドするようにしています。いくつかのセクションでは、スティックでなくマレットを使用しました。これも、弦楽器の音量の制約に合わせてのものです。シンバルを多用しないようにしましたが、これもサウンドのコントロールを保つための手段です。スネアをオフにして、スネアが突出しすぎないようにしました。これらは、弦楽合奏団と一緒にドラムを演奏する際に考慮すべきたくさんの事柄のごくわずかに過ぎません。 クリエイティブな使用を望むAbleton Liveユーザー向けに『Anomaly』をblend.ioに公開していますね。どのような使用を期待されていますか?『Anomaly』のステムをblend.ioからダウンロード理想としては、私が想像しないようなことをして欲しいですね!これは油断していたな、といったような、音楽に新たな光を当てるような何かだといいですね。「考えもつかなかった!」と言えるようなもの、新しいクリエイティブな扉を開いてくれるものを期待します。『Anomaly』にはクールなアナログ・サウンドが使用されています。第1楽章と第3楽章で聞くことのできるエレクトロ・グリッチ・サウンドはどうやって作成したのですか?こういったアナログ・サウンドにはパーカッション楽器のようなアプローチをとっているのですか?そうですね。『Mvt. 3』のあのサウンドにどうやってたどり着いたのかはっきりとは覚えていませんが、外界で録音したサウンド、または音素材をエフェクト・ペダルやプロセッサーに通すことで作成したサウンド、あるいはドラム・ブレイン・コントローラーで微調整したカスタマイズしたサウンドを使用すると思います。面白い静かなサウンドにコンタクト・マイクを使用するだけでも、エレクトロニックに匹敵するほどの大音量のインストゥルメントを呼び起こすことができます。小さなアコースティック・サウンドを、音の拡大鏡でのぞき込むような感じです。たとえば『Mvt. 1』は、私が作曲に使用しているソフトウェア(Sibelius)で作成したストックのサウンドを使用する方が、ドラムや弦楽器を使用するよりも魅力的なサウンドに聞こえました。 しかしそれでも、アコースティック、エレクトロアコースティック、エレクトロニックであるかどうかに関係なく、キットやセットにまとめられた数々のサウンドや音色というものを考えました。これがドラムセットの中核となるものです。 コッチのLiveセットのオーガナイズ方法を説明したJosh Hoganによるビデオ・チュートリアル 一緒に演奏されるさまざまなレイヤーやパートを使用することでビッグな「マクロ」・ビート・サウンドを作成し、パーカッションのパートにオーケストラ的なアプローチをとっているようにも思えますが、こういったサウンドの作成へのアプローチについてお話しいただけますか?『Anomaly』の一部が「ビッグ」に感じたので、インストゥルメンタルのテクスチャのレイヤーをレコーディング用にいくつか追加することにしました。ライブ・バージョン用には無理なので。好例が『Mvt. 2』で、拍手、ピアノ、クロタレス、マリンバ、タンバリンにレイヤーを重ねてセクションをよりビッグにしています。これらのサウンドの作成については、録音とミックスを担当したPat Burnsに因るところが大きいです。自分の作品ではほぼ毎回Patと仕事をしていて、これまで一緒にやってきたのと、感性が似ていることから、音響的な判断は彼を信頼して一任しています。適切な楽器とマレットを選択し、上手く演奏できていれば、彼がすばらしいサウンドにしてくれます。 『Anomaly』には入り組んだ交差するポリリズムがたくさん含まれています。これらは世界各国のさまざまなパーカッション様式で使用されている非常にクラシックなリズムであり、スティーヴ・ライヒといったアメリカのミニマル・ミュージックの歴史に大きな存在感を与えています。これらのリズムの使用について少しお話しいただけますか?そうですね。ライヒは、アフリカ音楽とバリ島音楽の両方を研究しましたが、これらの音楽は彼の初期作品に強い影響を与えています。私も世界各国のパーカッション様式を研究しましたが、必然的にできる限りあいまいな要素を残しておくことを好みます。いろんな拍や鼓動で作品を感じることができるのが好きです。それはまるで、自分の解釈に応じて画像が自分に向かって浮き出てきたり遠ざかったりする錯覚やオプアートのようなものです。リズムや拍が一気にいくつかの方向に向かうような作曲を試みることもよくあります。こういった交差するリズムを探求したいビートメイカーに対してアドバイスはありますか?8、12、16に分割する方法はたくさんあるということを体得することです。これらは、西洋音楽で使用されている一般的な分割の数です。たとえば、8は4+4、2+2+2+2、3+3+2、2+3+3、3+2+3、4+3+1などに分割できます。さまざまな組み合わせとグループ分けの順序を試してから、自分の手であるリズムを、足で別のリズムをとってみて、リズムを交差させてみるのです。こうすることで、結果として音楽に流れが生まれ、シンコペーションが生じるのが好きです。 独自のビジョンに合わせてコッチのレコーディング作品に手を加えることのできる機会です。高品質の弦楽器サンプル・ライブラリは高価なものが多く、精緻にキャプチャされたステムをライブラリに加えることのできるチャンスでもあります。グレン・コッチをうならせる新しい作品が誕生したら、ぜひAbletonにご一報ください。その際は、ハッシュタグ #MadeWithLive をお忘れなく。

Jason Spanu: 経験が放つ輝き

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Jason Spanu: 経験が放つ輝き

Jason Spanuと彼のスタジオ(写真:Christopher Drost) ミュージシャンとして20年を超えるキャリアを持つ認定トレーナーJason Spanuは、ソロ・ミュージシャン、DJ、バンドのメンバー、ネリー・ファータドやドレイクなどのテクニカル・ディレクターなど、数多くの役割を果たしてきました。バンドとの映画用サウンドトラック制作やPushを使用した新しい基盤の構築など、現在進行中のプロジェクトで忙しいJasonを訪ね、旅先でのエピソード、Live使用のヒント、Liveを使用したDJイングに対する彼独自のアプローチについて話を聞きました。 『Getting Serious』 ― DJ Shine aka Jason Spanu より大規模なバンド形態の場合、Ableton Liveを使用するあなたの役割は何ですか?一般的に、バンドの規模が大きくなるほど、ライブにプロダクションが関わる度合いが増えるので、私の役割も拡大することが多いです。多数のオーディオ・トラックとMIDIトラックを含む巨大なショー・ファイルのプログラミングと編集を担当していますが、これは別個のスタジオ・トラックを混ぜ合わせたものと追加素材の再生を容易にし、ライブに付加制作価値を与えます。シンプルに答えるとすれば、バンドと一緒にオーディオ・ファイルをプレイするのにAbleton Liveを使用しています。私の役割は、「データ・ライブラリアン」や「リミキサー・コンサルタント」といったところでしょうか。アーティスト/バンドと彼らのニーズ次第です。スペースバーを押してソングをスタートする以外何もすることがない場合もあれば、超巨大なマッシュアップの作成やビデオ・コンテンツの同期などを任される場合もあります。アーミーナイフのデジタル版のような役割です。ご自身のバンドAutomated GardensでのAbleton Liveを使用するあなたの役割は?Automated Gardensは、Keram Maliki Sanchez、Joshua Joudrie、そして私から構成されるトリオです。90年代にはもっとアクティブに活動していましたが、クリエイティブなつながりは維持してきました。最近では、映画『Ecstasy』用の素材を作曲しました。今は新アルバムを制作中で、開始から1年半ほどになります。メンバーは皆Liveユーザーです。それぞれいろんな場所に住んでいるので1カ月間一緒に作曲するということは無理なので、ひんぱんにファイルをやりとりしています。だいたい、私が曲を作り始めて、それをロサンゼルスのKeramに送って意見を聞きます。Joshがミキシングする前に、何度もファイルのやりとりを行います。 アーヴィン・ウェルシュの『Ecstasy』劇場予告版。Automated Gardensの音楽が使用されている ソロ・アーティストとして、またドレイク、フランク・オーシャン、ネリー・ファータドなどとの大型ツアーにも参加していますが、Ableton Liveのそれぞれのシチュエーションへの適応度についてはどのようにお考えですか?大規模なツアーでLiveを使用する一番の理由は安定性でしょう。安定性と柔軟性、特に、音楽的な変化にスムーズに順応するという点です。コンピューターをステージに上げて再生ボタンを押し、それに合わせてバンドに演奏させるというやり方もありますが、マイクの故障、メンバーがパートを忘れてしまった、バンドがあるセクションをループしないといけなくなったなど、ステージに大惨事をもたらしかねない予期しない状況が起こることもあります。Ableton Liveは従来のタイムライン・アプローチから離れた自由な操作が可能です。ですから、ほとんどの場合、私がある種のオーディオのセーフティ・ネットの役割を果たしています。 ネリー・ファータドのツアーでは、バンド・メンバーとしてステージでより積極的な役割を担っています。彼女のプレイバック・ファイルをループ、微調整、加工したり、ショーにシンセやサンプル要素を追加したりもします。MIDI配信システムが用意されていて、ステージ上の他のすべてのシンセにプログラムチェンジを送信し、同期が役立つギター・ペダルや他のエフェクトにMIDIタイムコードを供給します。また、ショーの照明とビジュアルの統合用に、各ソングではSMTPEタイムコードをビデオ・サーバーに送信しています。 フランク・オーシャンのライブでのJason Spanuのセットアップ(写真:Christopher Drost) 自分のパフォーマンスでは、Abletonの使用にまったく異なるアプローチをとっていて、コンピューターの処理能力の限界に挑戦するほどの非常に精巧なセッションを構築します。単に安全でシンプルなセットアップを用意するより、クリエイティブな柔軟性をできるだけ手元に残しておきたいのです。2台のラップトップ、2台のPush、2台のiPadを各ステーションに置いた全く同一のシステム2基を使用して演奏することもよくあります。こうすることで、ライブを「DJ」することができます。ワンマシンでも全ての操作を行うことは多分可能だと分かってはいるのですが、こうすることで、1台のコンピューターを巨大なライブ・セットのすべての曲を置くといった1つのタスクに専念させ、もう1台のコンピューターをより自発的なジャミング・ステーションとして使用し、空のセットを置いて状況に応じてヴァイブを構築できます。DJイングを行う際、セットの組立てに傾向はありますか?どちらかというとしっかり計画するタイプですか、それとも自然に任せるタイプですか?プランを練りすぎないようにしていますが、デジタルDJイングには主力の流れがあります。昔はジャケットのデザインや色でレコードが識別可能で、そのサウンドやヴァイブ、どれとミックスするべきかがすぐに分かりました。しかし、SeratoやTraktor、Liveを使用する場合は、ソングのタイトルだけが頼りです。これがなかなか難しい。アルファベットが無数に並んだファンキーで珍しいヨーロッパ風のタイトルは頭に入りにくいからです。これを克服するために、私は独自の色分けでソングを(クリップで)分類しています。テック・ハウスは紫、トライバル・ハウスは茶、ボーカル・ハウスはオレンジ、ありがちなチューンは黄…というふうに。また、ソングの強度やエネルギーを示すためにグラデーションも使用するようにしています。たとえば、濃い紫はヘヴィーなサウンドのテック・ハウス、薄い茶はボーカルのあるトライバルっぽいハウス、といった感じです。この記事の読者にLive/Pushに関するアドバイスをひとつ贈るなら、どのようなものになりますか?私は、Pushを他のユーザーとは少し変わった方法で使用しています。ClyphXというフリーのコントロール・スクリプトを利用してスケール・モードの動作に動きを付けるのが好きです。簡単に説明すると、ClyphXは、クリップ名に特定の単語を使用することで、Liveのパラメーターの一部の側面をコントロールできるようにしてくれます。私が最もよく使用するのが「pushscl」です。これは、Pushのキーとスケール情報のスナップショットをとって、トリガー時にそれをPushに再生することができます。このプロセスを繰り返してから、さまざまなクリップを順に選択するフォロー・アクションを使用すると、今度はPush内で変更がトリガーされ、同じ場所に留まったままスケールとキーのモジュレーションに従うすばらしい結果をジャミングできます。 DJ ShineのSoundCloudページ

Diggin’ In The Carts: シンプルなツールが生み出す豊かな感情表現

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Diggin’ In The Carts: シンプルなツールが生み出す豊かな感情表現

80年代の幕開け以来、テレビゲーム音楽は世界各地のリビングそしてゲームセンターで必ずといっていいほど耳にするようになりました。子供の頃一番よく聞いた音楽がゲーム音楽という人、ゲーム音楽が成長期のサウンドトラックだったという人も少なくないはずです。「ストリートファイター」や「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」といった名作に使用された8ビット、16ビット、FMサウンドは、現代の音楽の形成に大きな役割を果たしました。その影響はFlying LotusやKode 9といったアーティストの作品にも明白に現れています。しかし、皆に愛されてきたこれらの音楽を生み出した作曲家についてはどうでしょう? 「Diggin’ In The Carts」で、Red Bull Music Academyは不朽の名作を誕生させた人々を探るべく日本に飛びました。6回からなるこのビデオ・シリーズでは、ゲーム音楽の発展を分析し、その成立の物語を描いています。ビデオでは、下村陽子氏、田中宏和氏といった作曲家が紹介されています。原始的ともいえる技術を用いて世界を構築するためには創造力をふくらませることが必要ですが、それはあらゆる音楽制作に欠かせないものです。制約の中での作業がいかに不朽のサウンドの誕生へとつながるのか、また、インスピレーションが思いがけないところからやってくる様子を克明に説明しています。紹介されている作曲家たちは、極めてシンプルなツールを使用しながら雰囲気や感情を伝える方法を教えてくれます。 各エピソードは、Diggin’ In The Cartsウェブサイトからご覧いただけます。

Nicolas Bernier: オーディオビジュアルの連続したつながり

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Nicolas Bernier: オーディオビジュアルの連続したつながり

Nicolas Bernierは、光とサウンドの連続するつながりに光を当てた、説得力のあるインスタレーション・シリーズ『frequencies』で注目を集めました。複雑な原理からインスピレーションを得、エレガントなシンプルさで示されるBernierの作品は、パワフルなコンセプトをダイレクトかつ触覚に訴える方法で表現します。 シリーズ最新作では、量子物理学の素粒子と確率を用いて、その理論をオーディオビジュアルの領域へと拡大させています。急に現れるホワイトノイズとサイン波は、暗く親密な空間内に、波打つように躍動する光のパターンを引き起こします。理論とプロセスを組み合わせること、また美と示唆に富むコンセプトと間のバランスの取り方について、Bernierに詳しい話を聞きました。 Nicolas Bernier『frequencies (light quanta)』 科学的理論はあなたのクリエイティブなプロセスにどのように影響していますか?量子物理学がオーディオと光による構造を作り上げる例を挙げていただけますか? 最も分かりやすい例は、アクリルのパネルにレーザーカットされたグラフィックでしょう。これらのグラフィックは、量子物理学の本で見つけた図表を再現したものです。グラフィック要素はすべて複数のパネルに個別に分類されているので、どのパネルが点灯しているかに応じて見えるグラフィックも異なります。グラフィック・デザインは、さまざまな要素を配置するための計測ツールとして使用されているグリッドに基づいています。小さな点から構成されるこのグリッド自体、私のアイデアを非常によく表現していると思います。これらの点が光ると、星座のようにも見え、とても魅力的です。 サウンドについては、量子物理学の応用はかなりシンプルです。この作品は粒子という概念に基づいていて、小さなバースト音やクリックといった細かな要素を扱っています。この原理は、マイクロモンタージュをベースとする形態の構成、さらにサウンド処理にも応用されています。すべてのサウンドの生成には、グラニュラー合成エフェクトを主に使用しています。サウンド・アーティストEnnio MazzonがレーベルFarmacia901用に開発したカスタムのMax/Mspベースのアプリケーションを使用しました。 『frequencies (light quanta)』の説明で、「有機的な発展」との言及がありました。どのようにサウンドと光の「有機的」なシーケンスを生成したのかお話しください。 サウンドの粒子を扱うというアイデアは、作品の大まかな形態(100のオーディオビジュアル・シーケンスから形成されるもの)を作り上げるのにも使用されました。シーケンスのほとんどはかなり短く、数ミリ秒から50秒程度で、一部はそれよりも長く(3~5分)、より作曲された作品という印象を与えるものです。有機的な形態、というのは、こういった断片のすべてが偶然組み立てられ再生されているという意味においてです。これもまた量子物理学の原則に沿ったものです。理論とは確率計算に基づいている場合がよくあるのです。複雑だったり分かりにくいものではありません。始まりも終わりもないというインスタレーションや作品はよくあります。この作品の偶然性は、この概念的なアイデアにまさにうってつけなものです。 この作品のようにマルチメディアな作品での作曲プロセスはどのようなものですか?プロジェクト初期において、オーディオ、光、オブジェクトへの取り組みをどのように分けて(あるいはまとめて)行っているのでしょうか? プロセスにおいて、体系立てた何かがあるわけではないんです。どのプロジェクトも独自のスピード、要素、制約で発展していきます。たとえば、『frequencies (a)』は装置からスタートしました。音をベースにしたものだったので、まず「楽器」を構築する必要があったのです。その後、「シンクロニティ」という概念のもと、これをひとつのオーディオ発光性媒体と考えて光とサウンドを構成していきました。 Nicolas Bernier『frequencies (a)』 『frequencies (light quanta)』では、サウンドからすべてが始まりました。そのほとんどは独立した音楽として作成され、その後さらなるアイデアが加わり、プロジェクトが現在の状態へと発展しました。ただ、サウンドとビジュアルを作成する上で、すべてがうまく組み合わさるための重要なポイントが必ずあります。たとえば、一部のオーディオ断片は使用しませんでしたが、それは、それらがインスタレーションで上手く機能しなかったためで、いくつかの断片の構成を変更しました。 Nicolasについてこれまでに紹介した記事を読む Nicolasの他の作品は、彼のウェブサイトからご覧いただけます。

4DSOUND: 新たなディメンション

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4DSOUND: 新たなディメンション

音楽制作用ツールは電子機器の到来によって飛躍的に発展しましたが、対してリスニング構成は比較的ゆったりとしたテンポで進歩しています。プロフェッショナルおよびコンシューマー向けサラウンドサウンド・システムがつぎつぎと発表されているのにかかわらず、ライブ・パフォーマンスではそのほとんどがステレオ(あるいはサミングされたモノ)・サウンドに依存しており、オーディエンスは音のほとんどを1方向からのみ聴いている状態です。 そこに登場したのが、アムステルダムを拠点とする4DSOUND。漸進的に変化するサウンドの3次元ポジショニング(ここでは時間は第4の次元)を可能にする、新しいイマーシブなシステムです。包括的なスピーカー群とMax for Liveカスタム・デバイスにより、システム空間内のあらゆる場所にサウンドをポジショニングできます。 Abletonはアムステルダムにて4DSOUNDチームのビデオインタビューを敢行。パフォーマーとリスナーに対して、パフォーマンスとリスニングの新たなパラダイムを投げかけるその手法について、この目的を達成するためにどのようにLiveを使用しているのかについて話を聞きました。 4DSOUNDのコンセプトについて創立者Paul Oomenによる説明、ミュージシャンStimmingがシステムのカスタム・パフォーマンスを準備する様子をビデオでご覧ください。ビデオ内のライブ・オーディオはバイノーラルで録音されていますので、サウンドを最適な状態でお楽しみいただくためにも、ヘッドフォンのご使用を強くおすすめします。 次のビデオでは、クリエイティブ・ディレクターSalvatore Breedが、アーティストによる4DSoundのコントロールにMax for Liveを使用する方法について説明しています。 Amsterdam Dance Event 2014にご参加の方は、4DSOUNDとAbletonが共同でキュレーションを務めるワークショップ、パフォーマンス、ハック・ラボにもぜひお立ち寄りください。詳しくは、CDMのページをご参照ください。 パフォーマンスを終えたStimmingは、フルセットのハイクオリティ・バイノーラル録音を公開してくれました。セットはこちらでダウンロードするか、下からストリーミングでお聴きいただけます。ぜひヘッドフォンでお楽しみください。 4DSoundウェブサイト StimmingのSoundCloudページ

Recondite: 独自の色を生み出すこと

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Recondite: 独自の色を生み出すこと

Recondite 2011年、Reconditeは落ち着きのあるエレガントなテクノで南ドイツから頭角を現しました。際だって生き生きとした感情の核を特徴とする彼の作品には、オーガニックなプロセスと人工的なプロセスが曖昧に混合され、猛々しくヘビーなテクノの限定された領域をはるかに超えるものとなっています。Dystopian、Absurd Recordings、そして自身のレーベルPlangentからリリースされる作品は、明快かつ深奥でありながら開放的な音楽を作り出す確かなメロディとディテールへの配慮が特徴的です。 Recondite独自のパレットの構築に熱心です。音楽を「プレイ」することにあまり興味を持たないという彼は、形状、エッジ、トーンからさまざまなサウンドを生み出すことを選びました。フィールド・レコーディングへの重点的な取り組みと、制作プロセスにおける「色付け」への強い嫌悪は、彼の音楽を特徴付けるものとなっています。メロディの揺るぎない重要性、テクノロジーに溶け込むこと、独自の音楽性を形成するのになぜベーシックなサウンドが重要なのかについて話を聞きました。 Recondite - Cleric、Dystopian 003 あなたの音楽を聴く際、いつもフィールド・レコーディングのサウンドとシンセ・サウンドを聞き分けようとするのですが、ほとんどの場合不可能です。特にローエンドとご使用のサウンドソースが気になるのですが、エンベロープにすばらしく繊細なバリエーションが見受けられます。これについてお聞かせいただけますか? この多くは手動で行います。特定のサウンドのベロシティのバリエーションを作成します。その後、各音のベロシティを変更して、長いシーケンスにわたってバラエティを作成します。これにより多くの変化が生まれ、特にベースサウンドのアタックに変化が生じ、グルーヴに優れたバリエーションを与えます。 これは使用されるサウンドすべてにはっきりと表れています。かなりコンスタントなパラメーター変更ですね。 演奏すれば簡単にできます。しかし私は演奏家ではなく、どちらかというとデザイナーや設計者のタイプです。ほとんどメロディしか演奏しないので。 HotflushからのRecondite最新作「DRGN2」 このメソッドがあなたのような人に機能するのは興味深いことです。昨今、オーガニックなバリエーションをハードウェアで実現するという取り組みが盛んですが、これが実現可能なのは、コンピューターに張り付いての作業をよしとする場合に限られるからです。 ひとつの理由に行き着きます。私がこれを行う理由はひとつです。音楽を作るとき、私はフィジカルなことを一切しないことを好みます。好きなんですね、自分の肉体を排除するということが。これは精神的なことです。といっても難解なものではなく、単に、自分という肉体の存在を忘れるほど集中した状態になりたいということです。コンピューターに自分の脳をつなぐことができればどれほどすばらしいか。何かの一部分を演じたくないのです。そのようなことに興味はありません。自分個人の意見、気分、特徴を音楽に注入することに興味があります。正直、「プレイ」がしたければ、テレビゲームをやりますね。 Reconditeのヴェローナでのライブの様子 これが、エレクトロニック・ミュージックの良いところであり、ソフトウェアとその可能性のすばらしい点です。この機会を与えてくれるからです。たとえば機内で、10時間にわたって小さな席に座ったままでも、他にすることがなければAbletonを開きます。もちろん機内にはMIDIキーボードなどの機材はありませんが、すばらしいビートを構築し、アイデアを音楽に変化させることができます。ラップトップさえあれば何も要りません。これが音楽制作の未来なのです。Google Glassを使用して目の動きを利用した音楽制作ソリューションなども、非常に面白い可能性を秘めていると思います。 メロディについて明確かつ洗練された感覚をお持ちですが、テクノにおけるメロディの重要性についてどのようにお考えですか?後世に残るトラックを作成する重要な要素と思われますか? 私は、メロディはトラックを興味深いものにする要素だと個人的には思います。トラックに魅力と個性を与えるものです。ある種のドラム・プログラミングやボンゴなどのパーカッシブな表現も個性を出すことはできますが、メロディほど分かりやすくはありません。伝えたい何かがある場合、表現したい感情がある場合、それを露わにしたいと思います。メロディ自体はたとえばポップ・ミュージックにはない抽象的で非常に分かりにくく曖昧なものであるかもしれませんが。いろんなところで耳にする普通の音とは違う、時折淋しくもあるような、そんな感情です。独自の雰囲気ですね。私の音楽にメロディが豊富なのはそのためです。自分の感情をうまく表現したい、他者にも理解できるようにしつつ、一般的な形式とは異なる方法でこういった感情を表現したいと思っています。 2013年にGhostly InternationalからリリースされたReconditeのアルバム「Hinterland」 特にテクノでは、あからさまな美しさを避ける傾向があります。うまく構成された小さな抑揚のメロディは、発展するシンセ・トーンと組み合わせることで非常に印象的になり得ますが、それでもプロデューサーの多くはメロディの使用を控えがちなようです。 それには多くの理由があると思います。テクノ・ミュージシャンは、メロディが簡単に陳腐なものになってしまうと感じていて、それが怖くてメロディを使用することを避けているんだと思います。それがひとつ。もうひとつは、テクノ・アーティストには、率直で、構造を重んじ、さらに言えば、感情をあまり重視しない人たちもいて、そういう人たちには単純にメロディというものが存在しないのだと思います。こう言えるのは、私自身がよく体験することだからです。彼らの中には、メロディの代わりに、複雑なリズムや巨大なシーケンスといった別の何かが存在しているわけです。皆がメロディを使用するわけではないのは、こういう理由だと思います。誰もが自分なりの方法を見つけていくのです。 ソフトウェアに没頭し、一般的な意味での演奏ということはあまりしないというお話に関連して、ギグや、ライブ・パフォーマーとしての期待への対応についてはどのようにお感じでしたか?移行は違和感のないものだったのでしょうか? ええ。これまでも、人の期待に応えようとしたことはありません。オーディエンスやプロモーターの期待に応えようとしたことも、彼らが望むと思われることをしようとしたこともありません。自分にとって心地良いことをすれば、それは上手くいくと確信していました。違和感を感じるほど何かを変更したり、他者の期待に応えるために何かを変えようとしたのであれば、きっと失敗していたことでしょう。自分にとってできるだけ簡単になるようにしようと決めたのです。そして、できるだけ真摯であろうとも。もともと、注目を集めることにはあまり興味がありませんでした。今、自分がドラムマシンやシンセサイザー、いくつかの外部ハードウェアと共にステージに立つとしたら、それはすでに自己顕示に思えます。家でもこういった機材を使用していないのに、なぜステージで使用する必要が?こんな風に見栄をはるのはおかしいと思うんです。そんなことは上手くいきません。 Recondite 私は、音楽に合わせて体を動かし、目を閉じ、その音楽が好きだということを表します。それが好きだからです。たくさん制作しているので常に新しい素材をたくさんプレイしますが、いつでもそれを変化させることができるので、興味がとぎれることがなく、ほとんどの場合本当に楽しみながらプレイしています。オーディエンスにもそれは伝わっていると思います。ときどき、自分がDJであるかのような気になることさえあります。とても心地良い気分で、まったくストレスを感じません。山のようなハードウェアや複雑なケーブル配線を目の前にすることもありません。無数のノブをたった10本の指で操作する必要もないので、プレイするトラックの順序を書き留めたメモを置いておく必要もありません。こういったことは私には無関係なのです。 シンセサイザー・サウンドの構築で主にご使用のツールは? Abletonのツールだけを使用しています。他は一切使用していません。アルバム「On Acid」とAcid Test用に近日リリースされるEPでは、Acid Lab Basslineを使用しました。303の完全なエミュレーションなんです。個人的にはオリジナル以上だと思っています。さらに可能性を広げてくれますから。それ以外はすべてOperatorです。私に必要なシンセはこれだけです。AnalogやTensionすら使用していません。 Operatorはとにかくすばらしい。シンセサイザーは非常に多様な楽器です。扱い方さえ知っていれば、弦楽器のサウンドやベース・ドラムをひとつのシンセから生成することができます。これはかなりの可能性です。目的に合わせて、特定のサウンドが必要だとか、特定のシンセが必要だと考える人はたくさんいます。大型のパッドが必要だという理由で特定のシンセを購入する人もいます。 もちろん、それぞれのシンセにそれぞれの特徴があります。しかし、そういったシンセの特徴こそ、私が必要としていないものなのです。私が求めているのはまったく逆のものです。私が探しているのは最もニュートラルなもの。ニュートラルなものであれば、そこに個人的な解釈を加えることができるからです。すでになんらかの特徴があるものに私独自の特徴を加えることは難しいからです。 Recondite - Tie In(Acid Test) Ableton Liveが大好きなのも同じ理由で、最もベーシックなソフトウェアだからです。EQもニュートラル。EQとしての仕事をするだけです。WavesのEQをすべて買い揃えるとすると、非常に高価だし、特徴的なサウンドがあります。このEQが使用されていれば、だいたいの場合聴いて判別できます。すばらしいサウンドですしね。でもやはり色付けされてしまう。この色付けが嫌なんです。私は自分独自の色を作りたい。だから、私に必要なのは、ベーシックなシンセ、ベーシックなEQ、ベーシックなフィルター。本来の仕事だけをこなすもの、それだけなのです。私にとって、それがLiveなのです。Liveはサウンドが良くないと文句を言う人がいますが、それはLiveが色付けをしないからです。私の考えでは、Logicではかなりの色付けがなされます。Logicの音がいいという人がいるのは、少し音がきれいになるからだと思います。しかしAbleton Liveでは、サウンドを向上させたければ自分で操作するしかありません。作業は増えるかもしれませんが、Liveは自分独自のサウンドを生み出す機会を与えてくれます。未処理なのにいいサウンドだと、私にとっては問題です。私はベーシックなサウンドからスタートしたいのです。 あなたは現在の主流とはまったく逆を行っているようですね。今では誰もがカラーを求め、さらなるバイブスを加えたがっているように思えますが。 あらゆることに言えますが、手っ取り早いものが人気なんだと思います。すぐにアクセスできるものがいい。今、そして次の瞬間にぱっと機能するものです。しかし、際だった何かを生み出したいのであれば、そういった方法ではうまくいかないのです。 Reconditeについて詳しくは、FacebookページおよびTwitterをご覧ください。