アーティスト 5月 22, 2026

チョモ(どんぐりず):Ableton Noteから始まる、スケッチと衝動の制作術

群馬県桐生市を拠点とする2人組ユニット・どんぐりずは、ヒップホップからダンスミュージック、ロックまでジャンルを横断する変幻自在なサウンドで知られています。また、2026年1月にリリースした最新アルバム『DONGURI ZOO』をはじめ、これまでに5枚のアルバムを発表している彼らは、近年は大沢伸一(MONDO GROSSO)との「DONGROSSO」やNAGAN SERVERとの「豊と良治」といった別プロジェクトも展開するなど、その活動は多岐にわたります。

本インタビューでは、どんぐりずの楽曲制作を主導するプロデューサーのチョモに制作ワークフローをはじめ、Liveとの出会いやお気に入りのデバイスについて話をうかがうとともに、Noteをスケッチツールとして活用する制作術についても語っていただきました。

まず最初に、どんぐりずにおけるチョモさんの制作面での役割と、普段の制作ワークフローを教えていただけますか?

チョモ:基本的にどんぐりずのトラックメイキングはすべて僕が担当しています。曲を作るパターンはいろんなタイプがあるんですけど、50%くらいがトラック先行です。僕が作ったトラックが土台にあって、そこに何か乗せていくという感じですね。あとの30%くらいが、相方の森と一緒にスタジオにいて「こういうの作ったら面白いんじゃない?」というところからジャムっぽい感じで作ることもあります。その場合は、ドラムだけの段階で声を先に録ってしまう感じです。残りの20%くらいが森が曲のアイデアを持ってきて、スタジオに来るパターンですね。彼の頭の中にある完成した曲を僕が仕上げていくという流れです。

それぞれのケースで作った曲のうち、代表的なものをひとつずつ教えていただけますか?

チョモ:トラック先行の曲でいうと、『WHO'S THE BEST』という曲がそうですね。ジャムっぽい感じでできたのは『GORILLA』。森のアイデア先行は『LIFE LINE』という曲です。

その中で予想外の曲ができるのは、やっぱりセッションでジャムって作る時が一番多いですね。自分にないアイデアを森が出してくれて、それが思いがけずハマることがあります。セッションだと曲が完成するのがとにかく早いんです。ただ、短時間で名曲が生まれるパターンと「なんだこれ」という大したことない曲が生まれるパターンが同じくらいあります(笑)。

スピーディーにできるものが最終的にいい曲になることが多いんですか?

チョモ:スピーディーにできたものが最終的にいい曲になることは結構多いですね。こねくり回すこと自体は悪くないんですけど、悪い方向にこねくり回して結局出せなかった曲もありますし。すごくハマる曲だと10分くらいでできてしまうこともあるんですよ。ただ、そういう曲はクオリティや細部に関しては大味なものがほとんどです。

もともとLiveではなく別のDAWを使用されていたとお聞きしています。それまで使っていたDAWとその時の制作スタイルについて教えてください。

チョモ:以前はCubaseを使っていました。10年前くらいですね。18歳の頃にパソコンで曲を作るようになって、そこから7年間くらいCubaseを使っていました。

ただ、Cubaseを使いはじめた理由は特にないんですよ。もともとバンドをやっていて、ハウスやテクノ、DJのことも何も知らない、ただのギター少年だったんです。DTMをやりはじめたのは、以前やっていたバンドのようなことを「これひとりでできるんだ」って気づいたのがきっかけなんですけど、その段階では各DAWの違いや音楽ジャンルとの適性まではわかっていなくて。当時いろんなタイプの音楽を作ろうとしていた時期だったし、「そういう人にはCubaseがおすすめ」みたいな記事に影響を受けたんだと思います。

Liveへの移行のきっかけについても教えてもらえますか?

チョモ:きっかけは、今DONGROSSOを一緒にやっている大沢伸一さんです。大沢さんは長年Liveを使用されているのですが、縁があって知り合うことになり、そのタイミングでLiveをすすめていただき、使いはじめました。

初めてLiveを使った時の印象はいかがでしたか?

チョモ:まずセッションビューが立ち上がった時に「なんだこれ」って驚きました。そこがCubaseとの大きな違いでしたね。それと触り始めて一番いいなと思ったのは、再生するときに指定した小節の頭から毎回再生されることです。例えば、4小節目に設定しておけば、スペースを押すと必ずそこにリセットされる。Cubaseだと「またここから聴きたい」という時に巻き戻し操作が必要で、自分でカーソルを移動しても、そこの頭からは毎回微妙にずれて再生されてしまうんです。なので、Liveのこの挙動はすごく使いやすいなと思いました。

Liveのお気に入りの機能やデバイスを教えていただけますか?

チョモ:基本的な機能にはなってしまうんですけど、グループトラックでまとめてエフェクトをかけられるところですね。Cubaseは別でグループトラックを立ち上げて、そこにまとめてセンドで送るような使い方でしたが、Liveはそこを"フォルダ"のようにまとめて使えるので助かっています。それとボーカルのオーディオデータにワープが使えるのも便利ですね。

あと、よく使うのはSpliceとの連携機能とバウンス機能です。Spliceとの連携機能は、もともと別々に使っていたものがひとつになったので衝撃的でした。バウンス機能に関しては、新規トラックにバウンスできたり、指定した位置にバウンスできたり、あるいはグループでバウンスできたりするのがありがたいです。

それとエフェクトに関して、よく使うのはEchoです。フィルターがついているので、高域を出してクリアにしたり、低中音域を削って狭くしたり、ディレイの質感をこれひとつで幅広く調整できます。それに動作が軽いところも気に入っています。あとはSaturatorもよく使います。

Live純正デバイスとサードパーティー製のプラグインの使い分けはどういう風にされていますか?

チョモ:Cubaseの時から使っているサードパーティーのNative Instrumentsの音源を使うことが多いので、正直、純正デバイスに関しては、そこまでディグりきれていないんです。ただ、SimplerとImpulseをよく使っています。特にドラムは基本的にSimplerで作っています。あとはサブベースのようにシンプルな音のものはLiveの純正デバイスを使うことが多いですね。

他にも制作の効率化のためにやっていることはありますか?

チョモ:ボーカルのミックスはできるだけスピードを上げたいので、ボーカルチェーンをラックにして保存しています。まず、ローカット用のEQを挿して、コンプレッサーを軽くかけます。次にディエッサーとして、FabFilter Pro-DSを挿した後に、もう一度コンプレッサーとEQを挿しますが、ここのEQはFabFilter Pro-Q 4を使っています。

以前は毎回ひとつひとつ並べてセッティングしていましたが、丸ごとひとつで保存できるとわかった時はめちゃくちゃ楽になりましたね。あとプロジェクトを立ち上げる時に、Drum RackやKompleteなど、よく使うものが最初から出るようにテンプレートを組んでいます。

どんぐりずの楽曲の制作において普段からよく使っている制作テクニックや、Liveの活用法を教えていただけますか?

チョモ:基本的にはドラムから作っていくことが多いですね。今年リリースしたアルバム『DONGURI ZOO』もドラムを組んでから、ベースを打ち込むという流れです。ただ、この間架空の高校の校歌を作った時は、ピアノやギターを弾きながらメロディーを考えるという、元バンドマンらしいやり方で作りました(笑)。ジャンルによって、制作の入り口が変わる感じです。

それとNoteが結構好きで、そこから曲になるものも割とあるんですよ。

いつ頃からNoteを使い始めたのですか?

チョモ:1年くらい前にインストールしました。おそらくリリース直後だったと思います。基本的に家に帰って寝る前に思いつきで触ることが多いですね。

例えば、ベースラインを日本の国歌にして、リードシンセをアメリカの国歌のメロディーにしたらどうなるかとか、ふざけたアイデアを試してみて「気持ち悪い、なしなし」ってなったり。そんな感じで触っていると「あれ、これ意外といけるんじゃないかな」ってなるパターンが結構あります。

そういったNoteのスケッチから正式な作品に発展したものはあるのでしょうか?

チョモ:さっき言った『DONGURI ZOO』の中だと、『UFO Dub』という曲ですね。ハウスっぽいグルーヴとダブのベースラインがミックスされた感じの曲なんですけど、それはNoteで作りました。割と最初に立ち上げた時にランダムでアサインされている音源を使っています。もちろん最終的には、音を差し替えるなど、いろいろ変えてはいるんですけど、パッと聴いた印象としてはある程度はそのまま使っているという感じです。

『UFO DUB』のスケッチがNoteで作られる様子。

NoteにスケッチしたものをLiveに入れて発展させたという感じですね。そのスケッチをLiveに取り込む時はAbleton Cloudを使っているのですか?

チョモ:そうです。Ableton Cloud経由で取り込んだNoteのスケッチをLive上でブラッシュアップしていくというイメージですね。

今後Noteに追加してほしい機能はありますか?

チョモ:正直、もっとシンプルでもいいんじゃないかって思うくらい、Noteはできすぎていると思います。機能がどんどん増えて音も良くなっていて、スケッチ用途としては十分すぎるほどです。今の10代のラッパーの子たちはもっとチープなアプリでビートを作って、スマホから直接リリースしてしまうこともあるんですけど、Noteを教えたら「こんなのあるんだ」と驚いていましたね。

普段の制作環境についても教えていただけますか。

チョモ:群馬県桐生市にあるスタジオで昔からずっとやっています。モニタースピーカーとサブウーファー、オーディオインターフェースはCubase時代から使っているSteinbergのものですね。機材としてはボーカル用のマイク、ギターとベース、あとはジャンベやシェイカー、カバサなど打楽器系が結構好きでいろいろ集めています。中でもベースの使用頻度が一番高いかもしれないです。NAGAN SERVERさんと一緒にやっている「豊と良治」というファンクユニットでは生音ベースの曲が多いので。

シェイカーなども自分で演奏したものを録音して楽曲に使っているんですか?

チョモ:そうですね。最初の方に話した『WHO'S THE BEST』という曲は本当に生音中心で録りました。割とグリッドに合っていない状態だったんですけど、クオンタイズをかけるとちょっとグルーヴが違うなってなって。それでそのまま、ずれた状態のままにしました。

あとはジャンベをキックとして使用した時に、アコースティックで鳴らすと芯に響かないと思ったんです。それでキックの音をレイヤーしたのですが、クオンタイズされていないから、ひとつひとつレイヤーするキックの粒を波形を見ながらひとつずつ手動で合わせていくという作り方をしました。これに関しては、自分でもドン臭い制作というか、DAWとは思えない使い方だと思います(笑)

ボーカルチェーンのエフェクト群。

外部のハードウェアシンセなどは使わないんですか?

チョモ:ハード系はKORGのボコーダーが使えるやつがあって、MIDIケーブルで接続するのではなく、直で録音するような使い方です。例えばカットオフを徐々に上げて、シンセのコードを弾いて、カットオフを全部絞った状態から、ビルドアップに向けて16小節でゆっくり開けていくみたいなのも、そのまま録音していますね。

Live上でコントローラーにマッピングして感覚的にノブを回すような使い方はされるんですか?

チョモ:それはしないんですよね。目指している音は大体マウスでオートメーションを書けば再現できるので。多少ランダムな変化をつけたい時にはノブを回すこともありますけど、基本的にはマウスで済ませています。

トラックメイキング以外にライブセットでもLiveを使用されていますか?

チョモ:基本的にはトラックを書き出して、DJプレイのスタイルでやることがほとんどです。ただ、ライブ用の音源を仕込んでいくという意味ではLiveを使っていますね。

それとLiveをリアルタイムで操作する形でのライブセットも今後やってみたいという気持ちはあります。全部のプログラムを動かさなくても、ステム状態で書き出したものでやるとかでも可能だと思うので、そういうところからトライできたらいいなと思っています。

これからLiveを使って音楽制作に挑戦したい人にメッセージをお願いします。

チョモ:Liveは思ったことをそのまま形にできるまでのスピード感が一番の魅力だと思います。無駄な労力が減って、作曲に集中できるソフトですね。性能が上がって制作者側がどんどん楽になっているのは、良いことだと思っています。

ただ、いろいろなことができるようになったからといって、手間をかけることが必ずしもいい音につながるわけではないとも思っています。例えば、キックのサンプルを何個も組み合わせてオリジナルの音を作るよりも、いいデフォルトの音を一発使った方が、聴く人にとってはいいこともある。そこのバランスを見極めるのも大事だと思います。


文・インタビュー:Jun Fukunaga

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