ジェームス・ホールデン:人間らしいタイミングについて

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ジェームス・ホールデン:人間らしいタイミングについて

撮影: Duncographic エレクトロニック・ミュージックの制作は、緻密なサイエンスへと変貌を遂げています。グリッド、クリップ、クオンタイゼーションの完璧な世界に足りないものとは、一体なんでしょうか。トラックに「何か」が足りないと感じることはよくあっても、それが何かを特定することは困難です。たいていの場合、答えはグルーヴとスイングの高度な技術にあります。ビートに生気を与えるのは、誤りや誤差なのです。ジェームス・ホールデンが放つ新しいパッチ、Group Humanizerは、大いに必要とされるこの人間らしさを作品に加えることのできるツールです。ハーバード大での研究をもとに、ホールデンは、オーディオ・チャンネルとMIDIチャンネルのタイミングを自動成形し、人間による演奏でしか得られないオーガニックな押しと引きの雰囲気を吹き込むMax for Liveデバイスを構築しました。ホールデンは自身のライブでこのパッチを導入し、モジュラー・シンセサイザーをライブ・ドラマーのテンポに追従させています。彼は、わずかなタイミングのずれを用いて新鮮みに欠けるグルーヴを生気に満ちたものへと変化させる方法を公開しています。Group Humanizerには、周到な準備と開発が行われ、たくさんの思いが込められています。パッチをダウンロードしてお試しいただく前に、自身のバックグラウンドと見解、コンセプト実現における課題についてホールデン自身が語った詳細な説明を掲載していますので、どうぞお読みください。人間の知覚に関する複合的なトピックに触れる記事となっており、グルーヴやリズムのより細部に関心のある方にとって興味深い読み物となっています。 人間らしいタイミングについて「ブラック・サバスがブラック・サバスであった理由は、各メンバーが他のメンバーのプレイをどのように解釈していたか、そこだったんだ。互いのリアクションが緊張感を生み出す ― バンド・サウンドはそうやって出来上がる。テクノロジーのおかげで、「正確さ」を得ることは簡単になった。ただ、正確さを得るためにテクノロジーに頼ると、人間らしさがすべて取り除かれてしまう。現在の音楽制作のほとんどが、パートを作成し、パーフェクトな演奏を行い、それをコピペするという作業だ。すべてが完璧なタイミング、完璧な音程。だがそれはパフォーマンスではない。私が目指したのは、ブラック・サバスにバンド一丸となってパフォーマンスさせること、つまりジャミングさせることだった。彼らはパフォーマンスのエキスパートだからね」 ― リック・ルービン昨年『ニューズウィーク』誌に掲載された、伝説のプロデューサーでありコロムビア・レコード共同社長であるリック・ルービンのアンドリュー・ロマーノによるインタビューを読んでからというもの、この引用箇所が頭から離れませんでした。このインタビューが公開されたとき、周りのミュージシャンは皆、このインタビューのことを口にしていました。作品をリアルなものにすることについて語ったルービンのインタビューは、皆の心を打ったようでした。私はというと、ルービンは紛れもない事実を示したのだと感じました。私の心の中にずっと前からあった考え、つまり、ごまかしようのないライブ・パフォーマンスの魅力は音楽を愉しむということにおいて絶対的に重要なものであるということです。そう感じたのは、私とルービンだけではなかったようです。米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)に発表された、ハーバード大の研究者ホルガー・ヘンニヒの科学的研究によってもこの考えが検証されています。ハーバードの研究者たちは、演奏のある側面にフォーカスを当てて研究を行っています。2名が一緒に演奏する際のタイミングです。ミリ秒単位まで詳細に計測されています。その結果分かったのは、各音のタイミングは、両方の演奏者がそれまでに弾いた音すべてに依存しているということでした。作品の冒頭近くにタイミングのわずかなずれがあれば、それ以降のすべての音、最後の音まで影響を及ぼし続けるのです。二重奏を行う場合、一方のミュージシャンが演奏するすべての音が、もう一方に影響を及ぼします。逆もまたしかり。つまり、双方向の情報伝達が生じているのです。 撮影: Duncographic ヘンニヒ博士の論文には、この往復の情報伝達が深く基本的なレベルでも生じていることを示す他の研究結果も参照されています。実験によると、二重奏を行っているミュージシャンの脳の電気活動のパターンは、ほぼ正確に一致しています。神経科学者には、リズム(音楽だけでなく、動作や発話におけるリズムも含む)こそ、人間が何かの「異常性」、不自然性を見抜く際の指針であると考える者もいます。さらにリズムは、幼児が同種の他の動物を認識する助けともなります。つまり、人間のタイミングとは非常に重要なものなのです。録音技術の発明まで長い年月の間、人々が耳にする音楽の形態はライブ・パフォーマンスに限られていました。録音技術の黎明期においては、ライブ・パフォーマンスとあまり変わりない状況でした。ミュージシャンが音響状態の良い室内に集まり、満足のいくテイクができるまで同時に演奏するという方法でした。しかし、技術の発達とともに、ミュージシャンごとの個別レコーディングや、必要に応じたオーバーダブが可能となりました。これにより、レコーディング費用は大幅に低下し、それに続いて新しいアイデアが生まれました。音楽のレコーディングの目的に、各ミュージシャンの「パーフェクトな」パフォーマンスをとらえることが加わったのです。デジタル・スタジオ設備が登場すると、この傾向はますます加速します。ベーシストは、序奏部を一度も間違えることなく演奏することを要求されなくなりました。ベーシストがベースラインを1回きちんと演奏できさえすれば、プロデューサーはこれを必要に応じてコピー&ペ―ストすればいいのです。また、オーディオ情報がコンピューター上で簡単に加工できるフォーマットへと変換するにつれ、音楽ソフトウェアは一定で融通の利かないグリッドへと音楽を押し込めてしまいました。そのため、長い年月を経るなかで、レコーディング作品は、単なるライブ・パフォーマンスの録音からまったく別の怪物へと進化を遂げています。ミュージシャンがレコーディング・プロセスにおいてどの時点でも同時に演奏することがなければ、ミュージシャン同士の双方向の情報のやりとりはありません。せいぜい、テープから新しいレイヤーにオーバーダブするミュージシャンへの単方向のタイミング情報の提供があるだけです。例として、ハーバード大学チームは3バージョンの『ビリー・ジーン』を制作しています。どのバージョンも、ランダム・エラー(拍がずれる平均のミリ秒)の規模は同じですが、それぞれのエラーの相関性に違いがあります。[クリップ1]最初のクリップは、完全にランダムなタイミング・エラーが挿入されており、前のタイミング・エラーと現在のタイミング・エラーの間につながりはなく、それぞれのパート内のエラーにもつながりはありません。結果として、明らかに音楽性が損なわれ、不自然な音になっています。[クリップ2]次のクリップは、各ミュージシャンがクリック・トラックに合わせて別テイクで録音した場合のレコーディングを再現したものです。各パート内のすべてのエラーは先行するエラーにつながっていますが、パートごとのタイミング・エラーには因果関係はありません。このバージョンは、技術力のないミュージシャンのグループが演奏したような、しまりがなく、説得力に欠けるサウンドになっています。[クリップ3]最後のクリップは、論文で開発されたモデル(「確率的フラクタル連結」)を使用して、複数のミュージシャンが一緒に演奏した場合を再現しています。平均エラー・サイズはどのレコーディングも同一だったにもかかわらず、最後のレコーディングは締まりのなさが感じられなくなっています。各パートがまとまって自然な動きになっているので、外れている音を指摘するのが難しくなっています。要点はこうです。すべてが同じテイクで録音されていれば、タイミングにかなりばらつきがあってもあまり問題にはなりません。それは間違いには聞こえず、音楽の自然な動きとして認識されるからです。しかし、パートをマルチトラック録音したり、シーケンスされたパートを人間が演奏したパートと組み合わせたりする場合、タイミングのずれは際立ってしまいます。おかしな音に聞こえるのは、それが自然な音ではないからで、不自然さを識別可能な人間の聴覚がこれらの音を不快で好ましくないものとして判別するからなのです。 撮影: Duncographic スタジオ技術の発展に従って、レコーディングで許容されるタイミングのずれの大きさを縮める必要が出てきたというのは、意図しなかった結果でした。タイトなグリッドに合わせて演奏しなければ(あるいはそう見せかけなければ)、ずれはかなり目立ってしまいます。これが本質的に良くないことだと科学をもって証明することは不可能かもしれませんが、この過程で何かが失われてしまったことは確かでしょう。より自然な音楽的会話は、オーディエンスとのよりよい結びつきをもたらすのでしょうか?また、人間がもたらすタイミングのずれを作品からすべて削除してしまったとき、ミュージシャン同士の音楽的相互作用はそれでもなお何らかの意味を持つのでしょうか?私にとって、ライブの喜びとは、こういった相互作用を目の当たりにすることであり、その瞬間に実際に起こっている何かを目にすることです。バンドをライブで観て感動し、そのライブ・アルバムを聴いて、あのときの感動がとらえられていないとがっかりしたことがあるのは私だけではないでしょう。エレクトロニック・ミュージックのアーティストが、ステージ装飾もほどほどに、あらかじめ用意したWAVファイルをスピーカーから流すだけのライブを行うのなら、その結果として精彩を欠いた覇気のないライブとなるのは痛々しいほど明らかです。また、レコード・コレクションを聴いていて、バンドがジャミング演奏したLPと、費用の高額なスタジオで丹念に構築したLPから得られる雰囲気があからさまに異なるのは予想できることでしょう。コンピューターベースの音楽畑出身ではありますが、私は、長年にわたって自分の音楽をリアルなサウンドにする手法について実験を重ね、できる限り演奏し、カオス的なシステム(ソフトウェアそしてモジュラー・シンセサイザーとして)を構築し、ミュージシャン間に生じる表現反響のようなものをシミュレートしようと試みてきました。しかし、実際のミュージシャンを介在させることなく、納得のいくタイミングを得ることは非常に難しいことです。ホルガー・ヘンニヒの研究で提案されていたモデルを使用して、私は、コンピューターで生成された複数のパートに、まるで実際のミュージシャンが一緒に演奏しているような、人間によるタイミングのリアルなシミュレーションを注入できるLive用ソフトウェアを開発しました。実際のミュージシャン(私のライブで一緒に演奏したジャズ・ドラマーなど)の入力を聴いて、そのタイミングのずれに自然な形で反応することもできます。このような機能がコンピューター・ミュージックにもたらされるのはこれが初めてのことです。今後は、あまりにも整然としていて不自然なサウンドへのごまかしへの言い訳はもうできません。抵抗勢力への私なりの貢献と考えていただければ光栄です。 ジェームス・ホールデンのGroup HumanizerをMaxforLive.comからダウンロードジェームス・ホールデンについて詳しくは、FacebookおよびSoundcloudをご覧ください。

Sample Magicの新Pack:Future R&B

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Sample Magicの新Pack:Future R&B

Sample Magicは、あるジャンルのあらゆる要素を抽出し、サウンドと使用性に優れたサンプル・ライブラリへと昇華させるエキスパートとしての才能を幾度となく発揮しています。そんな彼らの最新Packは、絶え間なく進化し変異するあるジャンルの音のディテールとスタイルのニュアンスを余すところなく取り込んだ作品です。Future R&Bには、タイトなドラムマシンのビートやパワフルなベースだけではなく、美しいアナログシンセ、繊細な鍵盤楽器、ボーカルカット、温かみのあるアトモスフィアなど、多様なサウンドが含まれています。1.6 GBに上るループ、ワンショット・サンプル、Drum Rack、MIDIファイルはそれぞれ、フューチャーR&Bトラック向けのオールインワンのコンストラクション・キットとして、また他のスタイルにコンテンポラリーなフレーバーを注入するアクセントとして使用できます。Future R&B by Sample Magicについてさらに詳しく

開発の裏側:Abletonデベロッパーの仕事とは

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開発の裏側:Abletonデベロッパーの仕事とは

Abletonウェブサイトでは、LiveとPushを活用する世界各国のミュージシャン、プロデューサー、テクニシャンにスポットを当てたさまざまな記事を紹介しています。しかし、スポットを浴びる存在ではなくとも、こういったクリエイティブな活動を可能にしている才能にあふれた人々についても忘れてはなりません ― そう、Ableton開発チームのスタッフたちです。開発チームは現在新たな人材を募集中ですが、人材募集キャンペーンの一環として、Abletonでのデベロッパーとしての仕事についてを説明したショート・ムービーを作成しました。Ableton製品開発を支える人々、仕事の様子、スタッフのインスピレーションの源を垣間見ることのできるビデオとなっています。 Abletonでの仕事についてさらに詳しく現在募集中のポジションをすべて見るサウンドトラックは、Abletonチーム・スタッフのMRCS、Studio Rauschenberg、Adam Mannegren、Birdianaによるものです。

ゴースト・イン・ザ・マシーン:Ryo FujimotoがDOMMUNEで魅せる

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ゴースト・イン・ザ・マシーン:Ryo FujimotoがDOMMUNEで魅せる

現代の音楽テクノロジーは、人間の直感的な表現とコンピューターがもたらす無限の可能性の間の壁を破ることを目指しています。それはつまり、人間とマシンの間に自由奔放なフィードバック・ループを生み出すこと ― ストリーミング・プラットフォームDOMMUNEでRyo Fujimotoが見せる扇情的なパフォーマンスから生まれるループが、まさにそれを物語っています。ビートボクシング、多様なボーカル・テクニック、Live、Kaoss Padを用いて、Fujimotoは、見る者にラップトップ・パフォーマンスの表現力を再考させる崇高なパフォーマンスを魅せてくれます。その手法の秘密を探るべく、Fujimotoに話を聞きました。 DOMMUNEでパフォーマンスを披露するRyo Fujimoto DOMMUNEのセットで、あなたはサウンドを細かく切り刻んだり、逆に細かなサウンドを引き伸ばしたりしています。このテクニックのどのようなところに魅力を感じていますか?ご興味を持って頂き、ありがとうございます。私は両方のやり方で制作をしていま す。何故なら、2つの方法それぞれに、異なる素敵な物語が在るからです。なの で、私は、" 分ける " ことが出来ません。はじめに、音を聞いて、感じ、その音に含 まれている要素を、まるで本を読むように読んでみます。そして、完成図をイメージ します。もし、その小さな音からイメージ出来た場合、そこから物語を創り出しま す。しかし、それが出来なかった場合、別の方法に切り替えて、試します。わたしは、エレクトロニクス、ビートボックス、ポエトリーリーディングなどで作 品を創っていますが、自分の中に明確なルールは存在しません。例えば、もし、自 分がサックスフォンを練習しなければならないと感じたなら、私は、練習し始める でしょう。もし、自分がイメージするゴールに到達出来るなら、私は何でも使いま すし、何でも練習すると思います。すべて、わたしにとって、OKなのです。あなたのビートボクシングと制作のスタイルは、空間と密度の一定のペースを持った狂乱的でありながらある種素っ気ないコントラストに密接に関連しているように思えます。あれは、作品作りでビートボクシングをエミュレートしようとしているのでしょうか?それとも、ビートボクシングで制作スタイルを再現しようとしているのでしょうか?今までそれを考えたことがありませんでした。考える機会をありがとうございま す。おそらく、私の中で、ビートボックスという楽器はエレクトロニクスと同じ機 能を果たしているのだと思います。ビート、メロディ、詩、動物的な何か。その他 などに、時と場合に応じて、自由に変形します。 中断もあなたのスタイルを特徴づけるものです。スムーズな流れで進んでいたかと思うと、その後グリッチーで混沌とした状態に突入します。こういったある種耳障りな変化を使用する理由は?なぜなら、私は、”ハプニング”が好きだからです。そして、”退屈なこと”が好きじゃ ありません。( 瞑想は好きですが ) 私は音を、まるで人間のように演奏したいと考 えています。なので、音は沢山の変化を遂げてスピーカーから出てきます。すべての 生き物は、最終的に * 死 * によって終わりを迎えますが、私の中で、* ライブセッ ト * の演奏は、生き物と同じなのです。爆発的に飛び散って終わりを迎えるのか、 とても静かに終わりを迎えるのか、それは、わたしにとって、あまり重要ではあり ません。わたしにとって、大切なことは、中盤に、ライブセットの中の音が、どの ように奇抜に変化したとしても、その変化を受け入れることです。なぜなら、鳴っ ている音は、わたしの子供だからです。そして、私は演奏して、彼らのエンディン グを見届けたいのですパフォーマンス全体を通じて、緊張をはらんだ個人的な何かが張り巡らされているように感じられます。この語り口については、あいまいなままにしておきたいとの意図があるのでしょうか?はい。これは自分が、人生の中で感じている1つの物語であり、誰かへの質問 (時 に警告 ) です。この世界に正解などありません。例えば、誰かに何かを伝えたいと きに、もし、自分の感情を出すことをやめてしまったなら、何も伝わらないからで す。なぜなら、私たちは、それぞれが、違う感覚、考え方を持っていて、多くの人 が、何でも分かる...

Live 9.2パブリック・ベータ公開中

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Live 9.2パブリック・ベータ公開中

Live 9.2が近日リリースされます。この無償アップデートにはいくつかの主要な機能向上と機能追加が含まれており、現在パブリックベータ版が公開中です。 ワープ機能の向上Live 9.2では、Liveのオーディオ・ワーピング・エンジンにいくつかの機能向上が追加されています。[Complex]および[Complex Pro]モードには、思い切った設定であってもよりパンチの強いトランジェントが得られます。オーディオのテンポが一定(エレクトロニック・ミュージックでは一般的)で正確にワープしている場合の自動ワープと強拍検出機能も向上しています。 レイテンシー補正Live 9.2には、レイテンシー関連の機能向上もいくつか追加されています。Max for Liveデバイスやサードパーティ製プラグインのレイテンシーが低下しています。また、オートメーションがレイテンシー補正に対応しました。 Tunerが追加さまざまな内部機能向上に加えて、Live 9.2には新たにTunerデバイスが追加されています。ギタリストやハードウェア・インストゥルメントをご使用の方に便利です。 Pushユーザー向け64パッドPushユーザー向けに、Live 9.2アップデートでは64パッドすべてを使用してドラムをプレイできるようになりました。また、ステップ・シーケンシング用に16パッドにすばやく切り替えることもできます。フィンガードラマーの名手Mad ZachがPushのパッドすべてを使用してリズム・ワークアウトを行う様子をご覧ください。

ディーター・ドイプファー:モジュール・シンセシスの展望

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ディーター・ドイプファー:モジュール・シンセシスの展望

ここ10年におけるモジュール・シンセシスの復活の立役者の名をひとつ挙げるとすれば、それはディーター・ドイプファー(Dieter Doepfer)になるでしょう。1995年に自社のA-100モジュラー・システムにユーロラックを採用したことで、ドイプファーは、互いに整合性を持つ非常に多様なモジュール開発の道を他のメーカーに提供しました。あれから20年が経過しましたが、パッチャブルでモジュラーな機材への関心はいまだに高く、ニッチ層向けの家内工業が主であった業界は、今ではうなぎ登りの成長を見せています。確固たる名声を持つシンセ・メーカーの数々が次々とユーロラックに対応したことで、モジュラー・シンセシスのサウンドはメインストリームへと進出し始めています。OSCiLLOTリリースに付随するシリーズ特集の最新エントリとなる今回の記事では、ディーター・ドイプファーが急激に変化するモジュラー・シンセシス分野への彼の見解や、電子機器や回路図を自作していた初期の頃の思い出について語っています。 ユーロラック・システムで、あなたはモジュラー・シンセシスの再生そして現在の人気に重要な貢献を行いました。しかし、ご自身はミュージシャン出身ではありませんよね。音楽とテクノロジーへの関与はどのようにして始まったのですか?すべては物理学を学ぶ学生だった頃に始まりました。当時バンドで演奏もしており、機材を修理したり、ギター・エフェクト(ディストーション、ワウ、フェイザー、フランジャーなど)を自作したりしていました。あの頃はギターが私の主な楽器で、アメリカの有名シンセ、モーグのようなサウンドをギターで出したくて、当時入手可能だった一般的なエフェクトだけでなくいろんな種類のフィルター回路を試していました。思い出して欲しいのですが、当時はインターネットは存在しておらず、情報の入手方法は今とはまったく異なっていました。手に入ればラッキーといった具合で、紆余曲折を経て雑誌、カタログ、マニュアル、回路図のコピーを時折入手することができた程度でした。たとえば、大学図書館を通じた外国の雑誌や書籍の図書館相互貸借は重要な情報源でした。資料を指定してリクエストを出しておくと、運が良ければ、数週間の待ち時間を経て、数日間にわたってその資料を利用することができる制度です。フィルター、フェイザー、ディストーションを使用してギターでシンセのような音を出すという私の試みは成功とは言いがたいものだったので、徹底的に掘り下げて研究する必要があると気付いたのです。幸運にも、70年代半ばにElektorという雑誌がFORMANTというモジュラー・シンセの回路図を公開していました。毎号ごとに1つのモジュール(キーボード、VCO、VCF、VCA、ADSR、LFOなど)が特集されていて、1年を通じてすべてが揃う仕組みになっていました。もちろんこれを自分で構築しなければならず、これがきっかけでシンセの構築方法と基本的な回路の仕組みを詳しく理解したという人もたくさんいました。そういう意味で、FORMANTは私たちシンセ・フリークにとって画期的な出来事でした。FORMANTシンセが完成した瞬間から、その特性と機能の向上と拡張の要望が届き始めました。それで、FORMANT互換のモジュールをいくつか開発して販売を始めました。周波数分割/サブオクターブ・ジェネレーター、電圧制御フェイザー、ストリング・フェイザー、VUメーター、システム・タイマー、電圧制御スイッチとジョイスティックなどです。FORMANTにない機能のひとつに24dBフィルターがあったのですが、その頃には他の電子系ホビー雑誌もこのシンセの流行に気付き始め、FUNKSCHAUという雑誌が24dBモーグ(Moog)フィルターの回路図を公開しました。ただし、それが何であるのかの説明がありませんでした。なので、この回路図をもとに実際に製作するには若干の予備知識が必要でしたが、あれは紛れもなくモーグ・フィルターでした。それから少しして、同じ雑誌がモーグのADSRエンベロープの回路図を公開しました。同時期に、シンセサイザーに関する本も出版されるようになりました。何よりもラッキーだったのは、『ポップコーン(Popcorn)』のレコーディングに使用されたものと同じモーグのモジュラー・システムを友人と一緒に修復する機会を得たことでした。モーグ公式の保守マニュアルをなんとか手に入れることができ、システム修復の過程で非常にたくさんのことを学びました。20年前、あなたはモジュラー・ハードウェア用のユーロラック・フォーマットを確立し、ベーシックなモジュールを多数開発し、今でも新しいモジュールの製作と既存モジュールの機能向上を続けていらっしゃいます。ここ10年ほどにわたるモジュラー・ハードウェアの拡大に対するあなたの見解をお聞かせいただけますか?小規模メーカーのモジュール分野への大量参入は、この分野全体としての発展にとってよいことだとお考えですか?それとも、違いといえばマーケティング文句だけのディストーション・エフェクトであふれかえるギター・ペダル分野と同じ状況に到達しつつあるのでしょうか?難しい質問ですね。どこへ向かうのかは正直分かりません。NAMMショーから戻ったばかりなのですが、そこでも「ユーロラックの急増」についていろいろな話がありました。今では、ヴァルドルフ(Waldorf)、ヨモックス(Jomox)、オーバーハイム(Oberheim)、デイヴ・スミス(Dave Smith)、ラディカル・テクノロジーズ(Radikal Technologies)、スタジオ・エレクトロニクス(Studio Electronics)など、シンセに関わるメーカーのほとんどがユーロラック・モジュールを市場に投入しています。つい数年前まで、この分野は比較的小規模で、誰とも顔見知りでした。しかし今では、百を超えるメーカーに数千のモジュールが存在するようになっています。迷子になった気分なのは私だけではありません。モジュールの過剰供給に不満の声を上げているのはディーラーや小売店です。これまでのところ、この発展は私たちにとって好ましいものでした。それは主に、他のメーカーがよりエキゾチックで変わったモジュールを開発する傾向にあり、私たちの作るスタンダードなモジュールを必要とするユーザーがいたからです。私たちとしてはこの発展の行方を見守るしかありませんが、数年前の株式市場の高騰について考えずにはいられません。モジュラー・シンセシスの最近の人気の鍵はどこにあるとお考えですか? 私は、いくつかの要因が作用していると考えています。間違いなく、ラップトップやプラグインを使用するミュージシャンの多くが欲するフィジカルな部分(ダイヤル、ノブ、ケーブルなど)も大きな要因でしょう。もちろん、サウンドの豊かさも一因ですが、独自の何かを生み出すという感覚も重要な役割を果たしていると思います。モジュラー・システムを使用すると、他の方法では絶対に生み出せず再現するのも非常に難しい、極めて特徴的なサウンドを作れることに気付きます。これは、たとえばクラフトワークなどのアーティストの典型的なアナログ・サウンドがいつまでもサンプリングされ再利用されている理由だと思います。ドイプファーの今後の開発についてお聞かせいただけますか?また、モジュラー・シンセシスとユーロラック・フォーマットの今後の展開についてはどのように推測されていますか?しばらくの間は開発を続けていくでしょう。モジュールやモジュールの組み合わせが多数登場し、(8x16トリガー・シーケンサーA-157など)スタンドアロン・デバイスとしてリリースされる予定です。また進行中のアイデアやユーザーが待ち望んでいるモジュールもかなりあります。ただ、この熱狂的なブームが治まった後も生き残るのは、高品質の製品と優れたサービスを提供するメーカーだけだと思います。 Doepferモジュラー・シンセシス・ハードウェア一覧についてはDoepferウェブサイトをご覧ください。モジュラー・シンセシスに興味を持たれたなら、OSCiLLOT by Max for Catsをぜひチェック!100を超えるパッチング可能なモジュールと、パッチング済みシンセやエフェクトを多数収録した、Ableton Live用のコンプリートなモジュラー・システムです。